170 いらっしゃいませ、カッターナ
①世界樹さん確保
②カッターナってどんな国?
③観戦準備
~ピピピ・ピピピ・ピピピ~
~おはようございます、マスター~
~領域より20,000 DPを回収しました~
~侵入者を撃退し、41,650 DPを取得しました~
~所持DPの端数を利用し、世界樹に対して<成長>を執行します~
~迷宮化が終了しております~
~領域拡張が終了しております~
翌日、おもてなしの準備も整い、準備万端で当日を迎えた。
「メ~シなの、メッシなの!」
「はいはい、今日は久しぶりに、揚げ物でも作りましょうかね~」
「あげもの? なのなの、それは何なの?」
「揚げ物はですね~…」
人が近づいて来ていると言うのに、世界樹さんはいつもと変わらず元気ですね。
これが直接対峙すると、どうなる事やら……安定してきていると思いたいところです。真っ黒な世界樹さんは、見ていて心が痛くなりますからね。
「はい、出来立ての唐揚げをどうぞ。熱いですから、気を付けて下さいね」
「!!!!???? ウッマ! ウッマなの!!」
そう言えば、熱いの全然平気でしたね。どれ、俺も一口……
(主様、例の集団が、偵察隊の警戒網に掛かりました)
もしゃもしゃゴックン。ふむ、来ましたか。食事時に来るとは、タイミングの悪い連中ですね。
それでは、当ダンジョン初の人間のお客様です。どれ程のものか、見せて貰いましょうか…ククク。
「……良い顔するなの」
「ん? 何か言いましたか?」
「な~んでも無いなの。旨~なの!」
「うむ! 次は、赤ペパー多めの、辛めの味つけにしましょうか」
「わ~いなの!」
―――
(とうちゃ~く、とうちゃ~く)
(各員、配置に付け!)
御昼頃、漸く到着した人の集団が、森から少し離れた平地に陣を構える。
まだダンジョンの領域に入っていないので、直接は見られませんが、偵察に出ている子達の報告によると、その数なんと500人。かなりの大所帯ですね。
「ワラワラと来たな~」
「なのなの」
長期滞在を予定しているのか、テントを建てる者、料理を作る者、馬車?(魔物車?)の世話をする者、斧や鋸の整備をする者等々、非戦闘員が半分以上を締めている。
まぁ元々、彼等の目的は、燃料になる製錬用の木材の採取ですからね、こうなるのは当然か。流石に、ハンターに伐採までさせないでしょうしね。
こうなると、非戦闘員の彼等は、奥には入ってこないと見て良いかな?
そして残り半分、剣や槍などの武器を携えた者達、彼等がハンターなのでしょうね。もしくは傭兵かな? 強いのかな?
(クロスさん、見た感じどうですか?)
(……中に紛れている可能性もございますが、警戒に値するものは感じ取れないとの事です、スキルについては不明です。流石に、<鑑定>する訳にもいきませんので)
ですよね~。弱くても、危険なスキルを持って居る可能性がありますが、こちらの隠密部隊を捉えられない時点で、索敵能力はお粗末とみ見て良さそうですかね? 先手を潰されるのは辛い物がありますから、これは有り難い。そうでなければ、どれだけ強かろうとも、やり様はいくらでもあります……フフフ。
そんな皆さんは、ここまでの移動に時間と体力を使った為、一旦ここで休憩を取り、明日から行動に移るらしい。ならばそれまで、ゆっくりじっくり、のんび~り観察を続けましょうか。
でも、まぁ…
~ 領域内に侵入者が現れました ~
そんな中、集団行動を無視する奴ってのは、一定数いる訳で……カメラの映像には、ズカズカと森の中へと入ってくる一団が、複数写し出される。
うん、違うのも居ますが、大半は人…人間ですね。獣人も居なくはないですが……あの金属の首輪は、そう言う事なのでしょう。聞いていた通りか。
そこは良いとして、問題は世界樹さんですね。
以前、人が近くまで来ていたと知った時は、盛大にブチ切れていましたが、今は結構冷静ですね。
「う~ん……何匹か、不愉快な奴がいるなの」
眉間に皺をよせ、心底嫌そうに言葉を漏らす。
不愉快な奴ですか、何匹かって事は、全部では無いんですね。
前にエルフ爺さんを見た時は、世界樹さんのお友達を皆殺しにした連中、エルフっぽい奴らと半分ほど同じだと言っていましたが、もう半分の部分でしょうかね?
「なのなの、正にそんな感じなの」
成る程。親の片方が、世界樹さんが不快に感じる存在なのかもしれませんね。その正体は何なのでしょうか、気になりますね……ちょっと調べてみますか。
予定変更です。いや、大本は変更しませんが、テコ入れしましょう。
(クロスさん、プルさん、ダンジョン内に潜んでいる方達にお願いして、何人か生きた状態で拘束できないでしょうか? 勿論、自身の命優先で)
(ハ! 相手の実力を見てからになりますが、問題ないかと。日頃の訓練の成果をお見せ致しましょう)
(プルもたぶん、だいじょ~ぶ~)
ではでは、後は相手の行動次第ですね。他人の領域に無断で入ってきている時点で、危険は覚悟して貰いませんとね。
そうでなくても、森に入れば危険が沢山。ハンターなんてやっているんですから、そこは自己責任って事で。
本来の予定では、森の魔物に対処させつつ、相手の実力や対応力を確認。一定以上侵入してきた段階で警告をかけて、敵対するか反応を見るつもりでした。
メリットとしては、消極的ですがこちらの陣営に被害が出ない事と、相手の戦い方、危険度を把握できる事。
デメリットは、戦い且つ生き延びられた場合、ダンジョンの危険度が相手に伝わって仕舞う事。
まぁデメリットについては、そんなに痛手じゃないですけどね。表層の魔物のレベルがバレた程度では、実害は無いですし。
寧ろ調子に乗って、どんどん奥にまで来てもらえれば、連絡も連携も取れなくなるでしょうし、各個撃破が可能になるかも? …まである。
そもそも、警戒ラインに到達できない程度なら、どうでも良いレベルですしね。気にするだけ無駄です。
今まで居なかった魔物の存在を確認され、警戒される可能性も有りますが、これは嫌でも何時かバレます……が、こんな少数に対して早々にバレて仕舞うのは、面白くない物があります。
ここは適当に観察して、早々に帰るならそのまま逃がす。
奥に進んで接敵した場合は、実力を判断してですが、情報を渡さない様に逃げ帰る時にでも、処理しちゃいましょうか。捕らえるのは、その時にって事で。
(承知いたしました。こちらで通達致します!)
うむうむ、クロスさんは頼りになりますね、楽で良いわ。
……しかし、本当に無警戒に入って来るな~。
「なの? 動かないなの?」
「ここで狩ったら、警戒されますからねぇ、捕らえるなら、気が付かれないほうが良いでしょう?」
折角油断しているんです、大いに利用しなくてはね。
さて、侵入してきたならば、こちらも移動しましょうか。
今回はこのダンジョンが生まれてから、初めての集団での侵略者ですからね。話し合った結果、広場に侵入者のライブ映像を流して、他の皆さんと一緒に見ようとなったのだ。
てなわけで、恒例の<神出鬼没>で会場まで移動する。
既に準備は済んでいるようですね、席に飲み物に食いものと、完全に楽しむ気満々だ。
「……ねぇ、ダンマス。何故私達まで呼ばれたのかしら?」
「本場の竜族の目線から、話を聞けないかな~と思った次第です」
動くぐらいなら何とかなる程度には回復しましたからね、この世界の先輩として、エレンさん達も会場に呼んでおいた。治療費の足しだとでも思ってください。
「……ルナちゃんは?」
「興奮するからダメです」
退院が遅れますよ?
「我々を呼んだのも、似たような理由か」
「ほっほっほ、役に立てれば良いのじゃがのぅ」
後、色々な視点からの感想も聞きたいので、獣人代表として、鼠人のポー・チェットさんと、知識人として、エルフ爺さんも招いている。急ぎだったが、快く受け入れてくれた。
「我らの恩人の頼みとなれば、断る理由は無い」
「うむ、特に世界樹の女神様の役に立てるのならば、尚の事じゃ」
初めて世界樹さんに会った時は、狂喜乱舞していたと言うのに、エルフ爺さんも、 “表面上”は大人しくなったもんですね。
「時と場合は弁えておりますとも、世界樹様も求めておらんしのぅ」
流石は1000歳越えの御爺さん、顔に一切出ないのは天晴の一言ですね。
(主様! 配置、完了いたしました!)
さてと、他の子達も集合は間に合いましたね。
これからどうなる事やら、侵入者の様子を見ながらのんびりと行きましょうか。椅子の背もたれに寄りかかりながらお茶を啜る。うん、美味い。




