65 竜の調査隊?①
前々々回
①巻き巻き
②ピュア種全誕生
③世界樹さん、完全敗北
竜の谷
『南へ向かい、原因を突き止めよ』
これが、竜王エゼルディア様より受けた命令だ。竜王様直々に命令が下ることなど、今までに無かったことだ。それも、私の様な中級竜に白羽の矢が立つとは、誰も思わなかっただろう。なにせ、私自身が一番驚いている。
「お待たせしました、エレン様」
「お待たせしました~」
現れたのは、今回、共に向かう事になった同年代の竜。連れを連れて行く許可を頂き、私が選んだ二人だ。
魔術の類に精通した、賢竜のシスタ。
ブレスが優秀な、吐竜のテレ
そして、私ことエレンの三人が、今回の偵察隊のメンバーになる。
子供のころから一緒に居るのだから、様付けとかやめて欲しいのだけど、どうしても止めてくれないのよね。
「原因は何でしょうね~? 」
「それを調べるのが私たちの仕事だ」
「その通り。では、行きましょうか」
「「はい!」」
「…………ん? 」
これから出発と言うときに、こちらに向かって来る影が視界に入る。その影は、私たちの近くに粗暴に着地する。……面倒な奴が来た。
「……何の用だ? 」
「ククク、そう邪険にするな、エレン」
「貴様なんぞに、名を呼ぶことを許した覚えはない」
身体能力の高い、暴竜の……コドヴィンだったか。同年代の中では、頭一つ抜けた実力を持つ。
実力主義である竜族にとって、同年代の者たちにとっての憧れの存在……なのだが、こいつと、こいつの腰巾着どもには圧倒的に品性が足りない。知っている奴なら、自分から近づくことなどない相手だ。
「さて、行くか」
「……はぁ? 何を言っているんだ? 」
「俺が、お前たちを護衛してやると言っているんだ」
「不要だ、むしろ邪魔だ」
「非力なお前では、敵を仕留め損なうではないか」
「今回の任務は偵察だ、戦闘ではない。それに、貴様には、待機が言い渡されていたはずだが? 」
「ククク、そう噛みつくな。嬉しいのは分かるが、照れ隠しが過ぎるぞ? 」
全身を悪寒が走り、不快感に顔が歪むのが分かる。本当にこいつは何なんだ? 頭にウジでも湧いているのか?
自分の都合の良い事しか耳にしない、都合の良い解釈しかしない、都合の悪いことは無視する。不愉快で仕方がない。
端的に言おう、私はこいつが嫌いだ。それも殺したくなるほどに。
「失せろ」
「なんだ? 手柄の心配でもしているのか? 安心しろ、成果は全てお前のものにしておいてやる」
だから感謝しろよ? と、言いたげな表情でこちらを見てくる。貴様が来なければいいだけだろう、このくそ虫が!
「さて、方向は南だったな」
そう言うと、奴は先に飛び立っていった。
「くそが!」
「いかがしますか? 」
「我ら竜族の汚点を、放置できるわけがないだろ!? 追うぞ!」
「「はい!」」
竜王様の命令が、偵察から気狂いの監視になってしまった……泣きたい。
―――
「本当に、何も無いですね~」
「奇襲されにくいのは良いですが、流石にこれは……」
左手に残っている木々に沿って南下していく。まさに、根こそぎと表現するに値する惨状が目の前に広がっていた。
元の森に戻るのに、どれ程の年月がかかる事か。食料の確保にも支障をきたしそうだ。
「これだけの事を仕出かす奴だ、まともに交渉などできん」
「これが意図的な被害とは限らん、無暗矢鱈に攻撃はするな。そもそも戻れ、帰れ、消えろ」
「ククク、そう照れるな」
今すぐその首、掻っ捌いてやろうか!?
こいつ等に追いついてから、こいつは私の隣に陣取りすり寄ってくる。気色悪い上に、飛びにくいたら無い。
「エレン様~、あそこに何かいます~」
テレが私の為か、くそ虫との間に割り込む様にして報告してくれる。正直助かった。
彼女の示す先を確認すると、黒い虫型の魔物が5匹、森の境に沿って進んでいた。
……よく見つけたものです、流石は吐竜、目が良いですね。件の虫かとも思ったが、すぐさまその考えを改める。
中央の隊長格を中心に、一匹が先行し、残りは左右と後ろに展開し警戒。統率の取れた動きからそれは無いと判断した。
近づくにつれ、その外見も全く違うことが分かる。全部で五匹、完全に違う種だ。向こうもこちらに気が付いたのか、警戒するように見ている。
ただの魔物では、私たち竜種を見れば逃げるか、隠れるか。攻撃してくるのは、実力差も分からないバカか、本当の実力者ぐらいだ。彼等の動きは、そのどれにも当てはまらない。知能が高いが故か? もしそうならば、会話が成立するかもしれない。
そう思い立ち、彼らの少し手前に着地しようとしたとき、急に彼らが森へと駆け込んでいった。警戒させてしまったか? と思う前に、隣から魔力の高まりを感じた。
「おら!!」
私が見たのは、隣を飛んでいた糞虫が、彼らに向かってブレスを放つ瞬間だった。
ついに、知的生命体が迷宮に接近!
暫くは、ドラゴンサイドになります。
祝日って事で、この後にも2話程投降しようと思います。




