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14: ギルド名「ウルティマ」

 始まりの町「ビギニングポリス」は、かつてユミルの言う通り活気に溢れた平和な町だったらしい。


 住民の殆どは優しく、気候は温暖。

 しかし、ビギニングポリスにはある問題が発生した。


 それはある日を境に、すぐそばにある「チュートリアルの森」に魔獣が住みつくようになったということ。


 他の都市と離れ、自らの力によって生きていた住民たちにとっては死活問題だった。


 他都市から応援を頼むことが地理的に不可能だった彼らは、魔獣討伐任務を冒険者に頼ることにした。

 そして冒険者相手に商売を始めて、町は潤った。


 しかし、魔獣被害の増大に伴う冒険者の流入量の増加は町を一変させた。


 力も知能も低いようなチンピラ連中が集まり始め、次第に内内の自治組織を作り上げ、住民に対して「みかじめ料」を請求したり。


 それ世間一般的には「マフィア」って言うんですよ、ということをやりはじめたのである。


 そして自然発生的に冒険者ギルド同士の抗争がビギニングポリス内にて多発。

 力を持つギルドが弱小ギルドを吸収したり踏み潰したりすることを繰り返し、そして現在。


「我々の所属するギルド『ウルティマ』が、この町の全てを掌握したのです」


 ――と、ブルックハルトさんがギルドの成果を大々的に、でも婉曲的に自慢しつつこの町の歴史を語ってくれた。



 ふむ、ユミルの文明シミュレーションゲーム凄いな。

 平和な町がマフィアの町に様変わりすることもできるなんて。


 つまり、ユミルがビギニングポリスを放置しすぎたのと、チュートリアルの森なんてものを作ったせい?


「…………しょんな」


 あ、女神様がわかりやすく絶望してらっしゃる。


 戦争とか繰り返す人類を見る神の顔って、たぶんこんなんなのだろうな。ホント人間っておばかさん。


 いや今回の場合、ユミルにも責任の一端はあるけど。


「今度はもっとまじめに街の設定作ろう?」

「今更すぎますぅ……」



 さて。

 現在俺らは、この元ビギニングポリス、現ジェイルポリスを牛耳っているギルド「ウルティマ」の本部にいます。


 元々はビギニングポリスの行政府(運営のインフォメーションセンターと言い換えても良い)だったそうだが、今は「ウルティマ」の持ち物。


 内装は外の街並みと違って、かなり清潔に保たれている。


 そんなウルティマ本部の中にあるレストランのような場所で、俺とユミルはブルックハルトさんの奢りでご飯を食べている。


 一応ウィンドウ見て、毒物の類がないのは確認しているので問題はない。


 うん、超うめぇ。


 ユミル、そんなに意気消沈してないで食べないと勿体ないぞ。


 彼女はさっきから魂抜けてるから会話に全然参加できてないし、そんなに始まりの町が様変わりしてたのがショックだったのか。


「で、ブルックハルトさんは私たちにこんな美味しいご飯を食べさせてくれて、いったい何を考えているんです?」

「何。深い意味などないさ。お詫びと考えてくれ」


 んじゃ遠慮なく追加注文しておこう。へーい!


 いや本当においしい。


 あんな荒んだ町を見るに、相当住民から搾取してるんだろうなという感じはするよ。

 しかも他都市から離れてるから住民逃げられないという鬼畜状況。


「それで、君達はこれからどうするつもりなんだね?」

「なんです? ギルドに入れって勧誘するつもりです?」

「いや、雑談だ」


 あ、そ。


 典型的なストーリーパターンだと「お前たちの戦いぶりにボスがいたく喜んでいた。是非仲間になってくれないか」と言うのかと思ったけど。


「ただこの町の人間は、流れの者以外は全てウルティマに所属している。君達もここに住むつもりなら、考えておいた方がいいぞ」


 あぁ、かわいい御嬢さん方の身に危険が及ぶのは心が痛むなー。あ、でもウルティマに所属すれば危険はなくなるからその方がいいよー。


 という、彼のあからさまな心の声が聞こえる。


 まぁ、悪の幹部がやりそうなことではあるけれど。


「私はアリーシャがいれば、どこだろうと構いませんが……」

「いやそこは多少は構えろ」


 魂が抜けてたと思えばそこだけ会話に参加するのかお前。

 ホント、アリーシャのこととなると切り替え早いよね。いいことなのかは知らんが。


 まぁいい。ユミルが俺に判断をゆだねると言ってくれるなら話は早い。


「ギルド加入の意思はないよ、ブルックハルトさん。縛られるのは嫌ですからね。暫くは、何もなければ大人しくしてますよ」

「……そうか、それは残念だな」


 ブルックハルトさんは表情一つ変えず、ただ黙って手元のフォークを動かしただけだった。


 予想通り、って顔かなこれは。


「んじゃ私たちはこれで。今日は御馳走様でした、ブルックハルトさん。会うことはないでしょうが、お元気で」 

「あぁ」


 俺はユミルを立ち上がらせて、食堂から出ようとした。

 しかしその刹那、ブルックハルトさんが呼び止める。


「そうだ。言い忘れていたことがある」

「なんです?」

「この町の宿は全て、ウルティマが管理しているぞ」


 監視してるからな、というあからさまな警告だ。


「お気遣い、どーも」



 …………やれやれ。こんなストレスのたまる始まりの町は初めてだ。

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