第一章⑥『団欒の星夜』
永獄の炎天下に喘いでいた大地を染める夕日の刻――すっかり遊び疲れたエア達は、一目散に帰宅した。
家に帰れば、家族と共に食卓を囲い、家族団らんの夕食を楽しむ。
採れたて野菜や果実を瑞々しく焼いた郷土料理。
小麦と山羊のミルクをこねて焼いた、噛み応え抜群の香草パン。
ほくほくと香ばしく身がぎっしり詰まった魚料理。
簡素ながらも味わい深い夕食を、エアと村人達は仲良く分け合いながら味わう。
夕食後は、紺青色の夜帳に砂糖粒をまぶしたような星屑や眩い真珠色に光る満月を、エアは子ども達と共に仰ぎ眺める。
そして今宵もエアは、彩りの星の数ほどの物語を語り歌う。
「今夜は、アルドゥアラーの『天地創造物語』を話しましょうか」
子守歌を口ずさむ母親のように澄んだ声が、優しく響き渡る。
長い夜の旅へ赴くようにゆったりとした調子で、エアは物語の一つを歌い始めた。
世界が生まれ、人間が生まれるよりも、遥か久遠――。
全ての大いなる母と父である「原初の海」から、全ての生命は芽吹いた。
原初の海から最初に生まれたのは秩序、「天空の主神サマーァ」、次に「地上と自然の神タビーア」、次の次に「水と知恵の女神アクルマイヤ」、さらに次の次の次に「冥府と死の神ナーム」が、産み落とされた。
手始めに主神サマーァは、神々の住む「天界」を統治した。神々の創造する世界に秩序を維持する王位に就いた。
『天空の神・サマーァは、天界における最高位の王として神々を率いる。我々の創造する世界と僕等の秩序を監視・統治すべく、此処に誓う――』
『ならば私、春と豊穣の女神ラビアは、広大無限の大地に生命の芽を生み落とします。我々の穀倉となるこの地を、永久に豊かに実らせるべく、此処に誓いましょう――』
主神サマーァの妹であり妻となった「春と豊穣の女神ラビア」は、地上の生命を実り豊かに生み成す役割を負う。
手始めに、女神ラビアは生命の息吹でこの大地を抱擁した。
聖なる息吹からは、牛、羊、山羊、鶏等の家畜の他、ありとあらゆる動植物を生んだ。
地上の神タビーアは、神々の庭の土台となり、生命の豊かな活動に資する「大地」を創造した。
広大無限の土台に、山、谷、丘陵、荒野、砂漠、川、草原、森を建てた。
「海」をも治める女神アクルマイヤは、原初の海から真水を川へ流し、塩水から結晶を生んだ。
さらに、原初の海が生命の息づく地上をみだりに侵さないように、アクルマイヤは四六時中監視した。
冥界の神ナームは、広大無限の地下世界を掘り、仄暗き深淵の「冥界」を創造した。
彷徨える死者の魂を投獄するために。
かくして王のサマーァ神・タビーア神・アクルマイヤ神・ナーム神の四柱は、「世界」を創造。
「天空」・「地上」・「海」・「冥府」、四世界の支配権を裁決した……。
夜天を漂い煌めく無限の星々のような物語に、目を星のように輝かせて喜ぶ子ども達に、エアの心には幸せの流れ星が降り注ぐ。
エアの物語が絶秒なキリで中断した所で、子ども達は親きょうだいと共に寝所へ戻った。
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