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1ダンジョンクリエイター

「~~♪」


 先日予約していたゲームが届いた。題名はダンジョンクリエイター。これはプレイヤーがダンジョンクリエイターとなってダンジョンを作成、経営するゲームだ。

 何よりも気に入った理由は自由度の高さだ。迷宮を作り、モンスターを配置してなどの一般に想像されるダンジョン作成だけでなく、アイテムからモンスター、トラップ、はたまた植物など、多岐にわたって性能や外見までも自分でカスタマイズができるのだ!!


 プレイスタイルも、箱庭プレイから人種、ダンジョン同士との交流、戦争のほかに、周辺環境へのモンスターや植物などの侵食まであるのだから驚きである。

 もうね、メイキングだけで何日つぶれることやら。楽しみで仕方がないです。


 仕事も終わり、明日は久しぶりの休み! 残業? 呼び出し? もう知らん! 

 スマホの電源も切り準備万端! インストールして、早速起動!! ニューゲームを選択する。

 まず最初にダンジョンの設置位置の選択肢として「マップ選択」「ランダム選択」「緊急依頼」と表示される。


「マップ選択」はおそらく世界地図と思われる画面から好きな箇所を選択する方法。

「ランダム選択」はそのままの意味でランダムに選ばれる。恐ろしいのが海のど真ん中とかもあり得るようだ。

 そしてこの「緊急依頼」、これがよく分からない。


 龍脈の穴   残り猶予 283:12:32

 女神の涙湖  残り猶予 241:48:39

 世界樹の若木 残り猶予 201:04:59

 魔王城    残り猶予 153:01:45


 と下にズラッと続いていて刻一刻と時間が進んでいる。


「お?」


 と思ったら、(龍脈の穴)の残り猶予の時間表示が消え


(新たなる迷宮の主に選ばれました。世界の救済者に感謝と幸運があらんことを……)


 と表示され選択できなくなった。

 ふむふむ、つまりは特別な条件からスタートするのがこの「緊急依頼」ということかな? しかも選べるのは一人一つのみ、他人は選べないと……。

 う~~~ん、どうしよう……。自由気ままにやるつもりだったのだが、これはこれで興味がある。何よりも何か引き寄せられるような感覚がある。焦りというか縋られているというか、いたたまれない気分になる。

 このゲーム、一度場所を決めるとゲームオーバーになるまで他の場所を選べなくなるようなのだ。それもあって余計に悩む。


「~~~~~~っ、~~~~~~ん!」


 決めた、この「緊急依頼」から始めよう! だめでゲームオーバーになったらやり直せばいいし、結局どんな場所でも好きなように遊べるでしょ!

 善は急げ、早速選択。悩んでいるうちに(女神の涙湖)も選択できなくなっていたのでその下の(世界樹の若木)を選択する。

 本当に良いのか? と再度確認され、ハイを選択し……視界が暗転する。


(新たなる迷宮の主に選ばれました。世界の救済者に感謝と幸運があらんことを……)


 という男とも女とも判断がつかない声を聴きながら、俺は意識を手放した。




 ―――




「ん~~~?」


 妙な気怠さと共に目を覚ます。そして重い瞼を擦りながら周りを見渡す。


 薄暗い半球のドーム状の部屋。どこから入ったのか、まるで木をそのままくり抜いたように継ぎ目もなく、扉もない。あるのは中央に上下からツタのように伸びた木で固定された淡い光を放つ球体だけ。光源はこの球体だけらしい。


「……どこ、ここ?」


 いや、マジでどこ!? いや、まてまて、落ち着け。焦っても何も解決しない。

 ス~ハ~、ス~ハ~。……うん、落ち着いた。


 改めて周りを見てみる。中央の光源の他には?


(ピチョンッ)


 と思っていると、部屋の隅のほうから水音がした。その方向を見ると、本当に小さな水たまりがあった。


「……最悪、飲み水は大丈夫か?」


 と思いながら近づいて確認しようとし、


 ~ゾクッ~


 ヤバイ! あれはヤバイ! あれに近づいてはいけないと体が、本能が、全力で危険信号を発する。

 硬直する体に力を籠め、無理やり後ろへと下がり、反対側の壁まで下がる。


「は~~~~……」


 どれだけ時間が経ったのか、ようやく冷や汗も止まった。もうなんだよ、あれ! ヤバすぎるだろ! 何よりもヤバイのは少しずつ増えていっていることだよ!


 もうアレだけで気力がゴリゴリ削れてしまった。もう目ぼしいものもないし、この球体を調べるしか無いか。

 けどな~、これってもう“アレ”だよな~、ここに来る前の記憶からしたらもう、ね?


 “ダンジョンクリエイター”、“世界樹の若木”、“緊急依頼”、そしてこの状況。ありえない、と思いつつもこの結論しか思いつかない。“ありえないなんてことは、ありえない”なんて名言もあるし、他にできることもなさそうなうえ、何よりもこの密閉空間、呼吸がいつまでできるかも分からないし。

 ・・・覚悟を決めて球体に触れる。


 ~殺殺殺殺助けて殺殺殺助けて嫌い殺殺何故殺殺殺殺殺殺殺呪呪呪呪呪助けて呪呪呪呪呪呪呪何故助けて呪呪呪呪嫌い呪呪呪呪呪痛い痛い助けて嫌い痛い痛い何故嫌い嫌い痛い痛い殺殺殺殺殺呪呪呪呪呪呪何故嫌い嫌い痛い痛い助けて嫌い痛い痛い何故嫌い嫌い嫌い殺殺~


「ガァ!!??」


 まるで情報を頭の中に直接流し込まれてるような感覚と共に頭に激痛がはしる。


 ~ダンジョ殺殺殺殺スター殺殺殺殺契や殺殺殺執行殺殺殺殺初期情呪呪呪呪呪ンロード、開始呪呪呪呪呪嫌い嫌い痛い痛いター権限、取得嫌い嫌い痛い痛い~


 何? なんだって? 何か言っているのは分かるが、殺意やら呪詛やら痛いやらで、何を言っているのかわからない。唯一の情報だというのに!!


 ・・・ブチ(怒)


「うるせぇ!何言ってるか分からねぇだろ! 愚痴なら後で聞いてやるから、少し黙れ!!!」


 こんな状況なうえ、この激痛、さらには騒音ときて相当ストレスが溜まっていたらしい。自分でもびっくりな暴言が出てきた。


 ~ ……~ダウンロード完了、ダンジョンマスター権限取得完了……新たなる迷宮の主が誕生いたしました。世界の救済者に感謝と幸運があらんことを…… ~


 初めの方は何を言っていたか分からなかったが、どんなことを言っていたかは分かった。ダンジョンマスターね。


「は~、は~、は~……」


 激痛が過ぎ去り一息つく……この時の俺は油断していたのだろう。

 いいの? もういいの? と言いたげな雰囲気ののち……


 ~殺殺殺殺……


「アフン」


 なんの抵抗もできずに気絶した。




投降順の変更に伴い、一話に二話を組み込みました。内容は殆ど変わっていません。

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― 新着の感想 ―
[一言] んー…この感じだと、他にも同じことになった人が何人かいるっぽい?少なくとも一人は(龍脈のなんたらに入った人)その人と交流あんのかなぁ…
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