24: 制限時間
忘れていたことがある。
「今日中に脱出して町に戻らないと契約違反になる!」
「あっ……」
クエスト成功条件は「本日中に討伐」だ。
つまりそれは本日中に討伐成功の旨を伝えること、という意味である。
これが簡単なクエストらしいんですよ奥さん。どういうことだよ。
「げ、ゲームと違って1日は長いですし……」
「そうだな。んでたぶん、ゲームと違ってクエストカウンターは24時間営業じゃない」
「ふぇぇ……」
だからオッサンみたいな声を出すな。
現在時刻は14時30分。現在位置は……洞窟のどこか。転移魔法陣を踏んでしまったせいでどこが出口かわからない。
「おい女神。ダンジョン脱出魔法とかアイテムとかは」
「あったらとっくに使ってます」
「だよな」
魔術師によってはそういう便利魔法が使える。
例えば付与魔術師とかは地味魔術しか使えないが、非戦闘系魔術も多いのが特徴。強い人が使えば本当に強い職業でもある。
まぁ、いない人の話はさておき。
「とりあえずミニマップを頼りに歩くしかないな。東西南北がわかるだけでも出口がどこか大抵の見当がつくし」
「できなかったら違約金ですわね」
「絶対高いだろうなぁ……」
もし今日中に洞窟に出られなかったらウルティマは潰そう。そう決心した俺である。
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歩くこと、数十分。
雑魚モンスターやらガリアゴブリンやらフェイク宝箱やらエリアボス(雑魚)と遭遇しつつ出口がありそうな方向へ進む。
洞窟の出口がどの方向にあるかは覚えてるし、地上であるため斜面の上にあるのは間違いなし、という感じで進んでいるのだが……。
「景色が全く一緒で進んでるのかどうかサッパリわからねェ」
「さすがに飽きましたわ」
体力的な疲労、あるいはHP等のステータスは問題ないのだが、如何せん精神的疲労が凄まじい。普通のゲームだったら投げ出しているところだ。
「いっそ、ここで暮らそうか」
「見た目は悪いですが食材は向こうからやってきますものね」
ガリアゴブリンからは肉系食材が、半漁人からは魚系食材、植物型からは野菜や海草類の食材が手に入るのだ。もうなにも怖くない。
「でも、課金剣の整備アイテムは尽きますわ。こればっかりは、現地調達は無理ですし」
「そうだなぁ……。まぁ、俺の課金剣は俺の金で買ったわけじゃないから別に」
「もうちょっと大事にしてくださいまし! それは私の愛の結晶、愛の象徴! 燃えるようなアリーシャ愛の塊なのです!」
そ、そういう理由だったんだ。この神刀が選ばれた理由。
「私の愛のためにも早く脱出せねばなりませんわね」
「現在の状況を作り出した人の台詞とは思えない」
「……てへ」
てへ、じゃねーよ。殴るぞ。
「コホン。それはさておきアリーシャ。少し確認したいことがありますの」
「なんですの?」
俺がそう聞いてくると、ちょいちょいと手招きする女神。
近寄れ、という意味であるのはわかるが。
「おいおい、なんだよ。普通に話せって」
「いいから耳貸しなさいまし!」
彼女の声質はいつも通り……のはずなのだが、なぜか顔は真剣そのもの。いつものユミルではない。
つまり、真剣な話?
え、ユミルが真剣!?
「なに失礼なこと考えてますの!?」
「やっぱりお前心読むスキル持ってるだろ!?」
まぁいい。こんなこと続けたらユミルの話が始まらないしダンジョンから出られないのは確実か。ここはユミルの指示に従い……、
「……耳に息吹きかけるなよ?」
「!」
「その手があったか、みたいな顔すんな!」
「い、いえ、ちょっと可愛いアリーシャの姿を見てみたいとも思っただけで」
「実行する気満々じゃねーか!」
ったく、本当にやろうとするとは。もういい、ユミルの話がなんなのか知らんがもう無視を決め込んで出口を――、
としようとしたところで、ユミルは俺の胸倉を掴んで力づくで俺の右耳傍に口をあて、そして小声で言った。
「つけられてますわよ、私たち」




