幸薄の苦労
話が進むほどグダグダになる気がするなぁ
俺達は学校へと向かう。ただいつもと違うのが学校のアイドルの一人である由紀が一緒にいるせいかいつもよりも視線を感じる。声をかけてくる者もいる。
さらに、そのせいでトップクラスの可愛さを誇る夕陽まで目立つし一緒にいる俺には殺意が向けられるのが一番ウザい。
「でもまたどうしてさこんなさえない奴を?」
「おい、テメェの弟みたいな奴にこんなとか言うなよ」
「うるさい。で、なんで?」
「ボクを・・・助けてくれた」
「へ? ・・・ああこの前の捕まったやつの事?」
「うん。カッコ良かった」
「やめてくれ。恥ずかしい」
「まぁ、見た目以外はいい奴だしね」
見た目はそんなに悪くないはずなのだが、俺はナルシストではないし黙っておくか。そんな事より、正直視線が辛い助けてくれ。早く学校に行きたい。
「やぁ、おはよう。谷河会長・三枝会計。今日も可愛いね」
突然声をかけてきたのは、学校でも有名なナンパ野郎。名前は忘れた。正直どうでもいいが彼は、俺が嫌いなタイプの人間だ。だから消えてくれればうれしい。
「あぁ、おはよう土谷君。今日も一段とウザいね」
夕陽もこのタイプのバカは嫌いいだったな。そのためかバッサリと切り捨てる。
「ハハハ、参ったな。嫌われてしまったかな? でもそう言うのを『ツンデレ』と言うんだよね」
迷惑なほどのポジティブシンキング。夕陽は笑顔を崩さないが拳を握りしめている。
「ところで、谷河会長。あの事は・・・」
「言ったはず。ボクは既に意中の男性がいる、と」
「だからそれは誰なの? あの時は教えてくれなかったからさ。って言うかいないんでしょう? 僕から逃げるためについたウソなんでしょ? 僕達結構お似合いだと思うよ? 学校のアイドルの『アイスハート谷河』と学校でもトップクラスの容姿の僕がカップルな、んて?」
由紀は土谷が話している途中、大体「いないんでしょう?」ぐらいの時から俺を指さしていたのだが、土谷は目を閉じていたから最後まで気付かなかったようだ。どうせ妄想でもしていたんだろう。
「この人」
「人を指さす、ってほっぺをつくな」
「やわらかい。意外」
「え? 本当に? あっ! 本当だ、やわらかい」
「人、のほっぺれ、遊ぶな!」
結構強めに突かれるから少し痛い。
「オイ、テメっと。君、君は谷河会長と三枝会計とどう言う関係かな?」
なんだか一瞬、素が出かけたような気がするんだが、気のせいだろう。
「夕陽は幼馴染だな。俺の兄貴ッブン! 姉貴分だよ。素晴らしいお姉ちゃんです。」
「うんうん。そう思ってくれてお姉ちゃん嬉しいよ~」
夕陽は俺の頭をナデナデする。暴力に物を言わせるくせに、間違いなく兄貴じゃないか。
「由紀は・・・・・・・・・・・・・・・???」
「酷い。そこは一言、『妻だ!』って言えばいい」
いやいやいやいやいや! 駄目だって。そう言うのを『火に油』って言うんだよ。
「ふうん、なるほど。分かったぞ。」
おぉ、なんだか知らないが分かってくれた。よかった。
「会長はこの男に脅されているんですね」
全然分かってなかった。バカだ。正直帰りたい
「大丈夫ですよ、会長。会計も一緒に助けますよ。僕この学校で負け知らずの、格闘部の主将と知り合いなんですよ。こんな男すぐにボコボコにしてくれますよ。もちろん僕もたたかいますよ? 貴女達のように美しい人の為になるような事をするために生まれてきたのですよ」
そう思うなら今すぐここから消えた方がいい。夕陽の額に青筋が浮かんでいる。笑顔のままなのがすごく怖い。
「どうせこんな男、貴女達には釣り合いませんよ。コイツって学校でも1・2を争う不良ですよ? クズですよ。そんなのと付き合ってるとクズがうつってしまいますよ。あぁ、会計は幼馴染でしたね手遅れかな」
あ、まずい。これは夕陽に対してはタブーとされる言葉のオンパレードだ。と言うか、どうして夕陽は俺と釣り合わないとか言われるとキレるんだろう。そしてコイツは本当に由紀を落としたいのだろうか。
俺は土谷と夕陽との間に強引に体をねじ込む。
「ざっけんなぁぁぁ!!」
夕陽の大きな叫び声とともに繰り出される余裕で世界を狙える体重の乗った素晴らしいパンチが俺の横腹をえぐる。ゴリュッと言う普通人体からは出ない音が鳴る。
「三郎!? あんた何やってんのよ、なんでそんな奴かばうのよ!?」
「あぁ? 誰がこんなのかばうかよ。俺がかばったのは夕陽の方だ」
「どう言う事?」
「もし夕陽がコイツを殴ってたら夕陽に何かしらよくない事がある。最悪停学だったろうな」
「確かに。どんな事があっても人を殴るのはよくない」
「由紀ちゃん。そう言うのはね、その拳を解いてから言ってね」
由紀は拳を握りしめていた。もし夕陽が殴りかからなければ由紀の方が出ていたような気がする。
俺は土谷の方を振り向いて出来るだけ怖いと思う顔をつくって睨む。
「ひぃ!」
俺は出来るだけドスのきいた声で言っておく
「俺の悪口ならいくらでも聞いてやる。だがな、俺の知り合いをけがすなら俺はブチギレる。これは警告だぞ」
「は、はひぃぃぃ!!」
土谷は逃げて行った。なんかやり過ぎた感があるな、周りの奴も何人か逃げた。
「相変わらず人相悪いね」
「でもすっごく優しい。好きになってよかった」
はぁ、まだ学校じゃないけれど帰りたい。疲れた。でもこんなのもいいかもな。
まだまだつつける気です。応援してくれたらうれしいです