16話 密室の対談
ちょっと流れ早いかと思って修正入れたのでミスあったらすいません!
ミレリアに連れられやがて着いたのは人気のない空き教室だった。
「それで、話って?」
「…まず最初に確認させてください。」
「うん?」
何をと聞く間もなく、ミレリアが私に近づいてきて…身体を、弄ってきた。
「わわ、えちょっ、何?くすぐった…」
困惑とくすぐったさの中、ミレリアが真剣な顔つきで何かを確かめている。
ちょっ、流石に脱がすのはタンマ!
「…ありました。ですがこれは…何の魔術式ですか?」
私のうなじの辺りを確認したところでミレリアがそう呟く。…魔術式?
「書き写してくれたら確認するけど…それと、何があったの?」
「呪印です。…ええと、多分これで合っているはずです。」
「えーどれどれ…え、呪印?」
魔術式を書き写した紙切れを手渡されながら更に重要なことを告げられた。
魔術式の方は…あ、これ確か…記憶が曖昧だけど昨日気分が悪かった時に使ったやつか。で…呪印…?
呪印はめちゃくちゃ簡単に言えば魔術式の呪いバージョンだ。つまるところ、私には呪いが掛けられていた。…多分私の知らないうちに。
「えっと、魔術式の方は昨日私が自分に掛けた解除魔術。」
「そうですか…呪印なのですが、実は…今日は、この件について話がしたかったのです。もしやと思っていましたが…」
椅子が用意され、対面する形に。ここからようやく話をするということらしい。
* * *
「…まず、こちらの呪印なのですが、効果を私とお姉ちゃん…姉が調べた結果によれば魅了、またはその類の呪いだと考えられます。一種の洗脳に近い効果があると覚えておいてください。」
単刀直入、初手でかなり重要な情報が落とされた。魅了…魅了か。…私に対して?
「この呪印を受けた者は術者に好意的になり術者の言葉を受け入れやすくなるようです。」
ほうほう。まぁ想像通りの意味合いだけど…
「問題は誰が掛けたか、ってこと?」
「それに関しては見当が付いているんです。ただ…最近姉の様子がおかしくなることが多いんです。」
あー…昨日会った時のあれか。なるほど。でもあれ、どちらかと言えば精神干渉魔術を受けた時の症状に似てるけど…
「そのせいで動くに動けないんです。」
「それで私に助けてほしい…みたいな?」
「それは…その…はい。そうです。」
心底不服そうに、そう言った。でもそれだと少し疑問が残る。それは…
「でもなんで、私なの?他の先生とか、それこそセレナは?私じゃなきゃダメなの?」
「いいえ、ダメというより…不可能なんです。」
首を横に振り、悔しそうな表情を浮かべた。何やら深い事情がありそう…
「既にこの学院の教員生徒含めほぼ全員に呪印が仕掛けられていると考えられます。」
「…全員?」
「はい、全員です。」
…呪術に関しては詳しくないけど…とんでもないことしてない?それ。
「…聞いた話から推測するに、生徒か教員が仕掛けてるんだと思うけど、見当が付いてるって言ってたよね? 誰なの?」
「はい、それが…」
少し溜めてから、ミレリアがその名を口にする。
「高等部1年Aクラス担任の、ユーリ先生です。」
────私の、弟子の名を。
* * *
ミレリアとの話を終えた私はエマとルカと共に帰路に着いた。
「…っていう話があったの。エマも気を付けてね。」
「え…それ、大丈夫なんですか?」
割と本気の顔で心配そうに私を見てくる。相変わらずエマは心配性…
「いや、この考え方か…」
ようやく昨日の違和感の正体が分かった。好意的とまではいかずともユーリがやったことに対して疑問を持たなくなっている。
「エマ、無いとは思うけど私が変になったら殺してでも止めてね。」
「…分かりました。」
「エマは極力禁書庫の方に居て、ルカも。早いとこ解決出来るようにするよ。」
「頑張ってください!魔女様!」
「ありがとう。ルカ。」
そういったものの、考えてみればあいつなら話せばわかってくれそうではある。
それも甘い考えなんだろうか。でも、一つだけ確信を持って言えることは…
「あいつはいつだって何がする時は私のため、なんだよなぁ…」
ま、そのせいで知らない人にまで迷惑をかけてるなら…責任は私にもある。
「師匠として、止めないとね。」
全く…人様には迷惑かけんなって、もっとちゃんと躾るべきだったなぁ…
* * *
1週間が経った。ユーリの動向を気にかけているもののあまり変化はない。寧ろそう考えさせられているとも言えるかもしれないが……それを言い出したらキリがない。
「今日は精霊魔術について学びましょうか。」
ユーリが授業を始める。今回の授業も私は何かやらないといけないらしく授業を始める直前に準備をしてほしいと言われた。
「何もやることが無いよりはマシなんだよなぁ…」
することが無かったら眠くてしょうがないのだ。
こんな退屈な話を連続で聞けるこの子達には尊敬の念すら覚える。
「まず第1に、精霊魔術とはどういうものか、答えられますか?」
「はい!」
何人かの生徒が挙手する。やる気があっていいね。昨日と違ってユーリも殺伐ともしてないし…
「精霊言語による詠唱で精霊の力を借り六大元素魔術の威力を上げるものです!」
「半分正解ですが半分は不正解ですね。フィーナ先生様、教えてやってください。」
なるほど、それは得意分野だ。
「まず、精霊言語である必要は無いかな。これは精霊との親和性を高めるためのものだから。そして使い方に関しても…それ限り、というわけじゃないんだよね。例えば…」
風の精霊魔術を使う。そして自分の身体を…浮かせる。
「パッと見飛行魔術に見えるかもだけど、気になるなら術式を見ればいい。これは精霊魔術を使って私に向けて風を発生させてるの。」
ぐるぐると、教室を浮遊しながら言葉を続ける。やっぱり魔術って実際に見ないとイメージしにくいよね。
「うわぁ…」
「すげ…みえそ…」
「師匠、降りてくださいもう大丈夫です。」
なぜかストップが掛けられてしまったため大人しく降りる。ま、あれだけ見せれば十分か。
「…とまぁ、このように、精霊魔術は様々な応用が効きます。今日の授業は最初のステップである精霊との対話を目標としましょう。さ、外へ出る準備をなさい。」
ユーリの言葉により生徒達が移動を始める。昨日のこともあってか今日は反発がほとんどない。
それにしても今日も外か…最近暑くなってきてるからなぁ…蒸れてきたしローブ脱いじゃおうかな。
「師匠…なぜローブを?」
「いや…暑いし…」
「……薄手のローブを持ってくるのでそれを着てください。いいですね?くれぐれもそのまま生徒の前には出ないでください。後師匠、一度自分の服装を振り返ってみては?」
「え?あ、うん。」
…なんで止められたのか私には分からないが…そこまで念押しされるのであれば…
ユーリはいそいそと職員室の方に向かって行った。私は校庭に出ればいいのかな。
「…やっぱり面倒だし、大丈夫でしょ。」
この時、ローブの下が蒸れていたせいで下着が透けていたことを私はまだ、知らない。それと…自分がいつもの短いスカートを履いて浮遊していたということも。
悲鳴を上げるまで残り五分。
* * *
放課後、レーニアに呼ばれたため私は先日の客間にて到着を待っていた。
「今日はちゃんと授業に混ざれた気がする。」
やっぱり座学よりも実践的なのが多い方が私的にも教えやすい。というか今の座学がどんな風に教えるのか自体私もよく分かっていないのだ。全部私基準で教えることになるし流石にあまり良くないだろう。
「皆…なんか、先生って呼んでくれるようになったんだよね。」
それがシンプルだが嬉しかった。なるほど教師になりたがる子の気持ちがよく分かった。
普段弟子達は師匠と呼んでくるし先生と呼ばれたのは……無いね、うん。
「失礼します。」
私が感傷に浸っていると部屋のドアがノックされる。お、もうこんな時間か。レーニアかな…
「ってわぁ!?ミレリア?」
ドアを開いた瞬間にゅっと顔が近づいてきたためびっくりした。
…この子、前の時もだけどわざとじゃないよね?
「こんにちは、フィーナ先生。」
「あ、うん。ミレリア、こんにちは。」
にこりと微笑んで挨拶するミレリア。なんか昨日や初めて会った時からは随分と態度が柔和になったね…
「お姉ちゃんは遅れるそうなので私に繋いでおいてほしいと頼まれました…というのは口実で、先日の話の続きをと。」
「…続き?」
あれで終わりだと思っていたのだがまだ何か…
「つい先ほど、姉に話を通すように言われた後…ユーリ先生が何やら姉と話していました。」
「普通に話してただけじゃないの?」
職員同士なわけだしそれぐらいは普通だろう。ユーリが絡むだけで一気になんか不穏さが増すのだが。それは一旦置いといて…
「それが…今夜、とか…なんとかしましょうだとか、変な言葉まで聞こえてきまして……これはもう、突撃するしか無いかなと。」
「盛大にサプライズパーティーとかだったりしない?」
「いいから行きましょう。もしかしたら現行犯で捕まえられるかもしれません!」
なんかこの子のやる気、ユーリをどうこうしたいとかよりも…姉が変なことされないか心配…に寄ってる気がする。
…ま、動機はなんでもいい、か。
「…分かった、どのみち今夜辺りから動こうと思ってたしね。」
そうでないと安全かも分からない学院に一か月も通わなくてはならなくなるのだから。
さっさとユーリに何が目的かを吐かせてこんなことはやめさせないと…
「詳しい場所は分かる?」
「いえ…ですが姉の魔力の痕跡は分かります。」
「そう、仲が良いんだね。」
理由までは判明していないが魔力の性質が似ていればそれだけ痕跡などは辿りやすくなる。
そして性質は近くにいるものに寄っていくものとされている。
「…えぇ、世界にたった一人の肉親なので。」
思っていたよりも姉のことは大事らしい。正直少し揶揄うつもりだったが…これ以上何か言うのは野暮だろう。
「なら…守らなきゃね。」
「はい。先生…いえ、魔女様…弱き私に、姉を救うためのお力を貸してください。」
深々と、改まってお辞儀をするミレリア。既に私の答えは決まっていた。
「任せて。」
そう、短く返した。ただそれだけで、ミレリアの顔色は安堵に染まる。
弟子が起こした不祥事だ。久々に、尻ぬぐいしてやろうじゃない。
魔族は競争社会。弱いものは虐げられます。それ故彼女たちの母親は人族の街へ降りましたがそこでも人前では言えないようなことをされ、そのせいで2人の子を身篭ることに。レーニアの時はまだ気丈に振舞っていましたが2回目で心が折れたらしくミレリアを産んだ後自ら首を吊りました。




