169 カッターナってどんな国?
①獣人達による情報提供
②アルベリオン王国の転移者?
③ゴトーさん速報。カッターナ王国動きます
ゴトーさんの報告を受けた俺は、獣人さん達に対して挨拶も程々に、迷宮内へと人形を戻しリンクを切る。一瞬視界が暗転し、意識が自分の体に戻ると、目の前に世界樹さんが待機していた。いや、前みたいに攫われたりしないですから、安心して下さいよ。
「お帰りなの」
「ただいま」
人形を【倉庫】に仕舞うと、自室へと移動する。そこには既にゴトーさんが待機していた。
「なの? なんでゴトーが居るなの?」
「ほいっと」
「なの?」
自室に設置してある椅子へと腰を掛ける際に、世界樹さんを回収し膝に乗せ、逃がさない様にガッチリと抱え込む。
「どうしたなの?」
「ゴトーさんから報告が有るみたいですよ、一緒に聞きましょう?」
俺の言葉を聞いてキョトンとするも、俺の腕をぺちぺち叩いて引っ張って、外れない事を確認すると、こちらに向き直る。
「……人間?」
「ですです。まぁ、東ではなく、南西にあるカッターナって国からみたいですけどね」
「ふ~ん……」
うむ、察しが良くて助かります。まぁ、俺が世界樹さんを抑え込むなんて、それ位しか無いですからね~…あ、あとモフモフ関係。
「は~~~……バッチ来いなの!」
よし、ちょっと緊張しているけど、今のところは大丈夫ですね。ゴトーさんの方を向くと、始めて良いか視線で訴えかけられたので、頷く事で了承する。
「メルルルル、では、報告させていただきます。まず初めに、理解しやすい様にカッターナ王国についてから、お話いたします」
―――
カッターナ王国
それは、エスタール帝国とイラ王国を割る様に、南西から北東に連なる山脈に沿う様に存在する、小国が寄り集まってできた、中立の連合国である。
エスタール帝国と同じく、多種多様な種族が住まうこの国だが、獣人さん…てか、エルフ爺さんの話曰く、窃盗、強姦、強盗は当たり前、道を歩けば人攫いに会い、適当な理由をでっち上げられた奴隷が売られている、役人は偽装に賄賂にと大忙し、正に犯罪の温床となっている国だとか。
そして、直接その国を見てきたゴトーさん曰く
「まさにその通りでしたな、裏通りを歩いただけで、一日二桁は固いですぞ、メルルル」
10回以上人攫いに会う…と。見た目亜人の男とは言え、ゴトーさんは美しい(意味深)ですからね~、買い手は引く手あまたなのでしょう。
うんで、そんな糞連合国なカッターナですが、主な産業は奴隷に傭兵、今は無き魔の森から産出される魔物の素材に、木材、そしてこの国が栄えている理由に、山脈から産出される、鉱石がある。
一言鉱石と言っても、その種類は様々。鉱石も魔力によって生成されますからね、枯渇することも無いのでしょう。ガンガン産出され潤っているとか。
その反面、生成され続けると言う事は、魔力が豊富という事。坑道のような密閉された空間では、魔力溜まりができやすく魔物がスポーンする。毎年少なくない被害が出ているらしいが、環境によって生まれる魔物は大体固定されるので、ハンターたちの格好の獲物となり、これも産業の一つになっている。
まぁ、そこはクズ国家。主産業の鉱石の産出方法も一味違う。
坑道に穴人の一族を閉じ込めて、採掘した鉱石や、作った作品を得ているそうだ。鉱石の製錬と、商品の納品をする代わりに、製錬用の燃料として木材と、食料その他生活用品とを交換しているとか。
貨幣にもなじみが無いのでしょうね、そのレートは押して知るべしである。
「ドワーフは、一生を穴の中で過ごす一族が多く、そこから出ない事も珍しくないそうですぞ?」
あ~、種族柄なのか。そこは穴人側にも、問題ありますけど、本人たちに不満が無いなら、思い至る事も無いのかもしれませんね。
つまりは、国家自体が詐欺師の集団と……漁ればいろいろと出て来そうですよね~。
「メルルル、盗賊の斡旋に暗殺、賄賂の帳簿に諸文書偽造、より取り見取りでしたな」
「……ちょっかい出しましたね?」
「メルルル、余りにしつこい御婦人が居りましてな、御命令が有れば、街の中から事を起こすことも可能ですが、いかが為さいますか? 何なら、内側から崩すことも可能かと。何を言っても、あの国なら…で済みますからな!」
「もう、冤罪はダメですよ?」
「当然でございます。私め、堅実謙虚を心がけておりますゆえ、バレて困る様なことは致しませんぞ」
どの口が言いますか…信用を崩すような事はしないでしょうけどね。ゴトーさんなら、そんな危険な橋を渡らずとも、追い込むこと位できそうですし。
「そもそもです、かの国に対しては、する必要すら御座いません」
あぁ、うん。終わっているな~、カッターナ……
まぁ、その事はいいや。話を戻すと、今回来たのはそんなカッターナを拠点とするハンター達であり、冒険者は動いていないとか。
冒険者はカッターナに属している訳ではなく、あくまで契約。僻地の情報を収集するのが目的であり、狩りなどは専門外みたいですからね~。人や物資、装備などなど…今も準備で大忙しだとか。何の準備でしょうね~…こっわ。
「冒険者は関係無いと言う事は、つまり今回は、カッターナの独断専行って事ですか?」
「その通りでございます」
なんでも、穴人に提供する為の木材が、不足しているのだとか。
備蓄して置くか、生産調整でも掛ければ良いものを……欲に眩んだ目では無理かな? いや、穴人に覚らせない為の可能性も? とにかく、碌な理由では無いでしょうね、公共事業とか、しっかり考えているように聞こえて来ませんし。
「到着予定は、明日になるかと」
「明日ぁ? 随分と早いですね」
「他の国より近いのもございますが、元々カッターナのハンターは、国内の山脈に点在する坑道か、今は無き魔の森の付近に集中しておりましたからな。害虫の死体処理もようやく終わり、早速とばかりに行動を開始した様ですぞ?」
「……今まで、ずっと死体処理をやっていたんですか?」
「はい、エスタールとは雲泥の差ですな! 仕事は基本、適当ですぞ」
うわぁ、関わり合いたくねぇ。交流を持って、トラブルを持ち込まれても困る。基本無視か、拒絶で良いかな? こういう時、ダンジョンって立場は楽でいいですね。後ろ盾が無い状態だと、蛸殴りにされる可能性も有りますが……
しっかし、エスタールより近いと言え、到着まで1日とは…ゴトーさんや他の子達が、気が付かなかったって事は、大きな動きが無かったって事。害虫の処理が終わって、そのまま仕事の延長でこっちに来たってところでしょうか……装備とかどうなっているのでしょう?
「国が何かを準備している様子は、見受けられませんでした。個々に装備を整えて、ハンターギルドが以前より提示した依頼に飛びついた形ですな」
「……事前情報のない場所に、無策で突っ込んできたので? ……マジで?」
「マジです」
うわぁ、うわぁ…うわぁ~有り得ねぇ。強制じゃないなら、自分の命は大事にしろよ。
「舐めて掛かっているのでしょうな。害虫クラスなら、どうとでもなると言った雰囲気でございました」
「人生舐め腐っていますね、そいつら」
「命が軽いですな!」
足止めできる環境があり、殲滅力が上回れば、害虫どもの処理は楽だったでしょうけど、その考えは無いでしょう。
同じレベルが相手だとしても、毒に罠に遠距離攻撃、戦い方は千差万別。地形だって変わって、視界が悪くなりますし、足元だって不安定になる。
同じように戦える訳が無いでしょうに、頭痛くなって来た……元の世界の感覚で考えると、無謀としか思えなのですが、この世界だとそうでも無いのですかね?
「な…の」
頭を抱えていると、世界樹さんから声が漏れ、プルプル震えてだした…て、痛い痛い痛い、腕に爪を立てないで下さいって、あれ、もしかして泣きそう?
「私、そんな奴らにやられたなの?」
「いや、うん。状況が違いますから…ね?」
だから、そんなに落ち込まないでください。今回の相手は軍でも無いですし、猛毒だって持っていないでしょう。世界樹さんがやられた理由の大半は毒のせいですし、その毒も、世界に流布しているものでもない様ですからね。
「そう、世界樹さんは人ではなく毒にやられたのです。そうでなければこんな奴ら、世界樹さんに直接危害を加えるなんて、不可能です」
「なの……確かにそうなの! あいつ等じゃ、私に傷一つ付けられないなの!」
ふんす! と、気持ちを切り替える世界樹さん。その通り、実際世界樹さんを傷つけるなんて、相当困難でしょう。ダンジョンに成って、更に磨きがかかっていますし、成長もしています。以前の様には行きませんとも。
それに、今回は仲間も居ます。相手側には、世界樹さんに効く毒も無い、持って居たとしても、プルさんが居れば、どうにかなるでしょう。ならなきゃ、どんな毒だって話ですよ。そんな物を使ったら、世界の方がヤバイ。
ここまで来るのに時間も掛かりますし、野生の魔物や自然のトラップだってあります……そもそも、ここまで来られるかすら怪しい。
「精々足掻く姿を、俺達が作り上げたダンジョンに挑戦する姿を、高みの見物と行きましょう?」
「分かったなの、せせら笑ってやるなの!」
「メルルル、それでは私はカッターナに戻り、様子を探ってきます」
「はい、よろしくお願いしますね」
さてと、こちらはこちらで、情報を回しておきましょうかね~。人側の動きも皆さんに見せておきたいですし~、一時的に皆さんを奥に引っ込めて~、広場に映像を流して~、あ、獣人さん方にも教えておきましょうか。
最近パソコンの調子が悪い……予定ができなくて、投稿時間が乱れるかも知れんせんが、ご容赦くださいm(__)m




