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向けられた憎悪

なんだこの人。


「アリスこの人が、冷めたものが大好きな帽子屋です。」

草木の生い茂る城の庭で、軽く小さなパーティ会場と見間違うくらい

大きなテーブルとイス、その上に乗った大量の紅茶やらケーキやらを背景に

白兎に紹介された人物は色々な意味で衝撃的な人だった。


「誰が、大好きだって?お前がいつも冷めたものしかこっちにやらないんだろうが!!」


肩から流れる透き通るような銀髪

切れ長の目は強い光を宿した深い琥珀色で

彫りの深い顔立ちは、白兎に負けず劣らずの美形なのに

自分の背丈の半分ほどもありそうな大きな黒のシルクハットをかぶっていて

そのほかと言えばスーツの合間に見える白いフリルのついたシャツ以外は

全部血のような深紅だ。


あ~ぁ、せっかくの美形が台無しだよ

なんでこの国って、変態紫猫といい、目に痛い人が多いのかしら。


「それより、この女は何だ?・・・まさか、おまえ、もしかして」

そう不思議そうに帽子屋を見ていると

いきなり私の方を指さして白兎にこれでもかという剣幕で怒鳴った。


なんか・・・この人私好きになれないなぁ


指をさしたことにしろ、荒い言葉づかいにしろ

こっちに対する敵意しか感じられない。


「えぇ、そうですよ。あなたの想像しているとうりです。」

そんな怒髪天を衝くような帽子屋に質問にもしれっと答える白兎の言葉に

帽子屋は息をのんで、まじまじと私のほうを見た。

その瞳もまだ怒気をはらんでいて正直怖い。


「おい、おまえ。」


「・・・わたし?」


「そうだ、お前だ。おまえは本当にアリスなのか?」


「そうだけど・・・」


その瞬間、帽子屋の目がつっと細められ

まるで、親の仇を見るような

この世のすべての憎しみを詰め込んだかのような表情になった。


なんで?

なんでそんな憎らしそうな顔をするの?


「お前がいなければ・・・!!おまえさえいなければ!!」


なんで?


「おまえのせいで、この国の花が全部消えたんだ。」


そんなの・・わかってる。


「バラも、全部。おまえなんかがアリスなんて、俺は認めない!!」


やめて。


「薄汚い心を持った女め!!さっさとこの国から出てけ!!」


おねがい・・・やめて・・・!!



向けられた憎悪をどうすることもできなくて

自分の存在が他人の重しになるなんて耐えられなくて


気がついてたら足が勝手に動いて走り出していた。


「アリス!!」


「アリス!!どこいくの!!」


後ろで白兎と女王様の呼ぶ声がしたけれど

振り向いたらまた彼らの優しさに甘えてしまいそうで

そのまま私はその場を走り去った。




         ◆◇◇◆ 


「あ~ぁ、アリス、いちゃった。チェシャ猫に襲われなければいいけど。」


アリスの去った後、ずっと黙って紅茶を飲んでいた三月兎の一言で

白兎は顔色を変えて、アリスを追いかけに行った。


「帽子屋、あなたどういうつもり?アリスにあんなひどいこと言うなんて。」


いつもすべてを包むような余裕の表情をたたえている女王が珍しく

厳しい面持ちで俺にそう問う。


「俺は、当り前のことを言ったまでだ。

ほかの花はともかく、薔薇まで消えるなんて

影響が強すぎる前に、危険だろ。

それに、あいつのせいで」


そこまで言ったところで

また女王が厳しい声で言った

「帽子屋、わかってるの?アリスは好きでこの国に来たんじゃない。

それに・・・アリスも、あなたと同じような目にあってるのよ、

自分の世界で。」


ウソ・・だろ?


「あんな、小娘が?」


「そうよ。・・・薔薇はこの『夢見の国』の象徴。

つまり、狂気と絶望に包まれたこの国の薔薇はその象徴でもある。

それがなくなるということは、今回のアリスの影響力が強いのと同時に

ただならぬ絶望と狂気が彼女に潜んでいるということ。

私はてっきりあなたがそのことを分かって言ってるんだと思ってたけど。」


「・・・・でも、おかしい。あの娘からは何も感じられなかったぞ。」


この国の住人は迷い込んだアリスの絶望の度合いを感じ取ることができる

住人特有の勘みたいなのが備わってる。


もし、あのアリスがそんなにも絶望の度合いが深いなら

アリスが来た時点でその濃密な絶望に気がつくはずだ。

今回はそれがなかった。


いったいどうなっているんだ?

今回のアリスは・・・


「それは、彼女にその記憶がないから。

私たちは『アリス』の記憶から絶望を感じるでしょう?

だからよ、きっと。」


女王が眉を寄せ苦しそうにうめく

きっと彼女にも今回のアリスの本質がわからないんだろう。


「だとすれば、それが今回のアリスの―――――」


「そうね、たぶん・・・そういうことになるわ。」


「・・・・」


「・・・・」

しばしの沈黙ののち先に口を開いたのは女王だった。


「まぁ、あなたにもあんな過去があるし

最初はどんなつもりなんて言ったけど、今回のことは仕方がないと思うわ。

でも、アリスが帰ってきた後、彼女に対する態度を変える必要があるのは

あなたもわかってるわよね?」


そこまで言って、ふっ、と見ほれるほどあでやかに微笑んで

女王は

「私は広間に戻ってるわ、白兎が戻ってきたら伝えて頂戴。」

といってその場を去って行った。


最後に


「あぁ、そうね、言い忘れてたけど。

今度アリスにひどいこと言ったら鎌飛ばすわよ☆」


という背筋も凍るようなセリフを笑顔で言い残して行きながら。




さて、アリスが帰ってきたときどんな言葉をかければいいものやら・・・・






更新遅くなってすいませんでした。

今回はちょっとだけ住民の特殊能力?見たいなのが明らかになりましたね。

此れから少しずつ帽子屋の過去とかに触れていきたいです。

受験勉強で更新が遅れることがあるかもしれないですが

なにとぞこれからも宜しくお願いします。


ではでは、また次回(T_T)/~~~

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