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21話 検問と抜け道

ほんとすみませんよく見たら昼投稿してたの22話でした!もうどうしようも無いので22話はこのままで21話投稿します!


書き溜め無くなっちゃったので明日の投稿はないと思います…

「何っ!例の魔女がようやく訪れたのか!?」


「はい。ですが捕えられなかったようです。」


少女は、頭を抱えた。その地域にはかなりの数の兵を派遣していたというのにこうも簡単に通られるとは。


「に、逃げられたの?」


「いえ、寧ろこちらに向かっている可能性が高いかと。魔女の怒りを買ってしまったのです。」


「…なんということじゃ…」


身体が震える。これは武者震いなのだと自分に言い聞かせつつ…部下に命じる。


「わ、妾が手ずから魔女を下す!場所は街道都市ネグロードじゃ!足止めせよ!」


少女は叫び…無謀にも、魔女へと挑む宣言をするのだった。



 * * *



馬車で半日ほど進んだ頃、ラグスが口を開いた。


「これから向かう街道都市ネグロードは唯一魔王城へと繋がる都市で魔族領一の都市です。」


「えっと、何の分野で1番なの?」


「何もかも、魔族領の全ての英知がそこにあると思ってもらえれば。」


所謂城下町と言うべきか、それだけあってネグロードはかなり規模のでかい都市らしい。私が来た頃には無かったはずだから最近出来たものだろうか。


「ほうほう、それで?わざわざその話をしたってことは…?」


「実は…今、どの街も検問が強化されてましてねぇ…どう抜けようか相談しようかと。」


続きを促してみれば出てきたのは納得の理由だ。

実力行使で抜けてもいいが…出来れば穏便に行くために彼の協力を受け入れたのだ。


「具体案はあるんですか?」


「今思いついてんのは変装か、賄賂か、抜け道ですかねぇ。現実的なのは変装でさぁ。」


提示された選択肢は傭兵の彼らしい、如何にも手段は選ばないを体現しているみたいだ。


「…確かに無難なのはそうだね。」


「では変装の魔術で… 」


「いや、それはやめといた方がいいかな。」


魔術を準備しようとしていたエマに静止をかける。


「魔族は魔力の流れを見るのが上手いからね。多分バレちゃう。」


「そうですねぇ…では、どうします?」


となれば賄賂か抜け道か…賄賂に出せるお金ないんだよね。これ以上生活費に手を出したらエマが怖いし…


「実質選択肢1個か…」


「賄賂でさぁ?」


「さっきのが大盤振る舞いって言えば分かる?」


私は大富豪でもないんだ。そもそも死なないから私一人で生きる分にはお金はあまり必要じゃないから手持ち自体そう多くない。


「分かりましたよぉ。じゃあ抜け道ですね?」


「うん。ただそっちから行くのは私だけかな。2人はこのまま表道でも大丈夫だよね?」


「そうですねぇ…杖さえ出さなければただの観光に来た人間ですしねぇ。」


ならば大丈夫だろう。エマが少し心配そうにこちらを見ているが…仮に抜け道で見つかって捕まった時私一人の方が動きやすいし。


「案内して、ラグス。」


私はローブと帽子を脱ぎ、長い髪を一つ結びに束ねる。これなら見た目からじゃ魔女とは分かるまい。

勘のいい人間ならば抜け道を通っただけで分かりそうでもあるが、その時はその時だ。


「…エマは心配しすぎだよ。」


「師匠が不用心過ぎるんです。」


ムスッと、エマがそっぽを向く。全く…私を誰だと思っているんだ。

私は今尚不死身なのだ。何かあっても絶対に死ぬことはない。


「それよりもルカと…あと、モチを任せたよ。」


「フィーナさん、そろそろ降りないとですぜ。」


「じゃあ、先に行くね。」


ラグスと共に馬車の荷台から飛び降りる。ずっと荷台に居たため気付かなかったが前方には巨大な都市の門があった。

そのさらに奥、遠目からだが城も見える。あれが…魔王城だろうか。なんか私が最後に来た時よりも雰囲気変わってる?


「…ここからはお嬢と呼ばせてもらいますよ。フィーナさん。」


「そういう設定ってことかな?」


「理解が早くて助かりますね。今から俺たちは紛争地帯から逃げてきたお嬢とそのお付きってことですよ。」


それを演じろということらしい。私がお嬢様役ね…とりあえず扇子片手に高笑いでもしていればいいのだろうか。


「…それで?抜け道って?」


「通れば分かりますよ。えぇ…後、さっきの設定は誰かに尋ねられた時だけで構いません。」


「あ、そう?」


そう言われたため私は魔術で作っていた扇子を壊し、ラグスの後に続く。

都市の門とは、真逆の方向に。


 * * *



2人減った馬車は相変わらず、ネグロードへと向けて進んでいた。


「師匠…心配ですね。」


「魔女様はどこにいったですか?」


『あいつは心配するだけ無駄だ。お前らはこっちに集中しな。』


フィーナが居なくなったことで明らかに暗い雰囲気になった二人を、桃色のカーバンクルが励ます。なんとも不思議な光景である。


「止まれ!」


馬車の外で、静止の声が掛けられる。ついに来たかとエマは身構える。

この中で最も魔女と疑われるのは自分だろうと自覚しているから。


「荷台の確認を行う。」


「どうぞ。」


御者と何か話したのち、荷台へとカーテンが開かれた。

顔を覗かせたのは鎧を着た魔族。この街の衛兵だろう。真面目そうな顔だ。


「…其方らは、何者だ?」


「旅人です。この街には、観光に。」


「……魔術師か?」


「そう見えますかね?」


手をひらひらと、ローブの中身が見えるように見せつける。杖やその類のものを持ってないと証明するために。


「そちらは?」


続いて視線がルカに向けられる。下手なことを言わないかエマは気が気ではない。


「えっと、ルカです!魔女様はここには居ないですよ!…あ」


「……」


やっぱり…嫌な予感はしていたのだ。こうなった場合は…


「魔王様はここにはいませんよ。えぇ。あちらの城に居るのが魔王様と教えたのですよ。」


「今魔女と…」


「貴方の耳がおかしくなったのでは?」


ニコリと微笑むエマ。おっといけないと、口を紡ぐように手を添える。


「我々は魔王様の代理で魔女を探しているのだ。これ以上の無礼は魔王様への無礼になるぞ。」


「その話も今初めて知りました。ですが私達には関係ないみたいですね。」


そろそろ行かせてくれませんか?とでも言いたげのエマがプレッシャーを放つ。

しかし真面目な衛兵もすぐには引かない…


『おい衛兵。俺らよりもあそこ、やべぇんじゃねえのか?』


「なっ、貴様使い魔…!」


モチが荷台の外…街の中の、街灯を指差した。

そこにはどういうわけか魔族の子供らしき者がいて…今にも、落ちそうだった。


「くっ…報告感謝する!」


衛兵はすぐさま向き直りそれを助けに行く。だがエマは分かってしまう。これは…間に合わないと。


「…御者さん、一気に速度を出して貰えますか?」


「お客さん?」


「お願いします!」


びゅぅっ!と、意志を持った風がその子供を落下の直前で受け止めた。

エマが使用した魔術による風である。それ自体、珍しいものではないが…今の魔族領の状況、そして魔族自体の魔力の流れを見るのを得意としていること。それらから必然と…


「魔女だ!」


街中でざわめきが起きる。エマは想定していなかった最悪に頭を抱えたくなる気持ちを抑えながらも唖然としている御者を蹴落とす。


「さっさと出ない貴方が悪いのですよ!」


魔術で速度を加速させ、門を潜る。急に馬車を乗っ取られた御者には悪い事をしたと思うが…今はそれどころじゃない。


『どーすんだ?』


「このまま次の門まで進みます。その後のことは…考えてません!」


「ぼ、僕も考えるです!」


街道都市ネグロードの外縁区を、1台の馬車が暴走する。次なる門、商業区を目指して…


『考え無しに動くようになったのはフィーナに似てきたんじゃねえのか?』


「うるさいです!」



 * * *



ラグスに連れられた場所は都市からは離れた所にある洞窟だった。


「こんな所に洞窟が…」


「ここは脛に傷があるようなのが使う道なんでさぁ。」


何それ如何にも抜け道感あるね。ちょっと…ワクワクしてきた。


「絶対にはぐれないでくだせぇ。後、お嬢は大丈夫でしょうけど気分が悪くなったらすぐに言って欲しいですね。」


「?…分かった。」


ラグスが注意事項を述べた後、洞窟へと足を踏み入れる。私も言われた通りはぐれないよう後ろをついて行く。


洞窟の中は薄暗く足場が少し泥っぽい。下手に歩くと転びそうだ。


しばらく進むと光が見えた。人の手があることを示すようにランプがちょくちょく置かれている。


更に進んだ先…広場のような場所に出た。そこには露店らしきものも幾らか見える。ここで物資が買えるようだ。

物珍しさに見ていると何かの作業をしていた露店の店主が話しかけてきた。


「あんたら、ここは初めてかい?」


「いいえ、ここは足抜けで使わせてもらいました。今日のは別件ですがね。」


「そうかい。何かいる物はあるかい?」


「生憎、無一文なもんでさぁ。」


「なんだ、時間の無駄だったな。強く生きてくれや。」


冷たくそう言い放つと店主は私達に興味を無くしたようで作業に戻った。


「ここらにいる奴らの相手をしてもお嬢に得は無いですよ。さっさと行きやしょう。」


「う、うん。」


ラグスの言葉は最もだし先程のやり取りを見ていればより明確に伝わってくる。


「こういう所は魔族も人も変わらないんだね。」


「そうですねぇ。」


ラグスは傭兵だ。きっと人族の方に居たこともあるんだろう。それ故の共感。

私の方が歳は上なんだろうけど…なんというか、ラグスはとても様々な経験を経ている気がする。


「…何やら上の方が騒がしいですねぇ」


「エマ…大丈夫かな?」


少し心配になってきた。エマはなんでも出来るし私よりもしっかりしてるけど…偶にやり過ぎちゃったり、どこか抜けてるんだよね。私が言えたことじゃないけど…


「それよりもこちらの方を心配した方が宜しいかもしれませんね。」


ラグスが足を止め、それを見つめる。その先には恐らく使おうとしていた階段があって…そこに、大量の落石があった。


「どうやらバレていたみたいですねぇ…」


「え?」


背後から泥を踏み抜くようなベチャベチャとした足音が、複数。これは…


「裏で生きている人ってのは勘がよろしいもんなんですよ。」


「ほんとね…!厄介…」


心の中でエマに謝罪する。多分これはもう…穏便には済ませれないだろうから。

エマも子供を見捨てるほど血は凍ってないです。一応人の子です。

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