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11: 始まりの町はいいところでした


 MMORPGには、大抵「始まりの町」というものがある。

 そしてそれは、そのゲームの世界観を圧縮した町でもある。


 王道ファンタジーなゲームなら中世欧州風の都市。

 宇宙を舞台にしたゲームなら宇宙ステーション。


 世界樹が聳え立っていたり、現代風建築物の廃墟が多かったり。

 そして、運営が初心者を廃人重課金兵へクラスアップさせるための罠を張り巡らせていたりする。


 では、女神ユミルが『Paradigm Chronicle Online』というMMORPGに似せて作った世界での「始まりの町」はというと――




---




 森で〝用〟が済んだ後、森を抜けて近場の町を目指す。


「チュートリアルの森は、西方大陸西端にある半島にある設定ですわ。付け根の部分に町を創ったので、そこに行きましょう」


 設定だの創っただの、開発者らしい言葉言う彼女。名前はユミル。

 実際は開発者ではなく創造神なのだが、この世界の人たちから見れば同じことである。


「西方大陸って西側はほぼ未実装地域じゃなかったっけ?」

「そうですわね。ですからまぁ、私の妄想の産物といいましょうか」


 中二病を罹患していそうな✝クリス✝くんが創った町か……。なんか安易な機械都市とか学園都市とかが出来てそうだな。


「その辺は安心してくださいまし。愛しのアリーシャと寝食共にするのに最適な安心安全快適低レベル地域に設定てますから!」

「あ、そう……」


 この女神、俺の事がなぜか好きすぎる。

 女性に好かれて嫌がるほど仙人ではないが、かと言って無条件というのはなんというか、困る。


「家はどれくらいの大きさがいいでしょうか。やはり3LDKが理想なんでしょうか……」

「神様世界でも3LDKが理想なのか」


 最近あまり聞かなくなった気がするけどね。ワンルームも最高だぜ。


「暫く歩けば始まりの町につくはずで……と、ここですね」


 意外と町が森の近くにあったおかげですぐに到着。


 さてさて、中二病患者さんはどういった町を作ったのかな?


 期待半分、怖いもの見たさ半分で門に近づくと――、


「おいおいネーちゃんよぉ。この町に入るには料金が必要なんだぜ?」

「へへへへへ。金がないなら身体で払ってもいいんだぞ?」


 ……始まりの町が荒んでいた。


 おかしいな。ユミル曰く


『愛しのアリーシャと寝食共にするのに最適な安心安全快適低レベル地域に設定してますから!』


 だったのだが。


「おい何やってんだ――っと。久しぶりの女じゃねーか! しかもかなりの上物……」

「これはヤることヤって売春宿に売っ払えば相当……」


 低レベルなのは目の前にいる男の脳みそだけなんじゃなかろうか。


「おいユミル。なにこのモヒカン世紀末伝説の町」

「おかしいですわね。地図の上では確かに始まりの町『ビギニングポリス』なのですが……」


 いや、「Beginning(始まりの) Polis(都市)」ってそのまんま過ぎねぇか? チュートリアルの森よりはマシだが……。


 でも絶対ここは始まりの町じゃない。

 ログインしてすぐに「売春宿」なんて単語が出てくる町がスタート地点だったら即ゲームやめるわ。


「あぁ、そこのシスター女の言う通りここは『ビギニングポリス』だぜ? 正確に言えば『元ビギニングポリス』だがな!」

「……なん、ですって!?」


 なんということでしょう。

 創造神ユミルの与り知らぬところで、始まりの町はゴモラ並に荒んでいたのです。


「い、いったい何が……!」

「ハッ、入ってみればわかるんじゃないか? まぁその前に貰うもん貰わねェとな!」

「何を! 私の貞操は全てアリーシャに捧げると決めています! 誰があなた方のような男に!」


 何恥ずかしい事を初対面の男の前で堂々と言っているんだこの神。


「おいおいお前らそういう仲なのかよ! じゃあ2人仲良くイカせてやらんとなぁ!」


 ユミルの言葉と俺らの容姿を気に入ったらしい男たちは、明らかに不良とギャングとマフィアを足して3で掛けたような人物をわらわらと集める。


 ただし揃いも揃って全員レベル10台かそこら。

 なるほど、確かに始まりの町らしいレベルだ。


 しかし「うっひゃっひゃっひゃ」「ぐへへへ」「うしししし」と笑う彼らはユミルより気持ち悪い。


「アリーシャ、今大変失礼な事考えてませんでした?」

「え、なに、心を読むスキルも引き継がれてるの?」

「いえ。ただ貴女は顔に出やすいんですよ」


 そうか。んじゃ今度からはポーカーフェイスに努めることにしようか。


「……ま、それはさておきユミル。これはコロコロしても赦されるよな?」

「全女の敵ですから37回転がしても足りませんわね。でも、この町の規則ルールがわかりませんので、5分の4殺し程度にしておきましょう」

「はいよ」


 気付けば、ギャング連中の数は両手両足の指の数では足りないくらいになっていた。

 しかし、ステータスと知能は相当低いように見える。


「アリーシャ。少なかった方が、多い方に奢りですわよ」

「いいのか? お前破産するぞ?」

「大丈夫ですわ。所持金もPCOから引き継ぎ済みですから!」


 なにそれチートじゃないか……と思ったら俺も所持金引き継がれてた。

 うん。2週目と思うことにしよう。


「……それと、結婚すれば所持金もアイテムも共同になって管理しやすいですわよ?」

「うわーべんりだなー」


 そんなことで結婚する奴がいるのかと問いたい。


「お前ら! 何わけわかんねぇこと言ってやがる! 状況わかってんのか!?」


 俺とユミルが2人だけの世界に旅立ったことが余程腹立ったのか、モヒカンメガネの不良Aがそう叫んだ。


「嫉妬かな?」

「あの顔は絶対モテませんわ」


 そのユミルの言葉と、それに反応した不良Aの血管がブチ切れる音が、開始のゴングとなったことは間違いない。


「てめぇら……やることやってぶっ殺してやる!! いくぞおめーらぁ!」

「「「「おう!」」」」


 堪忍袋の緒が脆い奴だ。思ったこと言っただけなのに。


 彼らは一斉に襲い掛かってくる。

 一方の俺らは、装備していた剣や本を構えることなく適当に立つ。


「んじゃま。処理しに行くか、ユミル」

「えぇ。約束忘れないでくださいね、アリーシャ」

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