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アヴァロンストーリー ~赫眼の冒険者と旅の仲間 名無き大地を旅する~  作者: I.M.カート
第2章 旅の仲間結集譚 狙われた聖教国編
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第20話 王女からの招待状

 聖教国防衛戦の最中、その様子を影から観察していた女がいた。


 その女は、オルムンドを使役者(テイマー)に仕立て上げたヴィーリアだった。


 ヴィーリアは、アルベルトとバジリスクの戦いの終わりを見届けた後、転移魔法を使って“主”の元へと帰った。



 薄暗い執務室で、1人の男が配下の帰りを待っていた。

 執務室に転移魔法陣が出現し、その魔法陣からヴィーリアが現れた。

 

「あら?待っていてくたの?

 嬉しい。」

 

 男は黙っていた。


「ねえ、少しは反応しても良いじゃない?

 …分かったわ。

 無駄話は嫌いなのよね。」

「分かっているなら、早く報告を始めてくれ。」


 男がそういうと、ヴィーリアは落胆し、報告を始めた。


「まず、貴方が作った魔道具だけど、凄まじい効果だったわ。

 魔物を使って軍を作るところまでは予想していたけど、まさかバジリスクまで出せるとは思わなかったわ。」


 男は、笑みを浮かべて答えた。


「我が作った物なのだから当然だ。

 それで?

 “もう1つ”の方はどうだった?」

「そっちも、充分機能していたと思うわ。

 背に“王女様”を守っていなきゃ、あれ程の戦いには成らないもの。」


 男の笑みが消えた。


「あまり、有用な情報ではないな。

 まあ、良い。

 あれは、効いていれば良いという程度の物だ。

 最も重要なのは、魔物を出現させ、使役出来たという点だ。」


 ヴィーリアは、その言葉に()()()()顔で答えた。


「意地悪…」

「まあ、そう言うな。

 お前の働きには感謝している。」


 男の言葉で、ヴィーリアは機嫌を直した。


「それで、聖教国の方はどうなった?」

「聖教国は、無事のままよ。

 今回の成果は、魔道具の機能が証明されただけ。」

「そうか…バジリスクを相手どっても滅びぬとは、()()()()の軍事力もバカに出来ないな。」

「正確には、バジリスクを倒したのは“1人の男”よ。」


 男は驚き、椅子から立ち上がった。

 

「それは、冗談か?!

 バジリスクの石化能力を1人で破るなど…」


 ヴィーリアは、男の言葉を遮って言った。


()()なら可能じゃなくて?」


 男は『白狼』と聞くと、再び椅子に座った。


「白狼か…

 確かに、奴ならやりかねん。

 我々の計画を完遂する為にも、奴にはどこかで死んで貰わなければならぬな。」


 ヴィーリアは微笑みながら、男の肩に手を置き、耳元で囁いた。


「時間は、たっぷり有るわ。

 今は、慌てずに期を待ちましょ?」


 男はヴィーリアの手を取り、笑みを浮かべながら軽く頷いた。


 この2人の計略により、大陸は激動の時代へと向かっていた。

 しかし、この時は誰もそれを知らなかった。



 聖教国防衛戦の終結から3日後。


 何だ?…

 白い光?…

 眩しい…


「…え…わた…す…」


 誰だ?…


 朦朧とした意識の中、誰かの話声が聞こえ、俺はゆっくりと目を開けた。


 ここは、どこだ?…

 ベッドに寝かされている…

 もう、朝か…

 そういえば、前にもこんな事…

 ーッ?!

 待て!!

 バジリスクは?!


 俺は慌てて身体を起こした。

 すると、近くで看病していた修道女のイブが俺に話しかけた。


「あ、お目覚めになられましたね。」

「イブ、バジリスクは?!

 戦いは?!」


 イブは落ち着いた顔で、俺の肩に手を置いて答えた。


「ご安心ください。

 バジリスクは、貴方が倒されました。

 それに、戦いは終わりました。」


 イブの言葉で身体の力が抜け、再びベッドへ倒れた。


「良かった…

 皆の犠牲は、無駄に終わらなかったんだな…」


 イブは優しい顔で、俺が倒れた後の事を話した。

 

 イブの話によると、戦闘後バジリスクによって石化された騎士達は、皆元に戻っりダン団長と共にアスラン王国に戻ったとの事だった。

 どうやら、バジリスクの石化能力は呪いによる物であり、神聖魔法で解除すれば石化は治るらしい。


 そして、バジリスクの毒を受けた俺は、戦闘後に意識を失い、クレアとパウロの手によってこの聖堂に運び込まれ、3日間も意識が戻らなかったらしい。


「2人のお陰で、俺は助かったて事か…」

「それもありますが、1番は貴方の身体です。

 バジリスクの毒を受けて、長い時間持ちこたえられる人間はまずいません。

 貴方が、()()()()()であれば助かりませんでした。」


 普通の人間か…

 …ん?

 ちょっと、待て。

 何で、イブは俺に向かって『普通の人間』て言ったんだ?


「イブ、今俺の事を…」

「そうでした。

 先程、貴方に渡して欲しいと、手紙を預かっておりました。」


 イブは俺の言葉を遮り、手紙を渡した。


 俺は無言で、手紙の封を開けて読んだ。


『拝啓 白狼殿。


 貴殿の働きによって、我が命を救って頂いた事をここに感謝します。


 また、その意も含み、1週間後に開かれる晩餐会に貴殿を招待します。


 貴殿の参加を心よりお待ちしております。


  レイブン王国 王女 エレナ ・ヴァローナ』


 『レイブン王国 王女』か…

 しかし、何故王女がこの国にいたんだ?


 俺はイブの方を向き、この国にいたであろう王女の事を聞いた。


「イブ、レイブン王国の王女が本当に、この国にいたのか?」


 イブは、俺への手紙の内容を悟り答えた。


「先の防衛戦が行われる3週間程前、この国には()()()()()()が参られておりました。

 そして、使役者(テイマー)の襲撃を受けた際、レイブン王国の要人のみが帰国出来ず、その方を護る為にアスラン王国より騎士が派遣され、防衛網が敷かれたのです。」


 なるほど。

 これで、何で王女から感謝されているかの理由は分かった。

 だが、それだと腑に落ちない点がある。

 使役者(テイマー)の狙いだ。

 奴は何で…


「どうなされました?」

「いや、その話だと、使役者(テイマー)の狙いが何だったのかが分からないんだ。」


 イブは不思議そうな顔で聞いた。


「狙いは、各国の要人方だと、容易に想像がつくと思いますが?」

「それはそうなんだが、()()()()がわざわざ()()を狙うとは思えないんだ。」


 それを聞いたイブは、驚いた顔で使役者(テイマー)の事を聞いた。


使役者(テイマー)は悪魔教団だったのですか?!

 しかし、悪魔教団は100年以上前に滅んだのでは?」

「生き残りがいたんだ。

 使役者(テイマー)の狙いが、この国崩壊なら容易に分かる。

 悪魔教団は女神を憎んでいるからな。

 しかし、王国の要人となれば、話は変わってくる。

 そもそも、何で要人がいる事を知っていたんだ?

 いや、この2つは偶然重なっただけなのか?…」


 んー…今の状況では、分からない。

 …いや、そもそも分かる必要なんてあるのか?


「まあ、いいか。

 もう、終わった事だ。

 考えても仕方ない。

 それに、何かあるとしても、冒険者の俺には関係が無い話だ。」

「それも、そうですね。

 今は、()()()を考えるべきです。」


 確かにそうだ。

 だが、こういった招待は、また何かありそうな気がするんだよな…


 俺が考え込んでいると、突然イブが訳の分からない質問をしてきた。


「白狼様。

 もし私が、『この招待を受け、レイブン王国へ行く事が貴方の運命です。』と言えば、行こうという考えになりますか?」


 は?

 急に何を言っているんだ?


「…悪いが、俺は運命ていうものを信じていないんだ。

 物事や生き方ていうのは、人の行動や選択で決まる事だと思っているからだ。

 運命てのは、自分の生き方に意味を持ちたい者が作ったものだと俺は思う。」


 イブの立場上、この答えは反感を買うと、少し思っていた。

 しかし、イブは嫌な顔をしなかった。

 そして、優しい顔のまま自分の考えを話した。


「そうですか…

 確かに、貴方の考えは一理あると思います。

 しかし、別の見方をすれば、運命を信じる事で生き方に意味があると、希望を持つ事が出来るのではありませんか?

 少なくても、私は思います。」


 希望か…

 確かに、そういう見方も出来るかも知れない。


「宛の無い旅なら、運命に導かれてみるのも、良いのではありませんか?」

「…考えてみるよ。

 そうだ、パウロとクレアに礼を言いたいんだが…

 3日も経っているが、パウロはもう出発しのたか?」

「いいえ、パウロ様は貴方の事を心配し、まだこの国にいらっしゃいます。」

「…そうか。」


 パウロは先を急いでいた様だし、悪い事をしたかも知れないな…


「クレア様は、いつも通り聖堂街を見回り巡回しています。」

「分かった。

 色々と世話に成ったな。」


 そう言って、俺は身支度をして部屋を出ようとした。


「お気になさらないでください。

 旅の道中の無事をお祈りしております。

 …“白き狼の騎士様”。」


 ん?何だ?

 最後の言い回し…

 まあ、良いか。


 俺はイブのいた部屋を後にして、聖堂の外へ出た。

 

 パウロの荷馬車が停まっていた場所を目指して、聖堂街を歩いていると、巡回中のクレア率いる聖騎士団に会った。


「ちょうど、良かった。

 礼を言おうと…」


 俺が礼を言おうとすると、クレアはそれを遮り、聖騎士一同が頭を下げた。


「白狼殿!

 この度は、この国を救って頂いき誠に感謝する!

 貴方の働きが無ければ、この国は滅んでいた…

 この恩は、決して忘れない!」


 クレアと聖騎士団の熱烈な感謝に、俺は礼を言えずにいた。


 俺はこういう経験はあまり無かったから、背中が無図痒く、言葉に詰まっていた。

 

 そして、やっとの思いで言葉を絞り出した。


「まあ、なんだ、お安いご用てやつだ。」


 それを別れの言葉にして、俺は聖騎士団を後にした。


 

 パウロの荷馬車が停まっていた場所に着くと、思っていた通りそこにはパウロがいた。


「アルベルトさん!

 もう、身体は大丈夫なんですね?」

「ああ、おかげさまでな…

 …その、悪かったな。

 俺のせいで、出発が遅れて。」


 パウロは、俺の謝罪に笑顔で答えた。


「気にしないでください。

 貴方が、無事に回復した事が何よりも大事です。」


 嬉しい事を言ってくれるな。


「ありがとうよ。

 じゃあ…ここで、お別れだな…」

「ええ、そうですね…

 わたしも、次の国を目指します。」


 …


「なあ、その国てのはどこか教えてくれないか?」

「えっと…次は、レイブン王国です。」


 フッ…

 運命てやつに導かれてみるのも、良いかもな。


「パウロ、実は俺もレイブン王国に用事があるんだ。

 お前さえ良ければ、次の国まで護衛を引き受けるぜ?」


 パウロは、目を輝かせて答えた。


「本当ですか?!

 是非、お願いします!」


 俺は、再びパウロの荷馬車に乗った。

 俺が荷馬車に乗ると同時に、パウロは手帳を取り出し何かを書いていた。


「帳簿に間違えがあったのか?」

「え?ああ、違いますよ。

 この手帳には、今での旅の出来事を書いているんです。

 今回の旅は書くつもりがありませんでしたが、思っていた以上の事が立て続けに起きたので書いているんです。

 良い土産話にもなりますし。」

「そうか。

 あと、その…なんだ、出来ればもうちょっと砕けた口調で話さないか?」


 パウロは少し考え答えた。


「そうですか…

 急に変えると、ちょっと変な感じなので…

 まあ、やってみます。」


 そう言うと、パウロはパイプを取り出し、煙草を詰めて火を着けた。

 パウロに連れて、俺も葉巻を取り出し、火を着けた。


 俺達は荷馬車を走らせて、次の国レイブン王国を目指した。

ここまで、読んでいただきありがとうございます。


今回の話で、「狙われた聖教国編」は終了となります。

次回からは、新章「王女暗殺編」となります。


これかも、応援のほどよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
小説のご紹介ありがとうございます。全話読んだので、その上で感想を書かせて頂きます。 ある実験体だったアルベルトが仲間と出会い、物語が進む中で裏切りにあって復讐に駆られ、そこから姿を消して年月が過ぎ去…
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