第15話 金貨5枚の仕事
翌朝
朝日が目を照らし、周りの騒々しい音で俺は目を覚ました。
目を覚ました後は、最悪だった…
頭が…頭が割れそうだ…
気持ち悪い…ああ、胃が唸る…
誰か…誰でも良い…
俺と胃を交換してくれ…
今にもひっくり返りそうなんだ…
…うっ!やばっ!
「うぉぇ!!」
ああ…最悪だ…
また、やっちまった…
何度だよ…クソ…
水…水…
酷い二日酔いに苦しむ俺は、水欲しさに辺りを見渡した。
しかし、水はどこにも無かった。
それ以上に、事態は深刻だった…
ん?…ここ、どこだよ?
目が覚めたら、俺は見覚えの無い所で寝ていたのだ。
ヤバい…ん?
ん?…無い…無いぞ!!
え?!
俺の剣どこだよ!!
俺の近くに合った物は、空に成った酒樽と、手に持っていたジョッキだけだった。
待って…1回落ち着こう。
俺は酷い頭痛を我慢しながら、昨日起きた事を出来るだけ思いだそうとした。
確か…あの後、テントから出て…
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クソ…どうすりゃいいんだよ…
このまま、「はい、さよなら」て訳にはいかないのかよ…
それに、あの女…好き放題いいやがって…
ああ、イライラする!
…よし!
こんな時は、酒だ!
俺は宴の席に戻り、溜まっている鬱憤を紛らわせる為に、浴びる様に酒を飲んだ。
「あー!効くっ!!
おい、これは誰が持って来た酒なんだ?」
「白狼さん!
そりゃ、あんたが連れてきた、パウロさんが持って来た酒だぜ!」
パウロが持って来た酒か!
流石、ハーフリンクだ!!
酒に関しては、目の付け所が違う!
「それより、こっちでカードでもしないか?!」
カードか、いいね!
金はいくらあっても、困らない!
思いっきり、増やしてやる!!
「いいぜ!!
今夜は、散々だったんだ!!
そろそろ、ツキが回ってくるところだろ!」
もう1杯飲んで言った。
「覚悟しろよ!
スカンピンにしてやら!!」
「上等らぁ!!」
………
……
…
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全部思い出した…
あの後、結局ツキが無くて負け続けたんだ…
そして、俺がスカンピンに成って…
挙げ句の果てに…剣を…
腹いせに、酒樽をくすねて…
ここで、やけ酒してたんだ…
マジかよ…マジでヤバい…
早く取り返さないと…
いや、その前に…
ここは、どこだ?!
一応、建物はあるから森の中て事はなさそうだ。
「おい、そこの君!!
ここで、何をしているんだ!!」
白い衣服に聖教国の紋章…
聖職者か?
という事は、この建物は、大きさからして聖堂か。
なるほど。大体分かった。
俺は、酒樽とジョッキを持って聖堂の裏に来たて事か。
そして、やけ酒をして、二日酔いで目覚めて、聖堂に向かって吐いたと…
クレアに知られたら、殺されるかも知れないな。
とにかく、今は剣だ!
聖職者が、様子を見に来てくれて助かった!
騎士団の基地に行くには、どっちに行けば良いか聞いてみよう。
「悪い、どうやらハメを外し過ぎた様だ。」
「その様ですね…」
「騎士団の基地へ戻りたいんだが、どっちに行けば良いか教えてくれないか?」
その時、聖堂の鐘が鳴った。
「ア゛ァ゛~!!
頭が!!鐘を止めてくれ!!」
「その様子では、1人で戻らせるのは心配だ。
きたまえ、聖堂の中で暫く休むと良い。」
「あ、ああ。
そうするよ…」
俺は、聖職者に介抱されながら聖堂へ入った。
聖堂へ入ると、最初に目についたのは、女神イリスの像だった。
窓から差す、朝日に照された女神の像は、言葉に出来ない美しさを放っていた。
更に、この白と金で彩られた空間には、何か不思議な感覚がした。
俺は信心深くないが、この空間には何か大きな力を感じる。
それは、大きな何かに見られている様な感覚だ。
だが、その感覚に嫌悪感は無かった。
むしろ、心地好く、安心感がある。
俺は、聖堂の椅子へと座らせらた。
「少し、待っていなさい。
今、水を持って来くる。」
その時、修道女が聖職者の男を呼び掛けた。
「枢機卿様、ここに要らしたのですね。
こちらの方は?」
枢機卿…そんな偉い奴だったのか。
「先ほど、聖堂の裏で苦しそうに倒れているところを見つけたのだ。
それより、イブどうしたのかね?」
「はい、教皇様が枢機卿様をお呼びに成っておりました。」
「そうか、分かった。
では、わたしは教皇様の所へ向かうとしよう。
こちらの方の、介護を頼めるかね?」
「承知致しました。」
「冒険者様、ではまた。」
「ああ…」
枢機卿は、イブと言う修道女に俺の世話を任せて去っていった。
「あの、冒険者様。
一体どうなされたのですか?」
「ただの二日酔いだ…
なあ、悪いんだが水を持って来てくれないか?」
「あ、はい!」
イブは、水を取りに別の部屋へ入っていった。
暫くして、イブは水の入ったコップを持って戻ってきた。
「水です。」
「ああ、ありがとう。」
水をもらった時、イブの被っている頭巾から少しだけ髪が出てきた。
イブの髪は輝く白銀色だった。
白銀の髪は珍しい為、俺はその髪を凝視していた。
「どうか、なさいました?」
「あ、いや。
水をありがとう。」
イブは自分の髪が、頭巾から出ている事に気付くと、慌て頭巾の中に閉まった。
そして、俺が凝視していた理由を理解した。
「この髪の事ですか?」
俺は、もらった水を飲み干し答えた。
「珍しい色だと思っただけだ。
何か事情があるなら、これ以上は触れない。」
「いえ、そういうのではありません。
ただ、不思議なんです…
私は、子供の頃にここへ来ましたが、その時の髪は黒色だったのです。
しかし、ある時目眩がして、気付いたらこの色に成っていたのです。」
どいう事だ?
そんな事、あり得るのか?
その時、俺は自分の髪を見た。
まさか…
「その目眩てのは、誰かに眠らされたのか?
そして…」
イブは、慌てて俺の言葉を遮った。
「いえ、その様な事はありません!
それに…今では分かっているのです…」
「何が?」
イブは、下へ内向きながら答えた。
「本当はお話するべきでは無いのですが…
貴方にならお話します。」
俺になら?
どいう事だ?
「私は…」
その時、聖騎士団長のクレアが聖堂へ入ってきた。
「あ、イブ様!
おはようございます!」
イブは、さっきの事は無かったかの様に、クレアに挨拶した。
「おはようございます。
クレア様。」
「“様”は、やめてください。
私は、貴女方を護る身。
敬称は不要です。」
そう言うと、クレアは俺の方を見た。
「貴殿が、ここにいるとは意外ですな。
昨日の事を懺悔しにでも来られたので?」
「成り行きてやつだ。」
「そうか。
あと、基地の方でパウロ殿が貴殿を探していたぞ。」
パウロが?
そう言えば、まだ報酬を貰って無かったな。
「それも、貴殿が昨夜まで持っていた剣を持ってだ。」
何でパウロが?!
…まさか?!
「はぁ、貴殿の信条をとやかく言うつもりはもう無いが、人としての常識位は持っておいた方が良いぞ。
雇い主に、武器を買い戻させる護衛など聞いた事が無い。」
「…」
俺は自分の情けなさに沈黙していた。
そして、椅子から立ち基地の場所を聞いた。
「基地へは、どう行けば良い?」
「聖堂を出て、聖堂街を真っ直ぐ行けば着く。」
「ありがとう。
あと、水をありがとう。」
俺は、クレアとイブに礼を言いって基地へ向かった。
基地に着くと、本当にパウロが俺の剣を持って探していた。
「アルベルトさん!
探しましたよ!」
「ああ…その…何と言うか…すまない。」
「ん?ああ、この剣の事ですね。
ご心配無く、これは貴方への報酬から引かせて貰いましたから。」
ん?!
今何と…
いや待て、大した金額では無いかも…
「それって、大体いくら位だ?」
「そうですね、ピッタリ300,000ペルーです。」
300,000ペルー?!
嘘だろ?!
アイツら、何て金額を出しやがる!
…まあ、自業自得か。
結局、報酬は200,000ペルーかよ。
「しかし、アルベルトさん!
良い、話もあるんです!」
「良い話?」
パウロは、笑みを浮かべて話を進めた。
「はい!
実はですね、騎士団団長のダンさんから色々聞いたんですよ。
今、我々が相手にしているのは、使役者と呼ばれる厄介な相手だと。」
「それは、俺も知っている。
それが、どうしたんだ?」
「わたしとしては、この国に長く滞在するのは、色々と不都合なんですよ。
今、別の国へ行く用事もありまして…」
「前置きは、もういい。
要点を言ってくれ。」
パウロは、俺の剣を背負い、懐から金貨5枚を取り出した。
そして、2枚を左手に起き、3枚を右手に残した。
「まず、左手の金貨が今回の護衛報酬です。
そして、右手の金貨が新しい依頼の報酬です。」
あー、なるほど。
大体、読めたぞ。
ダン団長の差し金か?
「アルベルトさん。
貴方に、使役者の討伐を依頼します。」
フッ、昨夜から今朝に駆けて、ここの人達には迷惑を掛けちまったしな。
それに、パウロにも剣を取り返して貰った恩がある。
まあ、俺の金だが…
そこは、関係ない。
今は、この仕事で恩を返す!
俺は、パウロから両手の金貨を受け取った。
「受けるぜ、その依頼!」
「その言葉を待っていました!
では、これが必要でしょ?」
パウロは、背負った剣を下ろし渡した。
俺は、その剣受け取り、背負い、この依頼を必ず成し遂げると、心に誓った。




