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22話 魔王襲来(?)

感想送ってくださった方ありがとうございます!とても励みになりました!

「うぅ…狭いであります…近いであります…」


「しっ、静かに…」


エマは焦っていた。馬車は壊され魔女が居ると都市中に知らされ、更には魔力の残滓を追いかけてか追っ手が幾度となく自分の元へと来るのだから。


今は建物間の影にルカと共に隠れようやく一息着く事が出来たのだ。


(このままだとジリ貧…)


エマはこの状況について1度落ち着いて考える事にした。


(既に魔女がこの街に入ったことは気付かれた…そして私の潜伏はいずれバレるだろう…)


なら寧ろ…この状況を好機に変えてしまえば?


「ルカさん…しばらくここで大人しくしていてくれますか?」


「え…?」


「モチ、ルカさんの事、守ってあげて。」


『お?しゃーねぇなぁ。』


モチはカーバンクルであるため表情に変化はないがその声音はここからエマのやることを面白がっていることがわかる。


エマはルカの小さな掌にモチを乗せた…1呼吸後、飛行魔術を発動した。

相手は魔族、故にすぐに魔術の発動には勘づかれる…だが、気付かせるのが目的であった。


「『天を裂き、雲を蹴散らす自由の悪戯娘よ、疾風の羽を広げ、笑いと共に舞い降りよ──風精霊王シルフ・ゼピュロス』!」


エマの柔らかくもハッキリとした詠唱が、街中へ響き…その直後、嵐がごとく風が吹き荒れる。


「お騒がせして申し訳ありません。街道都市ネグロードへ住む皆様方。どうも…私、魔女のフィーナと、申します。」


師匠の名を借りることに罪悪感を感じながらもエマはその言葉を風で運び、街中へと伝達する。


「何故貴女方が私を狙っているのかは分かりませんが…旅の余興として、乗りましょう。私を、捕まえられますか?」


その挑発と共にエマは飛行魔術を解除し住宅地の屋根に降りる。


「どうかご無事で…師匠…!」


屋根伝いで、自身の存在を知らしめるように魔術を発動させながら移動を開始した。


地上の追いかけっこが、幕を開けた。



 * * *



一方その頃、私はと言うと…


「はいそこ、キビキビ働く!」


「あいあいさー!」


「君達がやったんでしょ!早くやって!」


「イエスボス!」


…優雅に、寛いでいた。魔族達に指示を出しながらであるが。


「裏の者達は勘が鋭い…その分、強い者には逆らわないというのもまた特徴ですね。」


まさしくラグスが言った通り、私を魔女と判断したこいつらは閉所ならば勝ち目があると思ったのか私へ襲いかかってきた…が、あっけなく撃沈したのだ。


それで命までは奪わなかったら何か礼がしたいと言うので都市の状況の確認と岩の排除をやらせている。


「正直、魔術はもう使っちゃったし…あんまり意味無い気もするけどね。」


「…いいや、あるかもしれませんねぇ。」


ラグスがフッと笑みを浮かべて前方を見る。

私も視線をやると走ってくる男がいた。あれは確か…偵察に行かせてた人だったかな。


「ラグスさん、魔女様!大変ですぜ!街で…魔女が現れたって!」


その報告に耳を疑った。言わずもがな…私がその魔女なのだから。

まさかもう1人魔女が出たと言うわけでもあるまいし…もしかして…


「ははっ、予想はしていましたがやはり貴方のお連れさん、かなりの大立ち回りをしているみたいですねぇ。」


「…やっぱり、エマ?」


「彼女しか居ないでしょう。魔女を騙ることが出来るのは。」


それもまた、その通りだ。きっと私程で無いにしろ私に近い魔術を再現できるのはきっとエマだけだ。


「…って、そうしないといけない状況になったってことじゃない?」


「そうとも言えますねぇ。最悪、魔術が止んだら魔女さんだけでも出てもらいますよ。」


「そう……エマは大丈夫だろうけど…ルカ、大丈夫かなぁ…心配だな…」


心配を胸に、地上への入口が開くのを待った。



 * * *



「流石に厳しいですね…」


4つ腕の魔族を拘束した────これでもう何人になるだろうか。既に魔力の残量は半分を切っている。


「最悪の場合は…」


ブローチを、外すしか無いだろう。だがこれを使うと自分の動ける時間に制限が出来る。


「見つけたぞ!魔女!」


「っ…!追っ手が早い…!」


出来る限り、師匠が出てくるまでにやり手を潰しておこうと考えたのが…失敗だったのかもしれない。

1度追っ手を取っ払うために魔術を使えばその魔力に呼応するように第2第3の追っ手が掛かってくる。


「いい加減…休みたいんですけど!」


「ぐっ!?」


風の魔術を発動しそのまま風圧で屋根から追っ手を落下させ、自身も風に乗る。


「今は綺麗になんて…」


師匠が見たら怒られるだろう。あの師匠は普段はガサツだがこと魔術においては何もかもを求めてくるのだ。


「なんて、考えてる暇もありませんね…!次の屋根は…」


「もう必要ないぞ。」


「なっ…」


次の瞬間、とてつもない重力がエマを襲い…展開している魔術も何もを無視して地に叩きつけた。


「はん、噂の魔女がどんなものかと来てみれば…大したことないでは無いか!」


その魔術を使ったであろう張本人はエマのすぐ近くへと降り立ち、宣言する。


「我こそが魔王!魔王ネクシアである!魔女!我が直々に下してやろう!」


「貴方が…魔王…?」


辛うじて風を操りギリギリで受身を取ったエマは…その少女を見て疑問を抱いた。

目の前の少女は見るからに小さい。人間で言う所の12歳ぐらいだろうか。確かに髪やら服装からは品を感じたが…どこからどう見ても、子供の遊びにしか見えない。


「そうじゃ!つい先日我は魔王になった!ネクシアの名を貰ったんじゃ!」


おおお!ネクシア様!そういった少女を崇める声が街中へと響く。


「…それで?貴方は魔女に会いたかったのでしょう?何が目的で?それにいきなり襲いかかるのはあまりにも失礼では?」


「む、むぅ……だっ、だって…そっちに来られるよりも自分から行った方がまだマシかなって……」


「…はい?」


「とにかく!今の其方等敵にもならん!そうじゃ!余興の続きとしてやろう!」


つい先程言っていたことも気になるし、この子の目的が分からない。そもそも連れてこいという命を出しておきながらわざわざ出向いてくるものだろうか。


「……そうですね。どうやら実力だけは確かに魔王と呼べるものなのでしょうし…」


エマはゆっくりと、胸のブローチへと手をかざし…あの日教わった付与魔術に解除術式を組み込む。

その直後、溢れんばかりに魔力が回復していく──


「余興ついでに、倒して、吐かせます。」


「ヒッ……そんなこと言ってもむ、無駄じゃ!我は引かぬ──あだっ!?」


対話していたネクシアの頭に、小粒の石がぶつかった。


「ありゃ、ごめんね。ちょっと出るために魔術使ったらやり過ぎちゃってさぁ。」


アハハ、空気を読まずに笑いながらその場へと登場した…魔女のローブを着た女。


「何者じゃ!不敬であるぞ!」


その女に対し、ネクシアは敵意むき出しの眼を向けた。正にその女こそが…目的の魔女であるとも知らずに。



 * * *



エマがちょっとやばそうだったから勢いよく出てきたのだが…これはどういう状況なんだろうか。

あの少女…ん?誰か、似てるようは…


「…えっと、通りすがりの一般人って言ったら信じる?」


「バカにしおって!」


そう少女が叫んだ直後のこと、風が吹いた訳でもないのに…私の身体は後ろへと飛ばされた。


「…珍しい。」


この魔術…やっぱり、あの子の血縁だろうか?

私はその魔術に対し同じ魔術をぶつけた。結果、私の身体は寧ろ前に進んでいく。


「なっ!?」


「力強い魔術だけど、繊細さが足りないよ。」


先程の位置へと戻り、地に足をつける。


「くっ!どんな手を使ったか知らんが…」


「もう見せなくていい。同じやつでしょ?」


またも同じ手を使おうとした少女の魔術を事前に魔力で干渉し術式を書き換える。


「…あれ?」


「その歳にしてはよく出来てると思うけど、セレスの娘?ならもっと頑張って欲しいな。」


コツコツと、1歩ずつ距離を詰め…少女の目の前に立つ。やっぱり…近くで見て、確信した。


「な…な…なんで効かんのじゃ…」


「そうだねぇ…どうせもう隠せないし……強いて言うなら、私が魔女だから?」


その言葉で少女は失神した。恐怖によって、である。


「…なんで?」


「師匠!」


私が仰向けに倒れた少女を見つめているとエマが駆け寄ってきた。やはりブローチを外している…か。


「エマ、ブローチの術式。」


「あ、はい。…師匠、よくご無事で。」


「エマこそ。よくやった。」


正体を隠して…は無理だったけど、いい収穫じゃないだろうか。


「この子は?エマ何か喋ってたよね?」


「魔王ネクシアと、そう名乗っていました。」


「あれ?もうセレスは魔王やめちゃったんだ。」


ふーん…なるほどなるほど…話が見えてきたぞ。

あの子なら…セレスなら考えそうなことだ。


「ルカを回収したら魔王城に行くよ。」


「…この人は?」


「勿論連れてく。」


師匠を利用する悪い弟子にはお仕置してやんなきゃね。



 * * *




私は軽い足取りでその城の門をくぐった。あまりに自然に入ったもんだから門衛が目を丸くしている。


「貴様ッ!何者だ!?」


「『色彩の魔女』フィーナ・レインヴェル。そう言えばわかるかな?」


魔族は伝統を重んじる生き物で…過去を忘れない為に人よりも努力している。代わりに人は前へと進もうとする気概があるとも言えるが。


「魔女だと?魔王様の探していた…?」


「色彩の魔女ってなんだ?」


「通していいものなのか…」


…あっれー?なんか、忘れられてない?前言撤回しなきゃダメそう?


「お主ら何をしている…のだ……」


以下にも兵士達を統括していそうな老兵がやってきた。なんか…こっち見て狼狽してる?


「ま、まさか貴方は…色彩の魔女様では無いでしょうか…」


「そうだけど…」


「これはとんだ失礼を!お前達、何をしている!早く頭を下げんか!」


「ファフニル様、この方は…」


その老人…ファフニルと呼ばれた男は、ガッと門衛の頭を掴み強引に下げる。


「はようせい!」


「は、はい!」


ファフニル…ファフニル…誰だったかな。絶対会ったことあるよね………最後にここに来たのは200年前だから…その時の…先々代魔王の時から居る従者じゃなかったっけ?


「ファフニル、別にこれぐらいは気にしないで。連絡も無しに来たのはこっちなんだから。」


確証は無いが一先ず落ち着かせることにしよう。


「それは…ですが…」


「それよりも、セレスに会いたいから案内してくれる?」


「かしこまりました。すぐにでも。本日は魔女様お一人ですか?」


私は首を振り…門の前で待っているエマにこちらへ来るよう呼びかける。


「エマ!こっちこっち!」


「師匠、入って大丈夫なんですか…?」


エマ、ルカ、ラグス…に、担がれた魔王ネクシアが門をくぐった。


その時の彼らの顔は多分一生忘れることは無いだろう。




前回冒頭の少女こそが魔王ネクシアちゃんです。ちなみにこの名前自体本名ではなく魔王としての名前なので本名は別です。次回詳しく書きます。

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