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番外編 アリスと・・・の物語 part2/3

◆◇番外編part2/3 『面影』アリス×ルキ◇◆


「ごめん、台所の場所教えてくれない?」


「二つ奥の部屋の左。いいかげん覚えたら?『アリス』なのにあんた頭弱いじゃん。」

冷たく告げると、目の前の女の人の顔が、つっとひきつる。

思ってること顔にでやすすぎ。

そこがまたむかつく。


アリスが恐ろしい表情をした日から一日たった今日。

まだ僕はこの『アリス』を許せない。

正直、あの場面でおとなしくこいつの言うことにつられたお兄ちゃんも馬鹿だけど、

なにもあんなにひどいことをしなくてもいいと思う。

口に出すのも憚られることをよくも自分の大切な兄にしてくれた、ホントに。


パズルをしながら冷たくあしらう僕に、アリスは笑う。


「分かった。ありがとね。覚えられるように頑張るね。」

なんでそこでまたにっこり全然傷ついてない風にするんだ。

ほんとに、ほんとにむかつく。

思わずピースをアリスが台所に行ったあとに壁に向かって投げつけてしまった。


だけど・・・こういう風に思う自分にもちょっとだけ嫌悪感が生まれる。

わかっている、アリスがあんなことやりたくてしたわけじゃないと。

それに、きっとアリスの怒りの感情を高ぶらせたのは自分だ。


たとえ、お兄ちゃんが最後の導火線に火を付けそれを爆発させたとしても。


少しばかり暗い後悔の気持ちにさいなまれていると

台所からアリスの能天気な声が聞こえた。

「ルキ、チェシャ猫。ご飯出来たよ。」


もしかして・・・

さっきの言葉がまったくきいてない?


普通の人間ならあれくらいの嫌味を言われたら

声をかけるのもためらうのに。


すこしいたたまれない気持ちになって

出向いて見ると


思わず


ドクン

と心臓が早鐘をうった。


・・・・・かあさん?


あとから考えてみると

死んだはずの人間がここにいるはずないのに


けど、そのときはなぜか

エプロンをまとったアリスが母親に見えた。


ほほ笑みながら

お皿を同じ部屋にあるテーブルに置いていく姿は

とても綺麗で、・・・母さんに似ていて。


きっと、その時の僕はおかしかったんだ。

だって、母さんは僕に料理を作ってくれたことなんてないから。

そんな優しかったことなんてないから。


それにアリスと母さんは全然違う。

全く似ていない。


なのに・・・・

気付くと体が勝手に動いて

僕はアリスに抱きついていた。


しかも泣きじゃくりながら。

「かあ、さん・・・ふぇ、わぁぁぁん!!」


「え!?ちょ、ルキ!?」


上からアリスの驚いた声が聞こえる。

でも、止まらない。

またそれが母さんの声に重なって、ますます僕の涙腺を緩めた。


「うく、ひっく・・・母さん・・・」


その時、アリスは何を思ったんだろう。


呆れていた?

驚いた?


それは分かんないけど

ただ一つ確かなのは


アリスが僕を


大切に、壊れ物を扱うように

おずおずと、それでもしっかりと


ぎゅっと、抱きしめてくれた。


僕の涙が止まるまで

ぎゅっと。




「ごめん・・・アリス。」

泣き終わったとき、おずおずアリスに抱きついたまま顔をあげて言うと

アリスは、とても優しい笑顔で


「・・・うん。気にしないで」と答えた。


その時、僕は不覚にも

また泣きそうになってしまった。




だって

叶わないこの気持ちに

気付いてしまったから・・・・







神様。

この気持ち


僕はどこに持っていけばいいですか・・・・・?



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