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第3話 3人からの教え

 冒険者パーティー“狼の牙”の一員と成ってから2年間が過ぎた。

 その間、ザック、ギュンター、レイアから、冒険者として生きていくのに必要な知識や技術を教わった。



 ザックからは、戦う為の剣術を教わった。

 しかし、剣術の練習を始めると言った日、始まったのは踊りの練習だった。

 

----------

「ザック、今日は剣術を教えてくれるて言ったじゃん?

 何で、踊りの練習をしなきゃいけないんだよ?」


 僕は、ザックの手拍子に合わせて、踊りながら聞いた。

 当然の質問だと思う。僕が成りたいのは、踊り手じゃなくて剣士なんだから!

 ザックは、“やれやれ”といった顔で答えた。


「分かってないな。踊りと剣術は紙一重なんだぞ。俺の師匠も良く言っていた。

『一流の剣士に成りたかったら、まずは一流の踊り手に成れ。』てね。」


 ザックの剣の腕が凄いのは良く知っていた。

 以前、ザック達と一緒に魔物狩りに行った時、ザックは背中の剣を抜くと速く、鋭く、それでいて滑らかな剣捌きで10体以上の魔物を倒していたからだ。

 だから、そんなザックに剣を教えた師匠も同じくらい凄い人だって分かる。

 でも、この教え方…正直変人じゃないのかとも思う。

 それから、暫く踊りの練習をする日々が続いた。上手く踊れるように成ると、ザックは手拍子を止めて言った。


「よっし!そろそろ良いな。アル、今度はこれを使ってみろ。」 

 

 ザックは剣を投げて言った。


「お前の剣だ。長さは短めだが、お前の身長なそれくらいが使い安いだろう。持ってみた感じはどうだ?」


 貰った剣を抜いて、振ってみた。

 思っていたより重い。でも、使えない程では無い。

 それよりも…良く分からないけど…胸が高まるような感じがする!


「うん。良い感じ!ありがとう!」

「おう!じゃあ、次は俺の動きを見て、それに合わせて動いてみろ!」


 そう言うと、ザックは剣を抜き、構えから型までの、一連の動きを見せた。


 “右上から左下へ一太刀、左から右へ一太刀、

 右から前方へ突く”


 前に見た時は気付かなかったが、動きを追うように見た今なら分かった。


 “身体の重心を軸に、バランスを保ちながら動く”


 これが、剣術の基本であると。

 踊りの練習をしていたのは、この基本を体得させる為だったと。

 僕は、基本の動きを崩さずに、ザックの動きに合わせて型の練習を始めた。


 ザックは、徐々に速度を上げたり、型を1つずつ増やしながら指導を続けた。

----------


 型の練習を終えた後は、パーティーメンバーとの模擬戦や魔物との実戦を通じて経験を積み、着々と剣の腕を上げていった。



 ギュンターからは、ポーションの作り方を教わった。

 ギュンターが、『ポーションの作り方を教えてやろう』と言った時は、それは魔法使いであるレイアに教わるのが普通だと思った。

 しかし、実際に薬草やポーションの事はギュンターの方が詳しかった。

 それに、手先も器用だった。


----------

「ギュンター!探している薬草てこれ?」


 僕は、人の形をした木の根を持ち上げてギュンターを呼んだ。


「おお、それだ!そこに、生えていたか!」

「これて何?

 形が人みたいで不気味なんだけど…」

「これは、“マンドラゴラ”と言う薬草だ。

 確かに、見た目は不気味だが、毒や麻痺と言ったやらゆる状態異常を治す事が出来る、万能薬“ハイポーション”の材料となるんだ。」


 じゃあ、結構貴重は薬草なんだ…

 ?!


「ちょっと、待って?!

 何でギュンターが、そんな事知っているの?!」

「ん?ああ、言ってなかったな。

 このパーティーで使っているポーションは、全部わしが作っているんだ。」


 以外だ…そいうのは、魔法使いの仕事だと思っていた…


「まあ、本来なら魔法使いであるレイアが作るのが普通なんだが、彼女は…何ていうか不器用なんだ。

 アルも分かるだろ?レイアが料理当番の日を思い出してみろ。」


 …あー、納得した。

 レイアが料理当番の日は、必ず台所が火事に成りかけ、野菜を切る時も必ず回復魔法が使われていた。

 そして、完成した料理は、黒い肉や“べちょべちょ”のスープばかりだった。

 確かに…レイアが作ったポーションを飲んだら…考えたくもない!


「そうだ、アル。帰ったら、ポーションの作り方を教えてやろう。

 お前は、手先が器用だからきっと作れるだろう。それに、作り方を覚えておけば色々と役に立つぞ?」

「うん!お願い!」


 家に帰ると、ギュンターはポーション作りに使う調合器具と鍋を出して、採取してきた材料を並べた。


 ・マンドラゴラ…状態異常を治癒する薬草

 ・アロボラン…傷を治癒する薬草

 ・マナタイト…魔力が凝縮された鉱石

 ・フュールの種…調合率を向上させる種

         調合の必需品


「これから作るポーションは、傷や状態異常を治癒する万能薬“ハイポーション”と魔力を回復させる“マナポーション”だ。

 最初は、ハイポーションから作ろう。

 まず、マンドラゴラとアロボランを繊維に沿って切る。」


 ギュンターは、まな板の上でマンドラゴラとアロボランを繊維にそって細かく切った。


「こうやって、繊維に沿う事で薬草の効果を落とさずに切る事が出来るんだ。

 次に、切ったマンドラゴラとアロボランをすり鉢に入れて、細かく()()。」


 ギュンターは、すり鉢の中に切った薬草を入れ、ゆっくりと細かくなるまで()()()


「次は、フュールの種を潰して、油を絞り出す。

 そして、鍋に水と絞り出した油を入れて、火で熱しながら混ぜる。」


 ギュンターは、種を潰して油を絞り出し、水と一緒に鍋へ入れた。鍋に火をかけ、ゆっくりと混ぜた。

 しばらく混ぜると、鍋の中の水が茶色く濁ってきた。


「これでよし。最後に、細かく()()()薬草を鍋に入れて、色が分かるまで混ぜたら完成だ。」


 ギュンターは、鍋に細かく()()()薬草を入れ、ゆっくりと混ぜた。

 混ぜていくと、鍋の中の水が明るい緑色に変わった。


「完成だ!アル疲れただろ?1口飲んでみろ。」


 鍋を混ぜていたスプーンで、完成したハイポーションを掬って飲むと、不思議な事に疲労感が完全に無くなり、身体が軽くなった。

 

「その様子だと、成功だな!

 元気に成ったところで、次はマナポーションを作ろう。

 これは、ハイポーションより簡単だ。

 まず、ハイポーションと同じ様に、鍋に水とフュールの種の油を入れて、火で熱しながら混ぜる。」


 ギュンターは、ハイポーションと同じ様に、鍋に水と油を入れて、茶色く濁った水を作った。


「次に、マナタイトを砕いて、細かくする。

 これは、しっかり砕いて、粉末にする必要がある。」


 ギュンターは、マナタイトをハンマーやすり鉢を使って、粉末に成るまで細かく砕いた。


「次で、最後だ。

 粉末にした、マナタイトを鍋に入れて、色が変るまで混ぜる。」


 ギュンターは、粉末にしたマナタイトを鍋に入れて、ゆっくりと混ぜた。

 混ぜていくと、これも色が変わっていった。


「うん!完成だな!

 どうだ?綺麗な青色だろ?」


 青?僕には、紫色の光が強くて、青紫にしか見えない。


「これは、レイアに取っておこう。魔法が使えないわしらには、必要ないからな。

 それと…アル…良く聞いてくれ…」


 ギュンターが、思い詰めた顔で、僕を見て…いや、眼を見て言った。


「このマナタイトは、魔力の回復や魔道具の材料に使われる、加工しやすい便利な鉱石だが、もう1つ厄介な性質を持っているんだ…」

「何?」

「それは、“人を魔人にさせる”性質を持っているんだ。」

「魔人?!」

「そう、魔人だ…

 正確に言えば、人間は高濃度の魔力に当てられた状態で死ぬと、魔人と化す。

 これは、間違えないでくれ。“魔術師”や“魔導師”と言った高い魔力を持った者や、魔道具などのマナタイトを使った物は、大して魔力濃度は高く無い。

 あくまで、高濃度の魔力は純粋なマナタイトにしかない。」


 魔術師?魔導師?

 魔法使いとは、違うのか?…

 まあ…それはいいや。


「そして、魔人は何故か“人間だけ”が成るんだ。

 その理由は、まだ誰にも分かってない。なかには、“人間が持つ何か”が原因という説もある。だか、その“何か”が何なのかも解明されていない。

 わしとレイアは、亜人だから問題ないが、お前とザックは充分に気お付けて欲しい。」

「分かった。マナタイトには気お付けるよ。」

「ああ、そうしてくれ…」


 僕とギュンターは、調合器具を片付くて、夕飯の支度を始めた。

----------


 この時の俺は、魔人が何なのか、まだ分からなかった。

 “人間がある条件下で死ぬとなる”という認識しかなかった。

 レイアからの教えを受ける前までは…



 レイアからは、一般的な学問と魔物の知識を教わった。

 最初に一般的な学問を教わり、次に魔物の知識を教わった。

 学問を教わったきっかけは、レイアが魔物の生態を記載した本を使って教えようとした時の事だった。


----------

「アル、良く覚えて起きなさい。魔物と戦う時は、剣の腕と同じくらい知識が大切になってくるのよ。

 だから、今日はこれを用意したわ!」


 レイアは、魔物の知識を教える為の本を持ってきた。そして、その本の事を熱く語り始めた。


「この本はね、冒険者の間でも知る人ぞ知る1品なのよ!何て言ったて、魔物の生態から行動範囲までが、他のどの本よりも細かく書かれていて…」


 僕は、その熱狂的な説明を呆然と聞いていた。

 すごい熱量だ…まあ、レイアが本好きだって事は今に始まった事じゃないし…特に、“あれ”を見れば想像がつく。

 目線の先にあるのは、レイアが貯めこんだ棚いっぱいの本だ。

 でも、魔物について詳しい説明が載っている本なら、今の僕にはピッタリだと思う。

 …ただ、1つ…あの問題を除けば…


「ごめん…実は僕、字が読めないんだ…」


 その言葉で、レイアの説明がピタッと止まった。

 …そもそも、なんで読めると思ったんだろう…

 産まれてから約12年間、まともな環境で暮らしていたとは言えないし、やっていた事は雑用仕事ばかり…字を学ぶ暇なんてないよ…

 レイアは、申し訳なさそうな顔をして言った。


「えっと…じゃあ、まずはこれを使って、字を覚えるところから始めましょ!」


 レイアは、本棚から簡単な言葉で書かれた本を出し、字の読み書きを教えた。

 いわゆる、“児童書”だ。


 字の勉強を進めていく内に、レイアが何で本が好きなのか分かるように成った。

 確かに、本は面白い。特に、民話や神話はお気に入りで、勉強の合間に何度か読み直している。

 民話には、その地域に纏わる怪談や御伽話が、神話には、神や悪魔と言った抽象的な存在の物語が書いてあった。



 僕が字を完全に読める様に成ると、レイアは最初に持って来た本を出し、魔物の知識関する勉強が始まった。


『粘液種:一般的にスライムなどと呼ばれてい

     るこの魔物の身体は、名称の通り液

     体と同等の物質で構成されおり…』


 本の内容は、レイアが熱弁していた通りだった。魔物の種類、構造、生態などが詳しく書かれていた。

 たが…


「これて、何の役に立つの?」


 これが、読んだ感想だ。少しガッカリした表情で言ってしまったが、本に書かれた内容で役立ちそうな事は、種類ごとの生息地域しかなかった。

 レイアは、頭を抱え、少し呆れた顔で答えた。


「アル…この本の一番の利便性は、魔物の弱点を見つけられるという点にあるのよ?」

「魔物の弱点?」

「そう。例えば、今読んでいる粘液種の説明には、『液体と同等の物質で構成されている』て書いてあるでしょ?

 つまり、粘液種て言うのは動く液体なのよ。

 そして、液体は剣では切れないし、弓でも傷付かない。

 でも、熱で蒸発する。

 だから、粘液種と戦う時は熱を与える事が大切なの。

 魔物との戦闘は、種類によって戦い方が変わってくるのよ。」


 なるほど…そんなの読んだだけじゃ分からないよ!

 字が読めない事を言った時もそうだったけどさ…

 まあ、いいや…どうすれば良いか分かったし。


「じゃあ、僕が読み進めていくから、弱点とかの重要なところを教えて。」

「分かったわ。」


 僕が読み進め、レイアが解説をする。こういった形で魔物の勉強が進んでいった。

 最終的には、自分が覚えやすいように、要点をまとめて綴った。


『種類:粘液種

 個体名:スライム、スワンプシング、…

 活動地域:湿地など湿度の高い場所

 弱点:熱』


『種類:小鬼種

 個体名:ゴブリン

 活動地域:群れなら洞窟、単体なら全地域

 弱点:人間と同様』


『種類:巨人種

 個体名:トロール、サイクロプス、…

 活動地域:森にいる事が多い

 弱点:人間と同様(巨体を考慮すべし)』


『種類:竜種 

 個体名:ワイバーン、バジリスク、…

 活動地域:空、地竜系なら山岳地帯

      水竜系なら深水域

 弱点:空竜系なら羽

    水竜系ならエラ』


『種類:悪霊種

 個体名:幽鬼、カーストレイス、…

 活動地域:不明

 弱点:浄化魔法、神聖系結界』


『種類:屍種

 個体名:グール、ワイト、…

 活動地域:戦場跡地など死体がある所

 弱点:頭』


『種類:呪縛種

 個体名:人狼、吸血鬼、…

 活動地域:不明

 弱点:銀、聖水』


『種類:悪魔種

 個体名:インプ、サキュバス、…

 活動地域:不明

 弱点:浄化魔法、聖水』


『種類:混合種

 個体名:ハーピー、セイレーン、…

 活動地域:セイレーンなら海辺

      他は全地域

 弱点:人間と同様

    (希に心臓が2つ以上ある個体有り)』

 

『種類:昆虫種

 個体名:アラグノ、サンドワーム、…

 活動地域:森、地中

 弱点:殻と殻の隙間、関節』


『種類:獣種

 個体名:ワーグ、オーク、…

 活動地域:森、山岳地帯

 弱点:火』


『種類:魔人

 個体名:なし

 活動地域:不明

 弱点:核』

----------

 

 …そう、魔人は魔物なのだ…

 魔物の知識を学べた事は嬉しかったが…

 同時に、俺の身体の1部は魔物で出来ている事が分かって、複雑な気持ちに成った…


 それは、俺が人間であって、人間では無いという事だからだ…


 だが、俺はそれを利用する方法を見つけた。


       …この赫色の眼を…

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