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10話 純粋だった頃の弟子との出会い

私の6番目の弟子…ユーリとの出会いはもう13年ぐらい前になる。当時は…まだ、可愛げがあったんだよなぁ…



 * * *



天気が曇りで今にも雨が降りそうだった時のこと。私は近隣の街から帰る途中だった。


「うわ降りそう…急ごうっと」


買い出ししたものを詰めた袋を落とさないようにぎゅっと抱きしめ、急ぎ足で帰路を辿る。全く、特売も考え物だよね。うっかり半日も街をうろついていたではないか。まぁお陰様で欲しかった魔導書も買えて気分はとてもいい。


「夕飯何にしようかな…適当な木の実…じゃあモチが怒るか…そろそろモチにも料理を覚えてほしいけどなぁ…」


留守番中の使い魔はきっとお腹を空かせていることだろう。だとしても毎回私の作るものにケチ付けるのやめてほしい。私だって好きであんなゲテモノ作ってるわけじゃないし…

魔術を使えば多少は食べれるものを作れるけど…正直普通にやるよりも労力が半端じゃない。


「ほんとに降ってきた…濡れちゃ嫌だし…仕方ないか。」


弱めの結界魔術で私の上空のみ雨を防ぐ。魔術ってこんなことに使うものじゃないんだけどな…


「雨降りそうって思っても…こうやってどうとでもなっちゃうのがダメだよね…」


傘忘れちゃうもん。全く、魔術が使える私って罪な…


「ぅぅぅぅぅぅぅぅ…」


「…?」


呑気な考え事をしていたら何やら呻き声が耳に入ったのだが…気のせいだろうか?


「…けて…ちゃん……なさい…ぅぅぅぅ…」


「えぇ…マジなやつ?」


この森…長いこと住んでるけどそういうの出るの?嘘…?


「……一応、遭難者だったらアレだし…」


本当にたまーに、ごく稀に迷い込んでくる人間はいる。大抵は私が仕掛けた魔術で帰路を辿れるようにはなっているのだが中には効かないものもいる。例えば…魔力耐性が強い、つまりは魔力量の多い人間には。


「あの…誰かいるんですかー?」


「っぐ…うぅ…うぇ…」


…やっぱり幽霊の類…?どうしよ呪われたり…私の呪い強すぎてそもそも効かないわじゃあ大丈夫か…


「今なら許したげるからさっさと出てきて。私、急いでるから。」


そう言って五秒数を数えていく。これで幽霊なら攻撃魔術放つだけだし、人なら出てくるだろう。

中々に過激な考えな気はするが出てこないんだもん。仕方ないだろう。


「ご、ごべんなさい!」


ありゃ、残り三秒でようやく出てきたか。全く世話の焼ける…

出てきたのはクリーム色の髪に青眼の青年だ。うわ…やけに顔がいいな…でも泣いてたらその顔も台無しだぞーっと…


「何してんの?こんなところで。」


「お、お姉さんは…」


「いいから、何してたの?場合によっちゃ…恐ろしい目に遭うかもね?」


別にただの人間だしまだガキだし…多分友達と遊んでたら迷ったのかな。

それでも森に何かしようとしているなら止めなければならない。そういう約束でこの森の精霊に家を作ってもらったのだから。


「友達がこの森に恐ろしい魔女がいるって言ってたんだ!それで、度胸試しだって…」


ほーう…そんな噂が。


「ちなみにその魔女って?どんな噂なの?」


「えっと、年増の婆でひっひっひって夜中に笑っている声が聞こえるんだって。それで偶に迷い込む人間を実験の材料にしてるとか…」


「…私じゃないね。」


この場にモチが居たら間違いなく煽られていたことだろう。所詮は噂だ。せっかくだしこの子を送り返すついでにこの森には絶世の美魔女が住むと噂を流してもらおう…いや、そんなことしたら人が増えちゃうし良くないか。


「着いてきて。送ったげる。」


「ほんと…?」


純粋な眼差しで私を見つめてくる。うわお、いつの時代も顔がいい子は目の保養になるね。

私が街の方へ歩き出そうとした…その直後…


「えっ…」


ザバアアアアアアアアア!!!!!


えげつない量の雨が降り出し私達は盛大に濡れた。反応が遅れたせいで…結界も間に合わなかった。最悪である。


「…黒…」


「何か言った?ここまで降ると森を抜けれるか分かんないから私の家まで着いてきてくれる?このままだと風邪引いちゃうし。」


「あっ、はい!」


やれやれ…せっかく買った魔導書もびしょびしょだ。早く乾かさないと…

なんてことを考えていたと思う。呑気なものだ。この時…


「あの、お姉さん、名前、なんて言うんですか?」


「え、あー…私はね―――」


この少年の心を射止めてしまったとも気付かず。



 * * *



「はい、後はあっちの方進んだら街まで出れるから。」


「…うん。」


「…なに?まだなんかある?」


「いや、えっと──」


森の出口までやって来たのだが、何やら青年は何か言いたげに私の方を見上げてくる。

…言いたいことがあるならさっさと言って欲しい。


「その、お礼がしたいので着いてきて貰えましぇんか!」


意を決した様に、青年が言った。

うーん…お礼ねぇ…別にいらないなぁ。それよりさっさと帰って昨日乾かした魔導書を読みたい。


「あー…いや、いいや。それよりさっさとご両親に顔を見せたげた方がいんじゃない?」


「でも…」


「じゃね!私急いでるから!」


飛行魔術を発動し自宅の方へと向かう。やれやれ、それにしてもあの子…なんか…様子おかしかった?



 * * *



そんなこともあった1年後。当然私はそんなこと忘れていたし、もうどうでもいいことだった。のだが…


「僕を弟子にしてください!フィーナさん!」


「…はい?」


ある日…森の中を散歩していたらその青年と再び出会った。

最初は何事かと思ったが…記憶を掘り起こして1年前のあの子だとはなんとなく分かった。


「えっと…?」


「フィーナさん、お願いします!」


「なんで?」


…ただ…私、弟子入りを志願されるようなことはしてないと思うんだけどな。


「既に両親は説得しました!僕は14で既に働き手として自立もしています!どうか、ご一考を…」


全力で土下座して懇願してくる。

ほんとに何?なんなの?わけが分からなくて…困る。


「だから、なんでって聞いてるじゃん…」


「フィーナさんに惚れ……憧れたからです!魔女様のような人徳に溢れた人になりたいと、率直にそう思ったのです!」


「それは嬉しいけど…さ。でも…分かってる?魔女の弟子になりたいっていうことがどういうことか。」


「分かりません!ですが貴方に受けた恩義を返すにはこれしかないと考えたのです!僕の人生を持って、貴方に尽くす!その為には弟子入りしかないと!」


えぇ…なんでそんなに熱意に溢れてんの…?


「私は貴方の人生を貰うつもりはないし私のために歪めて欲しくない。だからそれが理由ならお断り。魔術が学びたいなら…まぁ、考えてあげるけどさ。」


「…どうしても、ダメなのですか?」


「ダメ。私の弟子になりたいならそれなりの理由を…」


…正直今までの弟子達も何かしらの理由あって仕方なく私は弟子にした。もう何人かは死んでしまったが…やっぱり思うのは他人の人生を預かるということの重さだ。

軽々しく肯定なんて…出来ない。


私が、そう考えていると…より1層覚悟の決まった顔で、私を見つめて青年が叫んだ。


「…っ、貴方に、1目惚れしました!どうか!お付き合いを前提に弟子入りさせて下さい!」


その突然吐かれた言葉に私は意味を理解するのに数秒の時間がかかった。


「……はい!?」


私は1000年生きてきて初めて、熱いプロポーズをされたのだった。


…なんで?



 * * *



1度落ち着いて話すために私はその青年…ユーリを家に上げた。

冷静に振り返るとなんで上げちゃったんだろうか…


「えーっと……私に、惚れた…って?」


「はい!今も心臓がバクバクと鳴っております!聞きますか?」


「…もうちょい恥じらいなよ…」


何故か私の方が押されている。一体全体どうしてこうなったぁ?


「私別に…君に特段何かしてあげたりとかしてないと思うんだけど?」


「ですから、一目惚れです!美しいフィーナさんに僕の心は奪われたんです!」


「うぇぇ…そういうもんなの?」


好意を向けられているのは悪い気はしないが、一目惚れだけで片付けられると流石に困惑が勝った。

私は何を言えばいいんだろうか…


「納得なさらないのであれば僕が考えに考え抜いたフィーナさんのお好きな所を100個ほど上げさせていただきます!」


「ひゃくぅ!?」


「それではしかとお聞き…」


「いい!大丈夫!君の気持ちは十分に伝わったから…!」


「では…!」


期待の籠った眼差しが向けられる。

うー……どうしよぉ…なんでこういう時に限ってモチ寝てるのぉ…?ビシッと、何かこの子に言ってやってほしい。目を覚ませとか、そんな感じのことを…


「……お付き合いはごめん。それだけは出来ない。でも…魔術なら、教える…から…勘弁して。」


「っ……分かりました!それでは明日朝、また荷物をまとめて参ります!本日からよろしくお願いします!フィーナさん!」


一瞬悔しそうな表情をしたがすぐに切り替えハキハキとそう言ってのけた。フラれたばかりというのに中々に根性があるらしい。


「私のことは師匠って呼んで。私に教えを乞うなら君は今日から弟子だよ……そういえば君、名前なんていうの?」


ここで衝撃な事実。私、なんと名前も知らない青年に求愛されていたようだ。…だってほんとに押し切られて弟子になるとも思ってなかったしもう二度と関わることはないと思ってたのに…


「これは失礼を…師匠。私めのことはどうぞユーリと、そう呼んでください。」


「ユーリね。…覚えた。ビシバシやってくから…よろしくね。」


「はい!」


感激に満ちた声と共に私の差し出した手が両手で握られブンブンと上下に振られる。


…ほんとに、これでよかったのかなぁ……


この時の私はまだ知らない。これがきっかけとなりユーリが私のストーカーになってしまうことを。




ほんとはここからもっと面白いやりとりだったりがあるわけですが、次回からは普通に本筋に戻ります。

ユーリはイケメンで生徒からも慕われているのですが師匠のことになると頭が馬鹿になるタイプ。次回で詳しい設定が載るはず…?

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