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11話 王都デートは弟子達と

あー…あの頃は可愛げがあったなぁ…私の入浴中にしれっと下着盗もうとしてたのは流石に看過出来なかったけど。それでも年相応のかわいらしさというか、そういうのがあったんだけど…ね。


「師匠…あの。」


「分かってる。分かってるけどさ…」


「…あれ、なんとかならないんですか?」


「私を見るとどうにも頭がおかしくなってたけど…ここまで来ると怖いよね。」


私とエマの視線が宿の窓枠へと向き…そこに、見知った顔があった。


「じじょぉー!!!お話しましょうよぉぉぉぉ!!!!」


「…」


顔のいい、クリーム色の髪をした青年…ではなく、男性。私の六番目の弟子、ユーリである。おかしいなぁ…ここまでおかしいやつじゃなかったのに…

どうすれば窓に顔面押し付けて師匠師匠と連呼することになるのか。


「私、どこで間違えたんだろ…」


「私が知る限りだと師匠が悪いというよりは…兄弟子が少し変わっているだけだと思いますよ。」


「ほんとに…?」


いくら言われても実物を見ると…私がミスったようにしか思えない。あれを見て自信持てるはずもない。

というか昨日割と本気でぶん殴ったはずなのになんでピンピンしてんの?


「じじょぉぉ僕の気持ちは変わってませんよぉぉぉ。エマァァァ…そこ変われよぉぉぉ」


「師匠…ここは私が」


「…やりすぎないでね。」


一応彼に会いに来たことは間違いないのだが…これでは話も出来そうにない。エマならいい具合に手加減して引き連れてきてくれるだろう。



…数分後、私の期待を裏切るように整った顔をぐっちゃぐちゃにされたユーリが私の前に連れられてきたのだった。



 * * *



「失礼…取り乱してしまいました。」


ユーリは床に正座し深々と頭を下げた。いつぞやかぶりの土下座である。


「改めまして師匠、お久しぶりです。エマも…随分と、逞しくなったな。兄弟子は嬉しいぞ。」


エマの方は何故か遠い目で見ていたが私に向けられた視線はあの頃と変わっていない。

こいつ、まだあきらめていないらしい。


「あーうん…ユーリも…元気そうでよかった。うん…だから取り合えず伏せたまま距離詰めてくるのはやめてほしいかな。」


言わないが虫みたいで流石にきもい。そろそろ人と会話がしたいのだが。

エマがキッと一瞬怖い眼で睨んだら止まった。流石エマ…!!


「これは失礼…師匠、ところで何故私に会いに来てくれたのですか!?まさか…ようやく…ようやくぅぅぅ…」


「あ、それだけは無いから。未来永劫ね。」


「……では、なぜ?」


ダメかとでも言いたげな顔をしているが無理なものは無理だぞー…

そもそもそんなに顔がいいんだからその辺の適当な子でも捕まえてくればいいのに、どうして私に拘るかね。


「禁書庫に入りたいの。ちょっと…調べたいことがあって。」


「なるほど…確かにそれであれば王立魔術学院の教師である私を訪ねたのは正解でしょうね。」


なんか見たこと無い…人間味のない、普通の人が見れば魅了されてしまうような爽やかな笑顔でそう言い切った。私の元を離れてから随分とまぁ…変なスキルを身に着けたみたいで。


「早速学園長に話を通しましょう。一日待っていただけますか?」


「それぐらいなら全然。ありがとう、助かるよ。」


「親愛なる我が師匠の為ならば…私は火の中水の中でさえ入ってしまいましょう。」


そんな軽口を叩いた後、私達の部屋を後にした。よかった、何にせよ話は通してくれそうだし…


「エマ、今日一日は暇みたいだし、王都を一緒に回らない?あ…エマは見慣れてるかな?」


「いえ、私もあまり王都へは来ませんから。それに師匠と一緒にお出かけ出来るの…嬉しいです。」


はにかんで、エマが言った。…なんて素直なんだろう。さっきの下心の塊を見た後のせいか聖女のように見えてくる。


「え?そう?じゃあ行こうか…」


「抜け駆けはゆるさぁぁぁん!!!」


「変質者!?」


咄嗟に拳を振り抜き入ってきた人影に丁度良くボディブロー。

急だったから気付かなかったけど今の声って…


「…どうやらこの人は…まだお説教が足りないみたいですね。師匠、少々お待ちを。」


「師匠!何故エマとはお出かけするんですか!?僕は、僕じゃダメなんですかぁぁぁ!!!」


やっぱり、ユーリである。私とエマの話を盗み聞きしてたってこと…うわ、ゾッとする。


「行きますよユーリ兄さん。師匠に迷惑になるので…早く。」


「ひぃぃぃ!!怖い!エマ怖いよぉぉぉぉ!!」


ズルズルとエマに引きずられていくユーリ。

…同情するよ。エマが怖いのは私もだし…なんか今、一瞬こっち見た?



 * * *


エマのお説教(?)が終わった後、私はエマとルカとモチと共に王都の平民街を出歩いていた。


「…凄い人だね。ルカ、はぐれないように手繋ごうか。」


「魔女様!ありがとうです!」


ルカの小さな手を握る。やっぱり露店街なだけあって人の流れが凄いなぁ…ここまでのは初めてかも。


「…エマも手繋ぐ?」


「えっ……私は、大丈夫です。」


ありゃ、流石に…もう大丈夫だよね。なんならエマは私よりもこういう所は歩き慣れてそう。


「師匠、何か見たいものはありますか?」


「うーん…魔道具とか、魔導書とか?」


単純に興味があるのが魔術関連なためやはりその辺になる。さてさて、私が引きこもっている間どれだけの進歩があったのか…


「…露店には無いですよ。それこそ明日まで我慢してください。学院には普通の書庫もあるはずですから。」


「えー……じゃあ、何か美味しいもの食べたい…かな。」


ちょうど昼頃だし…お腹もいい具合に空いている。


「でしたらあのお店で売ってる木の実は当たりが多くて────あちらの店の鳥の串焼きはよく塩が効いてて────」


エマは明るい表情であっちやらこっちやら私を引っ張っていく。…なんか、嬉しそう?


「なんか…こういうのいいね。」


「師匠…?」


気付けば私の手には鳥の串焼きやら甘い木の実やらが握られていた。こんなに買ったっけ?

…私じゃ食べ切れないかも…


『なんか美味そうな匂いがすんな。』


わたしの帽子からのそのそと毛玉が這い出てきた。丁度いいや。


「はいこれ、モチの分。」


『お、気が利くな。』


「ルカも。はい。あげる。」


「ありがとうであります!」


2人ともチビチビと木の実を食べ出した。うん、一旦落ち着いてどこか座りたいな。


「師匠、楽しそうですね?」


「え?…ん、そうだね。」


エマに突然言われたが…うん、確かに楽しい。

最近は依頼だったり呪いについてだったりで悩んでばっかりだったし、いい気晴らしになった。


「エマや…ルカが居るからね。」


「そうですか…私も、なんですね。」


そっぽを向くエマ。後ろから見えたのだが…耳が、少し赤かった。



 * * *



エマとのお出かけが終わりに差し掛かる、夕暮れ時…


「そろそろ宿に戻ろっか。」


「そうですね。」


エマが先導して前を歩く。…私が道を覚えていないことを想定しているからだろう。

失礼に思えるがこれが不思議なことに覚えてないんだよね。


「…ルカ、疲れちゃった?大丈夫?」


「うぅ…魔女様のお役に立つのです…」


うん、多分歩き疲れてんね。仕方ないここは私がおぶって…んん?あれぇ…


「エマ、気のせいかもしれないんだけど…」


「っしゃぁぁぁ!!!」


「ひゃっ!」


突然背後から駆け寄ってきた男によってエマの持っていた買い物袋がひったくられる。

…気のせいじゃなかったかー…


「どう見ても魔術師なのによくやろうと思ったね?」


「へ?」


男の間抜けな声が正面から聞こえた。私はひったくりを認識した時点で魔術を発動したのだ。

使ったのは風の魔術と身体強化の魔術。それによって常人には考えられない速度での移動を可能にした。


「さ、取ったものを出して。うんうん、返してくれるならちゃんと衛兵に突き出したげるから。」


圧倒的な力の差を前に素直にコクコクと頷いて男が袋を手渡してきた。無論宣言通りこのまま衛兵の元まで行ってもらうが。


「すげぇなあの嬢ちゃん!」


「いいもの見せてもらったぜ!」


…うわ、騒がしくなってきた。…これ以上面倒事になる前にさっさと帰ろう。

私はするりと人波に飲まれる前にエマ達の元へ戻る。


「師匠、大丈夫ですか?」


「うん、私は大丈夫…エマは?怪我してない?」


「はい。ありがとうございます。」


言葉通りエマは大丈夫そうだ。全く、もう帰ろうって時に騒ぎを起こすのやめてほしいな。


「…にしても…」


あのひったくりもそうだったが…あの時、同時に魔術の反応があったんだよなぁ…

それも使われたのは多分精神干渉の類のもので…


「ま、いいや。」


エマやルカが疲れているんだ。今はさっさと宿に戻って休ませてあげたいんだよねぇ…

それに、敵意があるなら…容赦は、しないし。



 * * *



「ね、うちの師匠、すごいでしょう?あれで全く本気じゃないんですよ。」


顔のいい男…ユーリが、長い金髪をなびかせ如何にも偉そうな椅子に座る女へと語りかける。


「むぅ…しかしだな…」


「学院長、渋りすぎですって。条件は満たしたでしょう?それに丁度一名休業中じゃないですか。」


女の態度に面倒そうに、さも合理的だとユーリは告げる。ユーリの言葉には若干怒りが含まれていた。それは…この女だけは、いつもいつも邪魔をしてきて…今回も案の定最終決定を渋ってくるのだから。


「だが、それだからって教師の資格も無いものを…」


「うるせぇなぁ…」


ユーリがその整った顔を女へと近づけ…眼を、合わせた。その瞬間、魔術が発動する。

それはユーリが独自で編み出した特殊な魔術。


「うちの師匠を一か月臨時の教師にしてもいいよな?」


「…はい。」


女の目は虚ろだった。まるで意志のない人形のように首を縦に振り、ユーリの言葉を肯定する。

ようやく、ユーリの念願が叶った。憧れの人と…同じ職場で働ける!


「あぁ…いっけね。やりすぎたなぁ…でも、師匠に怒られるのなら…それもアリか?」


まるで物語の黒幕のように、深い笑みを浮かべて呟いたのだった。


別にシリアスな展開にはならないです。学園長の設定考え中…



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