美食令嬢の婚約破棄事情 ~王太子殿下と至福のディナーを~
わたしはティアナ・エルミナ・ブルックス。見た目は華奢で、金糸を編んだような髪をゆるく巻いて下ろし、ブルックス侯爵家の令嬢として十八年を過ごしてきた。
一見おとなしく優美なだけの貴族娘―――だと多くの人は思っている。しかし、本当のわたしは……そう、筋金入りの『グルメ』である。
甘いお菓子、芳醇なチーズ、噛むほどに旨味があふれるお肉料理、そしてスパイスの効いたエキゾチックな一品。国中の美味を味わい尽くさなきゃ生きてる意味がないんじゃないかと思えるくらい、わたしの食への探究心は深い。
ブルックス侯爵家にはそこそこ豊かな財力があるから、舌鼓を打つ環境には恵まれてきたけれど、もっと多くの味を知りたい。より洗練された宮廷料理や、城下町の隠れた名店の試作品―――そういう美食の最先端を知るチャンスがほしい。
だからこそ、わたしは貴族としての義務をそこそこ頑張りながらも、裏ではせっせと『美味しい情報』を集める日々を送ってきた。ドレスや宝石を買うより、週に一度は評判の料理屋を巡りたい。そんな欲求を抱えながら。
そんなわたしに、去年突然舞い込んできた話がある。
「ヴィンセント公爵家の嫡男、ライオネル・ヴェルテンベルクさまとのご婚約が決まりました」
両親はわたしにそう告げた。ライオネルさま―――王宮騎士団のエリートにして、公爵位継承者。赤茶の髪に切れ長の瞳、鍛えられた体躯もあいまってなかなかのモテ男らしい。夜会や舞踏会でも常に人目を引く華やかな存在。
端から見れば、すばらしい縁組に見えるだろう。わたしも最初は、「王城に出入りできれば最高級の料理人とコネができるかも?」などと考えなくもなかった。
でも、わたしは気づいてしまった。ライオネルさまはわたしを大切な婚約者として扱う気が、どうも薄いらしい。連絡もろくによこさないし、たまのお誘いも「王宮の正餐会に来てよ」と形式的なものばかり。しかもいざ行ってみれば、わたしはひとりで食事を味わい、彼はどこかの貴族令嬢たちとおしゃべりに花を咲かせている始末。
あれ、これって変じゃない? そう思ってモヤモヤしていたところに、あろうことか噂を耳にした。
―――ライオネルさまは第三王女、ユスティーナ殿下と非常に親密にしている―――。
ユスティーナ王女は、長く続く王家の末娘にして、際立つ美貌と見事な社交術を併せ持つ人。夜会や慈善活動の顔役としても有名だし、貴族社会の中心的存在。もちろん絶大な権力を持つわけではないけれど、王女という立場そのものが大きな後ろ盾になる。
この国では、王家と近しい公爵家の存在は政治的にも重んじられる。しかもユスティーナ王女は第三王女とはいえ、堂々たる王族。そんな彼女がライオネルさまとたびたび親しく過ごしている……って話、自分の婚約者としてはさすがに気になる。
「ただの噂だよ、ティアナ」
両親はそう言った。ブルックス侯爵家とすれば、国の大貴族であるヴィンセント公爵家との婚約を破棄なんてあってはならない。そりゃそうかもしれないけれど……。
わたしは考えた。考えた結果、ひとつの結論に至る。
(自分で確かめよう)
その日のうちに、わたしは王城へ馬車を飛ばした。人づてに「ライオネルさまがわたしを呼んでいる」との連絡が来ていたからちょうどいい。いったいどういう意図かはわからないけど、向こうから呼んでくれたのなら、話し合いをする機会になるかもしれない。
大事なのは、会ってみること。そして自分の目と耳を使って事実を突き止めること。できるだけ円満に済ませられるなら、それが一番いい。
◇◇◇
王城の奥の小さなサロンに通されたわたしを出迎えたのは、ライオネルさまと……よりにもよってユスティーナ王女その人だった。
「よく来たね、ティアナ」
ソファにどっかりと座るライオネルさま。その隣でにこやかに微笑む王女殿下―――とはいえ、その微笑にはどこか人を試すような冷たさがあるように見える。
「ご機嫌うるわしゅう、ユスティーナ王女殿下。それからライオネルさま」
当たり障りなく挨拶すると、ユスティーナ王女はまるでお菓子の品評でもするかのように、わたしを上から下まで眺めた。
「あなたがティアナ・エルミナ・ブルックス……なるほど、可愛らしい方ね。ライオネルの婚約者というのも納得だわ」
その言い方にチクリとした棘を感じる。だが、ここは笑みを崩さずに受け流すのが貴族社会の作法だ。
だけど―――わたしの目はごまかされない。サロンのテーブルには上等なティーセットが並び、甘い焼き菓子の香りが漂っている。わたしが大好きなバター香るクロカンテ風のフィンガークッキーだ。だけど、どういうわけか「わたしが来る前から二人でお茶会してました」感がありあり。
(わたしが呼ばれたのって二人の仲を見せつけるためかしら?)
そんな嫌な予感が脳裏をよぎる。けれど、彼らは悠々とお茶を啜り、こちらを窺ってくる。
「きみを呼んだのはね、ティアナ。きちんと話しておこうと思って」
ライオネルさまがわざとらしく言う。
「話、ですか?」
「そう―――王女さまとぼくのこと。ユスティーナさまとは特別な関係になった。だけど、きみとの婚約をすぐに破棄するかは、まだ決めていない。だって公爵家も王女殿下も、世間からどう見られるかわからないからね」
ライオネルさまはそう言って王女の肩を抱く。ユスティーナ王女はにっこり微笑みながら、ライオネルさまの手に指を絡めた。
「わたくしは王女としてライオネルを支えていくつもり。きっと素晴らしい未来が開けると思うわ。だけど、あなたの婚約者だもの。すぐに外聞の悪い『婚約破棄』にはしたくなかったの」
「少しの間、形式上でもきみがいてくれたら、ことが円滑に進むんじゃないかなと思って」
すごい言い草。要するに『わたしを婚約者のままキープしておいて、実質王女と関係を深める』ってこと? つまりは隠れ蓑になれっていうのか。
それどころか、二人の企みがうまく行くまでわたしの立場を利用する気満々にしか見えない。
わたしは唇をきゅっと引き結んだ。怒りが湧いてくる。―――でも、ここで声を荒げても得はない。
それより、こういう場では『いかにして相手を不利に追い込むか』が重要。わたしは美食と同じく情報の収集も怠らない。それこそ人脈を駆使して、ライオネルさまや王女殿下にまつわる噂を多少なりとも掴んでいる。
おまけに最近、この国には録音水晶という魔道具が試験運用されている。わたし、ちゃっかりそれを手に入れてる。……そう、万が一のため。
「……なるほど。王女殿下、ライオネルさま。そういうお話でしたら、わたしから提案があります」
「提案?」
いぶかしむ二人をよそに、わたしはバッグの中からひとつの書類を取り出した。
「わたしは婚約破棄に異論はありません。むしろお望みとあらば、すぐにでも手続きを進めるべきだと考えています。こちらに署名をしていただけますか?」
静かな言葉に、ライオネルさまと王女殿下は目を丸くする。
「え、きみ……自分から婚約破棄なんて望むのか? ブルックス侯爵家にとって公爵家との縁組は栄誉だろう?」
「そうよ。あなた、侯爵家の令嬢でしょ? 公爵家との破談がどれほどの痛手かわからないわけじゃないでしょうに」
ユスティーナ王女は嘲笑まじりにわたしを見つめる。
―――わたしの家を脅しに使うわけですね。でも甘い。わたしはけっこうしたたかだし、食のためなら情報集めも怠らない。
「確かに痛手かもしれません。ですが、わたしは知っています。ライオネルさまと王女殿下がすでに肉体関係に近いほど親密であると囁かれていることを」
「そ、それは……風評だ! 根拠はない!」
「根拠ならあります。実際にお二人が密会している現場目撃証言、出入り先の記録、そして―――わたしが隠し持っている録音水晶です」
ぽかんとする二人。
「ここでわたしが婚約破棄を拒み、二人が裏で愛を育み続けるなら、遅かれ早かれ大スキャンダルになるでしょう。そのとき、お二人は世間からどのように責め立てられるか……考えたくもありませんね」
「き、きみ……脅すのか、ぼくたちを……?」
「脅しではありません。事実をお伝えしているだけ。わたしはただ、美味しい食事を安心していただける環境がほしいんです。こんな騒動には巻き込まれたくありません」
そう言い放つわたしに、ライオネルさまと王女殿下はあからさまに蒼ざめている。
「婚約を正式に白紙に戻してくださるなら、わたしは穏便に済ませるし、余計な噂を広めるつもりもありません。……でも、あなた方がわたしを利用して都合のいい盾にするなら、こちらにも考えがありますよ」
わたしは書類をテーブルに置き、目を伏せる。甘いフィンガークッキーの香りが漂ってくるけれど、この瞬間はあまり食欲が湧かない。―――美食家としては珍しい現象だけれど、仕方ないわ。
サロンに微妙な静寂が漂う。思わず舌が渇く。こんな空気は早く断ち切ってしまいたい。
「そ、それでも……。あなたが本当に婚約を失って困らないとでも?」
ユスティーナ王女の声は震えている。
「困りません。わたしが一番大事にしたいのは、家の立場や政略ではない。きれい事かもしれないけど、自分が自由に美味しいものを求められる生活です。……偽物の婚約関係が足枷になるなら、むしろ捨てたいくらい」
ライオネルさまは何か言いかけて口ごもった。よほど動揺しているのだろう。数秒の沈黙の後、彼らは言葉をなくして顔を見合わせる。どうするつもりなのか、わたしにはもう興味すら薄れていた。
「では、失礼いたします。お返事は後日、書面でお待ちしておりますね」
わたしは静かにお辞儀をして、その場をあとにする。もうここには未練はない。
―――脳裏に浮かぶのは、早く城下町の新作デザートを味わいに行きたいという気持ちだけ。
◇◇◇
数日後、王宮や貴族界隈にあるスキャンダルが走った。
第三王女ユスティーナさまとヴィンセント公爵家の嫡男ライオネルさまが密通していた―――。
正式発表こそ「ふたりは友好のために会っていただけで不適切な関係はなかった」という形を取っていたが、事実上の処分として王女さまとライオネルさまは遠方の領地へ静養という名目で送られた。実質的な追放に近い扱いだ。
もちろんブルックス侯爵家の立場にも影響はあった。だけど、うちの両親は意外にも「おまえが無事でよかった」と言ってくれた。大スキャンダルに巻き込まれた被害者の立場になれたのが救いかもしれない。
そして、わたしは婚約を解消され、自由の身になった。―――めでたし、めでたし。
……では終わらなかった。
◇◇◇
「ティアナ・エルミナ・ブルックス。どうか、わたしに協力してほしい」
わたしの元に新たに現れたのは、レオンハルト・グランスターン王太子殿下。国王陛下の第一王子で、この国の次代を担う存在。背が高く、まさに絵画から抜け出したような金髪碧眼の完璧な王子さま。そのお方が、わたしをじっと見つめている。
「このたびのスキャンダルはわたしも把握している。第三王女も処分を受けた。だが、今回わかったのは、貴族社会にはまだまだ根深い問題があるということ。―――そこで、きみの知識や行動力を借りたいんだ」
「え、わたしに……ですか? 美食に関しては自信がありますけど、政治的なことはそんなに詳しくありませんよ」
正直戸惑った。まさか王太子殿下から自分が指名されるなんて思わない。
「いや、きみはただの美食家じゃない。情報の扱いも長けているし、まっとうに生きようという意志が強い。今回のことでも、それが証明されたじゃないか」
……ちょっと持ち上げすぎじゃない?恥ずかしいような、うれしいような。
「もちろん、きみを危険な目には遭わせない。きみが好きな料理を楽しめるような環境をもっと広げてあげることだってできる。……だから、一緒にこの国を支えていってくれないだろうか?」
そう言って王太子殿下はわたしの手をそっと取る。なんてまっすぐな瞳。これでは断りにくい。
「わたしが殿下のお手伝いをするとして……具体的にはどういうことをすればいいんですか?」
「まずは、王宮の美食改革に協力してもらいたい。外の世界にはまだまだ未知の食材や調理法がある。この国の人々の舌をもっと豊かにし、貴族から庶民まで笑顔にしたいんだ。そのプロジェクトを、一緒に進めてほしい。―――それはただの趣味かもしれないが、食の力は大きいと思っているんだ」
王太子殿下は熱い眼差しを向けてくる。その言葉に嘘は感じられない。わたしの理想【美味しいものを誰もが楽しめる国】が実現できるなら、それこそ最高の未来だ。
気づけば、わたしはうなずいていた。
「わかりました。よろこんでお手伝いしましょう。美味しいものを広めるお仕事なら、わたしもワクワクしますし」
すると殿下は満面の笑みを浮かべる。その笑顔は夜会で見せる貴族の営業スマイルとはまるで違う、本物の安堵と喜び。わたしはこっちまで胸が高鳴ってきた。
「ありがとう。……それから、ひとつ伝えたいことがあるんだ」
殿下は急に真剣な眼差しになり、わたしの手をしっかりと握りしめる。
「ティアナ、いつかきみを『王太子妃』として迎えたいと思っている。それは政治的な打算だけじゃない。きみとなら心から共に国を良くできると確信しているし、なにより―――きみ自身に惹かれている」
ど直球のプロポーズだ。びっくりしすぎて、しばし口が開かない。
え、なんだろう?この人も美食家で、好感が持てたとかなのかな?
「い、いきなりそんなことを……。わたしはただの美食好きなだけですよ?」
「きみが美食を愛するがゆえに、いろんな人脈を築き、情報を得て、真実を追い求めた。その柔軟さと行動力、そして誰かに利用されても黙っていない強さを持っている。それがわたしにはまぶしいんだ」
胸がいっぱいになる。前の婚約があんな形で崩れたわたしだけど、王太子殿下はそんなことは気にしていない。むしろ『だからこそ』わたしを評価してくれている。
「……ありがたいお言葉ですが、わたしにはまだ心の整理が必要です。あのゴタゴタでさすがに消耗して……」
それを否定せず、殿下はやわらかく微笑んだ。
「もちろん焦らせるつもりはない。きみが『はい』と言ってくれるまで、じっくりと待つよ。その間に美味しいものをたくさん味わいながら、きみを口説く作戦を考えようかな」
「くすっ……口説く材料が料理だなんて、わたしの好みをわかってますね」
ふたりで顔を見合わせ、つい笑ってしまう。こんなふうにまっすぐな気持ちを向けられたのは初めてかもしれない。
―――こうして、わたしは婚約者とのドロドロスキャンダルから一転、王太子殿下と『美食を広めるプロジェクト』をスタートさせることになった。王宮の料理長や近隣諸国との食文化交流、城下町の新店視察など、わたしのグルメ魂が存分に発揮できる仕事ばかり。すごく充実している。
そのうえ、殿下からは連日のように新作スイーツや珍しい食材の差し入れが届けられる。ここぞとばかりに、「これは君の好きそうな味だ」とか「あそこの洋菓子職人が作った新メニューだ」とか、わたしの味覚をしっかり押さえている。さすが、情報網が発達した王太子殿下。
時折、殿下から甘い言葉を囁かれるとドキッとするのは事実だけど、まだ少しだけ心の準備が足りない。でも、どこかでわかっている。わたしはもう殿下に惹かれはじめているんだ。
◇◇◇
それからしばらくして、王宮にある離宮のバルコニーで夜景を眺めていると、レオンハルト殿下がふいに背後から声をかけてきた。
「ティアナ、今夜のパーティ料理はどうだった?」
「味付けが少し濃かったかもしれませんが、あのスパイスのブレンドは面白かったですね。特にセロリアックのソテーと、ヒヨコ豆のピュレは新鮮でした」
さっそく料理の感想を述べるわたしに、殿下は嬉しそうに微笑む。
「きみが喜んでくれたなら、それだけで報われるよ。そうだ、次は宮廷菓子のレシピを一新しようと思ってるんだが、意見をもらえないかな?」
「もちろん。新しい菓子職人の試作品、味見してみたいです」
そう言った直後、殿下はわたしの手を引き寄せ、夜風に揺れるカーテンの陰へと誘い込む。急なことに心臓がドキリと跳ねた。
「……あの、殿下?」
「ティアナ。今はふたりだけだから、もう少し素直に呼んでほしい。『レオン』でいいよ」
「れ、レオン……。うん、ちょっと恥ずかしいですけど」
ささやくようにその名を呼ぶと、殿下―――レオンはわたしの耳元に顔を寄せて笑う。
「ありがとう。きみにそう呼ばれるだけで、この夜景が一層美味しく感じるよ」
わたしも自然に笑みがこぼれる。わたしはグルメだし、食べるものだけでなく『生きる味わい』そのものを大事にしたい。誰かとの甘い関係も、もしかしたら人生を彩る最高のスパイスなのかもしれない。
「そう言えば、先日新しくできたワインセラーを見学に行こうと思って。せっかくなら、一緒にどうかな?」
「いいですね! そこ、世界各地の珍しい葡萄品種を取り寄せたって聞きました。舌が覚えるほど飲み比べてみたい……」
わたしが身を乗り出すと、レオンが楽しげに笑う。
「まるで子どもみたいな目をしてる。……大丈夫、きみにしかできない体験をたくさん用意しておくから」
「楽しみにしています」
ふたりでくすくす笑って、バルコニーから見下ろす夜の庭園に目を向ける。
かつては偽りの婚約に縛られ、わたしの欲する『本当の豊かさ』を見失いかけていた。でも今は違う。わたしはこの国で、自由に美味しいものを探求していい。しかも王太子殿下から心惹かれているなんて。
ユスティーナ王女とライオネルさまは、今ごろ遠方の領地でどうしてるだろう。わたしからすれば、もう『関わることもない過去』だ。数々の美食を追求するこれからの日々を思えば、あんな裏切りのスキャンダルに消耗してる暇はない。
―――そう、これはわたしにとっての前菜のようなものである。実にさっぱりとした後味だ。
夜風がカーテンを揺らし、星空には月がやさしく光を落とす。レオンがそっとわたしの肩を抱き寄せた。
「ティアナ、わたしはいつか必ず、きみに最高のディナーをプレゼントする。きみの人生で一番のご馳走は、ここにあると胸を張って言えるように。だから……ずっとそばにいてほしい」
そのやわらかな囁きが耳に届き、胸がじんわりと熱くなる。グルメ好きのわたしだからこそ、彼の言葉が心地よくて甘くて―――まるで最高のデザートを一口味わったときのような幸福感を覚える。
「……はい。わたしも、あなたのそばで新しい味を見つけたいと思います。あなたという、甘いだけじゃない豊かなスパイスがたくさん詰まった『料理』を、もっと知っていきたいから」
わたしの返事に満足そうに微笑むレオン。まるで未来に向けて祝杯を上げるように、ふたりはそっと唇を重ねそうになって―――
そこはご想像におまかせ。