第2話 憩いの場
日本警察の東京支部の3階。
廊下を歩いていくと開けた場所に出る。
そこには売店、机、椅子、大型液晶テレビなどがあり、
刑事たちの憩いの場となっている。
国の経営方針も危ぶまれるはずだ。
「先輩、先輩」
若い刑事は売店で買ったパンを食べている刑事に言った。
先輩と呼ばれた刑事は答えた。
「どうした?え〜と……誰だっけ?」
若い刑事は笑いながらコーヒーとファイルを両手に持ち、
先輩と呼ばれた刑事の隣に座った。
「やだなぁ、また冗談。今年入った中城健介ですよ」
「いやぁ、悪い悪い。で、何だ?」
この先輩はよく冗談を言うので健介はいつもの流れで自己紹介をした。
ここ最近で10回以上は自己紹介している。先輩に。
健介は本題に入った。
「今度、新人レポート発表会ってのがあるんですよ」
「あぁ、俺も新入りのときやったなぁ。もう10年以上前か」
「で、僕は―――」
健介は声をひそめた。
「ストリートチルドレン抹殺令について調べようと思ってるんですよ。この前、図書室で古い書類を読んでいたらですね、見つけたんですよ」
先輩も声をひそめていった。
「止めておいたほうがいいんじゃないのか?」
「僕は絶対調べます。そして賞金をかっさらうんです!」
周りにいた数人が健介を振り返った。
健介は顔を赤くして言った。
「だから聞かせてください。先輩はそれが起こったときにはもう刑事でしたよね?僕はそのころ、殺し屋ってひどいなぁ、って思っていました。でも、まさか警察の仕業だったとは……」
「しょうがねぇな……。あれはひどかったな。数十人、いや、もっと多かったっけかな?たくさんの子供が死んだ。俺も遺体撤去に携わったからなぁ。んー、なんでもな、その当時の警察庁長官の郷原武志が提案したらしい」
「今の長官の郷原命の父ですね?郷原武志はたしか数年前に病気でなくなってますね」
「そうだ。あのボンクラ野郎のな。おっと、これは他言無用だ。それ以上の事は知らねぇんだな。まぁ、俺が思うにストリートチルドレンを排除するためにこんなことしねぇってことだな。なんか別の目的があったんじゃねぇの?」
「そうですか。ありがとうございました。……あ、忘れてた!」
また、周りの数人が健介を振り返った。
「どうした?」
「僕、今日から本城竜彦刑事のもとで研修を受けることになってるんです」
先輩は驚いた顔をした。
「本城っていえば若くして、東京本部の高位刑事になった男か。たしか20何歳かだったな……」
「23歳ですよ。僕より3歳しか年上じゃないんですよ?憧れます」
「そういうのは、俺みたいな年輩平刑事の前では言わないもんだ」
先輩は顔をしかめた。
「すいません。じゃあ本部にいってきます」
「気を付けろよ」
健介は廊下を走り出したがすぐに何もないところで躓いてこけてしまった。
さっきの数人がまた振り返った。
健介は顔を赤らめて走っていった。
パンを口に押し込み先輩は呟いた。
「そういえば、中条はいいところの出だったな。だから入ってすぐに東京支部やら、本部研修やらにつくわけか……。でも、本城は完全に実力のみで今の位を手に入れたらしいからな……。やっぱり才能がすべてかぁ。んー、妻子のためにもがんばるか!」
先輩は立ち上がって歩き出した。