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73 竜の調査隊、迷宮に潜る④

①情報交換完了

②糞虫の最後?

③このダンジョンはおかしい


グロ注意?

「えっさ! ほいさ!」

「これ、何に使う?」

「残り十周!!」


 歩く事数分、辺りに様々な魔物が見られる様になった。道端で会話する者、荷物を背負って進む者、横道へと消えていく者、虫型以外の魔物も、チラホラ確認できる。虫型以外は生まれて間もない感じの、小型の魔物が多い。


「ここら辺は、【世界樹の迷宮】の生活空間エリアになっててね~♪ この大通りを中心に、いろんなエリアに繋がってるんよ」

「え!? そんな重要な場所に連れて来ていただいて、大丈夫なのですか?」

「と言ってもね~。お姉さん方の大きさだと、ここくらいしか通れないし、結構深い場所にあるから、問題ないない……と、ここだよ~♪」


 目的の場所へと到着した様だ、ここにあの糞虫共が居るのね。


「コクガ~、来たぞ~♪」

「お? 早かったな!」

「どんな感じなん?」

「だ~めだ、使い物になんねぇ! 無駄に頑丈だから、今は的に使ってるぐらいだ」


 先ほど通された部屋よりも、圧倒的に広い空間。これなら、私たち程の体格でも自由に動けるわね。作りもかなりシンプルで、円形の広場に、4本の支柱、外周は高台になっており、そこから魔物たちが中心部を見ている様だ。

 ……人共が造る、闘技場ってやつに似ているかしら? 先ほどの荷物を運んでいた一団は、ここから出入りしていたらしい。今も忙しなく行き来している。


「お~! こっちが、お客さんの方の竜か! ……強いな!!」

「あ、ありがとうございます」

「こいつはコクガ、見ての通りの脳筋だから、言動は気にしないでね~♪」

「あぁん?」

「おぉ?」


 お互いにらみ合いを始めてしまった……仲いいわね、この二匹。


「……すみません。彼等がここに居ると聞いていたのですが」

「おぉ! そうだった! と言っても、目の前だぞ?」


 目の前と言われ、辺りを見回してみる。視界に入るのは、中央にある球状の塊と、端の方で地面に磔にされた“なにか”しか見当たらない。


「……もしかして、あれですか?」

「ヒィ!?」


 磔にされて居るのを良く見れば、形が尾の無い竜に見えなくもない。

 ……運び出していたのは、どうやら彼らの鱗や牙、尾の肉だったらしい。


 ……確かに物扱いね、木に実る果実を収穫するが如くむしり取られている。

 この惨状、確かに種族によっては、卒倒するかもしれない。私は平気だけど、シスタはダメか。賢竜は仲間思いだから。


 そんな扱いを受けている彼らの周りには、様々な魔物が集まっていた。


「……素材に成る位には、役に立ってるのかしら?」

「おう、特にタラントの奴らの食いつきが良いな! 嬉々として剥ぎ取って行ってるぞ!」

「あの、宝石の様なものから出ている物を掛けているようですが、あれは?」

「あれか? 宝石みたいのはスライムで、出してるあれは薬だな! 剥ぎ取った後に掛けて、治してるんだ」

「……細長い魔物がしているのは?」

「マンティアの奴だな、どれだけ肉体に傷を付けないで、鱗を剥げるか挑戦してるみたいだぞ。細かい動作の訓練には丁度いいだろ、鱗の品質も上がるしな!」

「…………頭の上に居る、羽のついた魔物は?」

「バタリーっていってな、暴れないように、麻痺とか、幻覚とか掛けて貰ってる! ギャーギャー煩かったからな!」


 相当良い薬を使っているわね。掛かった端から、牙も鱗も……尾まで生えて来てる。薬の方が高価なんじゃないかと思ってしまうほどだ。


「何度か剥ぎ取ってると、形が歪なものが出て来てたんだけどな? 主様に相談したら傷跡と、ストレスが原因じゃないかって事になってな? バタリーに幻覚と、マンティアに剥ぎ取りを任せてから、品質が戻ったんだよ」


 やっぱ主様はすげーな! と嬉々として話してくれた。


 ……死ぬことすら許されず、永遠と剥ぎ取られる


 生き地獄


 まさに、その表現がしっくりくる状況だ。死が安いとはこういう事だったのね。


「最初は威勢が良かったんだぜ? 何度か叩き伏せたら、縮こまっちまってな。訓練相手にもならないから、今の扱いに落ち着いたんだわ」

「最初は抵抗したんですか?」

「したした! 下等生物とか喚いてたな! 今じゃ、あんな感じだ」


 呆れたように、中央に在る球体を指す……あぁ、あれか。


 急所を隠し、全ての能力を防御に回す、竜族の防御形態。幼竜が姿を隠す為にする体勢でもあり、成竜がするような姿でない。


 恥さらし


 確かにこんな姿なら見ないほうが良かったかもしれない。聞かれたらなんて答えたらいいのよ……。


「行動がワンパターンすぎる。戦闘の度に傷も治して、死なない様にしてやったんだから、もう少し工夫して欲しかったな。向こうだって、戦闘訓練を積めるんだからよ」

「貴方から見て、彼らの評価はどれ程か伺っても?」

「スペックが高いだけの木偶の坊。あれじゃ使うんでなくて、体に使われてるだけだな。スキルのレベルも使い方も、ましてや戦い方もガキレベル、下級兵でも倒せちまったぞ!」

「か、下級兵レベル……」

「ブレスの間隔、攻撃の軌道、戦い方を散々観察した後だったけどな。しかも終盤はへっぴり腰で隙だらけだ、あれじゃ負けるのも難しいぞ?」


 竜族の恥を、散々晒してくれた訳ね。いっそさっさと死んでくれた方が、竜族の為だわ。

 ゴミを見ている様な気分になって居ると、コクガ殿が、熱のこもった視線を向けているのに気が付いた。


「俺的には、あんたの方が興味あるな!」

「私ですか? ……私の戦闘能力なんて知れてますよ」

「いや、あんたは強いよ。強い奴は、その実力を隠すのがうめぇからな……違うか?」

「……」

「俺、いや、俺らとしては、竜族の本当の実力ってもんを知っておきてぇんだ。どうだ、一勝負!」

「お~い、コクガ。相手はお客さんだぞ~」


 一勝負……ですか。安全面は信用しても良さそうですね、あの回復力ならば、即死でもしない限り大丈夫でしょう。殺すなら、勝負の形を取らなくてもできますしね。

 なりよりも、こんな機会そうそうない……


「……分かりました、その勝負、お受けします」

「エレン様!?」

「まじ?」

「そー来なくっちゃな!」


 おら! その肉塊退けろ! と、先に中央に向かていくコクガ殿の後に続いていく。


「ちょっと待ったー、ですわ!」


 そんな中、高台の上から魔物がこちらに飛んで来た。


「その勝負、私が受けますわ!」


 光の加減で白とも黒とも見える鱗

 すらりと伸びる手足と尾

 向こう側が見えそうなほどに、薄く美しい皮膜の翼


「竜……族?」


 そこには、とても美しい幼竜の姿があった。


(わたくし)の名前はルナ! 偉大なるダンジョンマスターの娘にて、最強の竜になる者ですわ!」


迷宮主のメモ帳:植物族


根や触手を持つ、種子や胞子などで繁殖する魔物を表す種族。

動きが遅い、又はその場に根を張り動かないものが多い反面、体力や繁殖力等が飛びぬけて高いモノが多い。

特に根を張るタイプは、その場から動けない代わりに踏ん張りが効く為、瞬発力、攻撃力共に強いものが多い。毒や魔法を使う物も多く、最も対処が難しい魔物と言われる程。


危険な種については、種子や根が残るとその内復活する為、文字通り地面ごと根こそぎ処理(基本焼き尽くす)ことを推奨している。


素材としては、建材や薬、そのほか道具等幅広く使われる。


地球で言うと草木、キノコ、ヒトデ、植物、棘皮動物の大半がこれ。

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