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水たまり

掲載日:2026/09/16

 引越しをした。

 いろんな物を断捨離して、私は引越しをした。

 新居での朝は、少しひんやりとした。

 昨晩寝る時に雨音がしていたから、それで気温が下がったんだと思う。

 断捨離をしたといっても、荷物はそこそこある。

 引越し会社のキャラクターが描かれたダンボールが、部屋のあちこちに置いてある。

 とりあえず設置したカーテンは丈が足りなくて、床からだいぶ浮いている。

 そこから差し込む日差しは明るくて、雨は上がったんだなと思った。


 引越しをしたけれど、まだ仕事は決まっていない。

 生活防衛費は数ヶ月分は残ってるから、今日は新しい地を探検しようと思ってる。

 前日に買っておいたパンを齧り、温かいコーヒーで流し込む。

 そしたらダンボールから衣類を適当に見繕って、着替えたら冒険だ。


 玄関を開けて、外に出る。

 思った通り、空は晴れていた。

 雨上がりの、少しむわっとしたにおい。

 そして、ひんやりとした空気を、深呼吸をして肺に取り込み、一気に吐き出す。

 体の中に溜まっていた嫌なものを、綺麗な空気で外に出すような感覚。

 ただそれだけで、体が、心が少し軽くなる感じがする。


 知らない道を歩く。

 全てが新鮮だった。

 道路には水たまり。

 私はその水たまりを覗き込む。

 靴でちょんと水たまりに触れると、波打って、昔の疲れた顔の私が映った気がした。

 そして、家庭環境の不和、疎外された前の職場、暴力を振るってきた元彼、散らかった部屋。

 それらが水面が揺れる度に、フラッシュバックのように映し出される。

 嫌な思い出。

 嫌な記憶。

 でも、それらは断捨離した。

 新しい地で新しい生活が始まった。


 ──バシャッ。


 水たまりを靴で踏みつける。

 弾けた飛沫が靴を、足を汚す。

 でもそれでいい。

 嫌なものを踏みつけて、水面が落ち着いてくると、今の私の顔が映る。

 心機一転。

 これから私は、新しい日々を歩んでいく。

長靴があれば無敵。

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