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3話 弟子が怖いんですけど!?

「酷い目にあった…」


「ごめんなさい、魔女様…」


「いいのよ。うん…」


ギルドからの帰り道。ようやく解放された私達はとぼとぼと宿までの道を歩いていた。それにしても、面倒なことになった。


まあでも、私が悪いしね。はぁ…誰かさんがわざわざ探しに来なければなぁ…

チラリと、エマの方を見る。エマは私の意図を読み取ったようで、にこりと微笑んだ。


「私はお師匠様に会えて嬉しいですよ?」


…笑顔が怖い!なんか圧を感じる。


「わ、私も嬉しいよ。弟子だからね。うん」


「なんか感想薄くないですか?」


「…ソンナコトナイヨ」


別に嫌いじゃないんだよ?寧ろ弟子として好きな部類の人間に入るよ?

たださぁ…なんでそんな、付き合いたての彼女みたいな感じで問い詰めてくるの…?


「はぁ…ま、師匠のことなのでそんなもんだと思っていましたよ。えぇ」


呆れたように、溜息をつく。あー…こうなったら面倒なんだよなぁ…


「おねーさん!魔女様は凄いんです!だから、その…あんまりいじめないであげてください!」


多分フォローのつもりなんだろうけど寧ろ惨めな気持ちになるからやめてねルカ。いじめじゃないのよ、それじゃあ私が弱く見えるから。


「凄いのは知っていますよ。身に染みるほど…ただ同時に少し情けないところも知っているんですよ。例えば…」


「わー!ちょっと!なんかエマの肩揉みたいなぁ!」


私は都合の悪いことを言われる前にエマの背後へ回り実際にその肩を揉んだ。

見よ、これが1000年間で受けてきた肩揉みの集大成よ。


「あの、エマさん…ルカの教育に悪いから…ね?お願い…」


「さて…どうしましょうかねぇ…」


クスリ、と微笑む。怖い。怖いよエマさん。

誰だよこんな子に育てたの!私だよちくしょう!


「はぁ、仕方ないですね。全く……今の件はさておき師匠、なんで手紙を返してくれないんですか?私、何度も送ったと思うんですけど。」


「……?」


おーっと……?なんかまた別件が来たぞ…これだから外にあんまり出たくないんだよなぁ…あは…


「…ルカ、私に手紙って来てた?」


「はい!いっぱい来てたであります!でも魔女様は後で読むからって引き出しにしまってあるはずです!」


「…っぅ……」


「へぇ…」


またも笑顔。……さっきよりも怖いというか、冷気を感じる。


「……まぁ、いいですよ。どの道今回の件に関わることですから…行けば分かるはずです。」


「え…?」


今回の件、さっき…ギルドで受けた依頼のことだろう。…なんにせよ、許してくれたみたいでよかったぁ…


ホッと胸をなで下ろしていると…エマが俯いて何かを呟いている。


「なんでお手紙返してくれないんですか…私の事、嫌いなんでしょうか…」


……マジでごめんじゃん。



 * * *



────今回の件、について話をしよう。

時は2時間ほど遡り、ギルドに乗り込んだところへ場面は移る。



「イゼルダさん、連れて来ました。」


「ん……?」


裏口からギルドの職員部屋に入ると1人だけ部屋に残っており机に突っ伏して眠っていた。今もう遅い時間だもんね。うん。やっぱり今日は引き返した方が…

そういう前に、エマが職員さんの肩を揺らしていた。


「貴方が、噂の魔女様ですか!!」


ガバッと起き上がると私の肩を掴んでぐわんぐわんと揺さぶられる。

ちょっ、何!?噂って…


「あ、あの…手持ちはあまりないので…お許しを…」


ただでさえこれから旅に出るため路銀がいくらあっても足りないというのだ。お金での解決は遠慮したい。


「噂は耳にしております。なんでも数々のギルドの高難易度依頼を解決しては何も貰わずにその地を去るって…!」


…それ、単純に依頼完了の証明書忘れて、さらには依頼の魔物を素材も残らないぐらいにやっちゃってて寄る理由が無いからなんだよね。


「あの、それは…」


「あの!ひとつ依頼を受けて頂けませんか!?」


「…え?」


なんで、私に…?もっと優秀なのが居るじゃん…



 * * *



「依頼の内容はバール村の調査です。」


「調査…?」


いつの間にやら進められるままに客室のソファに座り、受付嬢と対面している。

…逃げようにもエマから逃げれる気がしなかった。


「それぐらいならエマでも…」


「…お恥ずかしながら、少々力不足でして。師匠にも着いていただければと。」


ホントにぃ……?あー…でも、毛先を指でくるくるしてないし嘘では無いのか…


「……ま、いいよ。どうせ行き先も決めてなかったし。」


「行き先…?師匠、買い出しに来てたんじゃないんですか?」


「あー…ちょっと色々あってね、旅に出ることになったの。」


「え…?師匠が…?」


…おい、これでも一応色々やってるんだからな。まあインドア派なのは否定しないけども!


「うん。だからその依頼、受けるよ」


「ホントですか!?ありがとうございます!」


サラサラと依頼書に何かを書いた後手渡される。

うわ、この流れ懐かしいなぁ…


「期限とかはある?」


「いえ、ですが早い方が良いかと」


「そっかぁ…とりあえず今日は帰るね」


「はい!お気を付けて!」


受付嬢が手を振って見送ってくる。何もかもが懐かしい。冒険者の時、これ割と楽しみだったんだよね。


依頼、めんどいのじゃなかったらいいけど…



 * * *



「で…なんでエマも着いてくるの…?」


「あら?偶々…同じ宿だったみたいですね」


「…そっ…かぁ…」


もう、何も言うまい。その目からは絶対に逃がさんと言わんばかりの意志を感じる。


「えと、じゃあ私達部屋ここ────」


「こっちですよ?」


「へ…?」


「こっちですよ?」


「え…いや…」


「こっちです。」


…おっかしいなぁ…私の取った部屋、ここで間違いないと思うんだけど…なんで私の服をそんな引っ張ってるの?


「あっ…はい。」


逆らえず私は先導するエマに着いていく。不思議そうな顔でルカはさっきの部屋の扉を眺めているがきっとあそこはもう私たちの部屋じゃないんだよ。うん。


「師匠、どうぞ」


「…?」


部屋のドアが開かれると豪華なベッドやシャンデリアが見えた。…すご、こんな部屋泊まったことないんだけど。というかこんな部屋この宿にあったの?


「師匠の使っていた部屋はまだガラス片が飛び散ったままなので、こちらにお泊まり下さい。」


「はへぇ……いいの?」


「もちろん。代金は大丈夫ですのでごゆっくり」


にこりと、笑いかけたあと…部屋のドアが閉じられる。当然、エマは出て行ったが…どこか、違和感である。


「まぁいっか!モチ!起きて!」


『うるせぇなぁ』


帽子をひっくり返し、使い魔を呼び起こす。やはり寝ていたようで少し機嫌が悪い。


「うるさいってなんだよ〜…せっかくお夜食でも食べようと思ったのに」


『…なら話は別だな。』


「うんうん、そうだよねっ。ルカ、何か作ってきてくれる?」


「はいであります!」


ドタドタと部屋を出ていくルカ。この宿、キッチン借りれるから助かるんだよね。


「モチ、明日からの動向が決まったから聞いてくれる?」


『手短にな。』


「もぉ〜…しょうがないなぁ」


そう言って、私は依頼のことと行き先を告げる。

明日から本格的な旅になる。しっかり、英気を養わなければ……


ぐぅ……



 * * *



モチは見てしまった。その、彼女の秘密を───



「ふふ、よく眠っていらっしゃる…一応お夜食に一服盛ってみたのですが…必要ありませんね」


その、声の主…エマはコトリ、と机にお盆を置くと…フィーナの眠るベッドへ近寄った。そして…


するりと、入り込んだのだ。そしてなんと、思い切り寝ているフィーナに抱きついた。


「んにゅぅ…」


間抜けな声がフィーナから発せられるが起きることは無い。あいつはいつも1度寝ると死ぬか朝になるまで起きないのだ。


「はぁぁぁ〜……久しぶりのお師匠様……」


エマはフィーナの長い髪に顔を押し付け…匂いを、嗅いでいる。

何をやっているんだと…起きていたモチはその光景に困惑していた。


「うーん…?モチ…ダメだよぉ…私の髪を縦ロールにしないで…」


「…モチ…」


バッと起き上がったエマ…と、視線が合った。モチは金縛りにでも会ったように動けなくなる。


「…見ましたか?」


人とは思えない、半端じゃない圧を掛けられる。

モチの首は自動的に横にブンブンと振っていた。それは本能的な恐怖によるものだ。


「そう…命惜しくば、黙っているといいですよ」


にこりと、笑いかけた少女から、モチは確かな殺意を感じ取った。

それは正しく…力関係を分からせるように。


モチの体は、服従のポーズとして腹を仰向けに寝転がっていた。本当に、屈辱である。








「おはようございます。お師匠様」


…モチは絶句した。さも何もありませんでしたよ?と言わんばかりの顔のエマに。


彼女はモチを脅した後そのままフィーナのベッドで眠っていたが…当然のように寝坊助な師匠よりも早く起きて全ての身支度を終え、なんなら出立の準備をしている。師匠の分まで。


「朝食はどう致しますか?」


「うーん………ルカ、適当に作っといて。」


「……私、エマですけど?」


「………はえ…?」


寝坊助はいつもルカに起こされ色々やってもらっている。そのためか今…エマとルカを間違えた。それによって、少し部屋の温度が下がったような気がする。


…あいつは本当に人間なんだろうかとモチは疑問に思った。口に出すことはないが。


「…そっかぁ…どっちも大好きだから問題無いね〜…」


ぐてー…と、布団に包まりながらフィーナが言った。その言葉が効いたのか少し、エマの様子は落ち着いた。


「もう、お師匠様ったら…!」


「でも…エマの方が怖いぃ…」


「……」


その時のエマの顔は想像を絶すると、後にモチは語った。


あまりにも、理不尽である。理不尽だとは思うが…寝言に全部出過ぎだろう。


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― 新着の感想 ―
エマはそっち系なんですね。 (´ε`) 完全にパワーバランスを掌握されて、力の上下関係を築かれてしまいましたが、モチはあまり強くないのかな? (´・ω・`) カーバンクルってことは魔法には滅法つよ…
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