一章:血抜きの魔(1)
この小説には、緊迫した心理状況と空気感を演出する為に、出血や肉体破壊などが多々描かれます。尚、支柱には幼児連続殺人がありますので、苦手な方はよくご確認の上ご視聴いただけますと幸いです。
―プロローグ―
嘗て、こんな話しを聞いた事はないだろうか。
―【悪い事をしたら、気狂いピエロがやってきて、体中の血を抜かれるよ】
母親達が、悪戯をした子供に使う作り話だ。よく耳にするだろう、子供を大人しくさせる為に、怪獣やお化けを作り話にして子供に吹き込む初歩的な子供騙しを。本来なら、只の作り話で終る。
だが……。もし――それが本当に現れたら?
体中の血を全て抜かれ、身体をバラバラに切り刻まれて、野良犬の餌にされたら?
いや、その身体の一部を切り取られ、誰かに移植されたら?
食べられたら?
―どうする?
貴方の愛する子供が……ピエロの楽しい喜劇の主人公にされたら……。
抱き締めなさい。その愛する子供の頭を。抱いて逃げなさい、その幼い赤ん坊の身体を。
ピエロは笑う。悲しいピエロは、喜劇を舞う。残酷な暗闇の夜に、真紅の涙を流して、ピエロは美しき死体の女王と、一夜を明かす。そして、夜がくると、ピエロはまた……狩りを始める。狙うは、美しき女の、青い瞳を掲げる目玉。