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24話 珍道中(2回目の気絶を添えて)

難産でした。道中捻り出すの難しかった…

翌日、私達は貸切の馬車でアルセリアと例の場所へと向かうことに。私側で来るのは私とエマとルカ。アルセリアの方は従者兼御者一人のみのようだ。


「飛行魔術は使わないのですか?」


馬車で進む中、エマが疑問を口にした。魔術師であることを隠す必要も無ければ飛行魔術の方が馬車よりも早い。使わない理由が無いように思えるが…


「母上が言うには使わない方が良いらしいのじゃ。特に人間はの。我々魔族ならともかく、とも言っておった。」


「あー…そっか、なるほどね。確かにそうだ。」


アルセリアの言葉で私は理由を察した。これは魔族の特殊な生息域によるせいだ。


「分かるんですか?師匠。」


「なんとなくだけどね。どうせならほら、アルセリアに聞いてみて。」


エマの視線がアルセリアに向く。一瞬アルセリアはビクリと強張ったものの、咳払いをしてからその説明を始めた。


「まず我々魔族の住むここら一帯自体、魔力濃度が濃いのじゃ。」


これは有名な話だ。高名な魔術師でさえこの地域に踏み入れば死の危険を伴う理由がそれである。


「そして自然な魔力はいずれ上へ上へと滞留していくものじゃ。つまり…」


「空を飛ぶのは危ない、と……ですがそれでは私、ネグロードで普通に空を飛んでたことに説明が付かないのでは?」


「……それはお主の身に着けているブローチのせいじゃろうて……」


アルセリアがエマの胸元のオレンジ色に輝くブローチを見つめながら言った。

あー…確かに、あれには山ほど防御系の術式埋め込んだっけな。多分それが機能しているからエマやルカはそもそも問題なくここまで着いて来れてるのか。


「我には見ただけで分かる…そのブローチを作ったのはかなりの技術を持つ者じゃろう?大切にした方がよいぞ。」


「いやぁ…それほどでも。」


「…やっぱりお主か…」


あのブローチ自体、私の弟子って分かるようにするためだけのものだったから褒められるとなんか嬉しいなぁ。

魔道具作りはあんまり好きじゃないんだけどもうちょっと研究してみてもいいかも。


「お主には勝てる気がせん。」


「最初気絶してたしね~」


「掘り返さんでいいっ!忘れろ!」


目が合って魔女って名乗っただけで泡吹いて気絶したんだよ?忘れようにも無理という話だ。


「お主はもう少し自身の力を自覚した方がよい。魔族からしたら災害が歩き回っているようにしか見えぬ。」


「え…そんなに?」


初耳である。だってセレスもラグスも普通に対応してくれてたじゃん!

それに私は魔力制御だって怠ってないし?そもそも人畜無害なただ不死身なだけの魔女なんだが?


「そんなに、じゃ。魔女とは言え強すぎる。相当長く生きておるんじゃろう?」


人間の寿命は他種族に比べて短い傾向にあるのは覆しようのない事実だ。

だが、魔女…のみならず、魔術の研究をしているものはその魔力や魔術自体の影響により普通よりも長く生きたり若く見えたりするものだ。それ故の問である。

ま…私のは全くもって別物なわけだが。


「まぁね。詳しくは覚えてないけど…もうかれこれ1000年は経つのかな。」


「せっ…1000!!??」


馬車の中でアルセリアの声が鳴り響く。そんなに驚くことかな?

ほら見てうちの弟子達。不思議そうな顔してるでしょ?


「…待て、1000年生きている魔女など……なぁ、一応確認なんじゃが…お主の魔女としての名は、なんというのじゃ?」


恐る恐ると言った様子でアルセリアが尋ねる。

なんでそんな悍ましい事実を聞くみたいな雰囲気なんだろうか、意図は分からないが確している訳では無いため素直に答える。


「『色彩の魔女』」


「……」


なんか…また、白目向いて気絶したんだけど。なんで?



 * * *


 * * *


 * * *



その少女は祖父の脚の間に挟まり、絵本に目を輝かせていた。


「こうして、『色彩の魔女』は『不死王』を仲間と共に封印したのじゃ。めでたしめでたし。」


「ねーぇ!おじい!今のもう1回読んで!」


「はは、またかの?もう5回目じゃぞ?」


もう幾度となく読み聞かせてもらった『不死王と色彩の魔女』の絵本。少女はその絵本に出てくる『色彩の魔女』が大好きだった。


「だって格好いいもの!私もこんな風に皆に力を貸して貰えるような強い魔女になりたい!」


「そうじゃなぁ。よく寝て、よく食べ…後は威厳のある喋り方をすると良いかもなぁ。」


祖父は冗談のつもりだったのだろうが、少女は真に受けた。


「じゃ、じゃあおじいの真似する!わ、我はアルセリア!じゃ!」


「ほぅ、我の真似で良いのか?母上じゃなくて?」


「お母様は……いいの!だっていつも遊んでくれるのはおじいだから!」


支離滅裂で内容に筋など通っちゃいない。まだ幼かったから仕方ないのだろうが……とにかく、少女は色彩の魔女に憧れ彼女のようになりたいという夢を掲げた。

そのために、祖父の言った通りよく食べて、よく寝て……祖父の真似をした。


お母様には喋り方を何とかしなさいとよく叱られたが、これはアルセリアにとっては大事なものだった。



 * * *


 * * *


 * * *



「はっ……」


「あ、起きたであります!」


「随分な寝坊だったねぇ。魔王様。」


アルセリアがゆっくりと身体を起こす。

そして私らの顔を見て……呟く。


「…そこな魔女が色彩の魔女だったとかいう夢を見た気がしたんじゃが…」


「夢じゃないね。」


「……目眩がする……」


「……?」


何をそんなに悩んでいるんだろうか。ちょっとよく分からないけど私が色彩の魔女であることが理由なのはなんとなく分かった。


「もしかして、私のファンとか?」


「っ〜〜この大陸におるものは皆色彩の魔女に憧れるもんじゃろう!」


「魔女様は凄いです!!」


……言ったのは私だけど、まさかのまさかで本当にそうだとは思わないじゃん。ちょっと照れるなぁ…


「お主のせいで今我の英雄像が崩れていっておるからあんまりふやけた顔しないでくれ……」


「あ、ごめんね?」


「何もかもが思っとたのと違う……!」


仕方ないよね。いつの時代も英雄の姿形なんて書き換えられるものだし。


「本当にお主が不死王を封印したのか…?信じられん。」


「信じても信じなくても、どっちだっていいよ。大事なのは今が平和ってことでしょ?」


「そうじゃな……所で、ここはどこなんじゃ?馬車の中ではあるまい。」


アルセリアが辺りを見渡しながら問う。


「ここは宿であります!」


「宿?」


疑問符を浮かべるアルセリア。そう言えば起きてから何も言ってなかった。


「アルセリアが気絶したから今日は最寄りの街で宿を取ることにしたの。」


「ぬぅ……そうか、お主がそうなら……行き先を知っていてもおかしくはないのか。」


「合ってるか分かんないよ?」


「一応聞くが、ここは?」


「ショウシアの街だよ。」


それを聞いたアルセリアは胸を撫でおろした。ふむ、やっぱり私の推測は合っているらしい。

それはつまるところ、セリアが割ととんでもない無茶ぶりを自身の娘にしているとも言える。


「色彩の魔女…いや、フィーナよ。」


「なに?改まって。」


「試練の邪魔はせんでおくれ。これは、我が果たさねばならぬことなのだ。」


あぁ、内容を知ってるから手助けをすると思ってるんだ。当然の懸念だろうけど…


「鼻から私は手を貸すつもりは無いよ。セレスも言ってたでしょ?監督役だって。」


「……そうか。」


私の言葉にそれだけ返したアルセリア。その顔は少し、寂しそうであり…安心が見えた。



 * * *



~翌日~


「大変だ!!」


「竜が現れたぞ!!」


「『避難警告、避難警告』」


翌朝…その騒々しい声により私は目を覚ました。

窓から下を覗くと逃げ惑う魔族たち。そして上空に…翼を持つ強大な存在感を放つものがいた。


「うわ~朝から凄いねぇ。」


「師匠大変です……師匠が早起きしてる…」


「おはようエマ。今はそれはスルーしておくよ。」


失礼な。私、寧ろ最近は早起きなことが多いんだぞ。偶に魔導書を読んで夜更かししたら寝坊するぐらいで。


「竜です!でっかいです!」


エマの後ろからまだ寝ぐせのあるルカが顔を覗かせる。


「そうみたいだけど…まぁこの時期に出るって分かってたんだろうねぇ…」


「師匠…まさかアルセリア様の試練と関係があるのですか?」


「関係あるにはあるけど試練の内容とは別だよ。さっさと対処した方がいいかも…ん?」


窓の外を見れば…見覚えのある立ち姿が屋根の上にて見えたではないか。

灰の髪に露出の多い魔族らしい服を着たアルセリアである。


「お手並み拝見だね。」


「師匠、私達も参りましょう。」


「うえー……着替えるのめんどくさいじゃん…」


「これも人助けです。人々に好かれるために旅に出たのでは?」


エマは私ではなくルカの方を向いて聞いた。…私だと誤魔化すから。


「その通りであります!魔女様はすごいです!」


「では、さっさと行きますよ。監督役の役目を果たしてください。」


「はいはい……ルカ、手伝って。」


「はいであります!」


楽な仕事だと思ってたのになぁ。面倒事を増やさないでほしい。


「やんちゃなお姫様だねぇ…」


「アルセリア様は確かにお姫様みたいです!可愛いです!」


「あれ、ああいうのが好み?」


ちょっと刺激強いかなって思ったけどそうでも無いのかな。

というかあんな貧相な身体なのに寒く無いのかな?魔族領は王国に比べてまだ寒いと思うんだけど…


「…?」


ルカは何言ってるか分からないと言った様子できょとんとしている。よかった、いつも通りだね。

なんて話をしているうちに私の身支度が終わってしまった。いつもの魔女帽にローブ、やっぱりこれだね。


「ルカは危ないから宿でモチとお留守番してて。」


帽子の中で眠っていたモチをルカの手のひらに乗せる。

ルカは残念そうな顔をしているが仕方あるまい。ただの魔物であればいいが相手は竜だ。闘い慣れている者でさえ危険のある相手。


「またでありますね……分かったであります!お気を付けください!」


「うん、行ってくるね。」


ルカの見送りを受けながら私は宿を出た。

街に出ると既に魔族等は避難したようでポツリポツリと何人か居るだけだ。というか宿の店主も居なかったな。泊ってる人起こしに来てよ…


「あ…ルカに寝ぐせ直ってないって言い忘れてた…」


そんなどうでもいいことを考えながら、私もアルセリアの居る方へと向かった。






~世界観設定紹介~

魔族・・・先祖が魔物で魔力の扱いに長けている。人の扱う魔術は魔族が扱う魔力操作を真似して得た技術。多種多様な見た目があり人よりも文明的な進化は遅い。

魔王名・・・魔王に名を連ねる者の名前が長く魔族たちに覚えられにくかったため初代魔王が気軽に呼べる名を考えたことから始まった魔王に対する別称。セレスティアは『魔王ノクス』。


まだ書き溜めないので明日の投稿は不明とさせていただきます…

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