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君のぬくもり

この話にはエロい描写があります。苦手な方は次の話に飛んでください。


 翌日も、昨日と変わらず私とトモくんの仲を問いただす女の子達に囲まれていた。けれども私はもう動じなかった。

「トモくんは私の最高のただ一人の男友達よ。」

とにこやかに言い返して、その子達をうまく黙らせた。


 一方のトモくんは、保体委員同士集まっていた。やっと今日、ナナちゃんも復帰して、4人揃った保体委員を1週間ぶりに見た。トモくんが座っている席を女子3人で囲うような体制になっている。今度の委員会会議の話し合いかな?と思ったら、かなちゃんがトモくんの机に手を置いてるのが見えた。トモくん、また今日もF1カーの模写をしてるのさっき見た。また専門用語をたくさんつぶやいてるのかな。そういえば今日のかなちゃん、胸元が空いた服を着てたなぁ。私にはどうも恥ずかしくて着れないような、そんな服だった。

 んっ!?胸元が空いた服!?てことは、かなちゃんはトモくんに胸の谷間を見せようとしてる!?そういう風にも見えるわ!

 けれども、トモくんは反応してない!一度だけ、かなちゃんの胸の谷間に視線が落ちたけど、それ以降は見てないし、普通に会話してる程度だったわね。話が一通り済んだみたい。今、トモくんの後ろで「私の胸じゃダメかぁ」と言いたそうな仕草をしてたわね。というか、かなちゃんまだブラジャー着けてないじゃん。


 次に、あら珍しく森嶋さんがトモくんに話しかけてきた。今日はミニスカート履いてるのね。しかも結構タイト。これも私は恥ずかしくて着れないわ。体のラインがくっきり見えるもの~。

 トモくん消しゴム落としちゃった。森嶋さんがしゃがんで拾おうとする…あっ!トモくんが見てる目の前で、ダメー!ぱ、パンツが見えちゃう!!トモくん、どこかに視線をそらして!!

 あれっ?何事もないように普通に拾ってもらったわね。トモくんのあのアングルじゃ、森嶋さんのパンツ見えてもおかしくないのに。森嶋さんもトモくんの後ろに移動したわね。「もっと短めのスカートが良かったかな…?」と言ってる森嶋さんの心の声が聞こえそうね。ちょっとスカートをめくってた。それをかなちゃんが止めた。この人たち、何がしたいのかな?


 今度はナナちゃんね。服装は、Tシャツに短パン、風邪を引く前に着てた格好と変わらないわね。後ろ姿がまるで男子とは変わらないわ。男子にしてはちょっと可愛らしいけど。

 って、いきなりTシャツめくった!!そりゃ視界に入るよね、トモくんだって。じーっと見てるし。なぜかうなずいたわ。あらっ?トモくんが席を立った。って、トモくんもシャツまくった!今度はナナちゃんがじーっとトモくんのお腹を見てる!!

 そういえばトモくんのお腹って、すごかったなぁ。昨日の水泳の授業で、男子や小山先生が「やっぱりスゲぇな!智彦のシックスパック!!」って言って騒ぎ立てるから、思わず見ちゃった。水泳でよく鍛えてるカラダ、う~ん、パーフェクトボディ!もう、見とれるしかなかったわ。

 あらあら、ナナちゃんはトモくんのお腹を触ったり叩いたりしてるわ。思いっきり「ぺチンッ!」と音がして、トモくん倒れちゃった。それにしても、トモくんのすごい腹筋、もはや芸術に例えられるレベルよね!彫刻みたい!!


 そんな保体委員4人の様子をじっと見てたら、かなちゃんと森嶋さんがこっちに気付いて近づいてきた!!どうしよう!!今更「見てないよ」なんて言えないし!何言われるんだろう?



 結局、何したかったんだろう?まぁ、よく分からないけど、何かの賑やかしだったんだろうな。それにしても、ナナちゃんの腹はかなりのものだった。普段からスポーツで鍛えてるから、あんなに健康的なボディになるんだろうな。これは近いうちに、腹筋が割れてくるだろうね。


 あらっ?かなちゃんと森嶋さんがあきらちゃんのところに来て何か話してる?あきらちゃんと一緒になってやるような用事ってあったっけ?分からないな、かなちゃん達の意図が。

 それにしてもさっき、ナナちゃんに平手打ちされた左脇腹が痛い。あれは力入れ過ぎだ。もしビンタだったら、もう闘魂注入という次元じゃないな。試合前にヤル気が削ぎ落とされそうだよ。


 あっ、かなちゃんと森嶋さんが僕のところによって来た。

「トモくん、今日スイミングスクールないでしょ?16:30にここに来て欲しいんだけど。」

「んっ?何するの?」

「それは、その時になってからのお楽しみよ!えへへへへ…」

「心してかかると良い…」

 何だ?ふたりして不気味な感じで僕を誘うなんて。

 確かに今日はスイミングスクールの日じゃない。予定は空いてるし、「ちょっと用事が…」と言っても僕の顔で嘘だとわかっちゃうし、なので彼女らの謎のイベントに付き合うことにした。


「さて、そろそろ4時半だな。教室に行ってみるか。」

 校内のジャングルジムを、下級生の子達と遊びながらその時を過ごした。皆4時ぐらいに帰ったので、あとは僕一人寂しく6mの登り棒を登ったり降りたり、腕力だけでまた登ったりした。


 5年2組の教室は4階にある。音楽室や、横浜のよく分からない郷土物が置いてある教室とか、そういった教室を通ると、5年生の教室が3つ並ぶ。その奥に6年生の教室がある。6年生は人数が多い関係もあって、4クラスに分かれている。基本的にどの学年も3クラスあるが。あと、この学校が始まって以来初めての卒業式が、来年の3月に執り行われる。

 3つ連なる5年生の教室の真ん中に、2組の教室がある。その中に入ると、僕を待ってたように、かなちゃん、森嶋さん、ナナちゃん、あと、あきらちゃんも僕の机の前に立っていた。あきらちゃん以外の顔がなんだか怖いのだが…。取り敢えず席に着こう。


「トモくんにどうしても聞きたいことがあるんだけど、トモくんって、本当に女子に興味無いの?同年代の男子なら、もう興味津々よ。」

 席に座るなり、かなちゃんが僕にそう言った。なるほど、確かにグラドルの写真集を持参する男子が多い中、僕は決まってレース雑誌を持って来る。レース雑誌にも、たまにブロンドの美女はいるが、そんな時は読み飛ばして次のページにめくっている。

「興味ないって事はないけど、何かもう免疫ついてるんだろうね。」

「というと?」

「僕には一つ上の姐さんがいて、大体の事は姐さんと行動してたから、もう慣れてるんだ。」

 姐さんと言うのは、僕の実の姉「明来子(あきこ)」の事だ。最近は勉強が忙しいのか、僕と遊ぶ機会が減ってしまっている。あと、僕を実年齢よりもっと下に扱ってるので、その仕返しに僕は明来子「姉ちゃん」と呼ばずに「姐さん」と呼んでる。

「子供心に姐さんを見てたら女の子のことわかるだろうなと思ったし、実際に大体の事を姐さんで知り尽くしたんだ。たから今は、男子が僕にアイドルの写真集見せてもどこが可愛いのか理解出来ないんだよね。まぁ、そういうものかと思ったよ、うちの男子は。」

 僕にしては珍しく、毒づいた言い方になってしまった。でも、変態が多いのも事実。だからあきらちゃんが居にくいクラスなんだろうなぁ。


「そうなんだ。だからうちら女子が色仕掛けをしても効き目がなかったわけかぁ。今朝もあれだけアプローチかけたのに。」

 あっ!そういう事か!だからやけにかなちゃん、森嶋さん、更にはナナちゃんは、男子なら食い入るような事してたのか。やっと合点がいった。

「でもねトモくん、1人だけまだあなたのところに迫ってない子がいるよね?」

 確かに、そう言われるとあきらちゃんだけはそんなことしなかった。あきらちゃん以外女子全員で何故か薄着になった時でも、僕は動ずることはなかった。でも、この女子たちは、あきらちゃんに何するつもりだろう?

「トモくんが女の子に興味無いなら、あきらちゃんでも大丈夫かどうか、試してみなきゃね。へっへっへっ…」

 不気味に笑うかなちゃんが、あきらちゃんを羽交い締めした。僕も椅子に座ったまま、ナナちゃんに胴体を押さえつけられた。僕とあきらちゃんが何事かと混乱してる間に…

「きゃあーー!!」

「わぁーーっ!!」

 僕は両目を手で覆った。



 トモくんが教室に入って来た。さっきから私の後ろで何だが妖気を感じてるんだけど、どういう事なんだろう?


 不気味だよ、かなちゃん。えっ!?かなちゃん何で羽交い締めするの?って、トモくんもナナちゃんに動きを封じられてる!私達が混乱してる間に、森嶋さんは…

「きゃあーー!!」

「わぁーーっ!!」

 森嶋さん、私のシャツをめくった!お腹が露わになっちゃって、恥ずかしい。恥ずかしさのあまり、両手で顔を覆いたかったけど、羽交い締めされた私の腕が下がらなかった。しかも森嶋さん、シャツをめくるのに力をいれすぎて、お腹だけでなく、む…胸も露わにされてしまった。ちょっとだけラッキーだった事に、今日はブラを着けてたから、本当に助かった。

 いや、全然助かってない!トモくんの前で、半脱ぎ状態になってるじゃない!まだ見てない?トモくん?


「まだ見えてないよ!薬指と小指に隙間が出来てるけど、丁度良く中央の視界が遮られてて見えてないよ!」

 まだ見えてないなら良かった。もし、じっと見ちゃってたら、いくらトモくんでも思い切り張り倒してるところだったんだから。

「見ないならいいんだよ、トモくん。その代わり、あきらちゃんのシャツ上げたままにするし、トモくんは男子にしか興味ないとのレッテル貼るから。」

 そんな!かなちゃん、あんまりよ!トモくんがそんな不名誉な、同性愛者(ゲイ)の称号を着せられるんだったら…

「トモくん、見てもいいわよ。そうしないと帰れなくなっちゃうし、私だって恥ずかしいのよ。」

「い、いいの?み、み、み、見るぞ…」

 トモくんはゆっくりと覆っていた手を下ろした。それでもまだ、目は強くつぶったままだった。そのつぶった目も徐々に力を抜き、左から順に目を開けた。


「も、森嶋さん!胸部が、ブラが見えてるんすけど!」

 トモくんは、私の露わになったお腹と胸を見るなりそう言った。恥ずかしくて、早くシャツを下ろしたかったけど、さっきからかなちゃんに羽交い締めされてるから出来ない。

「大丈夫…。私が力入れ過ぎただけ…。」

 いや、だから私が恥ずかしいのよ!!森嶋さん!!

 トモくんの顔、もう真っ赤っかになってる。呼吸も荒くなってるって事は、かなり興奮を覚えてるのね。純情、なのかな?


「トモくん、あきらちゃんのお腹触るの、今がチャンスだよ!」

 なっ、何を言い出すのよ!ナナちゃん!お腹は、私の場合敏感なのよ。くすぐりに弱いというか、そういう事なのよ。

「も、もし触らなかったら…」

「触るまであきらちゃんのシャツは上げっぱなし!」

 なっ、何でそうなるのよ!!私だって、トモくんと同じぐらい、いや、それ以上に恥ずかしいのに。ここにいる女子たちは、もはや男子と変わり無いように見えてきた!私、シャツ上がったまま帰っちゃうのかなぁ。


 そうだ、この前、私はトモくんの手を握れたのよ。今まで男子は皆苦手と思ってた私の、一歩踏み出したわがままを、トモくんは応えてくれた。だったら、今この状況でできるお返しをしないと…

「と…トモくん。いいわよ。お…お腹触っても…」

 かなり勇気のいる了承だった。私は男子に触られると、誰彼構わず殴ったり、「普段の阪本では考えられないぐらい強い」と男子から言わしめた張り手をお見舞いさせたりする。そんな私を知って、トモくんは私との肉体的接触を極力避けてる。けれども、トモくんと友達関係になった今、そう言った事はもう避けられなくなったのかな。

 トモくんも、最初は動揺を隠しきれなかった様子で、手を私のところに近づいては、触ってみようとしてもためらっていた。何だか、私がじれったかった。触るのなら、早くやってよ!!

 そんな私の思いが通じたのか、トモくんがついに覚悟を決めた。

「あきらちゃん。嫌になったら、僕を殴ってくれても、いいからね。いくよ!」

 私にはちょっと、カッコ良く聞こえた。まるで、侍の生き様を見てるような感じにも思えた。

 そうして、私のお腹にトモくんの手が近づいてきた。もうその時点でくすぐったかった。くすぐったい時の声が漏れないように、森嶋さんが私の口を手で封じた。


 そうして、私のお腹に手のぬくもりを感じた。トモくんの手が、私のわき腹に触れたのだった。



 も、もう後戻りは出来ないぞ。もし、あきらちゃんに張り倒されたとしても、本望だ。


 今まさに、僕の右手は、あきらちゃんの脇腹を触ってる。以前、僕の手をあきらちゃんが握ってきた時、まるで、僕の手の感触を確かめてるように触っていた。あの感じでいいのか正直分からないが、僕も同じようにやってみた。


 触り始めに、今僕の手があきらちゃんの脇腹にある。そこからちょっとずつ、肋骨に向かって手を滑らせた。

「ん"っ!ん"ん"ん"っん"ーん"ー!」

 森嶋さんに口元を押さえられ、まともに話すことができない。何を言ってるのか分からなかった。多分だけど「くすぐったいよー!」と言ってたのだろう。その声が、何だかエロチックに聞こえた。口元を押さえられてるから、表情がよくわからない。まゆ毛はハの字に傾いてるが、目を見ると笑ってるようにも見えた。何だろう、この背徳感は。

 あきらちゃんのお腹か。まだ触り始めたばかりだから、何と言ったらいいのやら、言葉が見つからない。でも、あの時の感触に似てる。以前、あきらちゃんの頬を触った時の、柔らかくすべすべした感触。いや、その感触と同じだった。はっきり言うと、姐さんもいい柔肌だが、あきらちゃんはその何倍も良い。

 肋骨部分をさするように触った。「体育は苦手」とは言ってたが、体つきが良い。多分代謝がいいのかな?はたまた、この子も苦手なりにではあるけど運動してるのかもしれないなぁ。


 僕の手は脇腹に戻った。ここに1度触ってみようかなと思った箇所がある。あきらちゃんのカラダの真ん中にある、かわいらしいおへそ。やっぱりここって、特に敏感なところなのかな?

 姐さんのは触ったことあるけど、何と言うか、「感じちゃう」と姐さんは言ってた。「感じちゃう」って、何をだろう?

 どんな感じになるんだろう?あきらちゃんなら。恐る恐る、親指をあきらちゃんのおへそにちょっと差し込んでみた。

「ん"ん"ん"ん"、ん"ん"ん"っん"っん"!(トモくん、そこは特にくすぐったいよ!)」

 脇腹を滑らせるように触った時と比べても、何だか反応がいい。へそやその周りは、あきらちゃんにとってもかなりの弱点なんだろう。

 それにしても、さっきから僕の心拍が早いビートを刻んでいるのだが、この間の握手にしても、今のこの状況もにしても、女の子に触れるってこんなに緊張する事なのか。姐さんや他の女子はそれほど意識してなかったのだが。もしかすると、あきらちゃんだからそうなるのかもしれない。


 もう一回あきらちゃんの肋骨部分に移動しようと手を動かした。その時だった。

「トモくん、どうせならここも触りなよ~」

 そう言うと、ナナちゃんが僕の右手首をつかんだ。掴まれた僕の右手は、なんとあきらちゃんの胸を押し当てていた!うわっ!柔らかっ!姐さんには無かったが、これがおっぱいというものか!!

 じゃなくて!手を離せ!ナナちゃん!この時ばかりは流石に抵抗した。しかしいくら抵抗しようとしても、ナナちゃんは力が強くて離せない。僕との腕相撲で引き分けたまま決着がついてない屈強な子だもの。

 抵抗しようとしても、それを押し返すナナちゃんの腕力。そして今だにあきらちゃんの胸に押し当てたままの僕の手!あきらちゃんからすれば、胸を刺激されてるように感じるだろう。

「ん"ん"ん"~!!ん"ん"ん"ん"~!!ん"ん"ん"~!!」

 今までと変わらないあきらちゃんのうめき声。しかし、今の僕にはあきらちゃんの心の声が聞こえたようだった。「やめて!!離して!!ナナちゃん!!(僕じゃないのか?)」そう言ってるように聞こえたのが分かった。これは言うしかない。あきらちゃんの為にも。

「離せ!ナナちゃん!あきらちゃんが嫌がってるだろ!」

 今のは厳しい言い方だったかもしれない。しかし、かわいそうなあきらちゃんの事を思うと、どうしてもそう言わざるを得なかった。

 僕の珍しく荒げた口調に動揺してか、ナナちゃんはすぐに僕の手を離した。



 私のお腹をトモくんが触ってる。男の人に触られてるのは分かってる。けど、抵抗する気になれないような触り方だった。まるで、私を優しく包んでくれるようだった。意外と気持ち良いなぁ。くすぐったさもあるけど。

 お腹まわりはよく他の女子に指でなぞられたり、くすぐられたりする、私にとって敏感なところ。ぜい肉があまり付いてないのも、よくうらやましがられてる。

「あきらちゃんのお腹、余分な肉がない。いいなぁ…。どうしたらあきらちゃんみたいになれるんだろう?」

 いつも、かなちゃん達がこう言う。私は特別な運動はしてないんだけどなぁ。普通に生活しても、この体型になるなんて、私どうなってるのかな?私も教えて欲しいなぁ。


 トモくんの手があばらに向かって滑らせてる。この時のくすぐったさと言ったらたまらなかった。カラダの内側が刺激されてるような、そんなむずかゆさを感じた。

 でも、なんだか知らないけど、同時に気持ち良さを感じた。もっと触って欲しい。トモくんの手なら、どこ触られても今は大丈夫、そんな気にもなれた。でも、だからと言って胸は勘弁してね、トモくん。


 あばらからまた下腹部に手を滑らせた。くすぐったい。もしかして、私の肌の感触を確かめてるのかな?そうだとしても、トモくんの手は、強くて優しいし、触られてるだけでと守られてるような安心感がある。なんか幸せ。

下腹部に止まると、トモくんの親指が、私のおへそをなぞった。おへそは本当に弱いのよ。それでも、トモくんはお構いなく弄ってる。いじわる~。いやーん。だけど痛くない。扱いが優しい。大事なものをそっと、慎重に扱ってるような感じ。くすぐったさの中に気持ち良さも感じられた。


 おへそ、くすぐったかったなぁ。もう、おかしくなりそう。またトモくんの手があばらに向かってる。く、くすぐったい。我慢できず、声を出して笑いたくなるようなくすぐったさなのに、何だか心地良い。マッサージされてるのかな?かと思っちゃうぐらい…


ムニュ


 あれっ?何今の?もしかして!

 ちょっと視線を下げると、あろう事か、トモくんの手が私の胸を押し当てていた!胸はやめてー!!いくらトモくんとはいえ、まだそこはダメなのよ!トモくん手を離して!!

 いや、トモくんも何だか困惑した顔だわ。触りたくて触ったわけじゃないのね。としたら誰が、トモくんの手を…

「離せって!」

「いいじゃん。こんなチャンスないよ~」

 ナナちゃん!何してるの!トモくんの手離して!抵抗すればするほど胸を刺激しちゃってるのよ!

「やめてー!離してー!トモくん、ナナちゃん!」

とは言ってみたものの、封じられた口では何言ってるか伝わらないなぁ。半ば諦めかけていたら…

「離せ!ナナちゃん!あきらちゃんが嫌がってるだろ!」

 トモくんが声を張り上げて、ナナちゃんを注意した。そう、確かに嫌だった。男の子と女の子とでは、触り方一つ取っても違うように感じるように。

 スキンシップみたいに、どこか親し気な感じの触り方が女の子のタッチ。私をたぶらかしながら触ってるようなのが男子のタッチ。後者のような触り方をしたら、また別の男子をして「殺人パンチ、殺人ビンタ」で相手を撃退させてしまう。

 普段のトモくんなら、あまり大声を出す事はない。けれども、私を助ける為に、大声出してくれたのね。トモくん、ありがとう。しゃべれない私のために気持ちを代弁してくれて。

 私の口を封じてた森嶋さんの手が下りた。トモくんを凝視してしまって、私の口元を封じるのを忘れたみたいだった。チャンス!

「ナナちゃん、胸はだめよ」

「ゴメン!トモくんなら喜ぶと思ったんだ!」

 と、トモくんが喜ぶ?今の行為はトモくんどう思ってるんだろう。本音を聞くのが、何だか怖かった。

「う、嬉しくない、と言ったら、それは嘘になるけど。ただ、あきらちゃんの事を考えたら、嫌がるだろうなと思うから、胸触りたいと思う気持ちを抑えてるんだよ。今だって。」

 男の子らしい答えだった。けれども、私が嫌がると思って触らなかったんだ。トモくんなりに葛藤して、結局自分で触らなかった。トモくんって、私の心の中が分かってるみたいね。また惚れてしまいそう。



「本当に、ごめんなさい…」

 しょんぼりした表情のナナちゃんがそう言った。「もうボクは、あきらちゃんに嫌な思いをさせる事はしないから、許して」と言ってるかわからないけど、ナナちゃんの精一杯の反省が表情ににじみ出てた。

「ナナちゃんの顔見て、反省しきってるの見えたから、私は許してあげるわよ。」

まだ羽交い締めされたままのあきらちゃんはそう返した。相変わらずお腹と胸が露わになったままだけど。

 あとは僕の返答だな。僕は…

「うん、許そう。僕としてはそれしか言えないけど、それでいいんだ。」更に追求するような雰囲気じゃないし、この辺で許してあげようという気になれた。


「ところで、あきらちゃんへのボディタッチ、続ける?」

そう言えば、まだ続いてるんだった!どうしようかなぁ。あきらちゃん、僕に腹触られてる間「ん"ー!」としか言わなかったけと、もしかしてくすぐったかったのかな?「もうよしてよ!」と言うんだろうな。…正直まだ触りたい。

「つ、続けても…いいわよ。」

 あきらちゃん!?本気なの?思わず耳を疑った。普段のあきらちゃんなら、男子に身体触られたら、殺傷力の高い殴打や張り手が飛び交ってもおかしくない。なのに、どうして…

「何だか、もっと触って欲しくなっちゃった。」

信じられない、あのあきらちゃんがこんな事言うなんて。

「だって!よーし!続行だー!」

かなちゃんの声で再開が宣言された。

ま、またやるのか。一瞬呆れそうになるが、他ならぬあきらちゃんの要望だ。ちゃんと応えてあげよう。


今度は僕が両手を使い、森嶋さんがあきらちゃんの口を封じずに続行した。

僕が両手を使うなんて思わなかったみたいで、あきらちゃんはずっと

「両手使ったらさっきよりもくすぐったいよぉ~!ああん、らめぇ!」とか言ってた。

 今みたいな喘ぎ声、多かったなぁ。くすぐったくて笑ってる最中でも「意地悪な手なんだからぁ」

「あっ、感じちゃう」

とか、エロい言葉も紛れてた。これ、他の男子には聞かせられないぞ。絶対に、エロい妄想を掻き立てられる!

 こんな感じで、15分もあきらちゃんの腹を触り続けた。あきらちゃん、目が虚ろで口元が笑ってる。


 帰り道、雑談をするかなちゃんとナナちゃん、後ろで見守る森嶋さん。その間に僕とあきらちゃんが並んで歩いていた。けれども、会話が弾まない。そりゃそうでしょうよ。腹を触られた人と、触った人が並んでるんだ。気まずい。何を話したらいい?そんなこんなで僕が困窮してる時だった。

「ねぇ、トモくん。あの…私のお腹、どうだった?」

 !?わわわわ…!?なんてこと言うの!あきらちゃん!そして何と返したらいいんだ僕は!

「えっ、あの…。えっと、そうだな、えー、なんて言ったらいいんだろ?」

「いいわよ。言葉選ばなくても。トモくんが思ったこと、そのまま言って。」

「あぁ、分かった。…良かったよ。触り心地、感触、柔らかさ、どれを取ってもすごく良かった。」

「…ありがと」

 ほらぁ、お互い余計に恥ずかしい思いをするじゃんかぁ。もうこれ以上はいうまいと思ったが、また会話が途切れてしまった。何か言わなきゃと焦った僕は、余計な一言を…

「あ、あと、あきらちゃんの温もりを感じたよ。」

 この一言に、あきらちゃんの顔がまた一段と赤くなった

「そ…そりゃあるよ!体温無きゃもう死んでるわよ!」

「あ、いや、そういうことじゃなくて…」

ヤバい。こっちまで照れてきた。

「気持ちよかったよ。体温があるからこそ、あきらちゃんのお腹を触って気持ち良いなって感じたんだよ。」

自分で言ってて恥ずかしくなった!僕があきらちゃんなら、間違いなくぶん殴ってるところだ。

「…ふふっ。嬉しいな。」

笑った?嬉しいって?

「もうっ、トモくんが嬉しい事言うから、照れちゃうじゃない!」

 あきらちゃん、やっと笑ってくれた。僕に笑顔を向けてそう言うと、照れ隠しに背中を叩いた。


ポンッ!


「痛っー!!」

 力加減つかないのかな?普通に叩いたつもりなんだろうが、痛烈だ。あきらちゃん、実は怪力なんじゃないか?

「大丈夫?トモくん?」

「うん、大丈夫。」

まぁ、あきらちゃんが元気で何よりだよ。ヒリヒリするぐらい僕の背中を叩いてくれたし。


「「「じゃあーねー!あきらちゃん!」」」

「皆また明日!」そう言って僕とかなちゃん、ナナちゃん、森嶋さんを見送ると

「あっ、トモくん。」いきなり僕だけ呼び止められた。

「もしよかったら、またお腹触ってもいいからね!」と言うと、ちょっと舌を出しながらウィンク、シャツをめくっておへそを見せた。言ってる事、やってる事は恥ずかしいよ。だけどあの笑顔が見れてよかった。あきらちゃん、よく勇気出して出来たなぁ。僕は

「あ、ありがと…」

と言って、あきらちゃんが家のドアを閉め切るまで見送った。「ありがと」って、どっちに対しての感謝だろう?おへそ見せてくれた事なのか、また腹触らせてくれる事に対してなのか。僕一人だけ混乱しちゃった。


それから、あきらちゃんの家を後にして

「よかったね!トモくん。またお腹触れるって!」

「ねっ!トモくん!ボク、邪魔しないようにするから!」

「また堪能すると良い…」

皆に冷やかされた。恥ずかし過ぎだ。僕の家に着くまでの間、ずっと赤面したままだったろう。でも、ありがとな、あきらちゃん。もしまた機会があったら、心置きなく触るぞ!



 普段元気なナナちゃんもこんなに落ち込む時もあるんだ。ちょっと意外。あんな顔されたら、トモくんが胸触ったのどうのって、もうどうでも良くなるわ。


「ところで、あきらちゃんへのボディタッチ、続ける?」

あっ!続いてるんだ!はぁー、どうしよう。かなりくすぐったかったけど、トモくん、胸触りたいの我慢してくれたし、トモくんを信用してもいいんだよね。

 それに、トモくんに触ってもらうと、何だか気持ちいいって言うか、触り方が丁寧だったわね。おへそなぞられた時、くすぐったかったけど、痛くなかったし。トモくん、信じてみようかな…。

「つ、続けても…いいわよ。」

 あっ、トモくん驚いてる。そりゃそうよね。普段の私なら、さっき触られてる段階でパンチなりビンタなりしてたから。でも、信じてるんだ。トモくんなら、そんな不届きな行動しないって。

 それに、男子、いや男の人全般に、偶然も含めて触られて、こんなに気持ちいい思いをしたのって、トモくんが初めてだし、もっと、トモくんに触って欲しいな。


「何だか、もっと触って欲しくなっちゃった。」

かなり恥ずかしいカミングアウトだったけど、トモくんの為だから、トモくんが私を大事にしてくれる人と信じてるから、私はこう言ったの。

 こうして、またトモくんにお腹を触ってもらった。だけど、両手を使うなんて思ってもみなかった。

「えっ、両手…」

と言ってる間に、わき腹にトモくんの両手が触れた。くすぐったい。さっきよりも身体の刺激が強い。

「ああっ、くすぐったい…」

今の私は森嶋さんに口を封じられてない。さっきと違って存分に声が出せる。

「さっ、さっきより…ああっ」

トモくんの両手があばらに伸びた。さっき、ハプニングとはいえ胸を触られたのもあって、まさかまた胸触られないかなと思った。

「だっ、だめぇ…」

胸触られる!と思ったけど、私のあばらまで手を止め、優しくさすってくれた。くすぐったいけど、妙に気持ちよかった。直に胸に触ってないからかなぁ。


 指先だけ触られると、私の敏感な肌が感じてしまう。その指先が私のおへそをまたなぞった。私の場合、脇以上におへそがくすぐったく感じる。トモくんの指から逃げるように身体を動かしてはみるけど、トモくんが離さないようにずっとなぞってる。その時も私何か言ってたかもしれないけど、忘れちゃった。もうこのへんから、頭がポーッとしてきたかも。

 こうして、10分以上だったかな?トモくんは私のお腹を優しく触ってくれた。もう、意識が飛んじゃった。確か

「ああっ、いじわる…」

と言ってたかも。


 私とトモくんは隣り合って帰宅した。でも、何を話せばいいのか分からなかった。確か、まだトモくんは私のお腹どうだったなんて言ってなかったわよね?私も聞くの恥ずかしいけど、言ってみよう。

「ねぇ、トモくん。あの…私のお腹、どうだった?」

この時の私は自然とトモくんが何を言っても受け入れられる心構えだった。

「えっ、あの…。えっと、そうだな、えー、なんて言ったらいいんだろ?」

「いいわよ。言葉選ばなくても。トモくんが思ったこと、そのまま言って。」

「あぁ、分かった。…良かったよ。触り心地、感触、柔らかさ、どれを取ってもすごく良かった。」

「…ありがと」

 恥ずかしいよー!そんなに私のお腹を褒めてくれても、どう返せばいいかわからなくなるじゃない!

「あ、あと、あきらちゃんの温もりを感じたよ。」

温もりって、私の体温だよね?な、な、な、何言ってるのよ!!

「そ…そりゃあるよ!体温無きゃもう死んでるわよ!」

「あ、いや、そういうことじゃなくて…」

そうじゃなかったら、どういうことなのよ!

「気持ちよかったよ。体温があるからこそ、あきらちゃんのお腹を触って気持ち良いなって感じたんだよ。」

そうなんだ、何か照れるけど、総合的に良かったって事なのね、私のお腹。

「…ふふっ。嬉しいな。もうっ、トモくんが嬉しい事言うから、照れちゃうじゃない!」

 照れ隠しに思わずトモくんの背中叩いちゃった。私は加減したつもりなんだけど、トモくんには痛かったみたいね。えへへ…


 皆よりも先に家に着いちゃう。こういう時が1番うつだなぁ。でもまた明日も会えるもの。その時まで楽しみにしてよう。

「皆また明日!」またいつか、トモくんに私のお腹触ってもらおう…かな。ちょっとサービスしちゃお。

「あっ、トモくん、もしよかったら、またお腹触ってもいいからね!」えいっ!

 私でも、あざといことしてるなぁと思ったけど、恥ずかしさはなかった。トモくんに向かって、さっきまでなぞってくれたおへそを見せ、舌をペロッと出してウィンクしてた。

「あ、ありがと…」

 トモくん、純情だね。また顔が赤くなった。マイペースで、女の子には興味ないとか言ってたトモくん。可愛かったなぁ。あんな顔されたら、また好きになっちゃいそう。うふふ…

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