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153 竜の視察団

音響攻撃ブレス

粘液スライムは万能

③竜王、訪問決定


 

「では、伝える事は伝えた故、我は戻る。さらばだ!」


 言いたいことを言い終わったのか、セスティアさんは此方の言葉を待たずに、踵を返して帰って行った。


 よくも悪くも大雑把……うん、竜とはこんな感じだと思っておきましょう。別に失礼なわけではないですし、此方の言葉を考慮してくれたのか、領域から出るまで、比較的ゆっくり飛んでくれましたしね。


 さて、そこまで時間もありませんし、さっさと行動しますか。

 会場造って~、情報回して~……あ、そうだ。一応、獣人さん方にも報告しておきませんとね。


 ―――


(―――と、言うわけで、明日には竜族ご一行がいらっしゃるので、準備の程をよろしくお願い致します)

「待て待て待て! りゅ、竜王が来るのか!!??」

(らしいですよ?)

「準備と言っても、儂らに何ができるとも思えんがのぅ」


 ……で、しょうね。

 今は、自分たちの事で精一杯でしょうし、何かを求めている訳ではありません。会場の場所を決めたので、その近くに行かない、近づかない、進行方向上に移動しない程度の事を周知するぐらいでしょうかね?


「成る程。つまりは、邪魔にならない様に動けと」

(まぁ、そう言う意味もありますが、危険に自ら首を突っ込むことは無いでしょう?)

「分かった、情報は流しておく。何かあっても自己責任とな」


 チェットさんは話が速くて助かります。ま、この前みたいなトカゲモドキでもあるまいし、下手に接触しなければ大丈夫でしょう。


(パパ~、資材の使用申請が来てる~!)


 あ、はい~。今行きますね~。


 ―――


 一番遅い者に合わせて飛ぶこと数時間。何もない地上と上空を眺めながら、のんびりと飛ぶ。風も気持ち良いし、この程度なら別段疲労することも無いわね。


「う~ん、久々の外は気持ちが良いね~」

「は、はい。そうで…すね」


 飛竜の上位固体である空竜の頭の上に乗る草人が、呑気にそんなな事を言う。

 普通なら、草人程度の存在がこんな態度をすれば、怒りに任せて叩き落とされても仕方がない事なのだが、そんな事はしないし、できるはずもない。


 この方こそ、我らが竜族の王、竜王エゼルディア様なのだから。


 その為、谷からここまで乗り物となっている空竜は、寧ろガチガチに緊張しっぱなしだ。先ほどから声が上擦っている。少々哀れに感じなくもない……代わる気は無いけど。


 勿論この草人の姿は本当の姿ではなく、竜王様が造られた依り代なのだが、此処に竜王様ご本人は居ない。

 何でも竜王様は、あの場所を無暗に動くことができないそうだ。私もあの場所から動いたところを見た事が無い。


 では、竜の谷からこの依り代をどうやって維持しているかと言うと、空竜が持っている鱗によってである。


 この鱗は竜王様のモノであり、そこに大量の魔力を込めたと思ったら、その鱗を起点にして、自身の分身を作り出してしまったのだ…どうやっているのかしらね?


「お? 戻って来たね」

「あ、相変わらず、セスティアは速いですな!」

「ははは、君たちが遅いんだよ」

「「「……」」」


 チクリと、棘のある言葉を投げかける竜王様。先ほどから周りの方の精神力が、ガリガリと削れる音が聞こえるようだ。


 そんな事を思っていると、地平線の彼方に、小さな黒い点が見えーーー


「お待たせいたしました、師匠! セスティア、ただいま戻りました!」


 うぇ!? えぇ? 速!? さっきまで地平線の彼方に居たはずなのに、もう既に竜王様の前にまで移動したの? 一体どんな速度しているのよ。


 しかも周りへの影響も殆どないし。竜王様直々の教えを受けているだけあって、とんでもないわね……


「ご苦労。周りへの影響を綺麗に抑えていたね、どうしたんだい?」

「ハ! 例の迷宮主より、周りへの影響を抑えてくれと進言されたため、自分ができる範囲で挑戦してみた次第であります!」

「ははは、そうかそうか! 素直な所は、君の利点だね。では、迷宮主のダンマスには会えたのかな?」

「ハ! 直接会う事はできませんでしたが、使者を間に挟んでの接触に成功しました! 歓迎するとの事です!」


 そこまで心配して無かったけど、どうやら二度手間にはならずに済んだ様ね。

 …ん? 間に使者を挟んだって、<念話>使えるはずだけど、何かあったのかしらね?


「そうかそうか! 急な訪問だったからね、実は少し心配だったんだ」

「竜王様の訪問を断るモノなど、居はしませんよ!」

「そうです! そんな奴がいたら、俺達がしっかり分からせてやります!」


 上位竜の取り巻きが、竜王様にゴマを擦ってる。わーい、竜王様の機嫌が一気に悪く成ったぞ~、畜生。

 おい上位竜共、躾がなって無いわよ? どうするつもりよ…って、視線を逸らすな! そんなんだから、さっきから小言が尽きないのよ!


「「「は~……」」」


 私が知る限り、真面な方たちの溜息が聞こえる。私もしていいですかね?


 ……その視線は何ですか? いやいや、私がご機嫌取りとか、無理ですからね? そう言った事は、上位竜であるあなた方の役目でしょう? あなた達もそう思うわよね、シスタ、テレ…何故視線を逸らすのかしら~?


 ……あーもう、分かりましたよ! 情けない先輩方に代わって、何とかしますよ! え~、話題話題……


「セスティア様、少々よろしいでしょうか?」

「ん? エレンか! なんだ、言ってみろ!」

「ハイ。ダンジョンの様子を伺ってもよろしいでしょうか? かのダンジョンの成長速度は、既存のダンジョンとは比べ物になりません。私達が得た情報は、既に役に立たない可能性があります。その為、セスティア様が見聞きしたモノと、比べてみてはどうかと思った次第です」


 あのダンジョンの成長速度は異常だ。既に私達が知っているモノとは、全くの別物に成っている可能性がある。一ヵ月そこらで、中位の魔物が大量に生まれているのだ。あれから10日は経っている、既に上位の魔物が居ても何らおかしくない。


 それに、今の竜王様の興味は、その【世界樹の迷宮】に向いている。話題としては、これ程適したものは無いでしょう。あと、純粋に私が知りたい。


「お! 確かに興味深いね。セスティア、話して」

「ハ! 我が分かる範囲であれば、幾らでも答えましょう!」

「そうかそうか、どんな場所だったんだい? 強い魔物は居たかい? いや、ここで聞いて仕舞うのは勿体ないか? う~ん、悩ましいね!」


 よしよし、これでしばらくは、皆さん胃痛に悩むことは無いでしょう。


 ダンマスの事だから、明確な敵対表示さえしなければ、大概の事は許してくれそうだし、その辺りの心配はしなくても良し。


 後は~……現地に付いてからの事ぐらいかしら?

 色々と用意してそうだな~。ダンマスは……程度を弁えているでしょうけど、周りの魔物が何をするか想像できない。

 いや、害意のある行動を取るとは思わないけど、過剰演出とか、熱中しすぎて明後日の方向に向かっていそうで、ちょっと不安ね。

 妖精族とか、蜘蛛(タラント)とか、蜘蛛(タラント)とか…蜘蛛(タラント)とか。あの熱気には、末恐ろしいものが有るからな~…。


「エレン様~、お疲れですか~?」

「え?」


 テレが近づきながら、そんな事を言って来た。そんな顔していたかしらね?


「う~ん、そうね。皆がしっかりしていてくれれば、そんな事無かったんでしょうけどね?」

「「「あ…あはは~」」」


 皆さん、本当にしっかりしてくださいよ!? 


「ま、まぁまぁ、エレン様。ダンジョンに付けば、竜王様の機嫌も安定するでしょう。それに、お風呂にも入れますよ!」

「御飯も~~~!」


 む、確かにそれは魅力的ね。今回はこちらにも贈り物が有るし、最低でも竜王様には堪能してもらいたいものだわ。

 ……竜王様なら、そこら辺の事は経験していても、おかしくないでしょうけど。


「お風呂、お風呂♪」

「御飯~、御飯~♪」


 ダンジョンの話題が出てから、シスタとテレの機嫌が良い。


 ダンジョンから戻ってから、シスタの要望で、一度お風呂を再現してみたのよね。穴を掘って、そこに溜めた水を熱しただけのものでしたけど。

 結果、シスタが満足行くものはできなかった。シスタのテンションが高めなのは、その反動でしょうね。


 テレはただの食い気だ。いつもと変わらん。


 ……ルナちゃん元気かな~。あー、早く会いたい!!


 もう遅い奴を放っておいて、先に行って仕舞いたい。てか、一番遅いのが、飛行が苦手な地竜じゃ無くて、吐竜ってどうゆう事よ全く。


 ……この速度なら、明日の早朝には着くかしらね?


 ―――


 夜通しのんびり飛ぶこと、数時間。沈んだ日が反対側から登る頃。ようやく前方に森が…巨大な森が見えて来た。あっれ~、あんなに大きかったかしら~?


「エレン様…前よりも明らかに広く成っていませんか?」

「……やっぱり?」


 危惧していた事態になっている様ね。10日でどんだけ成長しているのよ。西の小高い山脈まで届いているじゃない。世界樹に至っては、霧? 雲? に覆われて、頂上が何処だか分からないけど、明らかに前回より大きくなっている。太さ、倍ぐらいになって無いかしら?


「ん~? なにかある~」


 テレの発言に目を凝らせば、手前の森の切れ目に、円柱? の先端に何か~…ここからじゃ分かんない! とにかく大きな、明らかな建造物が見えた。


「……あんなモノ、在ったかしら?」

「我が来た時には、無かったが」


 セスティア様も知らないという事は、一晩でできたって事よね。つまり、今回の為に、ダンマスが用意したって事か。あそこが目的地になりそうね。


迷宮主のメモ帳:スキル、<魔力操作>系

魔力の移動や形状、濃度、指向性の変化などに直結するスキル。


下位<魔力操作>:魔力の操作に補正。

中位<魔力掌握>:<魔力操作>+自分が操作可能な範囲に存在する指向性を持たない魔力の操作に対し補正。(自然に存在する魔力を操作)

上位<魔力支配>:<魔力掌握>+自分が操作可能な範囲に存在する指向性を持つ魔力の操作に対し補正。(他人の魔力を操作)


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