第十一話
どうして、こんなことになったのだろう。
不意に目が覚めた輝音は、ゆっくりと身体を起こしながら、もう何度目かの疑問を頭に浮かべた。
身体中が痛むのは、冷たく固い石の地面に寝ていたからだろう。
花火が上がっていたはずの夜空にはやや欠けた月が浮かび、小さな星たちがその輝きを引き立てている。
はだけた浴衣を整えていると、首筋に感じたドロリとした感触に手を止める。手を見ると、そこに赤い血がベットリとついていた。
ようやく血が固まって傷口が塞がりかけていたというのに。
口に出さず悪態を吐きながら、輝音は隣で微かに寝息を立てる紅刻に目を向けた。夜目の利く彼女の目には、暗い闇の中でも鮮やかに彼の赤い髪の色を映した。
彼女は再び胸元を整え、やはり手を止めた。
月の位置と体内時計で計算した時刻は二十三時を回っている。いつもなら、すでに学校で委員の仕事をしている時間だ。
輝音は浴衣から制服に衣装を変える。ふわり、と制服のスカートが煽られた。
冷たい風が吹くが、彼女の身体に残る熱を拐うことはできない。
輝音の細い腕が伸び、紅刻の唇に触れた。
この唇が自分の名を呼び、愛を囁き、自分に触れた。
それを思い出すだけで、先ほどの熱が呼び覚まされる。
もう、行かなくては。
無理やり自分を納得させて、立ち上がった。
ちりん、と髪に結わえた鈴が鳴り、足を進めていた輝音は一度振り返る。
まるで呼ばれたように感じた彼女は、しばらくそのまま立ち止まっていたが、やがて痛む身体を叱咤して、夜の学校へ足を急がせた。
先日、今まで執筆した小説の誤字脱字を修正しました。あまりの量に筆者もびっくりしてしまいました。こんな読みにくいものを読んで頂き、感謝感激でございます。
これからもお付き合いしていただけると、幸いです。




