表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アヴァロンストーリー ~赫眼の冒険者と旅の仲間 名無き大地を旅する~  作者: I.M.カート
第2章 旅の仲間結集譚 狙われた聖教国編
14/23

第11話 ハーフリンクの商人

 聖天暦484年


 ヤンガー川沿いに、1台の荷馬車と5人の冒険者パーティーが聖イリス教国へ向かっていた。

 荷馬車には大量の荷物が積まれ、冒険者パーティーはその護衛として、荷馬車を操る若いハーフリンクの商人に雇わていた。


「旦那は、この辺りの土地は初めてなのか?」

 

 パーティーのリーダーが商人に話かけた。


「ええ、まあ。

 エルドワールから出た事が無かったので。」

「でも、旦那は行商人なんだろ?

 それに、商会や商人ギルドはサーペンス王国にしか無いぜ?」


 リーダーの詰め寄りに、少したじろぎながら商人は答えた。


「一応商会には入っていますが、本部までは行ったことが無いんです。

 それに、『エルドワールで仕事をしていれば良い』とも言われましたので。」

「へぇ、変わってんな。」


 こうした何気無い会話をしながら、一団は聖教国を目指して川沿いを下って行った。


 一団は、川沿いを下っていくと流れが緩やかな場所を見つけた。

 そこは、森が近く、魚が沢山泳いでいた為、一休みするにはうってつけの場所だった。


 一団は、昼食を兼ねて一休みする事にした。


 冒険者は、森の中へ薪代わりになる物を取りに行く者を3人、飯の魚を獲りに行く者を2人といった型で仕事を分担させた。


 そして、商人は野営を準備する役に任命され、荷馬車から道具を取り出して野営の準備を始めた。


 暫くすると、魚を獲りに行ったリーダーと、もう1人の冒険者が戻ってきた。


 商人の方は、野営の支度をほぼ終わらせていた。


 しかし、火を起こす為の薪がまだ無い為、一行は昼食を作る事が出来なかった。

 

「おいおい、せっかく魚を獲ってきたてのに、火がなくちゃ焼けねぇじゃねぇか!

 あいつら、一体いつまで待たせるんだ?」


 リーダーが毒づいた。


「まったくだぜ!

 こっちは、腹ペコだっていうのに!」

 

 続けて、もう1人の冒険者も毒づいた。


 一先ず、直ぐ焼ける状態にする為、獲ってきた魚の内蔵を取って下処理を終わらせてから、薪が来るのを待つことにした。


 待っていると、森の方から微かに声がした。

 

「…げ…ろ…

 にげ…ろ!…」


 声は段々大きくなっていった。 


 薪を取りに行った冒険者が戻って来たと思い、一同は声のする森の方を見ると、1人だけ森の中から出てきた。


 しかし、その姿は尋常なものでは無かった。


 身体は白い糸に覆われ、何かから死に物狂いで逃げている様だった。


「逃げろ!!

 早く逃げろ!!“あいつ”が来る!!」


 リーダーは立ち上がり、戻って来た冒険者へ詰め寄った。


「おい、何があった?!他の2人は、どうした?!

 それに、その姿…」

「話している暇は無い!!

 急いで、荷物をまとめるんだ!!

 俺達じゃあ手に負えない!!」


 森の中から、木を折る音が近付いてきた。

 それは、巨大な何かが近付いている事を示していた。


 そして、それは森から姿を現した。


「あぁ…もうお仕舞いだ…

 皆喰われちまう…」


 森から出てきたのは、黒い体毛に覆われ、8本の鋭い脚と鋭い牙を持った、巨大な蜘蛛“アラグノ”だった。


「嘘だろ…あの森はアラグノの巣だったのかよ!!」


 ピュガッガッガッガ…

 ピュガァァァァー!!


 アラグノは恐ろしい唸り声を上げ、野営をしていた一団を餌と認識した。


 唸り声を聞いた馬は錯乱し、一団を置いて逃げてしまった。


「先生方、馬が!!」

「おい!!戻って来い!!

 置いていくな!!」


 馬は逃げ退路が絶たれてしまった。


 森から出てきた冒険者はその場に崩れ、もう1人の冒険者は逃げていった馬を見つめ嘆いていた。


「退路が絶たれたなら、戦うしかない!」


 リーダーは、アラグノを前に剣を抜き身構えた。


「無理だ…勝てっこない!!」


 そう言うと、嘆いていた冒険者はその場から逃げてしまった。


「あいつ!!」


 リーダーは森から出てきた冒険者を見たが、彼は錯乱していて戦える状態では無かった。


「先生!ここは、逃げましょう!」

「そいつは、無理ってもんだ…

 馬が無きゃ、あいつから逃げきる事は出来ない…

 クソッ!割に合わないぜ!」


 リーダーは目をつぶり、何かを決心して言った。


「旦那、あんただけでも逃げてくれ。

 俺が時間を稼ぐ。」

「そんな事出来ませんよ!

 貴方を見殺しになんて!」


 リーダーは、少し笑みを浮かべて続けた。


「ありがとよ。 

 でも、これが俺の仕事なんだ。

 あんたは、あんたの仕事を全うしてくれ。

 さあ、行け!!」


 リーダーは、剣を握り締め、アラグノに向かって行った。


 商人は、リーダーの行いを無駄にしない為に、荷馬車が向かった方へ全力で走った。

 

 リーダーは、商人が荷馬車に辿り着く為の時間を稼ぐ為、勇敢に戦った。


 しかし、勇気では実力差を埋める事は出来なかった。


 リーダーは、アラグノの体制を崩す為、脚の関節に斬りかかろうとしたが、アラグノはリーダーの方へ顔を向け口を大きく開いた。

 リーダーは、危険を悟り、退避しようとしたが、既に遅かった。  

 アラグノは口から白い糸を放ち、リーダーの動きを止めてしまった。

 リーダーは、アラグノから出される糸に覆い尽くされ、蛹の様な姿に成り、まともに身動きが取れなく成ってしまった。

 それでもリーダーは、脱出しようと抗うが、アラグノは無慈悲にも毒針を刺し、リーダーを殺した。


 その後、死んだリーダーを喰らい、錯乱して動けなく成っていた冒険者も頭から喰らった。


 2人を喰ったアラグノは、次に商人を狙った。


 商人は必死に逃げたが、ハーフリンクの脚の長さでは、追い付かれるのは時間の問題だった。


 そして、遂に商人はアラグノに追い付かれてしまった。

 アラグノは、商人が逃げられない様糸で覆い尽くそうと口を開いた。



 その時、炎の矢がアラグノの胴体を刺した。


 ピュガッァァァー!!


 痛みに吠えたアラグノは、矢が飛んできた方を睨み付けた。


 そこには、1人の男がアラグノに向かって走っていた。


 その男は、色が抜けた様な白い髪を持ち、人とは思えない赫色の眼をしていた。


 男は、背中の剣を抜きアラグノの右前脚の関節に目掛けて飛び掛かった。


 その速さと跳躍力は、アラグノと勇敢に戦い敗れた、リーダーの比では無かった。


 男は、アラグノの右前脚を切り落とすと、今度は左前脚の関節へ飛び掛かり、切り落とした。

 アラグノは、両前脚を切り落とされ、その場に崩れた。

 男は、アラグノの顔の前に着地し止めを刺そうとした。

 しかし、アラグノはそれを待っていたかの様に口を大きく開けた。

 そして、糸を出して男を拘束しようとした時、男は左手をアラグノの口へ突っ込み呪文を唱えた。


炎の息吹き(フレイムブレス)


 男はアラグノの口へ炎を放った。


 その炎はアラグノが吐こうとしていた糸に引火し、糸を溜めている尻まで燃え広がった。


 そして、尻が中から爆発しアラグノは死んだ。


 男は左手に酷い火傷を負っていたが、顔色1つ変えていなかった。


 冷静に、腰のポーチからポーションを取り出し、手を治した。


 男は手を治すと、商人の方へ行き無事かを確かめた。


「おい、大丈夫か?」

「あぁ、はい…

 大丈夫です…」


 商人は自分が生きている事と、男の凄まじい戦いに腰を抜かし、まともに答えられなかった。


「落ち着け。もう、終わった。

 ところで、ここに白い糸まみれの冒険者が来なかったか?」


 商人はリーダーの剣が落ちている事に気付き、全てを悟って、ひきつった顔でアラクノの死骸を指差した。

 

「クソッ!!

 間に合わなかったのか!!

 クソッ!」


 男は冒険者を救えなかった事を嘆いた。

 

「彼…らは、ぼく…わたしを守る為に…」


 男は目をつぶり、一息ついて続けた。


「そうか…少なくても、あんたを救えたらなら、彼の死は無駄じゃ無かった。」


 商人は、漸く立ち上がった。


「あ…あの、ありがとうございます。

 あの、貴方のお名前は?」


 男は少し考え、身構えながら答えた。


「アルベルトだ。

 ()()は、冒険者だ。」

「わたしは、パウロという者です。

 行商人をしています。

 不躾で申し訳ないのですが、わたしの護衛として一緒に来て貰えませんか?」


 アルベルトは、助けた相手が行商人に知り、顔を強張らせた。


「悪いが、行商人の護衛は御免だ。」

「そこを何とか。お願いです。

 …貴方、さっき仰いましたよね?

 彼らの死は無駄じゃないと…」

「それは…」

「お願いです!

 この先にある村までで良いんです!

 そこから先は、村で新しい護衛を雇いますから!」


 アルベルトは、荒らされた野営と近くに落ちていた剣に目が行き、暫く考えて答えた。


「…わかった。

 その村まで、護衛してやる。」

「ありがとうございます!

 では、その間よろしくお願いします!」


 

 俺とパウロは、握手を交わし、契約が成立した事を証明した。

 30,000ペルーで短い護衛。

 報酬と仕事は釣り合うが、俺を動かしたのはパウロを命懸けで護ろうとした、前の護衛の思いだ。

 そして、俺の仕事はパウロが乗って来た荷馬車を探す事から始まった。

ここまで、読んで頂きありがとうございます。

今回から第2章に入り、アルベルトの冒険が本格的にスタートします。

その為、本編の章設定を軽く解説します。


まず、本編は4章の構成と成っています。

それぞれに、「○○譚」と書かれ章全体の物語を示します。

また、4章別けたのにも理由があります。

4章に別ける事で、それぞれが“起”、“承”、“転”、“結”の役割を持つ事が出来ると考えた為です。


今回からの第2章では、章のタイトルにもある通り、アルベルトが旅の仲間と出会い、パーティーを結成するまでの物語が描かれます。

また、章タイトルにある「狙われた聖教国編」とは、第2章の最初の物語を示します。

本当は、

「○○譚」

「○○編」という上下に分けた構造で作りたかったのですが、無理そうなので横に並べました。

狙われた聖教国編以降は、次章に入るまで

「○○編」だけの章タイトルに成っていきます。


今回の解説は以上に成ります。

これかも応援のほどよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ