120 奥義
①外交能力が乏しい
②ぎゃーーー人間だーーー!?
③風呂! 洗わずにはいられない!
「ご主人ご主人。そういえば、さっきはどうやって来たの」
「ふっふっふ。俺だって、今まで何もしていなかった訳では無いのですよ」
移動中暇なので、ビャクヤさんの疑問に答える事とする。
俺の能力は、雑魚中の雑魚。
ステータスも一般人レベルだし、スキルも<ダンジョンクリエイト>しかない。色々試しましたが、何をやっても俺自身のレベルが上がることも、スキルを習得することも無かった。
つまり俺は、ダンジョン運営以外の事は何もできないと言っていい……訳が無い。
以前コアさんが言っていました。
ダンジョンのレベルが上がれば、俺の能力及び成長率に補正が掛かる……と。それすら無いって事は、何かしらのイレギュラーな事が起こっているって事になる。
そもそも、低級のスキルすら習得できないのがおかしいのです。クロカゲさんやゲッコーさんですら、<料理>スキルを持っていると言うのに、俺に無いのは流石におかしいでしょう?
スキルを習得できていないわけでは無い。ステータスには出ていませんが、<翻訳>ができているのが何よりも証拠でしょう。
この疑問に対して参考になったのは、プルさんの<群体>だった。
粘液は<融合>でくっ付いたり、情報のやり取りをしたりできる。そして、半分融合した状態だと、どんな状態になるのか確認したことが有った。
<鑑定>の結果は、お互いの能力に変化なし。だが面白い事に、互いに相手のスキルを使える、<共生>に近い状態になったのだ。
<共生>は、唯一緒に居るだけではない、お互いの魂を繋いだ状態にするスキルでもある。集団<共生>の様な性能の<群体>で、同じような作用を持たせることができても不思議ではないでしょう。
魂が繋がっていれば、他者のスキルも使えるとして、俺の場合、誰と繋がっている? コアさんしかいないでしょう…って事で、その魂の繋がりを利用して、コアさんのスキルや能力を利用できないか、試してみたのです。
そこで重要になったのは、俺が唯一持っているスキル、<ダンジョンクリエイト>。
このスキルは、ダンマスがダンジョンの強大な力を利用する為に、ダンマスとダンジョンのコアとを繋ぐ、<共生>に近いスキルでは無いか? と思った訳です。
実際、<ダンジョンクリエイト>を持っていない世界樹さんに、ダンジョンの能力を使わせることができなかったですしね。それこそ、他者に使わせようとすると、新たに機能を追加しないとダメなのでしょう。
そして、スキルを使う感覚をいろんな方達から聞き取り、それらを元に<ダンジョンクリエイト>を自分の意思で発動しようと試してみた結果、コアさんが持つ膨大な処理能力の一部を、利用することに成功したのだ。
これは、コアさんと魂で繋がっているかつ、<ダンジョンクリエイト>を持っている俺だからこそできる事。多分、裏技的な行為でしょうね。
俺一人では全く使えない、使えたとしても、自身を保持できなくなるであろう高等スキル<神出鬼没>ですが、コアさんが処理してくれれば使用可能!
だがしかし、これは人にスパコンを直接繋ぐような行為。処理するのはコアさんでも、実際に使うのは俺自身。
スパコンで処理したデータを、そのまま一般家庭のPCにぶち込むようなもの、そりぁ初めて成功した時は、頭が割れそうになりましたとも!
あれは、本気で死ぬかと思いました。魂が軋むって言えば分かって貰えるでしょうか。
当然、コアさん能力を100%利用できる訳でも無いが、最近ちょっとずつコツを掴んできたところでもある。情報を受ける俺の魂が成長しているのか、ただ単に慣れただけなのか、そこら辺は分かりませんがね。
このまま練習を続ければ、ステータス以上のスキルとポテンシャルを発揮できるようになれるでしょう。先ほど使用した<神出鬼没>だって、何度も繰り返している内に、コアさん任せとは言えできる様になりましたからね。今後も練習に励む所存です。
なんせ、ダンジョンの処理能力を、人の思考で実行できるのですから、どれだけ凶悪な事か。俺は、これこそ迷宮主の奥義なのではと思っています。
ダンジョンのレベルが上がり、機能が増えれば、最終的に同じような事ができる様になってそうですけど、何年かかるか分からないですからね。
それに、他の迷宮主は知りませんが、逆にこれができないとスキルが使えないんですよ。繋がっているのが原因か、俺のレベルが上がるのに必要な経験値とかスキルとか、全部コアさんに流れて行っちゃっているのでしょうかね? 比較対象がいないので、原因は分かりませんが。
<群体>ではそんな事起き無いみたいですし、本当なんでなんでしょうね?
あと何故か、世界樹さんより俺の方が、魂の繋がりが強いんですよ。迷宮の本体になっている世界樹さんの方が、繋がりは強そうなもんですけどね、なんでなんでしょう? 現在検討中である。
「こんなところですかね」
「……つまり、コアさんが凄いって事?」
「その通り、俺が弱い事に変わりは無いので、守ってくださいね?」
「うん! 任せて!」
うむ、結局は処理してくれるコアさんが凄いのであって、俺が凄いわけでは無い。その辺りの事を、ビャクヤさんはしっかり理解してくれた様だ。
俺が弱い事に変わりは無いですからね、今後とも頼らせていただきます。
他の子に説明した時は、何言ってんだコイツ、的な視線を向けられましたからね。
未だに、何であんな雰囲気になったのかが分からないんですよ、クロスさんに至ってはべた褒めでしたし。
実際、本気の皆とタイマン張ったら、まず勝てないですからね、守ってくださいよ?
そんなこんな話をしている内に、目的地の風呂の入り口まで到着。
速い上に揺れも無く、正面からの風も魔法で遮断、最高の乗り心地でした。途中から、犬っ子獣人も楽しんでいましたからね。意外と神経図太いですね、この子。
「ありがとうございます」
「ワッフゥ♪」
感謝の意味を込めて、頭をナデナデわしゃわしゃ。できる子は、褒めて伸ばすのが俺のやり方です。相手に合わせて、やり方は変えますけど。
さて犬っ子獣人よ、丸洗いの時間ですよ~。
乗せるネタが尽きてきたので、適当な呟きか補足でも・・・・・・
コメントいただいたので、ここでもお答えしておきます。
獣人のケモ度ですが、5段階表示で4寄りの3をイメージしています。狼男や豚面オーク、モン○ンのア○ルーとかレベルですね。猫耳美少女を期待していた方はごめんなさい。
後、侵入者に対して迷宮主が直接向かいましたが、ビャクヤさんという優秀な護衛が居た為です。ビャクヤさんを見て、敵は逃げていますしね、そこまで危険視していませんでした。
あ・・・もう少ししたら、迷宮主の異常性が話に出てきます。チートが嫌いな方はご注意を




