15: でーと
さて、どうしようかな。
この町を牛耳る犯罪ギルドの勧誘は断ってしまったし、ご飯も食べてしまったし。
「ふふ、ふふふふふふ。そうですか、そうきましたか。私の『アリーシャと幸せに暮らす計画』を妨害しますか。なら私も手段を選ばず、この町にあるデバッグモードから全てを消し去って最初から――」
ユミルは変だし――は、相変わらずか。
てかデバッグモードあるのかよ。
「デバッグモード使って何する気だ?」
「決まってます。まずはこの世界【パラダイム】を消し去って、全てを無に帰して文明を再スタートさせるのです!」
「おいばかやめろ」
言ってるここやろうとしていることが完全にラスボスのそれだ。勇者に討伐されたいのか。
「その場合、俺も巻き込まれて死ぬよな?」
「……ハッ!」
よし。世界は救われた。
「で、結局あの『ウルティマ』とかいうギルドはユミルは知らないのか?」
「知りませんわ、あんなの。邪魔です」
PCO時代にもユーザーが設立できるギルドはそれはもう多くあったけど、町1個を支配するレベルのギルドなんぞ聞いたことない。
ていうかシステム的に無理だろう。
「魔獣問題に対して冒険者の力を――っていうのはまぁゲーム的だけど、その後冒険者が権力を握って町を掌握するなんてことはないか」
「そんなことができるのであれば、私とアリーシャでそのギルド作りましたわ。あぁ……もう、私のばか! そうすればよかったのに!」
「……ま、なっちゃったもんは仕方ないし。住むにしても進むにしてもこの町には暫くいなきゃならんだろう?」
「そう、ですわね」
RPGだろうが現実の旅だろうが、準備は入念に。
特にユミルの錬金術で消えてなくなった食器食材類は可及的速やかに入手しなくては。
あと、装備の耐久値を維持させるための消耗品その他が必要だ。あと寝床。
「とりあえず買い物だな」
「買い物……、アリーシャと買い物?」
そしていつも通り、単語や文章に「アリーシャ」がつくユミルである。
嫌な予感するね、なんでだろうね。
「いや、うん、俺と買い物という部分はいらないけれど」
「アリーシャと買い物! つまり買い物デート!?」
「いやもうなんかそれでいいや……」
俺の腕を掴んでウキウキ気分で廃墟商店街へ連れていこうとするユミルは、まぁなんというかかなり嬉しそうというか楽しそうだ。
先程までの沈鬱な表情よりも大変かわいらしいのは確かだが……。
服飾店に行けば、
「アリーシャ! この下着似合うんじゃありませんの!?」
「……いや、下着なんてなんでも」
「よくありませんわ! 身体に合う下着を選ばないとすぐに体型が崩れますわよ!」
「女って面倒なんだな……」
「そういうわけで、一緒に試着して『下着のつけ方講座』でもなさいましょう?」
「えっ」
アイテムショップに行こうとすれば、
「ほらアリーシャ! なにをグズグズしていらっしゃいますの! お店が閉まりますわよ!」
「待てって、なんで下着の後にアイテムショップなんだよ。普通逆だろ!」
「下着を持って気が気でなくなってるアリーシャを眺めるために決まってるでしょう!」
「性格わりぃな!」
特に何もなく適当にボーっとしていれば、
「アリーシャ! アリーシャってば!」
「……何?」
「ふふふ、呼んでみただけです! アリーシャが可愛いからいけないのですよ!」
…………。
「アリーシャ。やはりここは私たちの町なのですわ。あ、そうですわ。ウルティマによって宿は監視されているそうですから、不動産屋にでも行って家を――」
「なぁ、ユミル」
「いかがなさいました?」
「少し休ませろ……」
もうさ、なんでそんなに嬉しそうなのとかもうそういうの聞かないし、好感度振りきれてることに関しても諦めてるけど、そのテンションの高さはついていけないよ私は。
体力と精神力を考えて欲しい。
「休む……休む?」
「そう、休みたい」
「……もう、アリーシャってば、まだお昼ですわよ?」
「そっちの『休む』じゃねぇ!?」
全ての道が変な方向を向く彼女である。
「ですが、アリーシャの言う通り、私も少し疲れましたし……休みましょう」
「うん。字面通りなら賛同するところなんだけど、なんでユミルは顔を赤くしてるのか」
「……きゃっ」
きゃっ、じゃないよ! 何想像してるんだよ!
「ほら、皆さんが見てるからそう言うことは中で、ね?」
「そうだな、ユミルが自重しような」
これ、いつまで続くんだろうか




