双子のゲーム
目の前で怪訝そうにぼくたちを見つめている少女。
そりゃそうだろう。
同じ顔で同じ声。槍を持っている手も同じ。
初めてぼくらを見る人はたいてい驚く。
そんな少女にいつも言っている言葉、これまで何百回も言ってきた言葉を
二人で同時に仮面をかぶりながらまた言う。
『ぼくらは城の門番、トゥーイードル兄弟。門を通る合言葉は?』
◇◆◇◆◇◆◇
目の前で同時に不自然な笑顔で、合言葉は?と聞く二人。
合言葉・・・・?そんなの知るはずない。
私は初めてここに来たのだから。
「知らないわ・・・・私は城に来たのはこれが初めてよ。
入る時も気を失っていたらしーし。」
『はじめて?気絶してたら一人で来れないはずだけど・・・』
また同時に不自然な笑顔で言う。
多分見た目が似ていることからして、双子なんだろうけど
ここまで言うこと考えることが一致するものなのかなぁ。
なんだか、申し訳ないけど・・・気味が悪い。
「白兎に連れてこられたの。あなたたちも門番なら、見ているはずだと思うけど。」
『あぁ、確かにいたねぇ。でも、あんまし覚えてないや。
それに君がこの城に初めて来たっていうのも証拠がないし。
何か証明できるものある?』
こいつら・・・見た目じゃ分からなかったけど
話してみると相当性格がひねくれている。
白兎がいたのは覚えているけど一緒に私がいたことは覚えてないって・・・
しかも証拠を出せとかいうし。
合言葉を知っていないこと自体証拠でしょうが!!
みるみるうちにたまっていく怒りを何とか抑え込めて、
私は努めて冷静に見えるように言った。
「そうね・・・証拠はないわ。でも、この城の人間なのに
城の中に住んでいる人間の顔も覚えてないの?」
『覚えてないよ。そんなの興味ないもの。』
けだるそうに続ける二人。
本当にどうでもいいと思っているようだ。
私が次の言葉を紡げないでいるとふいに二人が
にまぁ、と面白いいたずらを考えついた子供のように笑った。
『・・・・じゃぁ、ぼくらの退屈を紛らわせてくれたら通してあげる。』
「・・・なにをするの?」
『ぼくらとゲームをするんだ。ぼくらをどっちがどっちか見分けるゲーム。
ぼくらは兄弟。どちらが弟でどちらが兄だと思う?』
そうして腕を交差させながら、ぐるぐると入れ替わったりもとにもどったりする二人。
やばい・・・・どっちか分かんない。
かなりの難問だ。
つーか、さっきから同時にしかしゃべってないんだから兄か弟かなんて
分かるはずないし。
頭を悩ます私の前をトゥーイードル兄弟が満足そうに入れ替わりながら笑う。
「あんたたちねぇ、さっきから一緒にしかしゃべってないんだから、どっちが弟か
兄かなんて分かるはずないじゃない。せめて名前を教えなさい、名前を。」
『・・・それもそうだね。分かったよ。』
そういっていったん止まって別々に自己紹介を始める二人。
こういうところは素直なんだ・・・・
「ぼくは、トゥーイードル・ダム。」
「ぼくは、トゥ―イ―ドル・ディー。」
『二人揃ってトゥ―イ―ドル兄弟。さて?どっちが兄で弟でしょう?』
う~ん、名前がわかっても大して変わらないか・・・・
うん?ちょっと待ってよ。もしかしたら・・・・
「え~と・・・たぶんだけど、ダムのほうがお兄ちゃんで、ディーが弟でしょう。」
二人が顔を見合わせて驚いたように言う
『なんで分かったの!?』
あぁ、やっぱり。
ほんとに勘と言ってもいいくらいなんだけど、
二人別々に自己紹介した時に先にしゃべったダムがお兄ちゃんじゃないかと思ったんだ。
言うときは、ほぼかけに近かったけど・・・
「さっき別々に自己紹介した時あったでしょう?その時ダムが先にしゃべったから
ダムがお兄ちゃんかなって思ったんだ。双子ってなんか無意識にそういうのありそうだなって。」
私の正解した理由を聞いて、感心したように手を打って納得する二人。
なんか本当に7,8歳の子供の相手をしているみたいだ。
「はい、あてたから、通してくれるんでしょう?」
『もちろん!!ぼくたち嘘だけは付かないからね。』
そう言って、二人は私を通らせるために硬くて大きな門を開けてくれた。
この外には何が待っているんだろう。
本当に・・・なんでこの世界に来てしまったんだろう、私は。
木がまるで私を迷わせる迷路かのように沢山並んでいるそとの景色を見ながら
暗くなる気持ちを何とか浮上させ、いたずら好きな双子の兄弟に
さよならを言って、私は門の外に足を踏み出した。
◆◇◆◇◆◇
アリスが外にでて、森に入るまで黙っていたダムが急に口を開けた。
「・・・すごかったね。今回のアリス。」
「うん、なんでわかったんだろうね、いままでだれも見分けられなかったのに。」
「それもそうだけど、ぼくが言っているのはアリスの目だよ。とっても暗かった。」
あぁ、それか。
それには僕も途中で気がついてた。
ぼくたちにさよならを言った時、笑顔だったけど、彼女の瞳だけは異様に暗かった。
まるでせかいの混沌と闇を全部煮詰めて流し込んだかのような・・・
あんな怖い、吸い込まれる目を持ったアリスはいままで見たことがなかった。
「ねぇ、ディー『アリス』のことどう思う?」
「ん?別にどうも思わないけど・・・そうだなぁ、普通の人よりはちょっと面白そうかな?」
そういった時点でダムがおかしいくらい真剣な顔でいることに気がついた。
いや・・・真剣じゃない、これは、怯えているんだ。
「ぼくは、『アリス』の目を見たとき本当にこの世の終わりを見たような気がした。
暗くて、何にもない虚無の目・・・。ねぇ、ディー、ずっと一緒にいようね?」
突然そんなことを言ったダムの考えていることは、いつものようには分からなかったけど
なんだか、大変なことのように思えて、ぼくも言葉をかみしめながら言った。
「そうだね・・・ずっと、ずっと一緒にいようね。」
今回はちょっと長くなりました。
更新が次からいつできるか分からないので早めに投稿しとこうと思って
二日連続の更新です。
感想などありましたら宜しくお願い致します。
では($・・)/~~~