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37話 初めての家出

本当は昨日投稿予定でした。誰が忘れたんでしょうね?

「育てるのが怖い……?」


「うむ……恥ずかしながら……」


「なっさけな…」


ズブリと、言葉の刃がアルクトゥルスの胸に突き刺さる。だが事実であるために何も反論できない。


「……魔族は家族意識が薄い傾向にあるのはなんとなく知ってる。でもね、それを理由に“怖い”で止まるなら──最初から親になる覚悟が足りない」


「ぅ…」


「それを疎かにしたのは貴方。その上で私……といあか、他人に迷惑掛けようとか……恥とかそういう次元じゃない。」


フィーナの言葉はキツく鋭い。そして、それら全てが正論だった。


「せっかく聞いてあげようと思ったけど……時間の無駄だったね。今からでも奥さんに土下座して色々教えて貰いなよ」


「っ……そういう訳には行かんのです。私は…」


「嫌なら覚悟を示せ。貴方のような半端者に育てられるあの子達が可哀想だ」


覚悟──どうしろと言うのだ。


王としての覚悟なら、幾らでも示してきた。

戦場で、血で、勝利で。


だが父としての覚悟は──


その短い逡巡の後、アルクトゥルスは決心し口を開く。


「私ぁ、魔族のやり方しか知らんのです。だから魔女様……手合わせ、願えますか?」


魔族は実力主義。ただひたすらに力を追い求め、示してきたアルクトゥルスにはそれしかやり方が分からなかった。


「……そう」


対し魔女は、静かに……短くそう答えるのだった。



 * * *


 * * *


 * * *



「ぅ……ん……」


「ちょっ!髪引っ張んなって!?うわ漏らしてるしぃ…」


ズキズキと、頭が痛む中アルクトゥルスは目を覚ました。

一体なぜ自分が眠っているのか…理解にしばらく時間が掛かった。


「分かった!分かったから髪だけは、髪だけはやめて!手入れ大変なの!」


しかしそれも、ギャイギャイと騒ぎ立てる少女の声と嬉しそうな赤子の笑い声によって終わりを迎えた。


「これだから子供は……言葉が伝わらないってほんとやだ!」


「魔女殿…」


「あ、やっと起きた!早くこの子達なんとかして!」


視線を起こせば髪と頬を2人の子供に楽しそうに引っ張られているフィーナが見えた。

アルクトゥルスは衝撃でひっくり返りそうだった。

急ぎ、レオンハルトとセレスティアを回収した。


「全くもう……」


フィーナは荒れた髪を整え、魔術で汚れを綺麗さっぱり消滅させながら溜息をつく。


「すまぬ……魔女殿」


「別にいいって……元気なのはいいことだよ。ちょっと元気過ぎるけどね」


「だが…」


「だがも何も無いよ……それと、ちゃんと覚えてるよね?」


その言葉が何を指すか……アルクトゥルスは、記憶を掘り起こす。


「……本当に、良いのですか?」


「いいように捉えるな。寧ろ……もっと恥じて、恥じて……充分だと思ったら、迎えに来てあげて」


アルクトゥルスはフィーナの言葉を反芻し……やがて、頷く。


「あぁ、その時は必ずや」


「言葉だけじゃないことを祈ってるよ」


アルクトゥルスの強い意志に……態度に、魔女は少しだけ微笑んで、答えた。



 * * *



それから、十年。


子供だった二人は、もう子供とは呼べない歳になっていた。


2人はそれぞれ13歳。早いものであればもう働ける歳にまで成長した。


その間……アルクトゥルスは会いに来ることは無かった。

フィーナは噂程度でしか知らないが、何やら魔族領にて大規模な運動が起きているとか。きっとそれの対処に手間取っているのだろうとフィーナは勝手に憶測し、あまり気にしていなかった。


「師匠!師匠!私ね!全部の属性の魔術使えるようになったよ!」


「え?ほんとに?やるじゃん!」


フィーナがセレスティアの頭を撫でると嬉しそうにはにかみ、魔術を見せようと構える。


「師匠!僕も……僕は中級を全部、出来るようになりました」


するとそんなセレスティアが羨ましく思ったレオンハルトが割って入る。いつもの光景だ。


「いいねぇ、2人ともやるじゃん」


「……むぅ…」


セレスティアは自分だけが褒められなかったことに少しむくれるが、すぐに切り替える。


僻んでも仕方ないし、自身の師匠は努力をすれば褒めてくれると知っているからだ。


「……兄様には負けません」


「ふん!僕に追いつけるものなら追いついてみろ!」


「あー、レオン、口調。将来王様になるんでしょ?」


「うっ……お師匠様…」


レオンは近いうち、人族の王国へと引渡しが決まっていた。それは本人が望んだことであり、何やら叶えたい野望があるようで王になるつもりらしい。


「ま、私はそのままの方が可愛くて好きだけどねぇ」


「すっ…………そうですか?」


「兄様ばっかりズルい!」


「ふふん、セレスも好きだよ。2人ともいい子だしね」


この時フィーナ自身もかなり2人に愛着が湧いていた。

それは一向に会いに来ないアルクトゥルスの代わりとしてそうなったのか、単純に長い間同じ空間に居るからなのか。


どっちだとしても、2人のことが大事なのは変わらない。


「今日は一緒に寝よっか。それと来週誕生日だったかな?何か欲しいものはある?」


2人に抱き着き、問いかける。


「お師匠様……流石に、恥ずかしいです…」


「ありゃりゃ、振られちゃった」


「じゃあ私が独り占めする!」


この時、3人は本当に家族のようだったと……フィーナでさえそう実感していた。



 * * *



そんなやり取りもいい思い出となってきていた…5年後。


2人はみるみるうちに成長していき…やがて人族の成人を迎える歳となった。


「兄様なんて知らないっ!バカ!」


「…」


思っていたよりもずっと大きな声が出て、セレスティアは自分で驚いた。

そのまま踵を返し、森の奥へと歩き出す。


この日、レオンハルトは旅立つ。

──それを、彼女は今朝知らされた。


セレスティアは…森の中を歩く。今はとにかく、レオンハルトの近くには居たくなかった。


「……なんで、勝手に決めちゃうの……」


分かっている。どちらが人族の側へ行くべきかなど、考えるまでもない。


セレスティアは濃く魔族の血を引いている。対してレオンハルトは、ほぼ人族と相違ない姿をしている。


理屈は、ずっと前から理解していた。

それでも。


「……ずっと、ここにいられたら……」


口にしてから、無理な願いだと気付く。

それでも言わずにはいられなかった。


その後もセレスティアは一人森を彷徨い……初めて、1夜を外で過ごした。


これが初めての、セレスティアの家出だった。



 * * *



「…寒い…」


深夜、セレスティアは肌寒さから目を覚ました。

木陰に隠れて愚痴を吐き出していたらいつの間にか眠っていたようだ。


「師匠…心配してるよね…」


初めての家出…と言うべきか。原因が原因であるためフィーナに対しては申し訳なさを覚える。

しかし、どうしても…兄と、顔を合わせにくかったのだ。


「…2度寝しちゃおうかな…」


師匠も常々言っていた。嫌なことは大抵寝れば忘れると。ただ寝るには少し寒過ぎる、暖を取ろうと…魔術を使おうとした…その時。


「山火事にでもするつもりか?」


「っ!?」


今…1番聞きたくない声が、背後から掛けられる。


「随分とまぁ陰気臭いところにいたもんだな。魔術を使わなかったら気付けなかったよ。」


「…しれっと隣に座らないでよ」


「そんなに嫌か?」


別に嫌という訳じゃない。ただ、兄にどういう感情を向け何を言えばいいのか整理が付いていないのだ。


「……好きにすれば」


「じゃあ遠慮なく……さて、何から話すかな」


「私、兄様と話したいことなんて…」


「あるだろう?俺だってあるからな」


当たり前のように、レオンハルトはそう言った。

いつだってこの兄はそうなのだ。まるで自分に間違いはないとでも言いそうな態度をしている。


「まぁどっちだっていいさ、聞きたいことは…そうだな。お前は俺が…王位継承権を巡る争いへと向かうのを嫌がった…ということで合ってるな?」


「……何、悪い?」


「いや、嬉しいもんだ。こうも妹に好かれているとは…やはり俺の魅力には抗えんか。」


少しイラッとしたが、今のレオンハルトに何を言ってもいいように捉えてしまうためセレスティアは黙り込む。


「…言い方を変える。心配してくれてありがとう。セレスティア」


セレスティアの反応が思ったものでなかったからか…理由は分からない。ただいつの日かの兄を思わせるような口ぶりで、レオンハルトは礼を告げた。


「お兄っ」


「だがな、お前は少々…いや、かなり夢見がちなガキのままみたいだ。」


「……は?」


感慨のあまり、つい昔の呼び方が出てきそうになった。それはいいのだけども…なんで今急に罵倒されたのか。


「いつまでもずっとここで、師匠と暮らせたら……なんて、出来るわけがないだろう。それも分からぬほどお前は阿呆じゃない」


「そんな言い方っ」


「こうせねばお前は現実を見ようとしない」


「ッ!」


レオンハルトがズカズカと、セレスティアの心へと土足で踏み入る。その感覚が…非常に、不愉快だった。


「…そろそろ夜明けか。さて、俺はもう行く。言いたいことは言えたからな」


気付けば…日の光が顔をのぞかせている。

セレスティアは、兄の服の袖を掴んだ。


「……どうした?」


離せば、終わる。

ここで別れれば、もう戻れない。


分かっている。だから────


「私…ちゃんと、話したいこと、あるから…あと、聞きたいことも」


「…そうか。だが残念だ。俺の時間は貴重でなぁ。どっかの誰かさんを探すのに随分と掛けてしまったからにもう猶予は少ない」


まるで…セレスティアを誘導するように、普段は言わないような『挑発』を彼は口にした。


セレスティアはそれを分かった上で、1歩前へ踏み込み…


「兄様、私と…決闘して」


「…望むところだ。妹よ」


兄弟喧嘩を綺麗に締めくくるため、きちんと…言葉を交わす為…2人は────


────ぶつかり合うのだ。


展開早いかな?いやでもうーん…って悩みながら書き上げました!なんか当初の予定よりもセレスティアの過去編延びそうですね(逸らし)

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