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18話 不死王の呪いと宿敵たる種族

「………んん?」


そこでフッと意識が舞い戻ってきた。この感覚は…死んだ後、生き返った時の感覚に似ている。ということは…


「おはようございます。師匠。」


「あ…エマ。」


頭上から声がしたと思ったら今、私は膝枕されてるらしい。どおりで後頭部が柔らかいと思った。

って、そうじゃなくて確認しなければ。


「ねぇ、もしかして私死んだ?」


「はい、1回首をこう…スパッと」


「ひぇ……エマがやったの?」


コクリと頷くエマ。

…確かに私が何かあったら殺してと頼んだけども!あまりにも躊躇が無さすぎる。


「師匠はどこまで覚えていますか?」


「えっと…確か、ユーリに魔術を使ったら魔術返しされて…」


「…なるほど。それ以降は?」


「覚えてないや。でもエマがなんとかしてくれたんだよね?」


流石私の弟子。頼りになるね。


「えぇ、まぁ…一応そこからも聞きますか?」


「え?うん。」


純粋な興味本位で続きが気になったため聞こうとした。それが間違いとも気付かず。


「師匠はユーリに魔術を掛けられて、その隙に呪術も掛けられました。そして……ユーリが「愛しています」と言ったのに対し師匠も恍惚とした表情で「あいして」────」


「ストップストップストップ!!」


思い出した。言われたことでハッキリと。

やばい死にたい。顔から火が出そうなくらい熱い。嘘でしょ私。呪術の影響とはいえなんでそんなこと…


「きっと心の奥底ではユーリを嫌っていないのでは?師匠は優しいですから。」


「そうなのかなぁ…」


「えぇ、私もやられましたがそもそも初手の段階で雑音としか思えませんでしたし。お陰様でストレス発散が捗りました。」


……今ハッキリ分かったのはエマだけは怒らせちゃいけないってことかな。


「えっと、それで…ユーリはどうなったの?」


「ここにおります。師匠!」


「!?」


突然後ろからユーリの声が…

振り向くと、逆さまで宙吊りにされてるユーリが笑いかけてきた。でも顔が原型とどめてないぐらい腫れてない?


「エマ、説明。」


「ウザかったのでボコしました。」


「ウザ絡みしたら殴られました。」


追加でユーリの説明も加わったが…うん、本人まで言うならそれが事実なのだろうが何故エマを怒らせたし。


「ははは、ところで妹弟子よ。そろそろ…頭に血が上って気分が悪くなってきたのだが。」


「いつでも縄は解けるようにしてるので反省の気持ちが足りたら勝手に降りてきてください。」


面倒くさそうにエマが言い放つ。なんというかこの光景、かつて私が師事していた時のことを思い出す。


「じゃあ降りるか…」


「まだダメですね。」


理不尽である。容赦なく再度拘束され宙吊りに。


「さて師匠。わざわざユーリを連れてきた理由、お教えしましょうか。」


改まってエマが切り出す。確かに拘束しているとはいえエマが生きて返したということはそれなりの理由があるんだろう。

いつもなら多分半殺し……4分の3殺しぐらいは絶対やってる。


「ユーリ……兄弟子殿は、今回の件で分かったと思いますが呪いについて研究しています。」


「はい、それはもうめちゃくちゃ研究しておりました。」


「…現在の目的は別だそうですが、こんなのでも最初は師匠の呪いについて調べていたらしいですよ?」


「私の呪いについて……って、え?『不死王の呪いのこと?』」


 現在私に掛かっている呪いは1つのみ。そもそもとしてこの呪いが強いせいか今まで呪いをかけられることなど無かったのだ。それが出来なくなるほどには今の呪いは弱まっている。


「はい。じゃあ直々にその口から答えてくれますか?兄弟子殿。」


「エマったら強引だなぁあだだだだだだだだだぁぁ!関節はやめっ!いだい!悪かった!」


 またふざけたことをぬかそうとしたユーリに対し綺麗な流れでエマが関節を極めた。


「今のはユーリが悪いよね……?」


なんかこういうの…2人が弟子だった頃を思い出すなぁ… 



  * * *



エマが落ち着くまで5分ほど待った後、お茶を持ってきたルカを加えてその大事な話は始まった。


「さて師匠、師匠は自分の呪いがどういったもので、今はどういった状態にあるか、分かっておられますか?」


「えっと、不死身になる呪いで今は呪いの効果が弱まってるのか少し記憶力に支障をきたしている…かな?」


「大体は合っていると私も見ています。事実師匠、あの本を見ても反応が薄かったですし。」


「あの本?」


心当たりがなく首を傾げる。するとやれやれと言った様子でユーリが答える。


「ほら、あの……ヴァイスローズの小娘…セレナか。セレナが師匠に見せつけていたあの絵本ですよ。」


「あーあれね。……というかなんで知ってんの?ユーリ居なかったよね?」


「気のせいですよ。」


気のせいなわけあるか。多分なんらかの方法で現場を見ていたのだろう。あそこは図書室で禁書庫の近くだし魔術でも仕掛けていたのかも。


「…ま、それは置いとくよ。で、その本がどうかしたの?」


「それがですね…」


「ここからは私が説明した方が早いでしょう。師匠の調べものにも関連がありますから。」


グイっと、説明を口にしようとしたユーリを押しのけエマが口を開く。


「まだ呪いについても話していないのにっ…!」


「兄弟子の話は脱線して長くなるので。」


無慈悲に言い放つと私の方に向き直り、エマが改めて説明を始める。

その手には件の本、『不死王と色彩の魔女』があった。ペラペラとページをめくると、説明に必要である部分を指さした。


「こちらご覧ください。」


「これは…鳥?後、私だよね?これ」


見たことあるような無いような。正直あんまり興味が無かったから買ったはいいものの読まずに積んであるのだ。今頃埃を被っていることだろう。

…そういえばこの本、私の知らない間に販売されてたんだよね。なんとなく売り始めた心当たりはあるけど。

それはさておき、エマの指はその鳥…とも言えそうで言えない、翼の生えた神々しさを表す光を放つ存在を指している。


「鳥じゃないですよ師匠。1000年前だとやはり覚えていないのですか?」


「ちょっと、待ってね。思い出せないか試すから。」


うーん…なんだったか。多分絵本だしまんま鳥を描くことはまずないだろうしこれは実際に私が彼に語ってあげた内容を元に作っている可能性が高い。

鳥…よりも翼か。翼といえば予言がそうじゃん。だから調べもの……翼を持つ者に出会えだったかな?翼だから空とか…

空…空…空…天?そういえば不死王を討つ時も確か…空へと向かった。彼がとある種族を狙っていたから。

その種族、かつて不死王を討つべく私に協力してくれた者達。


「もしかして、天神族?」


「正解です師匠!」


ユーリが正解を言った。あーほら、エマが不服そうじゃん。

自分が話が長いと言ったのを気にしているのかすぐには怒らずぐっと堪える表情をした後説明を続ける。

後が怖いねぇ…


「恐らくは師匠が受けたと言っていた占いの翼を持つ者はこの方々ではないですか?」


「…そうかも」


なんで忘れていたんだろうか。…いや、忘れていて当たり前かもしれない。彼らはあまりにも薄い存在だったから。

でも誰よりも不死王を滅さんとしていた、その憎悪だけは明確に思い出せた。


「ま…別にこの本の話はあとでするつもりだったので、呪いについての話に戻りましょう。」


パタンと本が閉じられる。どうやら話の順番が前後してしまったらしい。


「師匠の呪いに関する文献は幾らか見受けられました。ただ持ち出しは不可能だったのでご了承を。」


「うん、調べてくれてありがとうね。」


「師匠の頼みですから。」


えへんと胸を張るエマ…の後ろから、今度はユーリがグイっと押しのけて口を開いた。

さっきからうずうずしていたからそろそろとは思っていたけども…


「私も調べていたのですよ!動機は少々違いますが!」


「あ、そうなの?」


「はいっ!」


身を乗り出して今にも私に覆いかぶさりそうだった。…なんか、大きな犬みたい。


「兄弟子殿…話が進まないので大人しくしておくよう、言いましたよね?」


「エマ、お前こそ手柄を独り占めしようとしただろう!師匠に褒められる権利は私にもあるはずだ!」


「貴方はいつも—————」


「お前だって————」


喧嘩がまた、始まった。エマは相当我慢していたみたいで魔力を練りだして…ちょ、ここ宿だって!

流石に止めないと…ああもう、この二人は本当に…!



「難しい話でよく分かんなかったであります…」


『そうだな。あ、おかわり。』


「はいであります!モチ様!」


そんな騒動からは考えられないほんわかしたやりとりが少し離れたところで行われていた。



 * * *



落ち着いた二人から聞いた話を要約しよう。本当にそこまで行くのが大変でしょうがなかったので割愛。


結論から言うと現状で私の呪いが弱まっている状態をなんとかすることは出来ないらしい。

どうやらこの現象は周囲の魔力濃度が関係しているらしく呪いが食べる魔力が足りないことから起きている。

これはこの呪いに限った話ではなく呪い自体が魔力を扱うものであるから、ただ使っていくのが周囲の魔力からというのは少し珍しいという。


「結局八方塞がりってことだね。」


まぁ予想は出来ていた。私の住んでいたあの森は魔力濃度が濃い。それはもう、多分常人ならば一時間もいれば命の危険があるほど。

だから今まではごく稀にしか起きなかったし治っていたが…今は、戻っている暇もない旅の途中である。


「仕方ないか、エマ。ここからも着いて来てもらえない?」


「…いいんですか?」


「寧ろ頼みたいかな。多分私だけだとこの街からも出れるか怪しいから。」


エマの反応は悪くない。寧ろ嬉しそうだし…私もまだエマと別れなくていいのなら嬉しい。

後ろでユーリが羨ましそうに見ているが今からお前学院長の元に突き出すんだからな、どの道無駄だぞ。


「ぜひ!お任せください!」


「これからの旅路は天神族に会うため。次の行先調べておいてくれる?」


これで当面の問題は解決…後、何かあったっけ。

…あぁそうだ。まだ聞いていないことがあったな。


「ねぇユーリ。私はさ、別に私の元を離れた弟子にどうこう言うつもりは無いんだけど…なんで魔術じゃなくて呪術を研究してたの?」


「…ほんの、出来心です。」


「じゃあそれを聞かせてくれる?」


ならばと魔術を使おうとしたが止める。昨日みたいな目に遭うのはごめんだ。直接口で言え。


「…今も昔も変わっちゃいません。私は貴方が欲しい、ただそれだけです。貴方の呪いが消えれば…ただの人になれば、自分を見てくれるのではないかと、少しでも思ったんですよ。いつの間にか、自分が呪いを使っていたわけですが。」


「…え?じゃあ、自ら進んでやってたわけじゃないの?」


「それもまた違うでしょう。ですが呪いの記された本に触れてから確かに自分が自分で無い様で、誰よりも自分らしくある。そんな不思議な感覚になったのです。」


…まさかその本自体に呪いが掛けられているとでも、そう言うのだろうか。だが実際のところ、ユーリの狂った言動は元のままだが雰囲気というか狂気じみたものは薄れている気がする。


「そう。…ま、好きにしたらいいよ。でもそろそろいい子を捕まえた方がいいんじゃない?」


「いいえ、私の心はいつでも貴方のもとにありますから。」


全くこの弟子は…いつになったら諦めるのだろうか。


「師匠、貴方はきっともう王都を発たれるのでしょう?なので最後に一つ聞いても?」


「そうだね。もう知りたいことは知れたから、学院長に礼を言ったら次に行くよ。」


「師匠…今更ですが、男性の好みのタイプは?」


そんなことか。でも確かにこいつは…今までは自分勝手に自分を見せつけてきて…

でもようやく、こっちの気持ちを知るということまで及んだらしい。でもこれを聞いて絶望しないだろうか。まぁお望みのようだし、次いつ会うかも分からない、教えるぐらいはいいだろう。


「そうだね…私よりも年上の、ダンディな堀の深い顔の人。」


これは私が唯一ときめいたたった一人の男。もうその人は居ないけれど…

久しい気持ちにふけっていたが…気付けばユーリは気絶していた。


まぁ、そうなるよね。


疑問になると思われるので書きます!

Q,なぜユーリは許されてるの?

A,全く許されてないです。この後学院長に土下座してます。幸い命にかかわるようなことはせずただただ無駄に好意をいじる迷惑なやつだったため三か月の出勤停止で許されています。それはユーリがやったことの重さもそうですがユーリがいなければ回らない授業だったりがあるためです。




正直エマは早い段階で別れるようにするつもりだったのですが…別れる理由が無いというか、冒険者ずるいので無理でした。それにこのままだとフィーナが目的地にすらたどり着けない…

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