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42話 翼の予言

アルセリアによる宴会の最中、私はとある場所へと呼び出された。


「セレス、いる?」


コツコツ、と扉を叩く。その音が廊下に響いた数秒後、ドタドタと慌ただしくセレスティアが内から扉を開けた。


「すみません師匠…こんな格好で…」


「いいよいいよ、気にしないから」


ここはセレスティアの私室。私を待つ間にうたた寝してしまったらしく少し寝癖がついていた。

いつも完璧!って感じだったからなんだか新鮮である。


「それにしても、話って?わざわざ宴会中に呼び出すなんて只事じゃないと思ってるけど」


「えぇ、まぁ、はい……色々とあって伝えるのが遅れましたが…報酬の件です」


「っ!!見つかったの!?」


身を乗り出して問う。正直ダメ元で頼んでいた案件だったため想定外である。


「ちょっ、師匠近いです…」


「あ、ごめん」


「いえ…………正直、私も想定外でした。まさか御伽話の存在である天神族(翼を持つ者)に出会うとは」


そう、私が報酬に望んだのは……天神族、あの怪しげな占い師に告げられた翼を持つ者探しの手伝いだ。


「えっと…どういう経緯で?」


「実は、ですね……師匠達がショウシアへと向かった翌日のことなのですが…」



〜〜〜


〜〜〜



それは執務中、ファフニルと雑談していた時のこと。


「ファフニル、アルセリア達はどうなるかしら?」


「はぁ……心配ですな」


ファフニルは溜息を吐く。ショウシアへと向かったアルセリアが心配で仕方ないらしい。


「……そう思うならもっと優しくしてあげたらいいのに」


「それはセレスティア様も、お互い様でしょう?」


…図星であるため黙り、執務に集中する。


カリカリ……カリカリ……カリカリ……


その日やる予定の半分ほど、執務が終わった頃……窓をコツコツと叩く音が鳴った。


「何奴!!」


ファフニルが声を荒らげ剣の切っ先を窓へと向ける。


……………………ガタッ…………ヒュー…………ドゴォン!!



「……落ちた?」


「そのようですな…」


慎重に窓を開け、ファフニルが辺りを確認する。そこに誰かが居て今落ちたのは間違いないだろう。ただいくら探してもそこに人影はなく…


『いやぁ……危ないところだった』


「っ!」


ほぼ同時にセレスティアとファフニルが振り向き、構えた。


『勝手に入ったのは悪かった!!この通りだ!!』


なにかするよりも先に……その声の主である茶髪の青年が両手を挙げ座り込んだ。


「……なんなんです、貴方は」


斬りかかろうとするファフニルを静止し、セレスティアが尋ねる。しかしその目からは警戒の色は消えちゃいない。


たとえ一瞬でも、セレスティアとファフニルを欺いたのだから。


『……そうだなぁ……きっとこう言えば伝わるか?()()()()()ってな』


「何を訳の分からないことを!」


「ファフニル、剣を下ろしなさい」


「セレスティア様!?」


セレスティアはその青年との距離をゆっくりと詰める。

半信半疑、ただ……先程までの行動と照らし合わせれば完全に疑うこともできない。だから、話す価値があると判断した。


『はは、流石は『色彩の魔女』の弟子だ。賢いようで』


「……貴方、師匠のことを…」


『おっと……長居はするつもりは無いんでな、これだけ伝えてくれ』


スっと綺麗な流れで立ち上がると、近付いてきたセレスティアに青年が耳打ちした。


『次は────』


「!?」


気付けば、青年は消えていた。窓が開いているためそこから出たのだろうが……物音すらなく消えたことに、ファフニルもセレスティアも唖然とした。


「セレスティア様、お怪我は…」


「私は大丈夫です……早く伝えなければ」


再三、頭の中で青年の言葉を反芻し記憶する。この情報をフィーナに伝えるために。


その場には、2人の魔族……そして、鳥のような羽根が残されていた。



 * * *



「青年……?」


「はい、フードを被っておりましたが茶髪が見えました。体格と声での判断なので確証はありませんが…」


「ううん、ありがとう……それで…」


私が気になるのはその先。青年の残した言葉だ。


「……私には意味が深く分かりませんでした。なのでそのまま、伝えますね」


私は1つ頷いて……心して、セレスティアの言葉を待った。


「『次は獣の国へ行くといい』」


「…………それだけ?」


「え、えぇ……はい。そうですね」


しまったセレスティアが困っているではないか。その情報を貰えただけマシだろう。


「獣の国……ってことは……獣人族領かな」


「私も、そうだと思いますが…」


あそこはねぇ……なんというか、しきたりみたいなのがまた魔族と違ってあって面倒なんだよなぁ…


「ま、森林浴ついでだと思うしかないかな」


「師匠…その、役には立ちましたか?」


恐る恐る、セレスティアが尋ねてくる。

なんかこの雰囲気……なにか求めてるような……もしかして


「うん、ありがとうね!」


礼を言いつつ、ポンポンと頭を撫でる。

セレスティアは少し恥ずかしそうに…しかし嬉しそうに、微笑む。


「どういたしまして、師匠」


……可愛い弟子ちゃんだなぁ!全くもう!


私もそうだったがやはり100年以上も合わないと、距離感も何もおかしくなりがちなのだが…次いつ会えるか分からないのだ。別れを惜しんでハグするのぐらいは許されるよね?



暖かいなぁ……




 * * *



深夜、一時の宴は終わり夜の静寂が辺りを支配していた。


「ここはよく星が見えるんじゃ」


アルセリアに、魔王城でもかなり隅の方のベランダへと私達一行は案内された。

確かにこれは…


「すっごい綺麗だね」


「綺麗です!」


やはり人族の街とは違い街灯が無いからだろう。より鮮明に、星の輝きが目に映る。


「…つい数日前にも似たような光景を見ましたね」


「エマ、それは……我とお主の秘密じゃ」


「はいはい、分かってます」


何やら2人だけの秘密があるらしい。気になるが…エマの交友にまで口出ししちゃだめだし、放っておこう。というか、むしろエマは最近私に構いすぎてるような気がするんだよね…


『悪くねぇな、酒が欲しい』


「もう100年以上飲んでないくせに、よく言うよ」


手に乗ったモチがクイッと何かを飲むしくざをしながら言う。

セリフに声は合ってるのに絵面が…ふふ、おもしろ…


『何笑ってんだァ?』


「なんでもないよ……でも確かに、いい眺めだし気持ちは分かるなぁ…」


お酒はあんまり得意じゃないがこう……雰囲気がそういう気分にさせてくる。


「師匠、飲まない方が身のためですよ」


「……?飲まないけど?」


『嬢ちゃんの言う通りだ、やるなよ』


「飲まないって!何!?」


この2人の前でお酒飲んだことあったっけな…………もしかして記憶にないのがそういうこと?


「魔女様、お酒苦手なんですか?」


「知らない方が」


『お前のためだ』


モチとエマがこれでもかというぐらいにシンクロしてる。過去の私……なにやったんだろ?



 * * *



翌日。出立の準備を終えた私達は最後の挨拶へとアルセリアの元を訪れた。


「色々とありがとね、セレス、アルセリア」


「こちらこそ……アルセリアの面倒を見て頂いたこと、本当に感謝してもし切れません」


「それは私じゃなくてエマに言ったげて……じゃあ、お互い様ってことで」


こちらも手伝うだけの報酬は貰ったのだ。先の情報に加えて使った魔道具代と数週間分の食料等。暫くは食う寝るに困らないのはとても助かる。


「…母上、後は我が」


「はいはい」


1度セレスティアが下がり、アルセリアが1歩前へ。

そして……私の方を見て、頭を下げた。


「……えっと?」


「この度は…私の試練に協力していただきありがとうございました。至らぬ点の多い未熟者ですが、今後とも、どうか……よろしくお願いします」


アルセリアらしからぬ物言いに私は一瞬困惑したが…視界の端にニヤニヤとしているセレスティアが見えたためなんとなく察した。


「……そう言えってセレスティアに言われたの?」


「ぅぐ!?……ち、違うぞ!フィーナ!」


「……まだまだ、ですね」


「ぅぅ……精進します」


差し当たり抜き打ちチェックと言ったところか。セレスティア、なんというか以前よりも楽しそうだね。


「言いたいことは言えたかな…まだ何かある?」


「ぁ……いえ、ただ、そうですね……これは不要かもしれませんが一言だけ」


セレスティアが、私の手を握って……目を瞑ってから言う。


「どうかご無事で、師匠。再会を願っています」


「……大袈裟だよ。戦地に赴くんじゃないんだから」


「それでも、です。次はいつ会えるのか分かりませんから」


「そうだね……じゃ、セレスティアも元気でね!」


手を解き、踵を返す。思っていたよりも随分と長く魔族領に滞在していた。


「次も森だよ。2人とも」


「もう決めていたのですか?」


「魔女様!調べるのは任せてください!」


「そう?じゃあ、任せようか。エマ、次はね……」


それでも、得られるものはあった。目的に向けて、まだまだ楽しく旅を続けようじゃないか。



 * * *



死なない方法を探すための旅は、獣の国へと駒を進める。


多少雑でもまぁ許されるかの心構え。想定通りといえば想定通りの話数で魔族領編は締めとします。

次は構想練ってからになるのでまた1週間ぐらい空くかもです…!

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