第1話 銀眼の少年
「ストリートチルドレン抹殺」
一般人ならば、
「いくらストリートチルドレンたちが犯罪を犯したり
悪戯をするからといって殺すことはないじゃないか。
むしろ、悪いのはストリートチルドレンの存在する日本という環境を
作ってしまった私たちが悪いのではないか?そうだ、私たちが悪い」
そう思うだろう。
しかし、津田俊彦はそんな疑問はもっていなかった。
例え「ストリートチルドレン抹殺」の命令が日本警察から出ていようと。
俺は殺し屋としての役目を果たすだけだ。
津田は警察に雇われたときのことを思い出した。
日本警察中央所の地下に作られた秘密の部屋。
日本警察のトップに君臨する者。
つまり、日本警察庁長官である郷原武志がその部屋の
いかにも「俺はトップだ」と威張るようなやつが座るいすに腰掛けていた。
その前には向かい合うように数人の男たちが立っていた。
俊彦もその中の一人であった。
郷原武志は「ストリートチルドレン抹殺」の話をした。
最近、ストリートチルドレンが増え、
悪さをしだしたので皆殺しにしてほしいということだった。
もちろん、殺しは犯罪なので警察が直接手を下すことなどできない。
だから殺し屋の君たちに殺してもらって、
警察は捜査をするフリをする。
そして、解決できずに迷宮入り。
国民には「殺し屋の狂気でストリートチルドレン抹殺」
と伝わり、警察がやったとは思うまい。
そして、君たちにはたんまり報酬をよこそう。
といった内容だった。
そこにいた数人の殺し屋は俊彦の知り合いだった。
俊彦が郷原のために呼んだのだった。
というのも、俊彦と郷原は知り合い、いや、親友だった。
俊彦は以前警察官だった。しかし、殺し屋の道にそれた。
郷原はそのときの同期だった。
そして、突然連絡があり、頼みがあるとのことだった。
報酬もいい、いや、よすぎるぐらいだったし
昔のよしみということもあって引き受けたのだった。
俊彦はロングコートをまとい帽子を深くかぶり通りを歩いていた。
日本は以前に比べて治安も悪くなり、ゴミゴミしくなった。
街路も昔と比べると整備が崩れているところが目立つ。
どこで日本は道を間違ったのだろう?
俊彦はコートをひるがえし、路地に入った。
ビルの側面に据えられてある大型のゴミ箱に子供たちがたかっていた。
俊彦が現れた瞬間、全員が俊彦を睨んだ。
5人。
薄汚れた服を身にまといゴミをあさっていた。
日本社会環境の悪化が招いた結果が俊彦を睨みつけていた。
俊彦は腰のホルスターから拳銃を取り出した。
子供たちは目を見開き一斉に路地の奥へと走り出した。
彼らにも俊彦たちが彼らの仲間を殺して回っていることが伝わっていたのだろう。
なれた手つきで狙いを定める。
今までにどれだけ殺しただろうか。
街の静寂を切り裂く銃声があたりに響く。
まず一人。
後頭部から血を流して倒れた。
次に狙ったのは二人固まって逃げようとしていた子供。
銃声が一回に聞こえるほどの早い2連射で後頭部を打ち抜いた。
もちろん即死だ。
痛みは味あわせない。
そして、左の壁側を逃げていた子供を狙う。
右手に握った銃を左手に投げて移した。
すかさずトリガーを引く。
俊彦は左手でも子供を逃がさなかった。
その子も即死。
そこで、俊彦は手を止めた。
俊彦の目の前に立つ子供。
恐怖で立ち尽くしているのではない。
俊彦に立ち向かおうと立っているようだった。
「逃げないのか?」
俊彦は聞いた。
「だって、おじさんピストルで僕を撃たないでしょ?」
子供は銀色の目を光らせていった。
かすかに微笑が見えた。銀眼、微笑……懐かしい。
「なぜわかる?」
「だってほかのやつらを撃ったときと握り方が違うもん」
銀眼の少年の首に十字架のペンダントがかかっている事に気づいた。
まさか……。
「すごいな。君の名前は?」
俊彦は自分の考えと現実を答えあわせするように聞いた。
「竜一、氷室竜一」
少年は言った。
……やっぱり。
「俺について来い。銃を教えてやろう」
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