9: 問題しかない
操作方法、問題なし。
戦闘、問題なし。
「はぁぁ、やはりアリーシャは素敵ですわぁ。戦争やら犯罪やらをするたびに魂の管理にはウンザリしてましたが、アリーシャを見ればもうすべてが許してしまいますわねぇ……。あぁアリーシャ、もっと私に顔を見せてください……! そして結婚しましょう!」
相棒、問題大あり。
「いやさ、もう異世界になんで飛ばされたとかそういうのは追及しないけどさ、なんでお前はそんなに俺のこと好きなわけ?」
「一目惚れじゃいけませんの?」
「いけませんの」
「あ! 今の喋り方良いです! ぜひとも今後はその口調でお願いしますの!」
俺に女の子喋りをしろと? 無理無理。文字でうつならまだしも口でなりきるのは勘弁だ。
「私が誰をどのように好きになってもいいじゃありませんの。それとも、アリーシャは私のような人間はお嫌い?」
いや、見た目だけで言えば今すぐ聖銀の指輪を左手薬指にはめたいほどではある。
問題はその中身。
「✝クリス✝くんだからなぁ」
「今は〝ユミル〟ですわ」
しかし中二病✝クリス✝くんと一緒にいた時間の方が長いのだ。そう簡単に改心できるかと問われるとそうではない。
「もし理由を言ってくれれば考えを改めるかもしれないぞ?」
「私がアリーシャを好きになった理由はですね――」
ちょろい。
「見た目もそうですが、トドメとなったのは〝魂〟ですわ」
「……わかるように説明してほしい」
「人間に〝魂〟をわかりやすく説明できる自信がありませんわね」
その後十数分に亘って魂の説明をしたが、なるほどサッパリわからんだったので省略。
辛うじてわかった部分を噛み砕いて言うと「〝魂〟の好みドストライクは1万年に1度あるかないか」のだそうで、魂の初恋は俺が初とかなんとか。
なんともまぁ、純粋である。
「まぁ、そういうわけであなたに近づいた次第ですわ。〝魂〟単体では性別は判別できませんから、まさか男だとは思いませんでしたが」
「あぁ、そう」
男の俺に惚れたわけじゃない、と言われた気がして少し残念である。
見た目と魂がドストライクだったアリーシャだが、心が男とあってはなにこれマジ無理ということで、女の身体を与えて改心(強制)させるらし。
うん、やっぱり聖銀の指輪は嵌めるのやめておこう。心くらいは自由に生きたい。
「いけず」
可愛く言ってもダメ。ドキドキするけどダメ。
その後も、森の中でひたすら狩りの連続である。
初心者用「チュートリアルの森」ということもあって、狩れば狩るほど序盤の冒険に有利なアイテムがドロップするし採取もできる。
回復アイテムとか、合成アイテムとか。
「合成アイテムは売ればそれなりだし、回復アイテムも回復役が欠ける状況じゃありがたい。ストレージ限界まで回復アイテムで埋めたいな」
「現状、そんなアイテムも必要ないほどレベル差はありますけれどね」
いやまぁ、そうなんだけど。
しかしそれ以上に重要なアイテムがあったことを俺らは忘れていた。
そのことを思い出したのは、あるきっかけである。
「は、腹減った……」
腹からなる情けない音共に、その重要なものを思い出す。即ち「食材」だ。
PCOは、他のMMOやRPG同様に「使用に制限が多くあるものの、様々な効果が得られる特殊アイテム」としての「料理」というものが存在する。
通常は「キャンプセット」のような特別なアイテムを必要とするが……まぁここはゲームのような異世界なのでまさかそんな制限はないだろう。
「……ないよね?」
「ありませんわ。問題は私もあなたも料理スキルなんて取っていない事でしょうけれど……まぁそこは、スキルに頼らず自力で作れば大丈夫でしょう」
そう言うと、ユミルは空中で指を操作してアイテムを出現させる。
出てきたのは、鍋だの食器だの調味料だのと言ったお料理セットに、狩りで手に入れた食材が色々。準備がよろしい事で。
そしてさらにダメ押しと言わんばかりに、彼女は高らかに宣言した。
「ふふ。愛するアリーシャのために、創造の神たる私が貴女に新しい料理を食べさせてあげますわ!」
色々ダメなフラグが立ちまくった瞬間である。
「うん、ユミル。創造と破壊は表裏一体というからここは大人しく既存のりょうr」
「既存の料理に囚われない新しい料理がいいですよね! 舌の肥えた人間にはそれが一番です!」
やめて! 本当にやめて!
序盤にありがちな偏った食材で創作料理はやめて!
十数分という時を経て完成したのは、なんとも言えぬ物体である。
なんと表現すればいいだろうか。
でろでろというかにゅるにゅるというか、そういう感じのおどろおどろしい物体が寸胴鍋一杯に入っているのだ。
「……ちょっと失敗しましたわ」
「ちょっとってレベルかこれ!?」
「だ、大丈夫ですわ。見た目はこんなのですが、食べてみれば以外と美味しいかも――」
そう言いながら皿に盛りつけようと、ユミルがお玉を鍋に突っ込むと……。
「おい、お玉が溶けてるぞ」
「…………も、問題ありませんわ。カレーに入れたジャガイモが溶けるのと一緒です」
「どこが!?」
食材だけでお玉が溶けるレベルの料理を十数分で作れるとは、やはりユミルは創造神に違いない。
いや、この場合お玉が溶けてるのに原形を保つことが出来ている寸胴鍋を褒めるべきなのかもしれない。
「……仕方ねーな。俺が作る」
「いえ、私が創りますわ!」
さっきから俺とユミルで〝つくる〟の漢字が違うような気がするが、今は胃の心配だ。ここは恥も外聞も捨てて説得すべきである。
「愛するアリーシャの手作り料理が食べられると思って我慢しろ」
「……! し、仕方ありませんわね。そうしましょう。うん」
わかりやすく、顔を赤くしてわたわたしながら座り込むユミル。
うん、やっぱりちょろいな。
1人暮らしの料理力を侮るなかれ。
十数分して、まぁ簡単なものができた。本格的な物を作れるだけの材料と技量はない。
「……普通ですわね」
「ほっとけ」
久々に孤食ではなかったせいか、少し美味しいように感じたけれど。
※なお、ユミルの料理(のようなもの)はスタッフが美味しくいただきました。
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