怪盗マジック誕生
俺の名前は「築島弥留」。冴えないただの「フリーター」。しかし夜の間だけ、「怪盗」をしている。よくあるパターン…とか思っていると実は違う。ただお宝を盗んでるわけじゃなく、ある一つの「理由」のために物を盗んでいる。そして今日も、目標を探しに夜の街を駆け回っている。ああ、あの日もこんな満月だったな。
昼は道路工事。夜は道路工事。…。こんな生活がもう3年くらい続いている。そろそろちゃんとした仕事見つけるか…。道路工事が終わって家に帰る。夜の道にカツンカツンと自分の足音が響く。満月か。
「きゃーー!!ひったくりよーーー!!!」
前から声が聞こえる。暗くてよく見えないな。ああ。あれか。バイクを2人乗りでバックを持っている。ちぇっ。しょうがない人助けか…。
「オラオラ!じゃまだ!ひかれても知らねーぞ!!」
威勢のいいひったくりだな。ひったくりが近づいてくる。横を通る直前。運転手の腕を掴む。
「お?」
ひねる!!
「ぎゃっ!!」
「!?兄貴!?」
よろけるバイク。俺はそのまま腕を引っ張って後ろに座る男を蹴る。
「ゲブっ!!」
地面に叩きつけられる2人(まあ、そうしたのは俺だが)。とりあえず蹴った男は気絶している。もう1人が逃げようとしてるので、
「あがっ!」
右腕をひねって拘束する。バックを取られたと思われる女の人が向かってきた。そうだ。
「あ、すいません。ちょっと警察呼んでもらえませんか?」
「え、あ、はい。」
数分後。警察が2人を捕まえに来た。なんか賞状みたいなの貰えみたいな雰囲気になってきたから俺は逃げたが。フリーターがもらってどうすんの。警察が見えなくなると、また歩く。すると、
「さっきの見ましたよ。築島弥留。」
どこからか声が聞こえる。なんだ?なぜ俺の名を?
「明日。○×研究所に来い。時間は夜3時。忘れるな。」
○×研究所?ってもう使われてない研究所じゃん。なぜ?
「お前は誰だ!どうして俺の名を知っている!答えろ!」
俺は問う。しかし、いくら待っても答えは帰ってこなかった。次の日。また夜の道路工事を終え、家に帰る。研究所に行ったほうがいいのか。そして次の日の朝3時。つまり約束の時間。俺は研究所に来てしまった。するとまた同じ声が、
「よく来た。正面の入口を開けておいた。そこから入れ。そして、屋上に来い。」
屋上…。ほんとに入口が空いていた。中はとても暗い。しかし、これも声の主がやったのか。懐中電灯が転がっていた。てかめちゃくちゃ怖い。もちろんエレベーターは使えないから階段で屋上へ。なんでこの建物は7階まであるかな…。屋上につく。誰もいない。
「ちゃんと来たな。さて、少し話をしよう。なにか質問でも?」
また声が。しかし誰もいない。だが、今は聞くことを聞こう。
「質問はたくさんある。まず、お前は誰だ?」
「私は誰か…か。しいて言うなら、妖精。またはお化け…だろうか。」
どっちだよ。まあいい。次。
「じゃあ、俺に何のようだ。ここまで連れてきて。」
「その質問を待っていた。まずこれを受け取れ。」
そう言われると、上から何かが降ってきた。何かのケースだ。
「開けろ。」
開けてみる。中には7冊の本が入っていた。
「それは魔道書。もし、お前が選ばれし者なら中身を読めるだろう。」
と、言われても普通に読める。でも日本語じゃない。何語だろう。
「大地の書・星の書・召喚の書・攻撃の書・空間の書・位置の書・形の書って書いてるけど。」
パラパラページをめくる。とくに変わったものはないけど。
「!!やはり読めるのか。私の目に狂いはなかった。築島弥留。お前は今日から泥棒となって、世界中を振るいがらせるのだ。」
はい?
「盗むものは世界中に散らばってしまった魔法石。がんばれよ。」
え?
「明日詳しく話してくれるやつが出てくるはずだ。あとはそいつに聞け。じゃ。」
言葉がおわった時に自分がいた場所は自分のベットの上だった。
「なんだ。夢か。」
「おや?ご主人。なにか悪い夢でも?」
「いやー。なんか変なやつに泥棒になれって言われた夢を見てね。」
「おや。そうでしたか。ですがもうご主人は泥棒でしょ。」
ん?誰の声?声のする方を向くと何かいる。小さい一つ目の人形?
「?どうしましたか?ご主人?」
「しゃべったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!?」
「ちょっとー!弥留うるさいわよ。仕事しない日だからってうるさくしていいわけじゃないからねーー。」
親が注意した。といってもおそらくキッチンからだろうけど。少し落ち着いた。さて、
「そ、そこの一つ目!お前誰だ!?」
「おや?昨日聞いてませんでしたか。では、自己紹介を。私は「7伝説魔道書の主。レンと申します。」
セブンレジェンド?
「ご主人は昨日。この7伝説魔道書を受け取り、魔法石を盗む泥棒となりました。覚えていらっしゃいますか?」
「え?ああ、まあ。」
「そうですね。ではまず、魔法石のことからお話したほうが…。」
「ん?あ、はい。おねがいしまひゅ。」
何が何だか、理解に困る。
「はい。魔法石というのは、すべての魔法力の源であり、それがないと魔法が使えなくなります。約200年前。白魔法・黒魔法・無色魔法の戦乱がおきました。もともと3つの魔法石があり、それらが反発し合ったのです。白魔法は自然と治癒を操る魔法。黒魔法は状態と呪いを操る魔法。無色魔法は物体を操る魔法。そのバラバラの力が反発しあい、50年近く戦乱は続きました。その時現れたのが、ご主人が持つ魔道書を使う7人魔法使いが現れました。魔道書は魔法石を源とせず、持ち主の体力を源とするので、この戦乱を止められる唯一の者だったのです。考えた末、魔法石を壊して世界中にばらまいたのです。そして、ほんの少しだけ元あった場所に残して、魔法力を極限まで減らしたのです。そうなると戦えるほどの力はなくなり、自然に戦いがなくなっていきました。そして、魔道書使いたちは平和の象徴として7人がもつ計7冊の魔道書を残っている石といっしょに収めたのです。しかし現在から50年前。残っている石を盗んだ奴が出ました。そいつらは3人で、今魔法界を征服し、大変なことになっています。選ばれたものにしか読むことができない魔道書は奴らの手に渡ることはありませんでした。その魔道書を再び7人の魔道書使いは3人に挑みました。しかし、50年長い戦いの末。石の力を直で受けている3人にかないませんでした。そして現在。その7冊の魔道書が、ご主人が持つ本です。」
長かった。でも話は大体わかった。でも、
「それと俺が泥棒をするのはどういう関係が?」
「はい。さっきも申した通り、魔法石の破片は世界中に散らばりました。その魔法石の力で、3人に立ち向かう勇者を集めるのです。」
「仲間ってことか。でも、どうやって?」
「その集めた石で仲間を買うんです。強い奴にしてくださいね。」
「え!?てことは石で仲間をつるってこと!?」
「はい。どんなやつでも源はほしがります。裏切らないような仲間を見つけて、3人に挑んでください。」
え?ここはどういう返事をすれば?俺には偽物の仲間なんて嫌だ。けど、魔法界ってとこを見捨てるのも…。というか魔法自体信じられない。
「レン、だっけか。まだ魔法を俺は信じきれていない。見せてくれよ。」
「!そうですか。ではご主人が魔法を使ってみてはどうでしょう?」
俺が?と思いつつ、平日の午前で誰もいない公園にやってきた。
「ではまず。大地の書の36ページ。書いている呪文を読んでください。」
「うーい。えっと。アガペイン!!」
すると、地面が盛り上がり、目の前に高さ10mくらいの山ができた。
「指定のところに山を作ることができます。高さは集中力で変わります。では36ページに手を付け、戻れと言ってください。」
言われたとおりに手を付け、「戻れ!」と言う。すると山が消えた。というか沈んでいった。そして元の地形に。
「これが大地の書の力。地形を変えることができるのです。次に星の書。3ページ。さっきと同じように。」
3ページを開く。すると、地面から球体の物が3つ飛び出してきた。
「これが星です。開いたページ数だけ星が出てきます。あとは考えた通りに動きます。」
「えーと?えい!」
すると、考えた通りのところに飛んでいった。目の前に三角形を作るように星が止まる。
「ではどれか一つに意識を集中してください。」
ふーん。じゃあ一番上の星に集中。すると、他の2つが一番上の星に引き寄せられていった。
「これは?」
「はい。これはご主人が集中した星に重力が発生したのです。集中すればするほど重力はかかります。」
へえ。面白い。じゃあもっと集中。あれ?
「ご主人。あまり集中しないほうが。」
なんか周りの物が動いてるような。って!これ!星に重力が入りすぎて物が引き寄せられてんだ!
「レン。俺は引き寄せられないの?」
「はい。ご主人だけは無効化です。ではほどほどにしておいて、つぎは召喚の書。176ページ。」
本を閉じると星は地面へ沈む。で、召喚の書。なんか絵が書いてあるな。176ページ。
「召喚!!鳳凰!!」
すると本が光る。パッと光ったとおもったら目の前に…でかい鳥?赤い。
「鳳凰でございます。ご主人が強くなれば鳳凰も強くなります。こういった魔界の生き物を召喚するのが召喚の書でございます。ほかのページもどうぞ。あ、鳳凰戻してくださいね。」
鳳凰のページに手を置き「戻れ」。鳳凰が光って消えた。で、ほかのページ。ん?150ページ以降は妖怪の名前が書かれてる。「ぬりかべ」とか「口裂け女」とか。あ。こんなのも。じゃあこれ。
「召喚!!小さいおじさん!!」
本が光って目の前に小型サイズのおじさんが。う、うける。サラリーマン姿だ。
「!ご主人様ですか?久々の外の世界。ありがとうございます。」
「ぶはっ!!あ、うん。くくく。どういたまして。ぷすす。」
しゃべった。チョーうける。とりあえず「戻れ」。
「小さいおじさんを選ぶとは…。ご主人も不思議な人ですね。では次。攻撃の書。1ページ。」
1ページ。これか。
「ファイヤー。」
…何も起きない。
「ご主人。指を鳴らしてみてください。」
「え・あ、はい。」
パチン
指に火が。ということは、
「からだの形状を炎にすることができます。やろうと思えば火を吹けます。このように攻撃性を中心としたのが攻撃の書です。」
へー。ほかのページは。?これはなんだろう。
「剣」
本が一瞬で剣になりました。
「ええ!?」
「その呪文は本を武器にする呪文です。戻し方は同じです。ただ戻れというだけです。」
すげーーーー。「戻れ」。へぇーーー。
「つぎは空間の書。適当に開いてください。」
適当って。でもどのページにも何も書いてない。
「はい。これでいいの?」
「では、片手で本を持ち、もう片方で空気を掴むイメージで握ってください。」
空気を掴むように…。よっと。
「ではその掴んだものを…あの木にぶつけるように投げてくださいまし。」
どりゃ!
バキッ
木が折れた。え?どゆこと?
「空間の書。今のは空間を掴んで投げたのです。本は開いているだけで体に力が宿ります。戻すときはとじてください。次に位置の書。34ページ。」
閉じる。そして34ページ。
「スクロール!」
また何も起きない。
「では、さっき粉砕した木を指差して左に指を降ってください。」
指差して、左にすっと。わー。木が左に飛んでいったーー。って。
「ええ!!ウソング(うそ+ソング)!!」
「この書は位置に関する魔法が詰まっています。今のは物を飛ばす力です。他にも自分の位置を一瞬で帰る瞬間移動。遠くの物を引き寄せる魔法。があります。では最後に。形の書。この本のページ数は見た目は50ページくらいですが実は無限です。なので適当に1ページ破ってください。」
1ページ破る。で?
「その紙を針だと思ってください。」
針…。とおもったら針の形になった。
「ですが所詮は紙です。耐久度はほとんどありません。ですが、その紙を持っている限りどんなものでも形を自由自在に変えることができます。」
じゃあ、あの木が球体になる。って思うと一瞬で球体に。すごいな。これも戻れっていうのか。「戻れ」。!!紙が燃えつきた。
「戻れと言うと紙が消えます。するともう形を変えれません。また新しいページをとってください。今はいいですけど。」
「ふーん。本当に魔法があるのか。でもなー。俺仕事もあるし、そっちには専念できないな…。」
「その件でしたら、昼にお勤めなさって夜に泥棒をしてくだされば問題ありません。それができるのがフリーターでしょう。」
「ああ。なるほどって。疲れるじゃん。」
「そこをなんとかご主人。」
「そんなーー。なんで…お…れが…。あれ?なん…か。ふらふ…らす…る。」
バタン
目の前が真っ暗だ。どうしてだろう。…。はっ。
「ここは!?」
俺の部屋?なんで?枕元にレンが。
「ご主人は魔法を使いすぎて倒れたのです。すいません。私としたことが。申し訳ございません。」
ああ。そういえば魔道書は体力を源にすんのか。
「ここに運んだのはレンなのか。」
「いえ。ご主人のお母様です。」
「ええ!?じゃあ、レンがよんだの!?」
「いえいえ。私めは普通の人間には見えないので、偶然お母様が通りかかったのです。本当によかったでございます。」
そ、そうか。
「それよりどうしますか。じきに3人の下僕達が人間界にやってきて魔法石を探しに来ますよ。そんなことが起こったら、人間は恐怖に包まれるでしょう。そして、下僕達は反撃する人間を次々に殺すでしょう。それを阻止できるのがご主人だけなのですが…。」
「!!それは初耳だぞ!?うーん。くそっ。わかったよ。
「なにをでございますか?」
昼はただのフリーター。夜は…
「魔法石を世界中から盗むやつ。その名も。怪盗マジックだっ!!!」
続く