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21.突入

 セイバーズの本部は、都市の中心部からやや離れた場所にあった。

 裏通りの片隅に建つ、一〇階建てぐらいのごく普通のビル。そこが丸ごと連中の本部になっているらしい。

 ビルの前には数台のワンボックスカーが駐車してあった。ナンバーは違うがレミアをさらった車と同じ型の車だ。


 通りを挟んだビルの向かい、俺は物陰に隠れ、建物の様子をうかがっていた。

 助っ人として連れてきた三人も傍らに待機している。


「灰神さんがさらわれちゃったっていうのは本当なの? あんたが付いていながら何やってんのよ!」

 炎条華燐は不機嫌そうにしていた。

 レミアがさらわれたと電話で知らせたらすぐに来てくれたんだが……それを言われると耳が痛い。


「これって誘拐事件だよね。警察に通報した方がよくない?」

 小波里奈は緊張した様子だった。

 コイツも連絡するなり駆け付けてくれた。実にありがたい。


 何気にこの二人が一緒にいるのを見るのは初めてだが、普通に友達同士らしい。

 顔を合わせるなり「あれ、里奈も来たの」「華燐ちゃんこそ」などと言っていた。紹介する手間が省けて何よりだ。


「警察には知らせたさ。一応、調べてみますって返事だったが、まだ来ていないみたいだし、当てになりそうにないな」

 セイバーズが公的な機関と繋がっているのだとしたら、警察が本腰を入れて捜査してくれるのか怪しいもんだ。

 仮に捜査してくれるにしても、解決には時間が掛かるだろう。そんなのは待っていられない。


「で、どうする? 正面から行ったところで銀髪女を返してくれるとは思えんが……」

 覇王城真姫は手を貸せと言ったら付いてきた。

 危険人物だと噂のコイツを見るなり、華燐と里奈は引きつっていたが、今は味方だと説明して納得させている。

「こんな危険人物とどこで知り合ったのよ……友達は選びなさいよね」

「計司って怖いもの知らずだよね……女なら誰でもいいのかな?」

「おいそこ、うるさいぞ。今はそれどころじゃないだろうが」

 今一つ納得していない様子の二人を黙らせ、俺は皆に告げた。


「みんなには陽動をお願いしたい。なるべく派手にやって、セイバーズの目を引き付けて欲しい」

「陽動ね。いいけど、あんたはどうすんの?」

「建物に侵入して、レミアを救い出す。そっちは任せてくれ」

 かなり強引で無茶な作戦なのは分かっている。

 だが、ぐずぐずしているとレミアがどんな目にあわされるのか……無茶でもやるしかない。

 俺一人で異能者の集団であるセイバーズとやり合うのは無理だが、この三人が協力してくれるのならなんとかなるはずだ。


「要するに、暴れてやればいいのだな? 分かった、引き受けよう」

 真姫が呟き、俺はうなずいた。

「頼んだぜ。一人でも多く引き付けて時間を稼いでくれ。危なくなったら逃げてくれていい」

「任せろ。セイバーズごとき、全滅させてくれるわ……!」

 さすがと言うべきか、真姫の発言は頼もしかった。

 コイツのせいでレミアはさらわれたわけだが、おかげで貴重な戦力が手に入った。しっかり働いてもらおう。


「では、行くか。せいぜい派手に暴れてみせよう……!」

「ま、待ちなさいよ! 私も行くわ!」

「私は援護役かな? 殴り込みみたいでなんかドキドキするねー」

 真姫がビルに向かって歩き出し、慌てて華燐が後に続き、里奈も付いていく。

 俺は三人を見送り、様子をうかがった。頼むぜ。上手くやってくれよ……!


 真姫はビルの前まで近付くと、能力を発動させ、建物の前に駐車してあったワンボックスカーのフロント部分に拳を叩き込み、吹き飛ばしてひっくり返した。

 ドゴン、ガシャンと派手な音が轟き、ビルの出入り口から白ジャケットを着たセイバーズのメンバーが数人、飛び出してくる。

「な、なんだ、お前は! うちの車になんて事を……!」

 すると真姫は、胸を張り、大声で名乗りを上げた。


「我が名は、覇王城真姫! 正義の名を騙る偽善者集団、セイバーズに鉄槌を下しに来た! 貴様ら全員、潰してやるので覚悟しろ!」

「は、覇王城真姫だと? あの潰し屋か!」

「都市でも最悪レベルの無法者が殴り込みに! おのれ、この歩く犯罪者め!」

「セイバーズの本部を襲撃するとはいい度胸だな! 粛清してやる!」

 数人の男達がロッドを手にして一斉に襲い掛かってきた。

 真姫は腕の一振りでそいつらを薙ぎ払い、笑い声を轟かせた。

「フハハハ、ぬるいわ、雑魚どもが! 私を止めたければメンバー全員で来い! 一人残らず叩きのめしてくれるわ!」

「ば、化け物め……おい、応援を呼べ! 戦闘要員を総動員するんだ!」


 すぐさま増援のメンバーがビルから飛び出してきて、大勢で真姫を取り囲む。

 予想していたよりも数が多いな。既に五〇人ぐらいいるぞ。これは三人だけじゃキツいかも。


 そこで真姫の傍らに控えていた華燐が腕を振るい、ゴオッと激しい炎を生じさせた。

 どよめき、慌てて後退したセイバーズの面々に、華燐が呟く。

「別にあの子は友達ってわけじゃないけど……罪もない女の子を付け狙ったり、さらったりするなんて許せないわ! あんたらには正義を名乗る資格なんてない! 私の炎で焼却してやるから覚悟しなさい!」

「な、なんだこいつは!? 一方的に喧嘩を売ってきておいて何か言ってるぞ! さてはテロリストか!」

「やかましいわ! どっちが正義なのか、白黒付けてやるわ!」

 空中に炎を生じさせ、威嚇する華燐。

 派手な能力だけにインパクトがあり、敵の目を引き付けるのには最適だった。あいつを呼んでおいてよかったな。


 里奈は二人の後方に待機し、制服のポケットから複数のゴムボールを取り出して、両手の指に挟んで構えた。

「これだけ的が多いと、狙いを付ける必要はないかな。んじゃ、いっくよー! 発射シュート!」

 左右の腕を振るい、ゴムボールを射出する。

 白煙を上げながら飛来したそれを受け、数人の男達が「むぐっ」と苦悶の声を上げ、バタバタと倒れていく。

「ゴムボールでも当たれば痛いってね。そらそら、どんどん行くよ! 発射、発射、発射!」

「くっ、飛び道具を使うやつまで! お、おい、もっと応援を呼べ! このままだと突破されるぞ!」


 真姫が前に出て手当たり次第に殴り飛ばし、華燐が炎で威嚇し、里奈がゴムボールで狙撃する。

 セイバーズの連中は噂通りに大した能力を持っていない者ばかりらしく、異能力は使わずにロッドを振るって応戦しようとしていたが、三人には歯が立たずに次々と倒されていき、大変な騒ぎとなっていた。


 三人ともやるじゃないか。予想以上にいい働きをしてくれている。

 俺は目立たないように大回りでビルへと近付き、三人に気を取られているセイバーズの連中の目を盗み、出入り口へと駆け込んだ。

 チラッと見てみると、敵を殴り飛ばしながら、真姫が小さくうなずいていた。彼女にうなずき返し、ビルの中へと侵入する。

 通路の奥から、セイバーズの連中がゾロゾロと出てくるのが見えた。慌てて物陰に隠れてやりすごし、奥へと進む。

 ここのどこかにレミアが捕らえられているはずだ。早く居場所を探り出さないと……!


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