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アヴァロンストーリー ~赫眼の冒険者と旅の仲間 名無き大地を旅する~  作者: I.M.カート
第2章 旅の仲間結集譚 狙われた聖教国編
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第13話 再び戦場へ

 ロイヤルスイートの部屋に泊まった俺は、部屋でいくつか準備をしていた。


 準備は、剣の手入れやポーションの調合など、戦争前夜に行う様なものばかりだ。


 何故なら、パウロが運ぶ物資の中には、武器が混じっていたからだ。

 武器を運ぶという事は、戦闘で消耗した武器があると言う事になる。


 つまり、これから行く場所は戦場だ。


 生き残る為に重要なのは、必要以上に介入しない事と、準備を怠らない事だ。


 あとは、“これ”も必要だ。


 俺は部屋に入る前に買った煙草を、薄い紙に巻き“葉巻”を作った。


 これで、準備は完璧だ。


 俺は明日に備えて、最高級のベッドで横になり、一夜を過ごした。



 翌朝


 俺とパウロは再び荷馬車に乗り、今度は聖教国を目指し出発した。


 今日は昨日までと違い、川沿いには何台もの荷馬車が列をなして、聖教国を目指して下っていた。


 そのせいか、パウロは周りを何度も見ながら、どこか落ち着かない様子だった。

 

「大丈夫か?」

「え?何がです?」

「さっきから、周りを何度も見ている。

 何か不安な事でもあるのか?」


 パウロは思い詰めた顔で答えた。


「これだけの荷馬車が、こうも列をなしていると、襲われないか心配なんです。

 魔物は勿論ですが、賊が出てくれば恰好の的です。」


 なるほど、それで周りを気にしていたのか。


 パウロの緊張を解くため、俺は笑みを浮かべながら答えた。


「大丈夫さ。

 ここには、俺以外にも護衛で雇われた冒険者が大勢いる。

 魔物にだって危険を判断する本能があるんだ。

 こんな所に、ノコノコと現れる奴はいない。」

「なら、賊は?」

「10年前に起きたスタンピード以来、旅人を襲おうなんて賊はもういない。

 ただでさえ危険な場所に、金目の物を持っているかは賭け。

 そんなバカみたいな稼業をやっている奴は今時いない。」

「そうですか…」


 パウロの顔が少し緩く成った。

 緊張が解けてきたのだろう。


「それにしても、やっぱりまだ若いんだな。

 これくらい、行商人なら常識だぜ?」


 パウロは、少しむくれた顔で答えた。


「別に…エルドワールの方では、そういった話はあまり聞かなかっただけですよ!」


 完全に、解けた様だ。

 これなら、もう大丈夫。

 変に気を張ると、疲れるだけだからな。


 緊張が解けたパウロは、懐からパイプを取り出し、自前の煙草を中に入れて火をつけた。


 なんだ、吸っても良いのか。


 横目で、パウロが吸っているのを見た俺は、昨日作った葉巻を懐から取り出した。


 すると、パウロが物珍しそうな目をして、聞いてきた。


「アルベルトさん!それは、何ですか?!」

「これは、俺が自作した葉巻だ。

 パイプは高価な上に、持ち運ぶのが面倒だ。

 だから、俺は煙草を紙に巻いて吸っているんだ。」


 パウロは俺の話を聞いて、ただただ頷いていた。


 俺は、葉巻を咥え、右手の指を鳴らして、親指に魔法で火を起こした。

 風で火が消えない様に、手で覆いながら葉巻に火を着けた。


 その時、俺は昨日のパウロとの会話を思いだした。


 あの時、パウロは俺の正体を少しも疑ってはいなかった様だった。


 それを、疑問に思い聞いてみた。


「パウロ、昨日の事だが、俺が白狼だって事を疑ったりはしなかったのか?

 自慢じゃないが、白狼て名を偽る奴は少なくない。

 俺も何度か会った事がある。」


 パウロも昨日のやり取りを思いだし、笑みを浮かべ答えた。


「勿論、疑いませんでした。

 わたしは、物を見る目には自信があるんです。

 白狼とも言う人なら、それなりの装備をしている思っています。

 そして、貴方の装備は素晴らしい物ばかりです。

 まず、その剣。

 一見、質の良いロングソードにしか見えませんが、刃の輝き方が特徴的です。

 おそらく、刃には希少な鉱石アダマンタイトが使われています。

 次に、着ている物。

 その黒いベストと籠手は、おそらく何かの革で出来ています。

 しかも、そこらの革よりも圧倒的な耐久性を有している。

 どうです?違いますか?」


 パウロの鋭い観察力と目利きに驚いた俺は、パウロの疑問に答えた。


「ああ、正解だ。

 この剣は、俺の父親から譲り受けた物だ。」


 間違ってはいない…


「あと、ベストと籠手には“サラマンダー”の革を使っている。」

「サラマンダー?!」


 パウロの顔は、笑みから驚きの顔へと変わった。


「それが、サラマンダーの革なんですか?!

 サラマンダーの革は赤色では?!」

「それは、良く言われているが間違いだ。

 ほとんどの奴は、サラマンダーが戦闘態勢に入った姿しか見た事がないから、革が赤色だと勘違いするんだ。

 実際は、焦げたような黒色だ。」


 パウロは、唖然としながら俺の説明を聞いていた。


「サラマンダーの革は、滅多な事では傷つかない上に、火にも強い。

 だから俺は、サラマンダーの革を加工して着ているんだ。

 本当なら、手まで覆う籠手を作りたかったが、革が硬い分、手の自由が効かなくなる為断念した。

 おかげで、無茶な戦い方をする度に、手を火傷しているて訳だ。」


 パウロは、昨日の戦いを思いだし納得した。

 


 荷馬車を走らせて半日が過ぎた頃、列の先頭が急に止まった。


 何だ?前の方で何か叫んでいる…


「おーい!!

 止まれ!!

 戦闘が始まっている!!」


 戦闘?!


 俺は様子を確認する為、荷馬車を降り、先頭の方へ向かった。


 聖教国は大きな結界で護られ、その結界の前には、いくつもテントが張られ、1つの基地と成っていた。


 基地には、アスラン王国の国旗があり、無数の魔物がその基地を攻撃していた。


 やっぱり、戦場だったか。

 あの支援物資は、アスラン王国の騎士団への物だったて訳だ。


 その時、先頭にいた商人が、様子を見に来た護衛の冒険者達に呼び掛けた。


「先生方は、加勢に行ってください!

 我々は、折を見て聖教国へ向かいます!

 何かあっても、ここからは自力で何とかします!

 もし、騎士団様が倒されてしまえば、我々の任も失敗です!」


 護衛の冒険者達は、他の商人を見つめたが、全員同じ気持ちだった。


 その為、冒険者達は加勢に行く事を決断していたが、俺はまだ迷っていた。


 もしここで介入すれば、その後の戦いに巻き込まれる事が目に見えているからだ。


 すると、荷馬車から降りたパウロが、俺に詰め寄ってきた。


「アルベルトさん、貴方も行ってください。」

「俺の仕事は…」

「貴方の仕事は、“わたしを無事に聖教国へ送り届ける事”です。

 そして、この戦いに勝利する事が、わたしが無事に辿り着ける条件となるのです。」


 それは…一理ある…

 だが…


 俺は戦いに巻き込まれ無い為の逃げ道を探そうとした。


 しかし、パウロの真っ直ぐな眼差しがそれを許さなかった。


 そもそも、“そんな事”は、この仕事を受けた時から許されていなかったのかも知れない…


 この時、俺は昨日見た冒険者の姿を思い出した。


 ここで逃げれば、俺は“あいつ”と同類になる。

 卑怯者に…

 こうなったら、しょうがないか…


 この10年間、俺はこういった戦場を避けて生きたが、今日再び戦場へ戻る決断をした。


「分かったよ!

 だが、これっきりだぞ!」


 俺は、剣を抜き、戦場と化した聖教国へ向かった。

 すると、他の冒険者達も剣を抜き、俺の後に続いた。


「気合いを入れろー!」

「白狼に続けー!」

「白狼がいるんだ!

 恐れるなー!」


 後続の冒険者達が、俺の名を使って士気を上げていた。



 基地では、アスラン王国の騎士団が魔物の軍団と戦っていたが、戦況は圧倒的に不利だった。


 何故なら、戦いの中で剣が折れ、その隙を突かれて戦死する者や、矢を使い切り、襲われて戦死する者が後を絶たなかったからだ。


 騎士団の士気は下がり、ほとんどの者が自身の運命に絶望していた。


 その時、俺達冒険者が戦場へ到着した。


炎の矢(フレイムアロー)!』

炎の矢(フレイムアロー)!』

炎の矢(フレイムアロー)!』


 俺は、まず中距離から炎の矢を何度も放ち、魔物の数を減らしていった。


 それに続く様に、後続の冒険者達も、各々が扱う遠距離攻撃を始めた。

 

炎の雨(フレイムレイン)!』

炎の竜巻(フレイムストーム)!』


 弓矢を扱う者だけで無く、魔法を扱う者までもが攻撃に参加した。


 炎が矢の雨の様に魔物達に降り注ぎ、貫かれた魔物は、そのまま燃え上がった。


 炎の竜巻が魔物達を吸い込み、そのまま消し炭にしていった。


 魔法による攻撃で、辺りは炎の海と成り、無数にいた魔物の数はほとんど減っていた。

 

「ここからは、接近戦だ!!

 魔法使いと弓士は下がれ!!」


 冒険者の誰かが指示をした。


 誰とも分からぬが、魔法使いと弓士は自分の役職を弁えて、後方へ下がった。


炎の息吹き(フレイムブレス)!』


 俺は、手から炎を放ち、魔物達を牽制した。

 それに合わせ、後続の冒険者達が一斉に魔物に攻撃を仕掛けた。


 冒険者達は、接近戦用に剣、斧、槌を使っていた。


 剣を扱う者は、滑らかな剣捌きで、次々と魔物を切り裂いていった。


 斧を扱う者は、そのリーチと殺傷能力を活かし、間合いに入った魔物をなぎ倒していった。


 槌を扱う者は、もう片方の手に小盾を持っていた。

 正面から来る魔物を小盾で防ぎ、動きが止まっている隙を槌で攻撃し、更に反対方向に振って、横から来る魔物をなぎ倒していった。


 重要な仕事に雇われているだけあって、どの冒険者も中々の腕を持っていた。


 1匹、また1匹と、魔物は次々と倒れていった。


 その勢いに魅せられた騎士団は、再び士気を取戻し、持てる武器の全てを使って、反撃へと出た。


 冒険者達と騎士団による挟み撃ちにより、戦いの戦況は完全に覆された。


 そして、遂に全ての魔物が倒され、騎士団と冒険者達は勝利を手にした。



 騎士団による勝利宣言の後、聖教国を覆っていた結界が解かれた。


 それは、この戦いの終わりを告げいた。


 戦いの終わりを確認した商人達は、支援物資を載せた荷馬車を走らせ、次々と聖教国へ入っていった。


 あの後、商人達は魔物に襲われる事が無く、全員が無事に辿り着いたらしい。


 支援物資は、騎士団や聖教国内にいる者達に行き届いき、騎士団の顔に生気が戻っていった。


 更に、聖教国内にいた者達が負傷した騎士団を治療した事で、騎士団は完全に回復した。


 その日の夜、騎士団は勝利と物資の補給が間に合った事を祝って、小規模の宴を開催した。

 勿論、その宴には騎士団だけでなく、俺達冒険者や商人も参加した。

ここまで、読んで頂きありがとうございます。

今回は、アルベルトの葉巻の火の着け方について軽く解説します。 


アルベルトは葉巻に火を着ける時、『発火』の魔法を使って火を起こしています。

本来なら、魔法を使うには呪文を唱える必要が有ります。

しかし、アルベルトは葉巻を吸い続ける内に、特定の条件下で『発火』の魔法を呪文無しで使う技術を身に付けてしまいました。

実はこれは、完全なる無詠唱となり、最強の魔法使いである魔導師ですら扱えない技です。

アルベルトの、葉巻を吸う事の効率化を求む執念が産み出した、世界初の技なのです。


言いたい事は分かります…

確かに、努力の方向性が間違っていますよね…

でも、本人が喜んでいるので、これで良いのです!


今回の解説は以上と成ります。

これかも応援のほどよろしくお願いします!

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