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第7話 憩いの場 2

「先輩!」


健介の声が廊下の向こう側から聞こえてきた。

先輩と呼ばれた刑事は席について、

コーヒーとサンドイッチを交互に口に運んでいた。


「おう、誰だっけ?」


健介は無意識に近いレベルで、中条健介ですよ。やだなぁ。

と言いながら先輩の隣に腰掛けた。

そして、昨日資料室でメモした一枚の紙を見せながら言った。


「あの、ストリートチルドレンのレポートのことを調べたんですよ。

 前、先輩から首謀者は郷原武志だった、

 ということを聞いたのを思い出して調べたら、

 『氷室家の事故死』というレポートに当たったんです。

 何か先輩知りませんか?郷原の同期ってところが引っかかるんです。

 それに氷室和貴が長官に任命された後に

 事故死っていうのも都合がよすぎませんか?

 その後、郷原が長官になっているし」


瞬間、先輩の表情が変わったように健介は思った。


「するどいな。そうだ、氷室家の事故死は郷原がやったといわれている。

 氷室和貴は最高に優秀な刑事だったそうだ。

 銀色の瞳で並外れた洞察眼を持っていたそうだ。

 それが買われて長官に任命されたんだが、

 同期で和貴までは及ばないが、優秀だった郷原は殺害に走ったそうだ。

 そして思惑通り、郷原が長官に任命されたわけだ。

 郷原は長官の権力を使い、氷室家は事故死になった」


健介は驚きながら言い返した。


「長官だからって殺しが許される!?」


「そういう世界なんだ。お前の理想の警察はそんなもんだ」


どんな世界にも裏はある。

光のあるところには必ず裏が生まれるというが、

これほどまでに深い裏があるのものなのか。

先輩は健介に追い討ちをかけるように言った。


「この紙を見ると、

 お前も知っているように息子の竜一が行方不明になってるだろ?

 郷原が殺害を行ったとき、息子は和貴に逃がされていたんだ」


「なぜ?一家で逃げなかったんでしょう?」


「郷原は追いかけてくる。

 それから妻を守るために和貴は死ぬ覚悟だったんだろうよ。

 それにわかったのは郷原がくる数時間前だ。

 息子だけでも、と思ったんだろう。

 そして、氷室竜一はストリートチルドレンになったらしい」


健介の中で全てがつながった。


「まさか」


「そのまさかだな。ストリートチルドレン抹殺は竜一を殺すために発令した、

 と考えられるな」


「そのことを先輩は知っていたんですか?」


また、先輩の顔が一瞬変わったように見えた。

今度は曇った。


「いや、お前が熱心に調べようとしてたから、俺も調べたんだよ」


「でも、僕が調べたときは、そんなことわかりませんでした」


「バ〜カ。お前と俺を一緒にするなよ」


「あ、すいません」


健介はなぜか先輩に逃げられたような気がした。

先輩は調べたんじゃないのか?

でも、先輩は一連の事件にかかわってないからわからないはずだ。

やっぱり、思い違いか。

健介は一息ついて立ち上がった。

ありがとうございました、とお礼を言って、

立ち去った。


終盤、先輩の顔色がおかしいような気がした。

でも、そうなる理由がない。

本城刑事の研修で健介は洞察眼を意識しすぎて、

できないことをやろうとして、変なものが見えているんだろう、と思った。

 


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