97 ダンジョン会議②
①真っ黒世界樹
②作戦会議
③命大事に、友達大事に
「後できる事は~、防衛の準備ですかね?」
「迷宮造るなの?」
「う~~~ん、スルーされたら、それまでじゃないですか? それなら、世界樹さんの“あれ”の方が良くないですか?」
「あ~、“あれ”なの。う~ん、まだもうちょっと練習したいなの」
「まだ時間は有りますし、じっくり行きましょう」
世界樹さんが“あれ”を習得できれば、防衛能力が跳ね上がるでしょうね。できるのは確認済み、後は練度だけです。世界樹さんならすぐに実用レベルにまで持って行くことでしょう。魔力の扱いは、天才的ですからね。
「では主様、このままの状態で対応するのですか?」
「聞いた感じだと、俺達だけでも勝てそうじゃね?」
「……勝つのが目的じゃない。世界樹様の敵を見つけ出すのが目的でしょ?」
「だ…ね。情報源をわざわざ消すのは得策じゃないよ」
「じゃあ、当面は追い返すのが目標?」
「かな~?」
「会話できないかな?」
「……話聞いてくれるかー?」
「舐められたら、それまでだな。相手からしたら、こっちはただの資源だろう?」
「脅しも必要か……」
「それに、あれ以上の強者が居ることを想定して、行動したほうがいいでしょう」
いやー、頭数が揃うと、会議も捗りますね~。もう誰が何を言っているか分からなくなってきました。
何よりもスムーズなのが良い! 同じことを繰り返したり、相手の上げ足取ったりしないだけで、これ程楽とは。
今後の方針を共有できる機会は有り難いですし、とりあえず俺は、皆さんの意見でも纏めていましょうかね~。
―――
― バゴン! -
「お父様、ただいま戻りましたわ!」
「クッソーーー!! 負けたーーーーー!!??」
「ハハハ! 私に勝とうなんて、甘い! お母様の蜜より甘いですわ!」
白熱する話し合いの中、勢いよく扉が開け放たれ、ルナさんと、それに続いてゲッコーさんが流れ込んできた。ゲッコーさんの口ぶりからして、競争でもしていたのでしょう。勝者はルナさんと。
ルナさんは速度を殺し切れずに、室内に居た子にぶつかりそうになった所を、急旋回を繰り返し、華麗に回避していた。<立体機動>を使いこなしていますね。
ゲッコーさんの方は、急停止……うん、正に急停止ですね、トップスピードから瞬時に停止した。Gとか、どうやって対応しているんでしょうね?
ここまで直線の道が多いですから、トップスピードが上なルナさんの方が、有利だったのでしょう。最近のルナさんの成長は著しい物がありますからね、本場の竜族から技も習得していましたし、得意分野でも勝つのは難しいか。
「ふふ、お帰りなさいルナさん、ゲッコーさん」
「……え~と、現在どのような状況なのでしょうか?」
自分たちの態度の場違い感に気が付いたのか、様子を伺う様に周りを見回している。
そんな様子で、俺の元まで飛んで来たルナさんの頭を撫でながら、軽く現在の状況を説明。
「私も参加いたしますわ!」
「はい、よろしくお願いします…あ、ビャクヤさんや、他の方たちは?」
「戦闘は終わって、現地解散になったよ~~~」
「ビャクヤは、挑んで来た狐に未だに絡まれていますわ! 甘ったるいですわ!」
「「「あらら~」」」
おやおや、春ですね~……この場合、子供ってどうなるんでしょう?
―――
「意見が出そろいましたわ! 纏めていきましょう!」
ルナさんがスーツの様な服を着込み、伊達眼鏡をクイッとする。
誰が、何のために、こんなの作ったんですか……似合っていますけどね、作った奴らも想像できますけどね!?
そっち方面にまで進出しましたか……あの職人どもめ! 他の種族も絶対巻き込んでいるんでしょ、これ。
まぁ良いでしょう、話を戻すと―――
基本は放置、森に侵入してきた場合、人種の対応を見て実力を判断。
防衛ラインを設定し、それを超えてきた相手を積極的に撃退。また、戦闘前には警告を入れる事。こちらが理性的かつ、知能があることをアピールする。
可能ならば対話、ダメならば捕縛し、情報を聞き出す。
相手が強者且つ好戦的な場合、迷宮内にまで引き込み、確実に仕留める。
「最後…命大事にですわ!」
―――となった。俺的には問題ないですかね。他の方はどうでしょう?
「とっ捕まえて、情報吐かせたらよくね?」
強硬派も少なからずいる様子。う~ん、頭からは否定したくないのですが、人と正面からやり合いたくは無いんですよね~。
(なんで人だけは嫌なの?)
「人は怖いですからね」
「そこまで強そうではなかったけど?」
「どんなところが怖いんですか?」
「そうですね~。情報伝達が速いですし、他種族でも他国とでも連携を取ります。危険と判断されたら、周り全てから敵認定され兼ねません。それに、能力が低くとも、技術でカバーしてきます、これが一番怖い。同じ人種でも、装備によって能力が全く異なるでしょう。こっちに合わせた特効部隊なんて組まれたら、格上でも狩られる可能性があります。とにかく、強さの斑が大きく、敵に回すのが、すっごい面倒」
「「「あ~~~」」」
取り敢えずは納得してくれたかな?
雑魚と侮って死ぬ事程、滑稽な事は無いですからね。どの程度のモノが在るかは、これから情報が入って来ることでしょう。
「次は……防衛ラインは何処にしますか?」
「いっその事、山全部迷宮にでもしますか。崩されたりしたら面倒ですし、防壁代わりにもなるでしょう」
「うわ~~~、マジで?」
「そこまで領域を広げる必要がありますが、間に合いますか?」
卵を掘り出しながらだと、ちょっと遅いかな?
「では、西に領域拡張を集中させましょう」
「途中の卵は? 余計なDPが掛かるのでは?」
「……もう全部、潰してしまいましょうか」
「よろしいので?」
「DPの定期収入も安定してきましたし、そこまで気にすることは無いでしょう。食料も増えてきましたしね。最近、あいつ等の卵は食べて無いんでしょう? 何か問題がある方はいらっしゃいますか?」
「「「無いでーす」」」
やっぱり、食べ飽きていましたか。かなりの量を運び込みましたからね、産み過ぎなんですよ、まったく。
「防衛ラインまでの処理は決定として、どの様なものを作りますか?」
「そうですね……クロスさんに提案なのですが、蟻さん達主導で、山丸々一つ、要塞化してみません?」
「……詳しく伺っても?」
それは、山をそのまま巣にして、迷宮化を施すことで、要塞にしようという考えだ。防衛ラインにもなりますし、異質さを出せれば、威圧にも役立つでしょう。蟻だけでなく蜂なども参加すれば、上にも下にも増築できるでしょうし、適任だと思うんですよね。
名前を付けるなら【蟲の迷宮】かな?
「次は、粘液からの情報回収についてですね。回収のための移動の類は、そのまま地上を通りますか?」
「地上は目立つでしょうし、やはり地下道経由ですかね?」
「ですが、我らには要塞の作成が有りますので……」
蟻は数に物を言わせての、正確な作業が基本ですからね。直線の道を掘るだけなら、今まで使わなかっただけで、他にも上手な子はいる。
「土も山さえ越えれば、毒の影響が無くなり安定する様ですし、そこからは補強も程々で行けるでしょう。蟻でなくとも、掘り進むことができます、そちらに任せてみては?」
「成る程、役割分担ですな。承知いたしました、後にこちらで有能な者が居ないか確認いたします。プル殿、協力をお願いしたい」
(わかった~、あなほりがとくいなこだね。まかせて~)
あ、プルさんが省エネモードになっている。もうちょっとだから、がんばれ~(プニプニ)
迷宮主のメモ帳:変異
同位の別の存在に至る事を表す。
生き方や、周囲の環境に合わせて、適した存在に成る事が多く、職業が変わる事も、この変異の一部だと思われる。
変異の際、現在の存在より離れている程変異し難く、コストが掛かる。
レベルが下がり、一部のスキルが失われる。失われるスキルは、耐性関係のスキルが多いが、変異する存在にとって、当たり前の機能がまず消える。その為、その存在にとって当たり前の機能として、魂に完全に取り込まれていると思われる。
(灼熱地帯で<熱耐性>などが付いた魔物が、スキル無く元から熱に耐性を持った魔物になる)
変異率が高い程、変異し易く、適応率が高い程、耐性スキルを習得しやすい為、変異、耐性ともに高いと、変異し易い?




