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第8話 冒険者ギルド

 スタンピードが終息し、郊外へと配置された騎士団が冒険者達と共に王都へ帰還した。

 その中には、レイアとケイラの姿もあった。

 俺達は、互いに生き残れた事を喜び、熱い包容を交わした。

 

「良かった!」

「うん!こっちは、大丈夫!

 母さんが、大活躍してたし!

 そっちの方は…凄い事に成ってたみたいだけど?…」


 ケイラがサイクロプスの方を向いて言ってきた為、俺は火傷した左手を出して答えた。


「ちょっと無茶したけど、大した事ない。」

「ちょっとて…」

 

 ケイラは、俺左手を心配そうに見つめていた。

 まあ、こうする以外方法が思い付かなかったし、転倒の衝撃で持っていたポーションが全部割れたせいで、治したくも治せないしね。

 

 ケイラと話していると、ダン団長やって来た。

 きっと、“あの事”だろう。


「すまないが、少し外してくれるか?」


 俺はダン団長に向かって頷き、レイアの方へ行った。

 そこで、無茶をした事を叱りなら、手を治してくれているレイアを他所に、俺は2人を見守った。


「ケイラ候補生。

 士官学校での事、その事で君に課した処遇を含め、誠に申し訳なかった!」


 ダン団長は、ケイラに向かい深く頭を下げた。

 ケイラは、微笑みながらダン団長に言った。


「ダン団長、頭を上げてください。

 私は、あなたを恨んでなんかいません。

 あの時、あなたが私を止めてくれたから、私は“あいつ”を殺さずに済んだんです。

 それに、今の私は新しい道を見つけました。」


 何か物騒な言葉が混じっていたが、2人の蟠りが溶けて良かった。

 ダン団長も、思い詰めた顔が明るく成った気がする。


 その後、ダン団長は本部の方へ戻り、それと入れ替わるかの様に、城の方から高貴な馬車と、複数の騎士が馬車を護る様な形でやって来た。

 馬車から、モノクルをかけた初老の男が降りてきた。その男は、アスラン王国の紋章が描かれた書状を読み始めた。


「冒険者諸君。

 わたしは、宰相を勤めるマーリンという者だ。

 よろしく頼む。

 これより、アスラン王国の国王であらせられる、デズモンド陛下の御言葉を読み上げる。

 一同、心して聞くように。」


 宰相を矢面に立たせ、王は城に護られるか…

 騎士の国の王にしては、随分と臆病だな。

 回りを見ると、王の行動に若い騎士達は不満を隠しきれていなかった。

 武道派のこの国も、他国に染まったという事か…


「『勇敢なる冒険者達よ。

 此度の戦、誠に大義であった。

 礼として、全員に特別報酬を配布する。

 この先も、魔物との戦いに尽力して欲しい。』

 以上だ。

 これから、陛下より預かった特別報酬を配布する。

 では、頼む。」

「はっ!」


 付きの騎士が、巾着袋で小分けにした報酬を冒険者1人1人に配っていった。

 中を見ると、“1,000,000ぺルー”分の金貨が入っていた…

 ん?

 なんだこれ?

 袋の中に、円形ではなく楕円形の金貨が1枚入っていた。

 それを取り出し、物珍しそうに見ているとレイアが話かけてきた。


「あら、珍しい。

 それて、東方で流通している金貨じゃない?」

「東方の金貨?」

「そう、東方に“フジノ国”て言う少し変わった国があるの。

 そこで流通している硬貨は、他国とは形が違うのよ。その金貨も、その1つてわけ。

 でも、普通に使う事が出来るから心配は要らないわ。」


 東方の金貨か…税金にでも混ざっていたのか?

 …まあ、使えるなら問題ないか。

 俺は、東方の金貨を袋に戻した。

 報酬の配布が終わると、宰相と護衛の騎士達は城へ戻っていった。

 俺達は、そのまま自然解散という形で王都を出て、それぞれの家へ帰った。

 


 スタンピードが終息して、2週間が経った。

 俺達は、依頼を受けて魔物と戦ったり、薬草を採取したりといつもの生活に戻った。

 しかし、スタンピードの影響によって魔物の出現率が上がり、報酬額と依頼内容の釣り合いが取れないと揉め事が起きたり、駆け出し冒険者が分不相応の魔物と戦って死んでしまったりと、各地で問題が発生した。

 今までも、冒険者の仕事は不安定な物だったが、今はそれ以上に不安定な物に成ってしまった。

 

 明け方まで魔物と戦い、昼過ぎに起きて下へ行くと、レイアが誰かに1通の手紙を書いていた。


「おはよう、レイア。

 ん?それは?」

「おはよう、アル。

 これは、古い友人に宛てた手紙よ。」


 手紙の封筒を見ると、宛先に


『レイブン王国 宮廷魔術師 アメリア・ヴィレーネ へ』

 

 と書かれていた。

 

「宮廷魔術師に友人がいたの?!」

「ええ、アメリアとは魔法学校以来の仲よ。

 まあ、友人て言っても、彼女はずっと年下だけどね。

 アメリアは、先代の女王から宮廷魔術師として働いているのよ。

 だから、今の冒険者達の問題を解決出来るかも知れないこの案を、今度の4ヵ国会議で検討して貰えないか、手紙に書いているの。」


 手紙には、こう書かれていた。

 

『親愛なるアメリアへ。


 長い事合えていませんが、お元気ですか?

 私の方は、冒険者として上手くやっています。


 この度、手紙を送ったのには訳があります。

 それは、スタンピードが終息してから、各地で魔物の出現率が急増している事です。

 これは、貴女も気付いていると思います。

 そして、出現率の急増に伴って、冒険者と依頼者の間に問題が多々発生しています。

 私は、冒険者と依頼者のやり取りをより円滑に進め、今ある問題を解決する為に、1つの案を考えました。

 それは、冒険者による自由組合“冒険者ギルド”を開設するという物です。

 ギルドの開設には3つの利点があります。


 1つ目は、冒険者の管理です。

 私達が所属している魔法協会の様に、冒険者をギルドに登録させる事で、個人の強さや職業を明確にして管理する事が出来ます。

 

 2つ目は、依頼交渉での問題解消です。

 “依頼者は依頼をギルドに申請。

 ギルドは依頼内容の詳細を依頼者と交渉した後、冒険者に配布して仕事に当たって貰う。”

 こういった体制を作る事で、冒険者と依頼者の間で起こる“報酬交渉での問題”を無くす事が出来ます。


 3つ目は、依頼達成率の向上です。

 これは、1つ目と2つ目の内容にも関係しています。

 依頼内容の交渉の際、ギルドで依頼の難易度を設定し、登録した冒険者の強さによって“受けられる”、“受けられない”を選定する事で、冒険者の死傷率の低下と、依頼達成率の向上を行う事が出来ます。


 しかし、これは私1人の力では実現させる事が出来ません。

 よって、この案を貴女から女王陛下へ進言して貰い、女王陛下を通じて今度の4ヵ国会議にて発案して貰いたいと考えています。

 そして、これを各国の国家事業として進めて貰えれば実現出来ると考えています。

 その価値は、充分あります。

 

 どうか宜しくお願いします。

 

             貴女の友 レイアより』


「これが、上手く行けば全て解決出来る…」


 レイアはそう言うと、手紙を封筒に入れ、簡易式の転移魔方陣を描き、手紙をレイブン王国のアメリアへ送った。


 それから、更に2週間後。

 レイアが発案した冒険者ギルドの開設は、現在王達の頭を悩ませている問題の解決にも繋がった為、可決された。

 王達は、冒険者ギルドを国家事業として、莫大な資金を投資し、各国へ支部の配置や情報網の構築等を行っていた。

 そして、遂に冒険者ギルドは開設された。


 俺達は、開設とほぼ同時期にギルドで冒険者登録をした。

 その際、スタンピードでの多大な活躍から、高い実力を認められ、狼の牙はS級冒険者パーティーと認定された。

 更に、冒険者ギルドが開設された事により、冒険者間の距離が以前より縮まった事で、俺が『サイクロプスを単身で倒した』と言う噂が冒険者間で広まっていった。

 その広がっていく噂の中で、俺はある二つ名で呼ばれるように成った。


 白髪で狼の牙のメンバーという事から

 “白狼”と呼ばれるように成った。

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