何だこのハーレム状態は・・・
この話の読み様によっては・・・
○(松本智彦目線のストーリー)
水泳特別授業から1週間後、麻耶ちゃんから電話で
「横浜に遊びに行きませんか?」
と誘われ、何となく面白そうだなぁと思ったので、麻耶ちゃんの誘いに乗った。いつものお茶会じゃなく、街中の探索か。何でもやろうとする姿勢、麻耶ちゃんらしいね。
それで、集まったのが…
僕
かなちゃん
ナナちゃん
森嶋さん
仲野
誘った張本人、麻耶ちゃん
僕が来た頃には、もうこのメンバー全員が横浜駅西口にいた。麻耶ちゃんの後ろには、執事の黒瀬さんもいた。多分、今日一日保護者として僕らの面倒みてくれるのだろう。
「これで全員揃った?」
「あと一人ですね。敢えて、氏名を申さない方がいいかもしれませんわね。」
「すげー気になるよ。でも教えてあげられないの?」
「トモくんを…いや、何でもありません。うふふ。」
秘密を包み隠さず言う性格の麻耶ちゃんにしては珍しいな。誰だろう?まさか、テレビに出てるあの子役を呼んだとか、そういうのじゃないでしょうね?確か麻耶ちゃん「メディアに引っ張りだこの芦田祐実ちゃんも、私の友達ですわ。」って言ってたな。
「しっかし、皆焼けてるね、肌が。」
「ボク、三浦、葉山、鎌倉、江ノ島、平塚、県をまたいで富士五湖にも行ったんだ!」
アクティブだな、ナナちゃんは。
「私は、昨日剛史と遊んでた。昔っからアホなことしてるの変わりないけど。」
アホな事ね。あっ、剛史が1年生の時、動物園でウサギの黒くて小さいモノを食ったな。「くっせ~!」とか言いながら。
「私は先輩と違って、全国大会制した褒賞として、参加しなくてもよかった合宿に敢えて参加しました。」
はいはい、練習熱心でねー先輩で悪うござんした。
「森嶋さんはこの夏休み、どちらに行かれましたか?」
「…沖縄」
良いところに行ったんだな。
「暑くね!?夏の沖縄は!」
「暑かった…。1日中、全裸で過ごしても良いぐらいだった…。人の目があってできなかったけど…。」
人に見られてなきゃやってたのかね?南国はもう夏真っ盛りだろうな。
「麻耶ちゃんは夏休みどこ行ったの?」
かなちゃんが聞き返した。
「私は、ハワイとグアムに行ってまいりました。」
えっ!県どころか、国を超えた!!皆「えっ!」と声を上げて麻耶ちゃんを向いた。
「とにかく奮発しませんと、うちはあまりにお金が入りすぎて困っているのです。」
バブル崩壊とか関係ねーのかな?麻耶ちゃんのお父さん、エトーグループのCEO(社長のことかな?)なんだが、スゲーな。エトーグループ、勝ち組企業だな。
「物を買おうか迷ってますと、父から「迷ってないで買ってくれよ。」と、逆にだだをこねられました。本来なら私がただをこねるところなのですが。」
本当、お金持ちの感覚が分からねー。もう、うちら庶民にとっては、贅沢な悩みにしか聞こえねーし。呆然とするしかないよ。ユニセフに毎年5億円寄付しても、まだ財産が余ってるとかも聞いた。返す言葉が無いよ。
そうして麻耶ちゃんの話に呆気に取られてると
「お待たせー!ごめーん遅れた!」
女の子の声だ。こっちに向かって駆けて来て…ってもう一人って、この子、誰!?
♡(松本智彦くん驚愕!あの少女視点の話)
「わぁー!可愛い!」
「おめかしまでされて、お綺麗ですわ。」
「ほ、本当に阪本さんですか?」
わぁ、お化粧の力ってスゴイね!ママに無理言って、パパに内緒で買った甲斐があったわ。あのお化粧セット。
皆ビックリして…ってトモくんいたの!?麻耶ちゃん、聞いてないよー!
トモくん、口塞がってないわ。ずっと私の、か、顔を見てる。そんなに見ないでよ。恥ずかしい。
「トモくん、どうかされましたか?お口が開きっぱなしですが。」
「えっ、本当にあきらちゃんなの?」
「はい。わたくし、あきらちゃんも誘いましたが、まさかお化粧されて来るとは思ってもみませんでしたので、驚いております。」
「だってこの身なりじゃ、二十歳前後の男性にナンパされるよ。」
えっ?ナンパって、あの、知らない男からいきなり声かけられる、アレ?そんな、私の苦手なタイプの人じゃん!そうされたら、私はトモくんより先に他の人に…私の大事なモノを奪われる!!どうしよー!!
「あらー、阪本さん一人でパニックになってますね、先輩。」
「こうなるんじゃないかな、って思った事言ったんだけど、ちょっと言い過ぎだったかな。」
「そうよ!かくなる上は、あきらちゃんを恐怖に陥れた、トモくんが責任取りなさいよ!」
「今日一日、カップルのふりをしてるとよい…」
「まぁ、森嶋さん。名案ですわ。」
もぉーっ!トモくんったら!あんな事言うから、街中歩けなくなったじゃない!って、皆何話してるの、皆は?
「あきらちゃん!今日はトモくんと一緒に行動してね!大丈夫!周りにボクたちがいるから!」
ど、どういう事?
(横浜から関内に移動した後)
む"ぅー。こっそりとトモくんと手をつないで歩く分にはいいよ。でも、みなとみらいで手をつないで歩くなんて、もう…カップルにしか見えないじゃない!そして後ろから、かなちゃん達がついてるし。あ"ー、トモくんがあんな事言わなきゃ…
「あきらちゃん、さっきはごめん。驚かすつもりは無かったんだ。」
「本当よ。トモくんしか男子は友達いなくて、あとは皆苦手なのよ。あの時さ、私が男子苦手なの忘れて話してたでしょ?」
「うん…ごめんね。でも、今日は一応カップルなんだし、あきらちゃんに何かあったら、僕が守ってあげるよ。」
「…ありがと。頼りにしてるからね。」
もうこれ以上、トモくん責められないわ。私を守ってくれるなんて言われたら、罵倒する言葉が出ないもん。本気で頼りにしてるよ、トモくん。
「いやー、それにしてもさ、さっき言いそびれたんだけど、化粧したんだね。」
「うん。変かな?トモくんだけ驚いてばかりで何も言えなかった様子だし。」
「正直言うと、最初はあきらちゃんと気付かなかったんだ。「あの美少女、誰?麻耶ちゃんの友達に凄い人いたんだ!」なんて思ったんだ。」
「…も、もぉ。お世辞なんて言ったって、何も出ないんだから。」
「いや、本当。お世辞抜きに。で、仲野があきらちゃんだって言ってくれて、また驚いた。こんなに化けるんだ。いつもよりもっと、格段に麗しい女の子になるんだって思ったよ。」
「そう…。トモくんが言ってくれるなら、嬉しいな。」
あぁ、どうしよう。さっきから、鼓動が早まってきてる。手を握られ、お化粧を褒められてる、もう友達の関係から、一歩先に進んでると言っていいはずよね。
「良いんじゃない?本当のカップルに見えてきたわ!」
「わぁーっ!急に声掛けないでよ!かなちゃん!」
○
ま、まぁ、いつもの事だしな。それにしても、カップルかぁ。確かに回り見たって、手をつないで歩いてる、20歳前後の男女がたくさんいるなぁ。あと、コスモクロックに向かってるであろうあのカップル、僕らの親よりも年取ってるんじゃないかな?ここ、みなとみらいって、カップルに人気のデートスポットなんだね。
「先輩、初々しい感じ、出てますよ。」
「えっ、そう?って、仲野が言うな!」
仲野、僕が見た感じじゃ、あまり男友達はいないだろ?基本、女の子と会話したり遊んだりする、そんな子が僕とあきらちゃんを冷やかしてどーする!
「あっ!あのデパート、私一度行きたかったのです。皆様、入りましょう!」
麻耶ちゃんの案に全員賛同で、今年(1992年)7月にオープンしたデパートに入った。まだ僕とあきらちゃんは、手をつないだままだ。
「さて、どこ行こうか?」
「先輩も考えてくださいよ。」
「ん?あぁ。」
フロアは10階もあるし、しかも1フロアごとの面積が大きい。僕らじゃ1日で全部見るのは難しそう。例えば、4階の衣服売り場だけでも、紳士服、婦人服、僕らが着てる子供洋服、和服、アクセサリー、ジーンズ専門店、などがひしめいてる。んっ?なるほど、服売り場は女の子にとって楽しめそうなところかも。
「ねぇ、4階行く?」
「あっ、いいね、トモくん、私賛成!」
「Good idea….」
なぜに良い発音で言うんだ?森嶋さん。
「ちょっと服見て行こうよ!」(かなちゃん)
「見るだけと言わず是非ともお買い上げくださいな。私、皆さんの分全額負担いたしますわ!」
奮発する気満々だな、麻耶ちゃん。
何気に僕の案を全員気に入ってくれたみたいね。今度は良かったわ、発言して。
いざ4階に着くと
「わぁ!すごい!洋服がいっぱいだ!」(かなちゃん)
「ボクにも似合う服がありそう!」
皆一様に、楽しそうに洋服の品定めを始めた。と言ったって、子供洋服の小学生向けのエリアだけしか見てないんだが。それでもかなり広い。
僕はというと、今日一日あきらちゃんの、か…「カレシさん」(自分で言うと思わなかった!)なので、あきらちゃんを1人にさせたら、本当にあきらちゃんがナンパされそうなので、あきらちゃんと共に行動した。
それで今、あきらちゃんは、試着室のカーテン1枚隔てて立っている。あきらちゃんが着替えてるからな。覗く奴いないか、見張らなきゃ。
「これどう?」
白地に何か可愛らしいキャラがプリントされてあるTシャツ。
「似合うね。何か、専属のモデルさんみたいで。」
「そっか。次の服着るから待ってね。」
本当に似合うぞ!なぜかすぐ別の服に着替えるんだよなぁ。何かの専属モデル、子供服を中心に取り上げる雑誌がもしあれば、確実に出てくるぐらい可愛らしいんだけどなぁ。
また別の服に着替えた。
「これどう?」
ピンクのブラウス。しかもゆるめに赤のネクタイか締まってある。
「おおっ!似合う!これにさ、チェック柄のスカート履いたら、J…女子高生みたいになるね!」
「ふふふっ。イェーイ!」
女子高生を真似たな、あきらちゃん。満面の笑みを浮かべながらダブルピースって、テレビでもよく見る姿だ。
今危うく「JK」と言う所だった。クラスの男子の間ではこれで「女子高生」と言う。他にも「JS」は「女子小学生」、「JC」は「女子中学生」とも呼んでる。彼らの会話を聞いてたら、将来この中で誰かが性犯罪者になってしまわないかと不安になるぞ。
あきらちゃんはその後も5着ぐらい服を試着したんだけど、あきらちゃんってどんな服着たって様になってるし、何か…
「可愛いなぁ。」
「えっ?」
わっ!やべっ!心の声が漏れちゃった!
♡
まーたトモくん、私に「可愛い」って言ってくれた。私がそんなに可愛いんだったら、世の中の女子が大体可愛く見えちゃうでしょ?
嬉しいんだけど、それよりも恥ずかしさが上回っちゃう。本当なら「ありがと。」とか言うべきなんだけど、本音とは違うこと言っちゃう。
「またぁ、褒めすぎだって。私そんなに可愛くないよー。」
「ほ、本当に可愛いよ。ちょっとでもいいから、自信持ったっていいよ。あきらちゃんは、今まで女子に興味が無かった僕に初めて「可愛い」と言わしめた女の子だって、僕は今胸張って言えるよ。」
そうなんだ。トモくんは私をそう見てるんだ。へへっ…本当照れ臭いね。
「あきらちゃーん。今度これ着てみなよぉー。」
これ、白のブラウスだ。どこから持ってきたんだろう?かなちゃん。これって、小学生のエリアには無いはずよね?ちょっと背伸びして、中学生か高校生向けのエリアから持ってきたのかな?それにしても、可愛らしいデザインね。サイズが合えば、私にも着れるかな?
着てみた。へぇー、これはなかなか涼しげね。なんだか動きやすくて、って、ちょちょちょ…、ブラ透けてるじゃない!こんな格好、いくらトモくんでも見せられないわよ!とりあえず、外にトモくん達が待ってるとこだから、着替え終わった事だけは伝えておこう。
「着替え終わったわよ。」
「カーテン開けるね。さぁさぁ、トモくん、楽しみにしてね!それっ!」
透けてるとこ、トモくんに見せないように、両腕で胸を隠した。はたから見ると、冷房が効きすぎて寒い人に見えるはずよ。大丈夫、今は…
「あきらちゃん、どうして腕を締めてるのかな?冷房のせいにしたってムダよ。」
はっ!そうだった!確か、かなちゃんは冷房が効きすぎた部屋を嫌ってたわよね。私もあまりクーラーの風当たりたくないんだけども。そのかなちゃんが、クーラーがかかってるデパートの中でも平気って事は、もう嘘だってばれてる~!?どおりで快適だと思ったら。
どうしよう?えーと、あのー…
「「せーのっ!」」
「ひゃあっ!」
やめてー!かなちゃん、ナナちゃん!手首取られたら、腕が締められなくなっちゃうよぉ!
って、トモくん!?私を見たりどこかそっぽ向いたり、何だか挙動不審よ!
○
わ、わ、わぁー。ブラ透けてるじゃん。これ、見た方が良いのかな?「カレシさん」として。でも、見たら見たで今度は張り倒されそうな気もするし、どうしたら良いモノかなぁ。
前にあきらちゃんの腹触った時のブラは、黒にアクセントでピンクのラインが入ってるのだったけど、今見た感じだと、赤っぽいピンクに白い水玉模様があったな。また繰り返すけど、可愛い、ぶ…ブラ…だったな。何でブラを褒めてるんだ、僕は。てか、ますます恥ずかしくなったぞ。
いいや、見よう!
「やっ、だめっ、そんなに見ないで…」
わっ、恥じらい方がまたセクシーだ。その衣装といい、もう、女の子、っていう感覚で見れないな。
そして、横のかなちゃんとナナちゃんが犯罪者に見えてきた。何とかしなきゃ。
「ねぇ、そろそろこの辺でいいんじゃない?あきらちゃん、かなり恥ずかしがってるよ。」
「大丈夫だって、もっと見たって。これ、見せてもいい用なんだから。」
えっ?そういうブラあるの?見せてもいいパンツ、見せパンなら、姐さんも7つぐらいはあるけど、見せる用のブラは流石の姐さんでも持ってないよ。ひょっとして、あきらちゃんは姐さんより一足先のファッションを行ってるのか、それともかなちゃんが嘘ついてるのか、どっちだろう?
どっちにしたって、あきらちゃん
「セクシーだなぁ」
あっ、また心の声が出ちゃった!
「そ、そう。学校じゃ着ないけど、トモくんと2人っきりの時にだったら、着ようかな。」
おっ!マジでか!こんなラッキーなこともあるんだなぁ。何か、ありがとな、あきらちゃん!
いつもならウィンドーショッピングで済ませるであろう服の品定めも、今日は麻耶ちゃんがついてるので、遠慮無くいっぱい買えた。合計13万4400円。あきらちゃんのセクシーなブラウスもちゃんとある。1軒目からえらい事になったな。抱えながら移動するのが面倒なので、一旦コインロッカーに置いてまた遊びに出た。
次に向かったのが、最上階のゲーセンとアミューズメントパークが合わさったような施設に踏み込んだ。ここって、かなり作りが凝ってたなぁ。
最初にやったシューティングにしても、銃の衝撃や、敵が出た時の感触とか、いろんな事かリアル過ぎて、あきらちゃんと僕がペアで遊んだら、あきらちゃんの銃弾切れなのに乱射しようとしてたな。結局途中でゲームオーバーになっちゃったけど。
次に、ちょっと前に放送が終わった、お笑い芸人のポップたかしが城主という体の番組で「極めよ忍道!進撃たかし城」に出てきたゲームを遊んだ。
「池に浮く石」
「生死を分ける迷宮」
「止めの術」
といった、番組名物のゲーム全部クリアしたのは、ナナちゃんだけだった。あきらちゃんは「池に浮く石」で池に落ち、僕は「止めの術」で城主に止めさせずに終わっちった。楽しかったからまだ良かったんだけどね。
3つ目、出たっ!ハンドルに、シフトレバー、3つのペダル、シート、これらがあればやる事は一つ!レースだ!「グランプリレーサーズ」ってゲーム、否が応でも燃えてきたね!これも全員で挑戦。スゲぇ。コックピットごと揺れる構造なんだな。振動とか直に伝わる!鈴鹿サーキット(再現度がイマイチなんだが)を実際に走ってるような感覚で、思いっきりレースを楽しんだ。あきらちゃん達はというと、何か慣れないゲームに戸惑って、普通に道路走ってるようなスピードでレースしてた。言うまでもなく、僕の優勝だった。
とかとか、デパートなのに8つものアトラクションを楽しんじゃった。丁度遊び終わった頃に昼ごはんの時間になったので、デパートのどこかのレストランでとるのかな、と思ったら
「今度は外行きましょう。中華街、一度行ってみたかったのですわ。」
「イイね!私も賛成!」(かなちゃん)
と言うわけで、バスで横浜中華街に移動した。麻耶ちゃん、横浜中華街行った事ないのかな?
♡
人がいっぱいいるわね。それに賑やかだし、どこからか日本語とは違う言葉で話してる人もいるし、場所が変わると雰囲気まで変わっちゃうから、不思議ね。
それにしてもトモくん、私の手をまだ握ってる。最初は恥ずかしいから嫌だな、と思ってたのに、慣れてくると案外楽しいし、本当にカップルでいるような気分になっちゃうわね。
「オネーサンアマグリイカガ?」
ひゃっ!良かった、女性から声かけられて。えっ?甘栗?食べたいんだけど、生憎これからお昼ごはん食べるところなのよね。美味しいのに。
あれっ?黒瀬さん?どうしたんだろう?
「○$〆7<°…」
「#+€*>|→…」
何語、なのかな?何だか、強弱激しく言葉を発してるし。
「谢谢。」
あっ、中国語か!「シェイシェイ」って言ってた!それにしても、黒瀬さん何話してたんだろう?それに、どこで中国語習ったんだろう?
「麻耶お嬢様の下調べが功を奏しました。中華街一美味しい食べ放題の料理屋、先程そちらの淑女と会話しましたところ、麻耶お嬢様が探し当てた所と一致しております。皆様、そちらに向かいましょう。」
「黒瀬さん、ありがとうございます。」
えっ!あの何か言ってる間に、そんな事を言ったの!?麻耶ちゃんすごい執事を雇ったわね。
そんなこんなで私らが向かったのは、結構立派な中華料理屋で、小学生一人当たり2500円、大人料金3500円の高級なお店だった。かなちゃん、ナナちゃん、森嶋さん、麻耶ちゃん、智美ちゃん、トモくんと私の7人は小学生で、黒瀬さん1人大人なので、合計21000円。レストランでこんな金額見たことない!もちろんお支払いは麻耶ちゃんがしてくれた。出かける時どのぐらい財布にお金いれたんだろう?
「ごちそうさまでした!」
高い料金だけあって中々美味しかったわね。たくさん食べちゃうと…太っちゃうから…あまり食べれなかったんだけど。
それにしても、ナナちゃん、トモくん、黒瀬さん、たくさん食べてたわね。この3人の分ならばきっと元取れてるわよね。よく食べるわぁ。あまり食べなかった私ら、勿体無かったかなぁ?
中華街周辺も、かなり楽しいところでいっぱいだったわ。
横浜スタジアムでは、コンサートやってたみたい。グループ名忘れたけど、夏にまつわる曲をいっぱい出してる、男性4人組のバンドが、熱唱してた。ハスキーでかっこいい、たまにしんみりする歌声だったわ。
山下公園。氷川丸をバックに皆で集合写真。そして2枚目。あらっ?皆どうしてカメラの向こうに?私も行こうとしたら…
「あきらちゃんは残っててね。」
どうしてなんだろう?ちょっと気になって周りを見たら…
「えっ?あきらちゃんも残ったんだ!?」
と、トモくんも残ってたんだ!
「ツーショット撮るわよ!」(かなちゃん)
「「そーゆーことだったんだ!」」(トモくんと私)
気がついた時はもう遅かったわ。トモくんとツーショット写真を撮る事になっちゃったわ。いやいやと言うか、かなり照れると言うか、でも段々と嬉しくなったわ。いきなりとはいえ、トモくんとこうやってツーショットで写るなんて、むしろついてるかも!
「先輩、肩組んだ方が恋人っぽく見えますよ!」
えっ?組むの?私の肩。トモくん照れ隠しに何か叫んでるみたいだけど、どうしたって組むんだよね?
○
仲野もいつの間にか、かなちゃん達の側に入ってしまったか。あきらちゃんと僕を愉快に冷やかす側に行っちまったのか。
まぁ、でもしゃあない。これでも仲野より年上の人だ。ちょっと大人の余裕を見せてやるか。あきらちゃん、大丈夫かな?殴られそうで怖いんだが。
だきっ
ほい、肩組んだぞ。あきらちゃん、嫌だったら殴ってくれよ。んっ?嫌がってない。恥ずかしそうにしてるけど、ちょっと嬉しそうだね!へへへ…
「撮影の準備お願いします。」(黒瀬さん)
「表情硬いよ!笑顔だよ!」
はいよー。
僕はレーサーがよくやるポーズ、親指をあげるポーズ、通称サムアップをしながら、カメラのレンズ向けた。もちろん、にこやかな笑顔を浮かべながら。
あきらちゃんはどんなポーズしてるんだろう?ちらっと見たら、あきらちゃんも笑顔で、それも満更でもない感じのいい笑顔で右手でピースを作っていた。あと、見てなかったんだけど、僕の脇腹から腰の間に手を置いてたね。
「先輩も阪本さんも、いい笑顔ですよ!黒瀬さん、シャッターチャンスです。」
「では撮ります。はいチーズ。」
カシャ
収まっちゃった。一枚の写真の中に僕とあきらちゃんが。撮り終わったあと、2人で
「恥ずかしかったなぁ」
って言い合った。
多分、この光景を見た他のカップルからすると、僕らを「初々しい」と見なすんだろうね。
「トモくん、私、もうトモくんに触られても大丈夫よ。」
「本当?怖くないの?」
「むしろ安心するわ。」
そ、そうなのか。ん、じゃあ、また何かあったら、ボディタッチしようかな。
それから、氷川丸の船内に入った。レトロな造りになってる中は、どこを見ても「今と全然違う。」の言葉に尽きる。何だか、明治時代にタイムスリップしたみたい。
特に、麻耶ちゃんの目はえらく輝いていた。色々と見て回った結果
「うちの全財産注ぎ込んでも買えないわね。」
の一言。いくら超大金持ちの麻耶ちゃん家でも買えない物があるんだ。買ったところでどうにかなるものでもないけどね。
あとはもう街中を探索するような感じで、中華街や山下公園の周辺をうろついた。いろんなホテルやレストラン、地元プロ野球チームに因んだショップがあったり、歩いてるだけでも中々楽しかったね。
そういや、結婚式場が目に付いたら、またかなちゃんが冷やかしてきたな…。
「そろそろじゃない?コレ。」
かなちゃんがあきらちゃんを見ながら指差したのが、ウェディングドレス。
「いやいやいや…まだ早いって!」
「そっか、あと8年ぐらいは待たないと…」
「そういうことじゃないの!あと8年って、トモくん意識して言ったでしよ?」
「うん。だってトモくん以外誰があきらちゃんの「旦那さん」になるって言うの?」
わっ!何言い出すんだよ!かなちゃん。何だか僕にもとばっちり受けたような感じだわ!
まぁ、どこかの年下の子が僕とあきらちゃんを見て「夫婦みたい」って言われたからなぁ。せめて、あと10年ぐらい一緒にいたら、あり得るのかなぁ。その、結婚とか…
うわっ!考え出したら恥ずかしくなった!あまり深く考えないようにしよう。
然う斯うしてるうちに、もう夕方になった。そろそろ帰り支度をしなきゃ。
♡
もう夕方になっちゃったんだ。何で楽しい時間って、こうも早く過ぎちゃうんだろうね。
私達は最初に寄ったデパートに戻り、ロッカーから買った服を取り出した。ちょっとスケスケのブラウス。また見ると恥ずかしくなるわね。
「あきらちゃん!行くわよ!」
「あっ、今行くから待ってー!」
感慨に浸る時間もあまり無いのね。本当はさ、皆と一緒に居たいよ。明日までと言わず、ずーっと。家帰ったら、悪いとこしか見当たらないパパがいるんだもんっ!
あと、あまり気にはしてなかったけど、今日来たメンバーで、黒瀬さんを除いて、男子で来たのトモくんだけなのよね。
どうなんだろう?トモくんは、男子が自分しかいない事気にしてるのかな?
帰りの電車、横浜から各駅電車に乗って鶴ヶ峰に向かう時だった。皆寝ちゃったし、今なら誰も私とトモくんを見てないみたいだから、こっそり聞いちゃおう。
「トモくん、今日男子で来たのトモくんだけだったの、気にしてた?」
「いや、そんなに気にならなかった。黒瀬さんがいたからかな?」
「いや、黒瀬さんを除いて、皆で集まって横浜に遊びに行った中で、男子はトモくんだけだったのよ。きっと他の男子だったら、こう、自分の周りが女子しかいない状況を喜ぶと思うんだけど、トモくんは平然としてるわよね。」
「普段学校でも会ってるからね。特に気にするまでもないよ。ただ…」
「ただ?」
「うーん。あきらちゃんといる時は、気になってたなぁ、僕。」
「まっ、またぁ。そういう事言うんだから。で、どうしてなの?」
「今日、化粧して来たのには驚いたし、僕とあきらちゃんにまつわるハプニングはたくさん起きたし、何だかんだあったけど、結局、誰といるよりも、あきらちゃんといると、すごく楽しく感じるんだ。僕とあきらちゃんが友達になった時から、何かそう言う風に感じるんだ。答えになったかな?」
「うん。なんとなく。私も、トモくんといると、何もかも楽しく感じるよ。ねぇ、もっと寄り添っていい?」
「えっ!?あ、ああ。いいよ。」
「やった。」
そう言って、私の頭をトモくんの肩に置いた。あっ、いいわね。何だか、そのまま寝ちゃいそうな感じがしてきた。けど、トモくんは何だか落ち着かない様子ね。胸元が空いた服は着てないし、身体接触は前々からよ。なのにどうしたんだろう?
「あきらちゃん。こんなこと言っちゃうと変に聞こえるから言いたくなかったんだけど、その、あきらちゃんって、何か香水つけてる?」
「いや、何もつけてないわよ。どしたの?」
「ナナちゃんに言われて気付いたんだけど、あきらちゃんって、その…、変な意味で言ってるんじゃないけど、いい匂いがするなって思ったんだ。」
「…えっち。」
「ごめん…」
「でも、嫌じゃないわよ。ドキッとするけど。」
「あまり言わないようにするよ。」
「言ってもいいのよ、また。トモくんだから、許す。」
「そりゃ、どうもありがと。」
前にナナちゃんから入れ知恵されたあの話か。あんな入れ知恵されちゃあ、トモくんだって気にしちゃうか。でも、前からいい匂いがするとか言われてたけど、いまいち確証が持てなかったのよね。どんな匂いがするんだろう?
「私って、どんな匂いがするの?」
「えっ、うーん、そうだね。石けんと、香しい花が一緒になって、でも、優しい感じがする。女の子なら、きっと、ずっと居たくなるような、そんな匂いだよ。」
「そうなんだ。私、自分のそういう匂いって気付かないから、どうしても人に確認してもらいたいなって思ったの。そんなにいい匂いがするなんて思わなかった。」
そう。私ってそんな匂いがするんだ。自分でも嗅ぎたくなる匂いね。もしかして、これが私のフェロモン…かな?トモくん以外の男子の反応なんて知ったこっちゃないけど、女子からすると私に憧れる要素の一つにもなるのかも。友達作りに活用してみようかな?
鶴ヶ峰着いちゃった。もう、6時半時か。後は家に帰るしか無いのよね。寂しいなぁ。もっと居たいなぁ。でも、夏休み最後の週に、皆と楽しい思い出作れてよかった。トモくんと、その…デート…みたいな事ができたし。これで2学期を心置きなく迎えられるわ。
「トモくん、夏休みの宿題終わった?」
「終わった…っけなぁ?」
「えっ、まさかまだ終わってないの!?」
「イヤー、あの…やったような覚えが…」
「先輩、嘘はダメですよ。全国大会の前に「僕は夏休みの宿題全部片付けた!」って言ってたの、私は覚えてますからね。」
「仲野ぉ!言うなってぇ!あっ…」
智美ちゃんのチクリにここで乗っかった。ちょっとイタズラしたくなった。
「ひどいよぉ、トモくん。私に心配かけさせて。ちょっとおでこ出して。」
トモくんにデコピンした。と言ったって、そんな強くはないよ。
「反省してる?」
「はい、すみません。(T_T)」
えへへ…、こうやって弄れる男子って、トモくんしかいないから。大事にしよう。今のこの時、それにトモくんも。
いかがでしたでしょうか?「A girl meets a boy. Vol.2 Ⅰ」正直、作者として申し上げますと「智彦が羨ましい!」と何度も思ってしまいました!
それでは「A girl meets a boy. Vol.2 Ⅱ」で、またお会いしましょう!