第1話 造られた少年
目が覚めるとそこにはいつも光景が広がっていた…
ボロボロに成った服を着て小さくうずくまる子…
泣きながら“お母さん”と呟く子…
そんな子が何人もいる…
ここにいる間叫び声が何日も聞こえる…何日?…分からない…少なくても僕が眠る前だ…
いつも同じだ…沢山の叫び声が聞こえたら、次の叫び声は少く…そして、最後には誰も叫ばなくなる…
皆この小さな檻の中で思っているハズだ…
次は自分じゃないかと…
昨日咳をしていた子はまだ起きていない。眠っているのかな…違う…口と鼻に手を当てれば分かる…
クソッ…なんでこんな事に…なんでここにいる…
分かっているのに…分からなく成ってくる…
…ドアが開いた音がした…また、あいつらが来た…
「よっし。今日はこいつらだな。」
「兄貴、他の籠にはもうガキ共は入ってませんよ。
こいつらで最後みたいです。」
「そうか、じゃあこいつらを出したら、また新しいガキを調達するか。
ん?! おい!! 1人死んでいるぞ!!」
「嘘だろ…こいつ昨日咳してたやつです。
兄貴どうしましょう…」
「とりあえず、俺はこいつらを連れていく。お前はそこの死体を処分しとけ。
ほら、お前らいくぞ!!」
兄貴て呼ばれていた奴は、僕と皆の首に付いた鎖を引っ張りながら、ブツブツと毒づいて僕らを部屋に連れていった。
部屋に入るとそこには白いローブを着た老人が立っていた。その老人は、髪の毛が一本も生えてなく、白くて長い口髭が垂れているだけだった。
部屋の中は不気味だった。何かの絵が描かれた紙が机と壁中に散りばめられていて、部屋の中央には10台のベッドが並べられ、その中心にガラスで作られた箱が置かれていた。箱の中には赤色の玉が1つ浮いていた。
「旦那、ガキ共を連れて来ましたぜ。」
「ご苦労。おや?9人しかいないぞ?どういう事だね?
1人足りないようだが?」
「すいません、旦那。どうやら、病気で死んだみたいでして…」
「全く…被験体の管理はあなたかだが行う様にと、何度も釘を刺しておいたハズですがね!!
フゥ まあ、良いでしょう。速くその子達をこっちへ乗せて、部屋から出てきなさい。」
「は、はい!ただいま! ほら行くぞ!!」
呆れた様に頭を抱えた老人に命令された兄貴と言う奴は、僕らを強引に引っ張っていくつも並ぶベッドの上に寝かせた。ベッドに付いているベルトで両手両足と首を縛られた事で身動きが取れなくなり、最後に細い管が繋がった針を腕に刺した。
管の先を追っていくと、中心のガラスの箱に繋がっていた。
「旦那、準備完了です。」
「よろしい、では実験を開始する。」
実験…?
それが何なのかは分からない…
でも、何が起こるかは分かる…今日も叫び声が聞こえるて事…
そして、その叫び声には
…僕の声も含まれているて事…
2人の会話が終わった後、兄貴て奴は小走りて部屋を出ていき、老人はベッドの周りを歩きながらこれから起こる事の説明を始めた。
「これから、君達の身体に魔人の核から抽出した液体を注入し、我が魔法により結合する。
これにより、君達は魔人が持つ力をその身に宿す事が出来る!
そして、我が人造魔人兵器の第1軍となるのだ!」
説明が終わると何かの言葉を喋り始め、ベッドの下から光った絵が現れた。中心に置かれたガラスの箱は赤く光出し、そこから赤色の液体が管を通り針の方まで流れ、やがて身体の中へ入って来た…
ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛~!!
スゥ…スゥ…
スゥッ…スゥッ…ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛~!!!
身体の中が燃える様に熱くなり、引き裂かれる様な痛みが小刻みに身体中を回っていった。
スゥ…スゥ…
スゥッ…スゥッ…ア゛ァ゛ァ゛………
………
……
…
「どうやら…今回も失敗のようだ…」
魔術師が実験の失敗に肩を落としていると、男が慌てて部屋へ入って来た。
「旦那!!魔法協会の奴らがここを見つけやがった!
もうそこまで…」
男は言い終える前に取り押さえられた。男の後ろから数人の魔術師が部屋に入り、書状を読み上げた。
「『魔術師サリヴァン。
魔法協会が定めた規約に違反し、人体及び魔人を使用した実験を繰り返した罪、並びに在籍を置くアスラン王国内において、違法な人身売買に加担した罪で貴殿を連行する。
以下、アスラン王国 国王デズモンド陛下より。
国内で犯した法の裁きを魔法協会に一任するものとする。』
以上だ!
何か申し開く事はあるか?」
「貴様らは…何も分かってない…我が研究でどれ程の軍事強化が望めるか分かっているのか?!!
分かるハズが無い…貴様らの様な可能性を怖れる愚か者には!!」
サリヴァンは半狂乱になりながら、心の奥底に溜めていた魔法協会への憎しみが爆発したように心情を叫び出した。
「もはや議論の余地は無いな。連れて行け!!」
魔術師達は、半狂乱のサリヴァンを意にも止めず魔法で拘束し連行した。
「閣下、ここはどういたしましょう。」
「魔人の核や魔方陣は証拠物として押収し、使われた器材は廃棄しろ。
そして、あの子供達もだ…可哀想だが、実験台にされた以上魔人化は確実だろう…
二次被害を防ぐためにも、子供達の死体は残すな。」
「はっ!」
魔術師達は魔人の核と魔方陣を回収し、部屋を焼却した。
死体と成った子供達は部屋から運びだされ、魔人化を防止する処置の為並べられた。
魔術師が準備を始めた所で
…1人の少年が眼を覚ました…
少年は手足を少し上げた瞬間、立ち上がり、走り出した。
何処へ向かっているとも分からず、ただひたすら逃げる様に走っていた。
走って走って、森の中へ逃げ込む様に入っていった。
やがて、足が重くなり息が出来なく成っていき、
森の中で倒れた。
「ん?今何か音がしなかったか?」
剣を背負った男が異変を感じ、仲間を呼び止めた。
「そうか?わしには何も聞こえなかったぞ。」
斧を持ったドワーフの男が答えた。
「そうか…レイアはどうだ?何か聞こえなかったか?」
剣を背負った男は次にエルフの女レイアに聞いてみた。
「…ええ、微かにだけど、何かが倒れた様な音がしたと思うわ。」
レイアは半信半疑な声色で答えた。
「ちょっと見てくる。どっちの方角か分かるか?」
「多分、あっちよ。」
剣を背負った男が示された方に向かって行くと、そこにはボロボロの服を着た白髪の少年が倒れていた。
「おいっ!!大丈夫か?!
皆!こっちに来てくれ!!」
「何だ?!子供か?!何で子供がこんな所に?!」
「分からない…呼吸が浅い!それに肌の色も悪い!
レイア!速く子に回復魔法を!」
『治癒』
回復魔法により、少年の身体中にあった擦り傷や打撲根が消えていった。
「呼吸は安定してきているや。でも、酷い栄養失調でまだ危ない状態よ。
…それより、この感じ…何か変…少し気になるわ…」
『状態診断』
「?!そんな…そんな事が?!」
レイアは驚きと恐怖が入り交じった顔で、地面に膝を落とした。
「どうしたんだ?!」
「…ザック…それにギュンター…落ち着いて聞いて…
このからは、魔人に似た反応が出ているわ…」
「「?!」」
「じゃあ、つまり…」
ザックとギュンターが武器を握り身構える。
「待って!確かに、魔人に似た反応が出ているけど…
身体は人間の物と同じよ!それに、この子からは魔法の痕跡もあるの…」
「はぁ?!それてどういう意味なんだよ?説明してくれ!」
「…可能性の話だけど、この子の魔人の反応は人為的にもたらされた物だと思うの…
つまり、この子は何者かに身体を改造されたんだと思うわ…」
「「「………」」」
あまりの出来事に3人は息を飲み、一言も初声なく成ってしまった。
「…この子を連れて帰ろう…」
「?!ザック何を言い出すの?!この子は…」
「分かってる!危険かも知れないて言うんだろ?
でも、このままここに置いて行けば魔物に喰われるか、仮に喰れなくても野垂れ死ぬ事になる。
それに、俺にはこいつがそんな危険な奴には思えないんだ。ただの勘だけど。」
「でも、それは…」
「まあ、レイア。気持ちは分かる。だが、わしもザックに賛成だ。こんな子供1人を森の中に置いていくのは気が引ける。それに、この子が目を覚ましたら何があったか聞く事も出来る。」
「…はぁ、分かったわ。連れて帰りましょう。」
冒険者ザック、レイア、ギュンターは森の中で見つけた白髪の少年を連れてパーティーの拠点へと帰っていった。




