白い兎は救世主?
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、こないでぇぇぇぇぇぇぇ。」
「なんで逃げるの、首輪つけるだけじゃん。ほらほらおいで」
こんにちは、皆さんおなじみのアリスです。短く状況を説明すると――――
私は今現在進行形で首輪を持ている紫の変態から逃げている最中でございます。
「ねぇねぇ、子猫ちゃん。ぼく、追いかけっこあきちゃったよぉ。ペットと遊ぶのは楽しんだけど
さすがにもう主人のぼくの言うこと聞いて、首輪付けてくれない?」
「誰が子猫じゃぁああああああ、あたしはペットじゃないし動物でもないれっきとした人間だぁあああ」
後ろを見れば文字どうり必死に走っている私にたいして
まるでピックニックにでも行くようなあしどりで、紫の変態がぴったりとついて追いかけてくる。
にやにやと人を小馬鹿にしたような表情が実に憎らしい。
―――― あぁ、もう!!なんなのよここは!
いきなり美形が現れたと思ったら猫耳のついた、しかも人をペット呼ばわりするような変態で
そのうえ、首輪をもっておいかけてくるって!
何が悲しくてこんな、死ぬ気の貞操死守鬼ごっこをしなきゃならないのよ!?
「っ・・、はぁ、はぁ」
やばい・・・後ろの変態は全然平気そうなのにこっちはもう足が動かなくなってきてる。
視界もかすむし、涙も出てきた。いったいどのくらいこうして全力で走ってきたんだろう。
・・・・もう!!誰か助けてよ!!
ついに足に力が入らなくなって、半ばヤケクソにそう思いながらその場にへたりこむと
「アリス。今、助けます。」
と凛とした涼やかな声が空から降ってきた。
そして、気がつくと白のタキシード、白のシルクハット、白の手袋という全身真っ白な(これはこれで目に悪い)
ついでにとても見覚えのある人間が目の前に立っていた。
その人間は、いつもへらへら笑って、私の夢の中に出てきて
色々と面倒事を持ちこんできたうさ耳をはやした人物――――――――
白兎だった。
「ちょ、へ、え!?なんであんたがここにいるのよ!」
「なんでって・・・ここはアリスの夢の中の世界ですから、それにそこにいる変態チェシャ猫の毒牙から
アリスを守るためでもあります。」
・・・・・え?
ここがあの夢の中の世界?
うそだ・・・
確かに澄み切った空とかは夢の中とにてる。だけど、こんな草だらけじゃないし
もっと花があって綺麗だった。それにあんな紫の変態なんて出てこない。
驚いて白兎を見るといつもと違って全然笑っていなかった。
てことは・・・
「本当に、ここがあの世界なの?」
「・・・そうです。」
絶句するあたしの横で、白兎は
「それよりも、いまはチェシャ猫です。」
とチェシャ猫のほうを見てうざったそうにその整った眉を、うんとひそめた。
・・・そうだよね。確かに今は目の前にいる変態のほうが先決だ。
貞操を奪われそうになったんだもの。だまってられるほど私も寛容じゃない。
「ねぇ、白兎。あの猫ぶっ飛ばせられる?」
私がそう聞くと、白兎はさっきまでかたそうに結んでいた唇をふっ、とつりあげて
「私を誰だとおもってるんですか?」
とチェシャ猫を見据えたまま自信満々に言ったのだ。
――――ねぇ、その言葉。
信じてもいいんでしょ?
誤字脱字報告、コメント大歓迎!なんて言える立場じゃないですけど
宜しくお願いします。