大事件
アリスが見つからない。
彼女が城を抜け出してからもう数日が経った。
座っている椅子の前にはそのことに関しての書類が山積みになった机があるが、どれも全く手につかない。
「ねぇ、白兎。大丈夫?」
同室で同じように多大な量の書類を処理している女王が心配そうに声をかけてくる。
「大丈夫ですよ。ちょっと考え事をしていただけです。」
そう笑って白兎が言うと、さらに女王の顔が陰った。
「そう?あなたずいぶん顔色悪いわよ?手鏡あるから、よく見てみなさい。」
確かに、差し出された小さくけれども、細緻な装飾の施された鏡で自分の顔を映してみると
もうほとんど病人に近い、ロウのように顔色が白くなっていることに気がつく。
ホントは、心配で、心配でたまらない。
なぜ、ここですわって机に向かっていられるか不思議でならない。
できることなら、国中を走り回って、アリスを見つけて、そして叶うことなら思いっきり抱きしめたい。
けれども、いまここでアリスを自ら探しに行くことは、この膨大な書類の全てを女王に丸投げすることとおなじだ。
正直、ほかの者ならば迷わずそうするが、女王となれば話は別になる。
長年、こうして一緒に仕事をしてきた情はやはり厚い。
白兎は、そんな自分の、目の前の物の一つも切り捨てられない甘さにふっと自嘲気味に笑った。
同時に再会した、あの広大な野原で初めてアリスが見せた花がほころぶような微笑みが思い出された。
なぜ、こうも上手くいかないのだろう
別に彼女を傷付けたいわけじゃないのに。
ホントはもっと笑ってほしかったのに。
はぁ、と深いため息をつき、襲いかかる後悔を振り払うように目の前の自分に課されている
仕事に戻ろうとしたとき
バン
いきなり勢いよく、部屋のドアが開いた。
「どうしたのトゥーイ―ドル。片割れを置いてきてくるなんて珍しいじゃないの。」
現れた背の高い青年に女王が驚いたように声をかける。
確かに珍しい、あのいつも一緒で気持ち悪いくらいにべったりな双子の門番が一人でいるなんて。
何があったんだ?
一人で来るくらいだから、よほどのことがあったのだろう。
心の中で小首をかしげる二人に、一人の門番は切羽詰まったように
悲鳴に似た言葉を紡いだ。
「白兎、女王様。やばい、ありすがどっかにいちゃったこと、住民にばれた。
いま、もう一つの門側にそいつらが押し掛けてきてる。ディーが防いでるけど、もう持ちそうにない。」
最悪な出来事を告げるその言葉に耳を思わず疑った。
女王のほうを見れば、彼女もまた、信じられないという風に目を丸くしている。
この城には二つの門がある。
紫猫の迷い森に面した門と、城下に広がる町に面した門だ。
普段、町の門には訪問者も少なく、どちらかと言えば森からチェシャ猫を入らせないように門番の
トゥ―イ―ドルを置いているため、町に面した門の警備は手薄である。
でも、なぜ。
そのことが白兎には分からなかった。
まだ住人にはアリスが来たことは知らせていないはずだ。
だが、それはダムが次に言った言葉で明らかになる。
「俺、アリスにこの前、森側の門を開いたんだ・・・・
ごめんこんなことになるなんて思わなかった。」
申し訳なさそうにうつむくダムの前で、女王の叫び声が響いた。
「早く言いなさい!!!この馬鹿!!」
そうして血相を変えて彼女がこっちを向く。
「白兎、町側の門にいって住民を説得してきて。もうこの際書類がどーのこーの言ってられないわ。
トゥ―イ―ドル、二人でアリスを探しに行きなさい。あなたたちならあの変態猫の家の場所わかるでしょ。・・・・・・あのバカ猫今度ばかりは見つけたらただじゃおかないから!!」
大変なことになりそうだ。
鬼の形相で叫ぶ女王の指示を聞きながら白兎は思った。
あっのクソ猫、今度は何やらかしたやがったんだ・・・・・?
どこかで皮肉な笑い声が聞こえた気がした。
はい。今回は微妙な三人称で書いてみました。
ホントは苦手なんですけど、やっぱりたまにはこういうのもいいかなと思って書いて見tました。お見苦しい文章力の無さですがどうぞ宜しくお願いします。
さてさて『夢見の国』の物語もいよいよ14話になりまして、15話目に突入しましたところで番外編をやらして頂きたいと思っております。
なので、早いものですがアンケートを実施しております。詳しくは最新の活動報告をご覧ください。皆さんの意見をお聞かせもらいたいと思っております。
ない知恵絞って出したアイディアですのでちょっとましなものが入っていないかもしれませんが、どうぞ宜しくお願いします。
・・・・皆さんの意見がないと、番外編ができません、・・・うぅ(泣)
ではでは、($・・)/~~~