23話 魔王の試練
昨日は申し訳ありませんでした!年末に入って休みが増えるので投稿ペース上げれたらと思っています…!
驚きのあまり固まったファフニル達をどうにか治してから私達は目的の人物へと会いに城を歩き回っていた。
「それにしても驚きましたよ。まさか魔王様が捕まって…さらには手荷物のように運ばれているとは。」
「驚いたのはいいけどさ、寧ろその後お咎め無しなのはびっくりしたよね。」
「ははは、当然でしょう…弱き者が悪いのですから。」
ファフニルの言葉…それには、魔族の主義自体が関わっている。
魔族というのは基本的に弱肉強食、実力社会なのだ。人のようにそれ以外のものを持たない…とも言えるが。
「師匠…今は先代魔王様に会いに行っている…ってことですよね?」
「そうだけど?聞いてなかった?」
「フィーナさんよ、俺でも今の状況に中々着いていけてないんだぜ?聞いてても耳を疑いたくなるのが先だぁ。」
「僕もよく分かんないです!!」
私に着いて来ていた皆どうやら状況の理解に時間が掛かっているらしい。
でも確かに、急に現れた魔王を下したと思ったら先代魔王に会うために手土産として現魔王連れて行こう…
改めて言葉にしてみると確かに意味わかんないかも。
「まぁまぁ、そんな心配しなくても…多分あの子とエマは気が合うんじゃないかな?」
「そうなんですか…?師匠の弟子というだけで癖者なのはなんとなくわかりますけど…」
「待って私の弟子ってそんな風に見られるの?」
でも…言われてみるとそうかもしれない。エマは…ちょっと怖いけど割と普通、だよね?それにルカは可愛いし…
ユーリは……ごめんあいつだけは例外かもしれない。
「魔女様、つまり今日会うのは姉弟子ですか!」
「うん?一応そういうことにはなるかな?」
「じゃあ僕、頑張って挨拶するです!」
ね?ルカは可愛いでしょ?ルカのお蔭で不安で濁っていた空気が爽やかになってきた。
その後も雑談を交わしながら廊下を歩いていると…ファフニルが立ち止まり、大きな両開きのドアの前で振り返った。
「魔女様、こちらの部屋になります。」
「うわー…でっか…」
前来た時もこんなものだったかな?確か先々代の魔王ってめちゃくちゃ身長高くてそれで改築したんだったっけ?
それでも何度見てもこの扉の大きさは…
「これ、どうやって開けるんですか?」
「普通に。ぜひやって見せればよいのでは?」
エマの問いに対しファフニルがそう言って、私に視線を向けてきた。…あぁ、そういう感じ?
「せっかくだし…ラグス、その子貸して。」
「…フィーナさんよ、どうするつもり…」
ラグスが言い終わるよりも先に…その子こと魔王ネクシアを私は魔術で扉に叩きつけた。
使ったのは重力魔術。ネクシアが私に対して使って反撃の際にも使ったそれである。
「へぶぁぉ!?」
何か悲鳴が聞こえたのは気のせいだよ。何にせよ…扉が、開いた。
まさかと思ったけど本当に物理的な衝撃で開くんだ、これ…
「ようこそおいで下さいました…師匠。私の娘がご迷惑を掛けたみたいで大変申し訳ありませんでした。」
そして扉の奥にて姿が見える。
その女性は長身で、長い灰の髪と褐色の若い肌、そして頭に生えた片方のみの角を持っている。
その角こそ、魔族の王たる象徴なのだ。
「久しぶり、セレスティア。随分なお出迎えをありがとうね。」
私はその女性…こと私の四人目の弟子、セレスティア・フォン・ノクティスへと不敵に笑いかけ、言った。
* * *
私達は先ほど案内された部屋の隣の部屋、所謂客室のようなところに案内された。
さっきの部屋は謁見室であって本来は民の意見を魔王が聞くときに使うものらしい。
「改めまして私、先代魔王ノクスことセレスティア・フォン・ノクティスと申します。お連れの皆様方、どうぞよろしくお願いします。」
ここまで改まった挨拶をしてくると思っていなかったみたいでエマやラグスは唖然としている。
そんな中口を開くのが当然…
「僕はルカです!魔女様の弟子です!!」
元気いっぱい、ルカである。
「…師匠は随分と元気な子を弟子にしたんですね?」
「可愛いでしょ?」
自慢の子なんだぞ。今のところ魔術面においては才を見出せてないんだけど…それでも家事は出来るしこんな風に大きな声で挨拶出来る。
「えぇ、そうですね…それで?そっちのお二方は…」
続いてエマとラグスの方に視線が向けられる。
「あっ、はい。私はエマ。貴方と同じ、師匠の弟子です。よろしくお願いします。」
「俺はぁラグス……そちらさん方とはちょっとした縁でこっちに来るのを手伝ったの傭兵だ。」
2人の挨拶を聞いてセレスティアは頷いた後、再び私の方へ向き直る。そしてすぐ足元に寝転がっていた魔王ネクシアをひょいと拾い上げる。
「後1人…挨拶してませんよね。ほら、起きているでしょう?」
「ヒィッ……わ、我は…」
「私は、でしょう?作法がなってないですよ。」
「はぃぃ…」
びぇぇ…と、叱られたことで泣きながらもなんとか佇まいを持ち直し、口を開く。
「私は、魔王ネクシアことアルセリア・ノクティス、と申します。どうぞよろしくお願いしみゃす。」
「……噛んだね。」
「っ…はぁぁ……師匠、大変お見苦しい所を見せてしまい申し訳ありません。少々…至らぬ点の多い娘ですがどうかお許しを。」
溜息を吐いた後、申し訳なさそうな顔で謝るセレスティア。隣のアルセリアはなんというか、怒られないかハラハラしてるみたいだ。
「相変わらず厳しいんだね。セレスは。」
私の弟子だった頃もよく鍛錬のし過ぎで倒れそうになったりもしていた。良くも悪くも自他ともに厳しいのだ。
「そうじゃそうじゃ!母上は厳しすぎ…る…」
「それ、私の目を見て言えますか?」
「……ごめんなさい」
綺麗なまでの即落ち…今のはアルセリアが悪いかな。
でも自分の娘に対して少し厳し過ぎる…いや、私が口出すことじゃないから言わないけども、少しだけ可哀想に思えた。
「あの、少し厳しくし過ぎなのでは…?見たところまだ歳もそれほどに… 」
恐らくは同じことを思っていたエマがつい口を出してしまった。…これは言ってなかった私が悪いか。
「人が魔族のルールに口を挟むのですか?」
セレスティアから、凍るような圧が放たれる。
というか実際に魔力が漏れ出てる?流石に止めなければ…私以外に影響が出る。
「ごめんセレス。これに関しては言ってなかった私に非があるから。だから…私に免じて許して欲しい。」
「…師匠がそこまで言うのであれば。」
部屋中の魔力の流れは落ち着き、セレスティアは体勢を整えるため座り直した。
「し、師匠…今のは…今のはなんなんですか?まるで身体の芯ごと持っていかれるような…」
「セレスは魔族だから。今のはエマ達の魔力ごと操った結果だね。」
「…それだけで?」
それだけで、である。セレスティアは言うなれば…魔族の完成系と言っても過言ではない。彼女は人と魔族のハーフ故に、人としての魔術の才を持ちながらも魔族としての体質を持っている。
「…少々話が逸れすぎましたね。」
「そうだね。でも何となく、セレスが私を頼った理由は分かったかな。」
「やはり師匠…」
羨望の眼差しで見つめられるが…これは予めアルセリアの実力が分かっていたからこそ察することができた。
「皆にも分かるように教えてあげて。セレス。答え合わせもしたいし、ね?」
私は…その理由の張本人であろうアルセリアに視線を向けつつ、セレスティアへと尋ねるのだった。
* * *
お茶のおかわりがを淹れられてから、セレスはその問題を語り出した。
「まず初めに…師匠を利用したことは謝ります。先日、予知夢にて師匠がこの地を通る場面が見られたので…アルセリアに頼み、魔女を連れてくるように命じました。試練という形式で。」
「あれは試練じゃなかったのか?母上。」
「どうせ無理だと分かっていましたから。」
「……酷いのじゃ、母上…」
中々に鬼畜である。無理難題と分かった上で私を引き止め呼び寄せるために自らの娘を出向かせるとは。そのお陰で私は分かったのだけども…
「それはさておき、本題に入りますね。師匠は分かっていると思いますが…アルセリアは未熟なのです。それはもう…私の足元、更にその下にすら及ばない程に。」
「言い過ぎじゃ!」
セレスティアの物言いにアルセリアが反抗的な目で睨み威嚇する。しかしセレスティアはガン無視で話を続けた。
「そんな未熟なアルセリアですが、つい先日晴れて魔王の座を私から受け継ぎました。魔女様が来ることを予見した…2日ほど前ですかね。」
まさかの事実に流石に驚いた。もうてっきり何年も前のことかと思っていたのだが…
「前々から魔王になりたいと言っていたので、良い機会ではありました……ですが、それをよく思わない者は多数いるのです。」
「そうだろうね。魔族という種族柄、仕方ないと思うけど。」
何度も言うが魔族は実力社会。最近ではどうやらセレスティアがある程度統一した為か、昔ほど過激ではないらしいが…それでも、思想として根底に存在している。それは先のファフニルを見れば分かることだ。
「はい。なので私は試練という形でアルセリアを王として相応しい存在にしたいと考えています。」
「…つまりその試練に私が関わるってことだよね?」
「流石です、師匠。その慧眼は未だ健在のようで。」
いやぁ…それほどでも……なんでエマ睨んでるの?モチもなんかどうしようも無いやつを見るような目で見てきてるし…
「で…その内容は?」
そこまでは分からなかったのだが…魔王として認められるための試練と、字面だけで過酷さは伝わってくる。はてさて、一体どんな無茶振りをするつもりか…
「うちの娘の監督役を。」
「話が見えないなぁ…」
「詳しくはうちの娘に。とにかく道筋とその試練を見届けていただければと。」
なるほどなるほど…つまるところ、娘に選択権を渡すから協力を求められたら協力したげて…ってことかな?
「行き先と報酬によるかな。今、ちょっっと…だけ、手持ちが少ないからさ。」
エマが何か言いたげだけど今口を挟むのは野暮だよ?
「無論用意はあります。希望するものがあれば可能な限り用意しましょう。」
「いいね。乗った。」
可愛い弟子の頼みだし、場合によっちゃ見るだけ。それでいて報酬も悪くない。乗らない理由が無いではないか。
「アルセリア、いいわね?」
「……母上は、我1人じゃ試練を突破出来んと思っとるのか?」
「それはどうでしょう。自分の胸に、聞いてご覧なさい。」
アルセリアの表情は…悔しそうな、悲しそうな…そんな、様々な感情が入り交じったものになっていた。
「じゃあ報酬の話なんだけど────」
どうなることやら。何にせよ、私は頼まれたことをやるだけだし?
〜キャラ設定紹介〜
セレスティア・フォン・ノクティス(魔族と人のハーフ 208)
先代魔王にして過去最強の魔族。フィーナの4人目の弟子でもあるため魔族であるが魔術を扱える。娘にはいつも気苦労を掛けられている。
アルセリア・ノクティス(人と魔族のクォーター 15)
現魔王だが周囲からの信頼が得られておらず寧ろ心配されている。口調は祖父である先々代魔王を真似たもの。
まだまだ語りたい設定あるんですけどあとがき欄狭くて…というか当分用語の設定やってないな!?またいつかやります(遠い目)。ちなみにアルセリアちゃんの口調はのじゃロリを書きたいという作者の意志によって捻じ曲げられたものです。




