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163 竜王とダンマス⑦(攻勢)

①人形

②魔王ダンマス、降臨

③「あ、これナルト方式だ」by作者

 ― パリン パリン パリン -


 硝子が割れる様な音が、横から聞こえる。

 勧めたのは俺ですが、この音は精神的によろしくないですね。何と言いましょうか、陶器の皿が割れるイメージに繋がって、貧乏性の俺にはよろしくない。


「横から失礼いたします。こちら、メインの肉料理になります」

「あぁ、ありがとう」(パリン)


 ……止めてとも言えませんがね。なんせエディさんが、とっても嬉しそうなんですもん。


「そりゃそうさ、長年の悩みを解消できるかもしれないからね。それに、力を抑えられれば、本物の君に会えるだろう? あ、美味しいね、これ」(パリン)

「まぁ確かに、今のままでは直接会うのは、難しいでしょうね」


 雑談しながら、ルナさんの方をみる。

 当たらないからと間合いを詰めれば、振るわれた爪の間を、体を捻りながらすり抜け懐に潜り込む。そうなれば、体格差からまともに攻撃することができず一方的に叩かれ、それを嫌がり距離を取れば元通り。


 先ほどの様に、暴れ続けて息切れを起せば尾で叩くことで挑発し、少しでも冷静さを取り戻しそうになれば、その都度煽る事で攻撃を誘発させる。

 相手は、攻撃させられているとは思っていないでしょうね。そんな事を考える余裕も無いし、持たせない。肉体的にも、精神的にも、一切休ませる気が無いのでしょう。


 一見余裕そうに見えますが、ステータスの差は如実に表れる。

 ルナさんは、ギリギリで躱しているのではなく、本当の所はギリギリで無いと、躱せないと言った方が正しい。

 防御もできれば、少しは余裕が出るかも知れませんが、あの体格差とステータスでは、それも難しい。防ぐこと自体はできるでしょうが、それに割けるだけのリソースが無いのでしょう。


 故に、挑発しながら、相手の体に纏わりついての接近戦。うざったらしいでしょうね~。


 しかし、それも長くは続かない。力任せに暴れ続けるトカゲモドキと、最小限の動きで無駄なく回避するルナさん。


「ヒュー、ヒュー、ヒュー」

「あらあら~? もう終わりですか? 情けないですわね~~~」


 先に根を上げたのは、トカゲモドキの方。

 スキルの質とレベル、それらを扱う練度。ステータスを覆す、圧倒的な技量の差が、結果として現れましたね。


 それでも精神的には、一撃死の可能性があるルナさんの方が圧倒的に辛い筈なのですが、そんな様子を微塵も出さない。

 態度や表情を表に出さず情報を渡さない、又は偽りの情報を渡すのも、立派な戦略だと言った覚えが有りますが、完璧すぎるでしょう。ルナさんは演技派ですね~。


 動けなくなったトカゲモドキの鼻先に止まり、ぺちぺちと顔を叩くが、精根尽き果てたのか、なすがままのトカゲモドキ。どうやら動けなくなって、漸く冷静になったようですね。

 漸く回復に努めるようですが、そんな悠長に休んでいて良いのでしょうかね~…死にますよ?


 挑発に反応しないのを見て、ルナさんがトカゲモドキから距離を取り、地面へと降り立つと同時に魔力を練り始める。


 掌の上に、<土魔法>によって拳大の物体が生成され、そこへ更に魔力が練り込まれる。ギチギチと、過剰に練り込まれた魔力に、生み出された物体から悲鳴が上がる。


 もう一方の腕を、相手へ伸ばす。

 その手の先に、魔法陣が一列に展開される。ふむふむ、【方向】【硬化】【加速】【螺旋】更に【貫通】ですか。ぶち抜く気満々ですね。


「……は?」

「はい、ドーン♪」


 魔法陣でできた筒に、危ない音を立てる物体(砲弾)を勢いよく突っ込む。魔法陣を通るたびに、弾丸に魔術が付与されていき、トカゲモドキへと向かって解き放たれた。


「ヌォオーーーーー!!??」


 ― パリリリリリリーーーン ドン!! -


 トカゲモドキでも、流石にあれのヤバさは分かったようで、力を振り絞ることでギリギリではあるが回避することに成功する。


 外れた弾丸は、そのまま直進し障壁へと接触。ガラスが割れる様な音を響かせながら貫通し、障壁外の迷宮の壁にめり込むことで、漸く止まった


「おやおや、まだ動けるではありませんか。何を休んでいるのですか、私がいつ休んで良いと言いましたか? さぁ、さぁさぁさぁ! 何を寝ているのです? 早く御立ちなさい、向かってきなさい、貴方に休む権利などありませんわ、ハリーハリーハリー!!」


 今度は両腕と翼、計4か所で新たに魔法陣が展開される。更に魔法も同時発動し、魔導の発動体制に入る。


 ここで攻勢に出れば、ルナさんは回避の為に攻撃を中断せざるを得ないのでしょうが、相手はそんな事知る由も無い。ここに来て、今までのルナさんの余裕な態度が、効いてきましたね。


 何よりも、反撃されないからと、攻撃に魔力を使い過ぎましたね。ギリギリまで体力を吐き出した後では、魔力が足りず、防御することもできないし、動きも悪い。ルナさんが攻勢に移ったのもその為だ。


 今の彼に、攻撃に移れる程の余裕はない。MPとSPが在ろうと、一度に使える量には限りがありますからね。

 再使用の時間を与えるつもりも無いので、立場が完全に逆転。さて、どうしましょうか。ぶっちゃけ、こちらに被害は無いので、反省さえすれば後はどうなろうと、知った事ではないんですよね。


「竜王様、あれ要りますか? ご自身の所で裁くと言うのでしたら、お返し致しますが」

「ん~~~、有り難い提案だが、連れて帰るのが難しいね」

「動けなければ良いですよね?」

「そんな事ができるのかい? それなら頼むよ」(パリン)


 竜王様の許可も頂きましたし、俺の身内に手を出したお仕置きでも兼ねましょうかね~。

 敵対して何もなしでは威厳にかかわる。前例を残す訳にもいきませんし、反省する様に、少々痛い目に合って貰いましょう。


「と言うわけで…ルナさん。適当に削ってください」

「リクエストは、御座いますか?」

「ありません。殺しさえしなければ、好きなようにして構いません」

「分かりましたわ、お父様! …フフフ、良かったですわね~? もっと、も~っと、沢山、楽しく、遊びましょう?」 


 あぁ、ルナさんが加虐的な笑みを浮かべている。色んな意味でドsですからね~、反撃に出られることに、ご満悦のご様子。


 しかし、魔導の四つ同時展開とは、攻撃に極振りしましたね。そもそも反撃をさせない心算ですか。


「拡散式魔導砲」


 ― ドン! ドン! ドン! -


 展開した魔法陣の一つに、魔法が込められる。あれは<火魔法>の、火撃(フレーム・バレット)かな? 魔術の中を通った<火魔法>は、その過程で分裂…いや、【複製】され、一定以上溜まると同時に、ショットガンの様に降り注ぎ、着弾と同時に炸裂する。

 先ほどの貫通式魔導砲よりも、かなりランクは下がりますが、手数は上ですね。


 ダメージは無い訳では無いが、鱗が焼ける程度の威力と言ったところでしょうか。

 ……残り少ない魔力を防御に回すとか、チキンだ。多少のダメージを覚悟して、魔力の回復に充てるか、特攻して攻撃を止めるなりしないと、じり貧でしょうに。


「成る程、魔術を維持出来れば、後は魔法を込めるだけで連続使用ができるのか」


 お、魔導の利点に気が付きましたか。魔導は魔法と魔術の良いとこ取りですからね。


 魔法は、魂から放たれる意思に、魔力が反応し起こる現象。あらゆる物質や反応、現象を生み出すことが可能。その特徴は、発動自体は簡単だが、それを操作・調整するため為には、ある程度の技術が必要になる。


 魔術は、魔力を特定の形で循環・維持させることで、魔法と同じ現象を引き起こす技術の事。術式を組むのに多少時間が掛かるが、一度発動すれば後は魔力を流すだけで機能し、一定の結果を起こすことができる


 そして魔導は、魔法と魔術を同時使用する事であり、特定物質を魔法で生し、魔術によってそれを制御する。一度魔術を組めば、後は維持するだけで良く、魔法を発動するだけで連発することができ、且つ魔術のみと違い魔法の出力を上げれば威力の調整が可能。

 魔術は式を組むまで意思を割くが、維持には魔力を流し続けるだけで良く、魔法は発動のみで制御を魔術で補う為、結果、魔法の出力だけに意思を集中することができる。


「クソがーーー!!! 「雷式」 イギィッィィイィ!!??」


 そして、魔術に込める魔法を変えれば、簡単に内容を変える事ができる。先ほどまで<火魔法>の弾丸だったが、突っ込んできた途端に<雷魔法>の弾丸に切り替えましたね。相変わらず雷に弱い。そして切り替えが遅い、突っ込むならダメージがそこまでないと分かった時点で動けと。


「い…ギ……」

「冷式・炸裂魔導砲」


 麻痺して動けないトカゲモドキの前足に向けて、展開している魔法陣の一つから冷気の弾丸が放たれ、突き刺さると同時に炸裂する。ふむ、二つ目は炸裂式ですか、あれは内側まで凍り付きましたかね?


「ほらほら、さっさと回復して下さいまし。魔力で溶かすなり、切り落とすなりすれば、すぐでしょう?」

「ふ、ふざけやがって…ふざけやがってーーー!! 「雷式」 ア˝ァァァア˝アァァ!!??」

「……前足を如何にかしてから来なさい、この愚か者。冷式」


 もう片方の前足も、氷漬けになる。うん、もうこりゃダメだ。


「あ…あ…あぁ」

「なんですかその顔は…さっさと回復しなさい、絶望することなど許しません。最後の一滴迄吐き出しなさい。そうでなければ、あの子の一生を台無しにした償いが、この程度で済むわけありませんわ」


 あ、そっか。ルナさんの容赦が無かったのは、ゴドウィンさんの事が原因でしたか。今では、最初に会った頃が嘘の様に真面になりましたかね、

 瘴気が抜けてから、情報収集をかねて色々聞きましたけど、散々な竜生でしたからね。親友だけでなく、自分まで親に食い殺されそうになれば、そりゃぁトラウマに成りますわ。


 意味のない虚勢も、虚言も、慢性的な我慢も、恐怖も、ここに来て親の脅威が無くなったことで安堵し、健康的な食事と運動で、心身ともに改善しましたからね。

 今までの鬱憤を晴らすかのように、貪欲に力を求め、その姿勢に指導しているルナさんのお気に入りに成っていますからね。竜生どうなるか、分からんもんですわ。


「は…はぁ?」

「折角の才能も発揮できずに、十数年近く。良くもあの子にトラウマを植え付けてくれましたわね。悔い改めなさい!」


 ……ルナさん、思っていた以上に怒っています?


祝! 総合評価5000PT!! ありがたや~ありがたや~。


いつもお読みいただき、ありがとうございます! 

誤字脱字の報告にコメント等、いつも感謝しながら読ませていただいております。評価にブックマークも合わせて感謝致します。

御蔭をもしまして、とうとう総合評価5000PTを達成いたしました! 


日頃の感謝を込めまして、今日中にもう一話投降したいと思います。これからもよろしくお願いいたします!

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